万能全刀のラスティ・ハート   作:四季式

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第七話。

「……(サビ)くん、灰村(ハイムラ)と接触したでしょ」

 

教授(プロフェッサ)からは『現状維持』って言われてるんだ。あんま勝手に動くなよ」

 

「ちょっと挑発して警戒心を掻き立てさせただけですよ。灰村は権利者(オーサー)のくせに、まだぬるま湯に浸かってる一般人のつもりですからね」

 

 このまま死ぬのは『美しく』ない。

 女王様の騎士(ナイト)を気取るなら、戦って戦って、その末に果てるべきだ。

 

「……錆くんは、私たち以外に優しくしちゃダメ」

 

「別に優しさで警戒させたわけではないのですが…。そして元よりそのつもりですよ、病子(ヤマネ)さん」

 

「……ん」

 

「はいはい、二人だけの空間を作らない」

 

「妬いてるんですか?」

 

「妬いてねぇよ!」

 

「……そういえば、教授(プロフェッサ)が『殺人鬼がうろついてるらしいから気をつけて』とか言ってた」

 

「あぁ、ニュースにも出てましたね」

 

「話を聞け!」

 

 確か、大きな鈍器で潰されたような死体が発見された、だったかな。

 

 ──アレ(・・)の準備をしますか。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 ガリガリ、ガリガリ。

 

 アスファルトを削りながら進む巨躯。

 

 その目は虚ろで、意思はない。

 

 只々手に持つ凶器(狂気)に突き動かされ、ソレは進む。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 錆家には、家宝と言われるモノがある。

 それは当然『刀』──ではない。

 

 言うならば『刀のなり損ない』

 あるいは『刀の成れの果て』

 

 それ自体は刃物であり、凶器であり、人殺しの道具ではある。

 しかし、『刀』では決してない。

 

 何故ならば、それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやあ、灰村に武者小路(ムシャノコウジ)。朝ぶりだね」

 

 破壊された壁の穴からひょっこり顔を出すと、ハンマーを持った大男と対峙する灰村たちがいた。

 

「錆、なんでお前が……?」

 

「錆君?」

 

「おやおや、どうやら僕は物語で言う主人公の初バトルの邪魔をしてしまったようだ」

 

 大男が焦点の合ってない目をこちらに向け、次いで手に持つハンマーを振りかぶった。

 

「でも僕は悪くない。何故なら、僕だって『僕』という物語の主役を張ってるから、ね!」

 

 迫り来る凶器(ハンマー)に、だけど僕は焦ることなく両手に持つモノをクロスしてそれを受け止めた。

 

 足元の床にヒビが入り、足が沈む。

 

 だが(・・)それだけだった(・・・・・・・)

 

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ッ⁉︎」

 

「あ、驚いてるね。なるほど、そのハンマーには『物体の剛性低下』の効果があるようだ。基本的に『不壊』の特性を持つ殺害遺品(キリング・グッズ)同士の戦いではハズレ能力かな。その程度では、コレも僕も壊せない」

 

 左手側のモノでハンマーを支えたまま、右手側のモノを逆手に持ち替えて、大男の足の上で離した。

 

 大男の足が潰れた。

 

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──ッ‼︎」

 

 絶叫が響く。

 

「これで動けないね。灰村、トドメ刺す? あ、刺さない? じゃあ僕がやっちゃうよ」

 

 (うずくま)る大男の頭の上に左手に持つモノを持ってきて、手の力を緩める。

 

「潰せ、双石(ソウセキ)

 

 それは、持ち手がどちらか分からない不恰好な、斧のような、剣のような、しかし確実に──凶器(狂気)であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「……錆くん、約束破った」

 

「いえいえ病子さん、あれはそう、不可抗力というやつでして。いやぁ、夜の散歩と洒落込んでいたら大きな音が聞こえて、そちらへ行ってみるとなんと、同級生の命の危機ではないですか。これはもう正当防衛間違いなしですね」

 

「おい(トオル)、あたしは『現状維持』だと言ったよな? なんで『破砕粉壊(はさいふんかい)のスレジハンマ』の権利者(オーサー)殺しちゃってるの? 馬鹿なの死ぬの?」

 

「えーと、助けて教授(プロフェッサ)!」

 

「ほうほう、これがかの無名(・・)な双刀『鎚』の成れの果てか。虚刀『鑢』に砕かれたと聞くが、加工して二つの武器にしてあるね。しかし透君曰く、これは『刀ではない』とのこと。ならば『全ての刀を十全に使いこなせる』という全刀『錆』の特性には沿わない。それは一体どういう理屈で……」

 

 持ち帰った『双石』を前にブツブツと一人で考察している教授(ヘンタイ)はアテにならない。

 

 僕は二人の恋人を前に言い訳に終始するのだった。

 

 

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