メア   作:漆黒のマカロン

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5話

『いったいこの街で何が起きてるんだ...』

 

12月19日。

お祭りがあった翌日から、この街では殺人が相次いでいる。

今までこんな異例は無かった。

しかも驚くべきはその頻度だ。

1週間に1度や、3日に1度じゃない。

毎日。毎日だ。この街で、毎日殺人が行われているんだ。

しかも犯人の足取りは全く掴めていないという絶望的な状況だ。

 

『最初の被害者はこの夫婦か...』

 

俺は机に座り込み、資料を睨んだ。

コーヒーを啜りながら資料に目を通す。

最初の被害者はどこにでいる夫婦。

近所でも評判のいい仲の良い夫婦だ。

 

『誰かに恨まれているとは思いにくいな......ん?』

 

俺は資料を見ていて違和感を覚えた。

 

『この夫婦...確か一人娘が居たはずなんだけど...現場の写真には一人娘は写ってないな...』

 

調べてみたら原因はすぐ分かった。

一人娘は数日前に失踪していたのだ。

夫婦によれば目を離した隙に行方不明になってしまったとなっている。

 

『夫婦は一人娘の失踪をとても嘆いており、捜索願を出したりなど、一人娘を心配する様子が見られた...か。だから現場には一人娘の死体が無かったのか。』

 

俺は資料を漁る。

 

『えーと......お、あった。...一人娘の名前は......』

 

 

『メア...か。』

 

俺はため息をついた。

 

『失踪してしまったとはいえ、殺人に巻き込まれなかったのは幸運だったな...まぁ、失踪したのは数日前とはいえ、こんな極寒の中じゃもう生きてることはほぼ無いだろうけどな...』

 

俺は一息ついてコーヒーをまた啜る。

 

『この子も不運だったな...。こんな不運な事故が重ならなければ今頃家族と楽しく過ごしていただろうにな...』

 

はー...と椅子の背もたれにもたれながら息を吐く。

その時コンコン。と部屋にノック音が鳴り響く。

 

『伊神刑事。犯人の足取りは掴めましたか?』

『いいや全くだよ。ここまでお手上げなのは初めてだ...』

『そんな...伊神刑事でもダメなのですか?』

 

こいつは俺のことを神とかでも思っているのか。

俺にだって分からないことや無理なことはある。

まぁ、だからと言って諦めたりはしないが。

 

『まずこの夫婦...殺され方がえげつなすぎる。』

『全身ナイフで滅多刺し...でしたっけ?酷いもんですよね...もう顔なんかは原型を留めなかったとか...』

『あぁ、酷い有様だったよ。』

『よっぽどこの夫婦に恨みでもあったんですかね?』

『俺もそう思って調べてみたがこの夫婦は残念ながらご近所さんで好評だ。恨むやつなんて見当たらなかったよ。...一人娘のことを微笑ましく話していたりしたらしい...』

『一人娘...メア、でしたっけ?』

『そうだ。そしてその一人娘は数日前から行方不明だ。』

『不幸なことばかりですね...』

『人が死んでんだ。不幸なんて言葉でかたずけられるかよ......なぁ、ところでさ』

 

俺は疑問に思い問いかける。

 

『この一人娘の写真はないのか?資料のあちこちを探したんだがどこにも無くてさ。』

『残念ながら一人娘の写真はありませんよ。...なんでも一人娘はカメラを向けると嫌がるとかどうとか...家を捜索しても一人娘の写真は一枚もなかったです。』

『一枚も...?』

『はい。どれだけ捜索しても無かったそうです。』

 

重たい空気が流れる。

耐えきれなくなって俺は叫び声をあげた。

 

『あーもうやめたやめた!行き詰まってる時はリフレッシュだ!外散歩してくる!』

 

俺は上着を掴み、外へとでる。

しばらく道を歩いていると、階段の段差に座り込む一人の少女に出会った。

その少女はとても可憐で、でもどこか悲しそうで。

俺は悲しそうな表情を見て思わず話しかけてしまった。

 

『ど、どうしたんだ?』

『ひっ......』

 

少女はひどく怯えていた。

まぁ、いきなり見知らぬ男に話しかけられたらそりゃ怯えるよな。

 

『怖がらせるつもりはなかった...ごめん』

『う、ううん...大丈夫......』

『その、君、すごく悲しそうな表情をしていたから...』

『心配...してくれたの?』

『...迷惑だったか?こんな見知らぬやつに心配されて』

『迷惑じゃ、ない...ありがとう...でも私は大丈夫。』

 

俺がその子に言葉をかけようとした瞬間ーー...

 

『ごめん。待たせちゃったかい?』

 

一人の男がその少女に話しかけた。

 

『あ!お兄さん!』

 

少女は途端にぱぁっと顔を明るくする。さっきまでの表情が嘘のようだ。

 

『すみません。この子がなにかしましたか?』

 

俺は困惑しつつも答える。

 

『い、いえ...なにも...大丈夫です。』

『そうですか。よかったです。』

『あ...いえ。』

『もー!お兄さん!私なにもしてないよー!』

『あはは。そっか。ごめんね』

 

そのまま二人は手をつなぎながらどこかへと消えていった。

取り残された俺は恥ずかしくなって頭をポリポリとかきつつ、仕事場へと足を戻した。

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