「このダンジョンは二人のみ参加可能だ。」
低く重い声が僕の中に響いている。二人のみ…。すっかり忘れていた。いつも剣士と一緒だったから考えもしなかった。
「あっ…」
どうしようもない現実に戸惑う。
「そ、そこを何とか...。」
ダメ元で頼んでみる。
「よかろう。とでも言うと思うのかい?」
うわ、だるいよこの管理人さん。でも僕も冒険に出なければ食料が底をつく。引くわけにはいかない。
「僕も冒険に出ないといけないんだ!」
つい声が大きくなってしまった。管理人さんも少し驚いた様子だ。
「そう言われてもなぁ。規則は守ってもらわなきゃねぇ。そういうやつが命を落とすんだ。わかるだろう?私らはそういうやつらを守らなきゃならねぇ。」
「うっ!!?」
痛いほどわかる言葉。これが現実だ。そうだ、僕が…。また、同じことを。
嫌な記憶がよみがえる。
「おいおい、兄ちゃん大丈夫かい?顔色が悪いようだが」
「あっ、あぁ…大丈夫」
心配に思った管理人の声で僕は我に返った。気持ちは少しましになっても、身体はまだあの日のことを受けきれていないらしい。
しばらくの沈黙が続く
「兄ちゃんがそこまで考えるならよ、一つ君にチャンスをやろう」
管理人さんの言葉が沈黙を破る。
話し合いの結果、僕は管理人の紹介で他の冒険者と同行させてもらうことになった。
「ぼ、僕は盗賊。分け合って冒険に出なきゃいけないのに、すっかり制限メンバーの事忘れてて…。」
とりあえず、挨拶を交わす。
「なんだよそれ!?はっは、馬鹿じゃねぇのお前!」
しょっぱな笑われた。てか、馬鹿呼ばわりされた。いや、馬鹿みたいなことしたけどさぁ…。
「こんなんがメンバーで大丈夫なのかよ。」
嫌味たらしい言い方で僕を指さしながら、彼はもう一人の帽子をかぶった女性のほうを向いた。
「狩人君。笑わないの!あなただって、初めてここに来た時、一人で突っ走ろうとしたの忘れたの?」
「ちょっ、まほねぇ。それは言わねぇ約束だろ。」
狩人はおどおどしている。先ほどまでの勢いはどこへやら。
「ごめんなさいね。狩人君は強く当たっていく人だけど、根は優しい人なの。許してあげてね。」
手を合わせて頭を下げる。帽子のつばからのぞかせる、彼女の上目遣いはとても可愛かったことだけ覚えている。
「はっ!?何言ってy…。」
「あっ、私は魔法使い。今後ともよろしくね。盗賊君。」
魔法使いが狩人の言葉をぶった切り、話を続けていく。
「よ、よろしくお願いします。お二人とも。」
何なんだろうか、このペースは。さっきから二人のペースに飲まれてばかりだ。正直、話についていけてない。
「ほら、狩人君!あなたも、挨拶しなさい!!」
狩人が魔法使いに背中を叩かれている。(これが後方射撃。)また、二人のペースが始まる。
「う、うっさいなぁ。言われなくてもするわ!」
「うるさいとは何よ!うるさいって。私はねぇ。」
「また始まったよ。まほねぇのお説教。それがうるさいって言ってんの。」
「な、なによ!私はねぇ!狩人君のことを思って...。」
僕を置き去りに、二人の世界が繰り広げられていく。もう、話についていけない。それどころか、さっきから周囲の目線が痛い。他の冒険者にめっちゃ見られてる。正直恥ずかしいのでもうやめてほしい。と、こう考えている間にも二人の言い争いはヒートアップしている。
「あ、あの…。」
「お前は」
「盗賊君は」
「黙ってて!!」
二人の声が重なりさらに大きな声になる。
「は、はい…!」
こんなんで、大丈夫なんだろうかこのパーティは、と思う盗賊でした。
今回も読んでいただきありがとうございます。おそらくいないと思いますが、二話からご覧にいただいた読者さんはぜひ、一話もご覧になってください。
寝る前に書いてるから、文章の内容が深夜テンションになりがちです。