DQ単発短編集   作:アドライデ

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 ドラゴンクエストビルダーズ2の短編です。
エンディングまでプレイしてない人はネタバレになります。
プレイ中に思った事。


DQB2 からっぽの世界で

 

好奇心は猫を殺す

 

 そんなつもりではなかった。彼を傷つけるつもりはなかった。後悔してももう遅い。

 

 何もない島にたった一人佇んでいた彼。破壊衝動に苛まれ、幾多のモンスターの骸を超えてきた無邪気な少年。

物を作るという初歩的なことができない不思議な男である。

 

 己と彼の違いはいくつもあげられるが、共に何もない島に町、いや国を作ろうとしている最大の相棒であることは間違いない。

共に歩むことを疑っていなかったし、創造と破壊は紙一重であるから、物資調達はすごく役に立っている。

確かに物を必要以上に収穫したり、『これも必要か?』といらないものまで持ってきたりと、彼の少しずれた感覚に呆れることは何度かあった。

だけれども、モンスター退治など、強敵相手に目が輝いている姿を見ていると己も嬉しくなる。自分のできることをしている時の満面の笑みは格別であった。人の役に立つことが最大の喜びであるようだ。

そう、これでも信頼して、信用していた。

 

 ただ、ほんのちょっとした好奇心だった。冗談のように、だけれども少し期待して…別に彼が裏切るとか、悪いモンスターであると疑っていたわけじゃない。

記憶もなく、昔のことを覚えていない彼は一体、どんな存在だったのかと。人とは少し違う真紅の鋭い目、尖った耳、笑う時に見える鋭い犬歯。

真実を映すと言う鏡なら、多少なりとも手掛かりが得られるのではないか。そんな些細な好奇心。

結局その鏡は何も映すことはなく、彼に悲しそうな表情を作らせただけであった。

 

「お前がそんなことするなんて信じられない」

 

 そう、この好奇心は彼の心を傷つけた。ごめんなさい。そんなつもりではなかったと何度も謝罪した。

しかし、忙しないモンスターとの攻防の中、そちらの対処に追われて、中々互いにゆっくりと話し合う時間がなかった。

表面ではそれなりに元の態度に戻っていたから、少し安心してしまっていた。しかし、一度ついた疑心は彼の中で解けることはなかったのだろう。

 

 己と彼の関係に追い討ちをかけられるように、周りの波に飲まれて、騙されると言う形で彼を牢屋に閉じ込めてしまった。しかもその牢屋を作ったのは己自身であった。

やられたと思ったがもう遅い。

何度、交渉しても取り合ってくれず。疑いが完全に晴れるまで彼は牢屋から出ることができなかった。

 

 こうなったのは全て魔物の所為と言えるが…彼の心は閉ざしたままである。そうじゃないと叫ぼうが、違うと喚こうが、もう、己の言葉は彼に届くことはない。

 

 そう、たった一つの好奇心で彼との絆を己は壊してしまったのだ。

 

「ごめんなさい」

 

 ただひたすらに謝り続ける。

 

 

そして、ただひたすらに想う。

 

 

 泣き腫らした夜は、終わりを告げる。

唯々囚われた君を助けてる為に動き出す。

 

 この世の理とは何か。

世界とは何か、今見えているものでも作り出された幻であると、所詮とある大神官が描いが幻想。

破壊の神を崇め、滅びこそ美しいという教えの元。この世界は成り立っている。

 

創造と破壊。表裏一体の秩序。

 

 何もなければ破壊することもできない。

だから作る者が…ビルダーが必要となったのだろうか。

かつて要塞都市メルキドと呼ばれた今は亡き町。そこの遺跡探索を行なっていた時に魔物にさらわれた。

そして、この幻の大地に降り立った。

 

 

 遠い昔、お伽話のように聞かされた勇者なき世界で闇に堕ちたアレフガルドを復活させた伝説のビルダー。

その足跡を辿るように新米ビルダーは島々を探検し、聖地ロンダルキアを目にする事となる。

全ては泡沫、夢の世界。神をも恐れぬ幾多の幻覚の創造。

己の身を捧げる事で破壊の神の力がその地に宿り、偽りの世界を真とした。

 

「お前も作りたかったんだろ? お前の理想の世界を」

 

 壊すだけが目的ではない。この世界を作り出した意義、それが彼の理想の世界だった。しかし終わりである。再び相違した世界を壊すのを阻止する人々によって…。

 

 シドーの心が切り離され、そして融合する。世界の破壊は創造への架け橋。

そして、崩壊する世界を再び描き出す。

 

「お前との出会いが運命だとしたら、その運命とやらは悪くないと思うぜ!」

 

 ありがとう。その言葉を紡ぐシドーの顔から笑みが溢れている。それを見て心底安心した。

己もそうであるように、あの一時の過ちを許してくれて、瞳から流れる雫を止めることが出来ない。

 

 

「バカだなー。いや、バカなのはオレか」

 

 オレは『破壊神』そう呼ばれた。その冠する言葉通り、破壊の衝動が制御できなかった。あの時は複雑に感情が乱れた。疑われたという懐疑。対魔物兵器の威力による己の存在意義の崩壊…。アイツの楽しそうな姿を見れば見るほど、面白いほどに負の感情に囚われていく思考。

アイツはいつでも手を差し伸べていたというのに…笑って俺を信じてくれていたのに…。

でも、もう大丈夫だ。

オレだって立派に創造できた。なあそうだろ?

オレはもう破壊するだけの神ではない。

 

「ありがとな。やっぱり、お前は…根っからの…」

 

 

END

 


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