イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜   作:S・G・E

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12話 地元の創良

「今にも崩れそうなどんよりするほどの曇り空。うん、最高」

 

 創良は学園の寮を出て一人で釣りをしていた。鯛を釣るのに絶好の地元スポットである。

 

「よし、とりあえず10匹目」

 

 時折漁師から教わることで身に付けた釣りスキルは中学生にして手に職をつけられる域にまで達していた。

 

「一人で釣りか坊主?」

「ええ、ここは結構釣れますよ……ん、来た」

 

 声を掛けられても手の動きに淀みはなく、文字通り順調に海老で鯛を釣っている。

 

「11匹か、景気良いな」

「旬は過ぎてるけど十分に美味いですよ、鯛の料理はね。さてと、じゃあ後はご自由に。まだまだ残ってますよ」

「お前さん、俺が釣りをする格好に見えるか?」

「いいえ?でも見慣れない人とは関わり合いになりたくないので」

 

 挑発するような物言いでその場を去ろうとする。コート姿に髭だらけの初老の男。いかにも気が強そうなタイプだ。

 

「お前さん雷門中のサッカー部員だろ?」

 

 そのまま帰ろうとしていた創良だったが予想外の質問に足が自然と止まった。一体誰なのか、心の中で構えながらゆっくりと振り返る。

 

「俺は鬼瓦。こう見えて刑事さんと言うやつだ」

 

 そう言って手帳まで出してきた。実物を見るのは初めてだが嘘ではないだろうと創良は考える。

 

「刑事?それが中学生に何か?」

「なに、とある事件の捜査ついでに雷門の選手の顔を拝みに来ただけだよ」

 

 拝みにきたとは随分大袈裟だがどうやら自称ファンということらしい。

 

「俺は雷門の生徒じゃありませんよ」

「まぁそう言うならそれでいいがな。本物の雷門中はどこだ?愛媛に来てるんだろ?」

「……私立海隣学園」

「そうか、あんがとさん」

 

 用件だけ聞いて足早に去ろうとする刑事だったが、創良もただで起き上がるつもりはなかった。

 

「豪炎寺夕香」

 

 ボソリと告げた創良の一言(カマ)に刑事は目の色を変えて振り向いた。

 

「まさか…本当に当たっているとはね」

 

 理由も告げずに姿を消した雷門のエースストライカー。レーゼが最後に残した言葉。全ての疑問が一つの線で繋がった。

 

「お、おい!何を知っているんだ!?」

「何もかも今知っただけですよ?おにがしらさん」

 

 名前を間違えているが捨て台詞を残して自転車で去って行く逃げの一手だ。

 

「ああくそっ……もしもし監督さんか!?」

 

 

 

 ~~~

 

 

 

「葦川?どこいってたんだ?その格好……釣りか!?」

「今日は運が良かった。足りない分は買い揃えたが大漁だよ」

 

 創良が海隣に戻ってきた時にはちょうど全員休憩中だった。創良の格好と両手に持つ食材に一番近くにいた染岡が突っ込む。

 

「お兄ちゃん、手伝うよ?」

「じゃあ日天は米研ぎ頼む」

「はーい」

 

 日天を伴い寮の厨房に向かう創良。タイミングがいいのか悪いのか、ドリンクを持ったマネージャー組と鉢合わせた。

 

「あの、葦川くん?ひょっとしてこれから料理する?」

「見れば分かるだろう?」

「あ、うん。私たちに手伝えることないかなって」

「鯛やタコを捌いた経験は?」

 

 創良の言葉に木野が頭を唸らせ、音無が満面の笑みと共に両手でバツ印を描き、夏未に至ってはタコというワードを聞いた時点で手を震わせている。スーパーで買った

 

「連中の体調管理を頼むよ」

「わ、わかったわ…タコ、タコ……」

 

 マネージャーをあしらうようにして厨房を独占し、調理を開始する。

 

「こうやって二人で料理するの久しぶり〜!」

「いや、初めてだぞ。絶対包丁には触らせないからな」

 

 慣れた手つきでタコを切る。大阪でのアルバイトがここにきて活きたようだ。それらを日天が洗った米と混ぜて調味料を加えれば後は炊き上がるのを待つ。

 次に今日釣ったばかりの鯛、店を回って買い集めた海老、蛤、様々な魚介類を素焼きの炒り鍋に小石を入れた上に盛り付け、蒸し焼きにしていく。

 

「出た!料理教室に三日間通い詰めたら筋が良くて職人にならないか薦められたお兄ちゃんお手製の法楽焼!」

「後は皆を待つだけだ。日天、あのマネージャー達に伝えてくれ」

「はーい」

 

 日天と入れ違いに監督の瞳子が寮に入ってくる。その足は迷わず創良に向かってきていた。

 

「葦川君。少し話したいことがあるのだけれど」

 

 その口調は穏やかではなかった。

 

「内密にと言うわけですか……構いませんよ」

 

 丁度料理も机に並べ終えた後だった。都合が良いと逆らう事なく二階へついて行く、

 

「あれ?監督と葦川は?」

「先に戻ってたから二階で話してるんじゃないか?」

「美味そうな匂いがするッス〜!」

 

 二人が上がったそのすぐ後に円堂達も練習を切り上げ戻ってきた。壁山をはじめ一部は机に並んだ料理に目を惹かれている。

 

「愛媛本場のタコ飯と愛媛の郷土料理法楽焼。お兄ちゃんの手作りです。どうぞ!」

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 和気藹々とした一階とは逆に二階の一室では緊張した空気が立ちこめる。

 

「葦川君、貴方はエイリア学園についてどこまで知っているのか、隠さずに話して頂戴」

「はい?何のことを言ってるのかさっぱり……」

 

 いきなり自分にエイリア学園のことについて語れと言われても傍観者寄りだった創良に話せることなど殆どない。

 

「ある刑事からこちらに連絡があったのよ。雷門中の服を着ている生徒の中にエイリア学園に味方しているかもしれない者がいると。愛媛にいる私たちの中で彼が知らないのは貴方一人だけ、答えてもらえるかしら?」

「刑事?ああ、さっきの髭面の……」

 

 面倒なことになったと創良はため息をつく。

 

「むしろ聞きたいのはこっちですよ。豪炎寺修也を何故チームから離脱させたのか」

 

 無理矢理論点をずらそうとする創良だったが瞳子の目にも動揺が浮かんだことから想像以上に大きな問題だということが分かった。

すかさず理屈をこね回していく。

 

「奈良での試合の時に何かの違和感はあった。その後で映像越しに見たFFでのプレーを見て明らかにおかしいということに気付いた。でも確信を持ったのは バスの中でのキャプテンの言葉とそのおにがしらという刑事にカマをかけた時です。豪炎寺修也の妹に何があったんですか?……まぁなんとなく察することはできますがね」

 

 まず間違いなくここが豪炎寺関連の鍵を握っている。

 創良がそう勘付いた以上誤魔化しは効かないと判断した瞳子はことの些細を語りはじめた。

 

「成る程。営利誘拐ね、サッカーによる秩序とはよく言ったもんだ」

 

 力の証明と銘打っておきながら相手の弱味をを握る卑劣なやり方。

 豪炎寺夕香は現在エイリアの協力者と名乗る連中に軟禁されており、警察や奈良で会ったSPが全力で救出の準備に当たっているのだという。

 

「それを知らなかったということは、貴方はエイリア学園に味方した訳ではないと信じて良いのね?」

「何のためにイプシロンと戦ったんですか。それだけで分かるでしょう?」

「……分かりました。雷門中サッカー部監督として貴方を信じます」

「どうも。その信頼に応えられるよう努力しますよ。あ、後で料理の感想聞かせて下さい」

 

 創良の足取りは軽く、一階へと降りていく。

 

「やぁやぁ諸君。調子はいかが?」

 

 

 ~~~

 

 

 

「自分の問題は、自分自身が乗り越えるしかないと考えているのね……」

 

 一方、二階ではこれからどうするべきか瞳子は部屋で一人考えていた。

 葦川創良という少年について瞳子が愛媛で耳に入れた情報は今までと打って変わって大量だった。

その中でも特に『この辺りでは有名だったスタープレーヤー』これが有益だった。創良のサッカーの実力は小学生時代のFCで遺憾なく発揮され、地区優勝に手が届くほどだったと口々に噂している。

 

 そしてもう一つ。『両親が亡くなってからはその噂も聞かなくなった』奈良で会い、京都に現れた時からもしやと考えてはいたがあの兄妹は両親を失っていた。より詳しいことを調べる必要があるが、その死は家に明らかに放火の形跡が残っていたらしい。創良が中学でサッカー部に入らなかった理由はここにあるのだろうと瞳子は推測する。

『何のためにイプシロンと戦ったのか』そう言った創良だが、周りから見てもレーゼに対しての同情ないしは友誼でサッカーをしていたのは明らかだった。まだ創良は一度も自分の意思でのサッカーを見せていない。今回も地元であることと影山とエイリアにつながりがあるということが協力の動機だった。

 

「それでも、私にとって彼の実力は……」

『監督ー!葦川の料理冷めちゃいますよー‼︎』

 

 一階から円堂の呼ぶ声が聞こえる。その声を聞き、やはり円堂には豪炎寺の件を隠さずに伝えるべきだったのかもしれないと気持ちに迷いが出る。

 

「……いいえ、今だけは、考えないようにしましょう」

 

 その思いは誰に伝えることもなく、それぞれの一日が過ぎて行った。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 次の日の早朝、創良から集合がかけられ瞳子も含めた全員が食堂に集まる。ちなみに日天は創良の背中で未だに眠っている。

 

「今日も葦川さんの手作りッスか!?」

 

 壁山は昨日の法楽焼に最も食らいついていた。朝からまた同じような食事ができるのかと興奮気味だ。

 

「影山零児の居場所が分かった」

「へ〜そうなんスか……えええっ!?」

 

 今日初めての創良の言葉に皆が動揺する。最も強い反応をしたのはやはり鬼道だった。

 

「何処だ!あいつは一体何処に」

「くっ付くな暑苦しい」

 

 逸る鬼道を払いのけて続ける。

 

「瞳子監督や海隣の理事長、校長からの話ではここや近隣の中学生が数人行方不明になっているということが分かっている、サッカー部の生徒がな。その数人が消息を絶った場所を大まかに円で囲むと……」

 

 ボードに貼り付けた地図に赤い点を付け、円を描く。

その中で一番不審な場所に創良は心当たりがあったようだ。

 

「この上にある埠頭は移転によって使われなくなった場所だ。だが最近になって夜中に誰かの足音がすると言う人がちらほらいた。海坊主だの酔っ払いの幻聴だのと噂されているがバスで10分かからない場所だ……行く価値は十分だろう?」

 

 その場の目に異議は一つもなかった。創良の視線に合わせて皆全員が瞳子を見る。瞳子も何を言う事なく首肯した。

 

「よし!みんな行こうぜ!」

「影山との因縁を終わらせる!」

 

 午前8時、海隣からイナズマキャラバンは出立した。

 

「しっかし地元とはいえ頼りになるよな葦川は」

「俺たちは試合で葦川さんの頑張りに応えるでやんす!」




 創良が豪炎寺離脱の真相を知りました。
真・帝国戦。オリ主展開で大きなターニングポイントにになりそうです。
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