町も静まりかえり、月と星だけが暗闇を照らす。
そんな中、彼女はふわり、と...
ロンギヌスに血を吸われたい!
そんな私の欲望を文章化しました。
これもう必須タグ要るかな...?
要るようでしたら、ご指摘頂ければ幸いです。
相変わらずの駄文です。
闇夜を歩く少女がひとり。
私は、宙を歩いていた。
どうやって、と聞かれても困る。
そこに床でもあるかのように。そこに階段でもあるかのように。歩くことができた。
風になびくマントを、月明かりが照らし出す。
誰かが見れば、アレと勘違いするだろう。
まあ、私も意識してそういう格好をしてきたのだが。
深夜11時。
まだ灯りのある、マスターの部屋へ。
―――――――――――――――――――――――――
私は、ベッドに寝転がっていた。
ダモクレスとネスを部屋に送り届け、お菓子を整理して、一息ついたところだ。
窓から吹き込む風が心地よい。
風が、彼女の匂いを運んでくるようで...
「ん?」
「あ...」
いつの間にか、窓際にエンヴィが立っていた。
「...どこから入ったの?」
「窓からです」
「ここ、3階なんだけど」
「そうですね」
...しばし、思考
「まあ、いいか」
の後、思考放棄。
「いいんですか」
そんなことより。
彼女の姿は、ハロウィンの夜にぴったりだった。
黒いマント。裏地は赤。
その下は...何というかそれっぽい、西洋の男性用の正装をアレンジした感じだ。
そして、口には付け牙。
一言でまとめてしまえば、
「その格好は...吸血鬼か」
そういう格好だ。
「ええ。ハロウィンの夜は仮装すると聞きまして」
マントが風にふわりと揺れる。
「その...似合ってますか?」
「うん。すごく似合ってる」
偽らざる本音だ。露出こそ少ないものの、それがまた彼女らしいというか......
「そう、ですか。よかった...」
顔を赤らめ、微笑むエンヴィ。
その姿に見惚れ...
「......ところで」
ている場合ではない。
「はい」
「何しに来たの?」
深夜に、お忍びで来るということは、何かあるのだろう。
さすがに、お菓子を貰いに来たとかではないだろうけど。
「マスター、今日がどんな日かご存知ですよね?」
...まさか。
「Trick or treat.お菓子くれなきゃいたずらしますよ?」
まさかだった。
まあ、当然といえば当然か。
部屋にこっそり侵入してまでやることかと言われれば、どうかと思うが。
ともかく。
「うーん...あいにくお菓子は持ってなくて」
「そう、ですか...では...」
いたずら、か。
彼女のいたずら、というのは想像し難い。
どんないたずらをされるのか...と考えていると、
「では...その...」
彼女は、
「今夜の私は吸血鬼ですので...ええと...」
誰も予想できないであろうことを言った。
「マスターの血を、頂けませんか?」
―――――――――――――――――――――――――
言った。言ってしまった。
マスターは、きょとんとした顔でこちらを見ている。
「あの、ええと...い、今のは...」
やっぱり...
「いいよ」
「で、ですよね。やっぱ...り...?」
「私の血、あげてもいいよ」
そう言って笑うマスター。
「ほ、本当によろしいのですか?」
「うん」
こっち来て、と言われ、隣に座る。
「さ、どうぞ?」
「で、では...」
そっと首筋に触れる。
そして、そこにゆっくりと噛みつく。
「遠慮しなくていいから...」
少し力を入れると、あっさり付け牙がマスターの肌に刺さる。
「っ...く...」
やはり少し痛いのか、うなるマスター。
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて口を離す。
「うん。大丈夫。それより、ほら...」
マスターは私に血を吸うよう促す。
先ほどの部分から、血が出ている。
それを、私は舐め取る。
そして、傷口に口を付け、マスターの血を吸う。
甘い。甘い。
血の味のはずなのに。
これまで味わったどんなものより、甘い。
ぎゅっ、とマスターに抱きつき、夢中でマスターの血を味わう。
そんな私を、マスターは抱きしめてくれる。
蕩けそうなほど、幸せなひと時。
私は、ただその幸せに溺れた...
―――――――――――――――――――――――――
「...んっ......はぁ...」
しばらくすると、エンヴィは名残惜しそうに口を離す。
どうやら、出血がおさまったらしい。
「...ありがとうございました」
いま一度、彼女を抱きしめる。
「どう?私の血、おいしかった?」
「......はい」
「そっか」
彼女が喜んでくれたなら、何よりだ。
「また、飲みに来る?」
「いえ...今日限りにします」
彼女はそっと私から離れる。
「...もう、行くの?」
「ええ。誰かに見つかると厄介ですし」
「そう、だね...」
まあ、シェキナーとかに見つかると、厄介なんてものじゃなくなる。
そろそろ潮時といったところか。
「それじゃ、また明日」
「はい。おやすみなさい」
来たときと同じく、窓から音もなく出る。
窓の外を見ると、
彼女は、宙を歩いていた。
ふわりとマントが風になびく。
月がエンヴィを照らし出す。
綺麗だ、と思った。
こちらを見て微笑む彼女が、ひどく愛しい。
やがて彼女が歩いていって見えなくなっても、私は外を眺めていた。
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月の光が。星の輝きが。頬を撫でる風が。
とても、心地よかった。
今夜は、いい夢が見られそう。
そんなことを考えながら、私は部屋へと急ぐのだった。