イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜 作:S・G・E
小さな諍いから始まった雷門対ギャルズの試合。雷門はあろうことかエイリア学園と勘違いされ悪者扱いされる始末。
「もう、栗松君がチョコを取ったりするから」
「吹雪さん!?誤解でやんすよ!」
ジェミニを下した雷門を相手にギャルズは大方の予想を裏切り優勢に立ち回っていた。前半戦が終わる頃には0-1で負け越し。
「嘘だろ。俺たちがリードされてるなんて」
「いや、彼女たち強いよ」
まさかの事態に頭を抱える土門と相手の必殺技を直に受けて実力を見て眼ざるを得ない風丸。
「鬼道、後半はどう行くんだ?」
「ある程度相手の戦術は読めたが、攻めに転じないことには……」
鬼道さえも攻略の決定打が掴めないでいる。染岡の抜けた穴はやはり大きいようだ。
「よーし。後半もこの調子で行くで~!」
後半戦が始まろうとしたときそれは起きた。
「貴方たち!何をしているの!」
「あっ、瞳子監督!」
その場に瞳子監督が春奈、日天を伴って現れた。
「皆こんなところに……あれ?」
「ん?あれは……」
その中で顔見知りだった日天をリカが見つけ、それと同時に満面の笑みで駆け寄り、全力で抱きしめた。
「ま、日天ちゃんや、久しぶり~!髪切ったんか!」
「むぎゅ……」
「はぁ可愛い……妹にしたい。そや、兄貴はどないしたん?」
「ど、どういうことだ?知り合いなのか?」
その後、日天を介して双方の誤解を解き試合は一時中断、チョコを取った真犯人が発覚する。一之瀬がリカに一目惚れされる。などの出来事があったが、ギャルズの協力を得ることで雷門はエイリアのアジトを発見することになる。
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創良からデートに誘われた翌日。杏は張り切っていた。
(ふふっ、デートに関する情報はすべて網羅した。デートっぽく見えないようにに細心の注意を払えばいい!)
デートではないことを証明するために張り切っていた。
(其の一、彼氏は彼女より早く待ち合わせ場所に着くもの。ただし彼女側が早めに来ても彼氏からの好感度がアップする可能性アリ。一見詰んでいるように見えて抜け道が一つ、一緒に行けばいい!おはようから入場まですべて横並びでやってみせる!)
インターネットの情報を友として今日一日をやり過ごすつもりのようだ。
「おひゃよう!」
「んん……?うんおはよう」
「さ、デートという名の視察に行きましょう!」
「張り切ってるなー」
エイリア学園のチカラを持ってすれば大阪まで瞬きほどの時間もいらない。人気のない場所から何食わぬ顔でナニワランドの入場口まで歩いていく。
「入場券買ってくるよ」
「はいはい」
(其の二、レディーファーストには感謝を。女性に尽くす男という構図は当たり前ではなく彼氏の好意によるもの。しっかりと感謝の気持ちを伝えましょう。ならばこっちはふんぞりかえってれば幻滅して本腰入れて噂の消去に手を貸すでしょ!我ながら完璧!)
自身の評判も顧みず目的を果たそうとしている杏。何という策士であろうか。
「はいフリーパス」
「ん、ありがと(あっしまった)」
なおそれを一瞬で台無しにするほどアドリブに弱いので±0である。
「ところで、今日の服。どう思う?(其の三、遊園地デートは汚れが付くため白いファッションは避けましょう。避けませーん。とっておきの白いワンピースで日がな一日遊びつくす。汗や埃でふすふすと汚れた姿が夜景とミスマッチ!ああ、自分の才能が恐ろしい!)」
「似合ってると思うけど?」
「ほんと!?よかったあ(ふーん?)」
時間差で発動する策まで用意している。いったい何が彼女をそこまで突き動かすのだろうか?
(其の四、自分の都合ばかり押し付けないようにしましょう。遊園地という非日常に入り気分が高揚するのは分かりますが相手を気遣うことなく我を通していては相手には自分勝手に映るだけです。これこそが本命!一気に勝負に出る!)
「ところで、今日のプランを考えてきたんだけど今日はこの通りに周るからそのつもりでよろしく」
作戦通り、創良は食い気味の杏に戸惑っている。ただしその心中は狙いと大きく外れていた。
(え?いや何でデートプランみたいなの用意してんの?おちゃらけ半分にデートとか言ったけど本気に受け取らなくても……)
「おーい聞こえてる?」
「ああ、うん……」
間の抜けた返事が創良から返ってくるのをみて杏は内心ほくそ笑んだ。
(よしよし効いてる効いてる。あとは押せ押せで今日の作戦は成功したも同然!)
そうして本格的に二人の遊園地巡りが始まった。
~ジェットコースター~
「いきなりジェットコースター!?」
「遊園地に来たんだから乗るのは当たり前でしょ」
~コーヒーカップ~
「定番のコーヒーカップ……」
「疲れてないか?続けては危険なんじゃ…」
「も、問題なし。回そぉ!」
~フリーフォール~
「つ、次はあれ。でも、ちょっと……休憩」
「フリーフォールか、苦手だな」
「良し乗ろう。今すぐ乗ろう」
絶叫、回転、絶叫と激しいアトラクション三連続。先に根を上げたのは杏だった。それもそのはず、先の三つはおろか遊園地すら実際には初めてなのだから。
「しんど……ホントに無理」
「はいはい、ゆっくり休憩しよう」
「うー」
ベンチにもたれ掛かる杏の横でスケジュールメモを見る創良。当初の予定からすでに大幅にずれていることに気付き苦笑が漏れた。
「イタリアンレストランとか初めて。割り勘だからね!(其の五、相手に割り勘を迫るのは大きな好感度ダウンにつながります。自分から言い出さないようにしましょう。これで決まりだ!)」
とにかく創良と恋人の様に思われないように行動するあまり男性側の注意点まで適用してしまう。そもそも誘われた側が割り勘を言いだしたら可愛げしか伝わらない。
「財布持ってる?」
「……奢って下さい」
そしてそもそも自分が自由にできる金銭を持っていなかったことで好感度ダウンどころでなくなっていた。
「パスタ、ピザ!ああ……どれ頼もうかな」
メニュー表を見ただけで目を輝かせる杏。もはやデート対策など脳の片隅に追いやり食い入るように見つめている。
「好きなだけ食べればいいんじゃないか?」
「マジで!いいの!?」
創良の提案に身を乗り出して感激を伝える。そしてシーフード系のピザ、茸のパスタを注文し、運ばれて来るや否や飛びつくように食事に入った。
「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
「……」
「うめ うめ うめ……何?」
「いや、何でもない。ここは安全だからね」
マナーもへったくれもなくひたすら目の前の料理を頬張る。杏からすれば男子と遊園地に来るということ自体新鮮だった。だから勝手も知らずネットの知識に頼ってここまで来たわけだが、食欲にはあらがえず本来の彼女が表れる。
「ご馳走様ー」
ピザ、パスタ共に完食しふと創良を見ればその表情は柔和な笑みで満ちていた。我に返れば必死に料理を口に運んでいただろう自分が容易に浮かんでくる。
(おかしい、これじゃまるでデートみたいな雰囲気に……)
当初の目的から乖離し放題の現在、杏は何とか突破口を見つけようとするも満腹になったことによる多幸感がその意思を奪い去っていく。
「あのさ、何でここ人が少ないの?」
今になって杏は疑問を持った。休日の遊園地、経験がない杏からしても明らかに人が少ない。そのせいか却って男女二組は目立ってしまう。
「ああ、エイリア学園のせいだよ」
「はああ!?」
創良はかつてリカから聞いていた話を伝える。エイリア学園が現れて以来あちこちで注意が促され、外出そのものを控える人が増えているという。現状はともかくこのまま客足が減り続ければナニワランド閉園もありうるとのことだ。
「自業自得……か」
「悪いことはするもんじゃないな」
がっくりと杏はうなだれる。
「じゃあお化け屋敷行こうか」
「おばっ……!冗談じゃないって!勇者?勇者なの!?」
「いや、そこの地下にあるんだろ?アジト」
「あ…………し、知ってるし!地獄の訓練所に行くのかと聞いただけだし!」
お化け屋敷『ビックリハウス』。安直なネーミングだが、その裏口に細工がされており、エイリアの地下訓練場へと繋がっている。
「あれ?エレベーターが降りてる。誰かいる」
「誰か?イプシロンとか?」
「いや、そんな話聞いてない」
杏の言葉を聞き創良は考える。こうした時創良は最悪の場合を考慮して動く傾向にあった。結局は守りの思考である安全策を取ることになった。
「また明日にしよう」
「いいの?明日のための下見だったんじゃ……あそっか」
そこまで言って杏は今回の目的を思い出した。そうだ。創良の目的はここの下見であり自分はその監視だったのだ。デートに関しては最早諦めて流れに任せるしかないがこの男を観察し怪しい所がないか探し出す。
杏は自分の使命を再確認し、気を引き締める。
「夜はライトパレードだってさ。見る?」
「パレード!見る!」
まだまだ一日は続く。
バーン「信じて送り出したチームメンバーが遊園地の楽しさにドハマりして朝帰りになるなんて・・・」