お父さんとお母さんを殺した日のことでした。
私は、お兄さんからもらったナイフをもって、お父さんとお母さんが住んでいる家の前に立っていました。
もう2度と帰ってくることはないと思っていた場所。
冬だからあたりはもう真っ暗だけどまだ夜の9時。
家の電気はついていました。
私は家の門を潜り、庭へと入り込みました。
家に入る扉の心配はありません。
お父さんとお母さんがもしも鍵を無くした時の為に置いてある合鍵の場所を知っているからです。
私は合鍵をとり、家の中へと入り込みました。
そのまま忍び足でリビングまで向かいました。
リビングの扉の前までいくと、お父さんとお母さんの話し声がよく聞こえます。
私が決心して扉を開けようとしたその時ーー
『そういえばあの子のことなんだけど、ちゃんと死んだのかしら?』
『メアのことか?...チッ...名前を呼ぶのも不愉快だな...』
お父さんとお母さんが私の話をしていました。
本能が「だめ。話を聞いてはいけない。」と言っているけれど、私は足を動かすことが出来ませんでした。
『まぁ、こんな真冬じゃ外は極寒だ。食料も無しに生きているはずがないさ。あいつを拾う物好きもいないだろうしな』
『そうよね。心配のしすぎね。あんなものを拾うなんて、人としての恥よね』
『あんなゴミ、拾うなんて能無しの馬鹿ぐらいだろう』
.........やめて。
私の中でふつふつと何かが湧き上がりました。
今まで感じたことのない感覚。
私の事はなんとでも言っていいから...けど、お兄さんのことは...
『そんな能無しがもしもいるなら見てみたいもんだなあ!』
『あら、そんなの見たら私たちまで能無しになってしまうわ。』
『そうだな!あはははは!』
もう...もう...
『やめてぇぇぇえぇえ!!!』
私は勢いよく扉を開け、お父さんとお母さんに突進していきました。
そして迷いなくお父さんをナイフで刺しました。
『お兄さんのことをっっ!!...悪くっっ...言うなぁぁぁぁぁあ!!!』
そう叫びながら何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もーーー
お父さんを滅多刺しにしました。
お父さんからナイフを抜いた時はもう、誰か分からないくらいグチャグチャでした。
そして私はお父さんを殺したあと、恐怖でへたりこんでいるお母さんへと目を向けました。
『め、メア...い、いや...ごめんなさい...ゆ、許して...』
お母さんは尻餅をついて涙を流しながら必死に私へと命乞いをしていました。
そんなお母さんの膝の上へと跨りました。
『め、メア.....ゆ、ゆ...許して...ほ、ほんとうはお母さん...メアのこと、捨てたくなかったのよ?けどお父さんに逆らえなくて...だ、だから許して...お願い...』
そんなお母さんに私は冷たく言い放ちました。
『そんなの知らない。お兄さんを悪くいったことは許さない。それだけ。』
そして躊躇いなくお母さんを刺しました。
『お兄さんは私に光を与えてくれたの...優しさを与えてくれたの...温かさを教えてくれたの...』
『愛を、教えてくれたの』
そう呟きながらお母さんを滅多刺しにしました。
お母さんも原型を留めなくなった頃、私は我に返りました。
『あ......わた、し...あ...あ...』
怖くなった私は、ナイフを抱えて、無我夢中に走りました。
毎日殺しをする時、お父さんとお母さんの顔が浮かぶ。
やだ...怖いよ...
怖い...怖い...お兄さん...どこなの?
どこ?どこ?おに...さ...どこ?
『ァ...メ.....メア!!!』
はっと私は目を覚ました。
『大丈夫かい?メア。酷くうなされていたよ。なにか怖い夢でも見たのかい?』
『お兄さん...?』
『メア、どうしたの?』
『お兄さん...お兄さん...お兄さん...怖い...怖い...怖い...』
お兄さんはそっと私を抱き寄せました。
『よしよし。怖い夢を見たんだね。大丈夫。怖がらないで。もう大丈夫。』
そういってお兄さんは私の背中をさすってくれました。
あぁ...安心する...。
もう私の心の支えはお兄さんだけになっていました。
お兄さんがもしも居なくなってしまったら...
私はどうなるんだろう...?
そんな不安を抱きながらーー
私はお兄さんによりかかり、しばらく抱き合っていました。