イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜 作:S・G・E
リカの協力を得たエイリアの地下修練場を見つけた雷門は早速残された設備を利用して特訓を始めていた。しかしそこはエイリアの施設、生半可な体力ではリタイアする選手が増えるだけ。そのため普段無茶な戦術指示を出す瞳子も最低レベルの特訓から始めるように強く念を押している。
「エイリアの奴らはこんなので特訓してたのか!強いわけだぜ」
「だがこれを俺たちの力に出来れば、格段にパワーアップできる」
雷門の全員が未知のトレーニングに四苦八苦しつつも力をつけるためにと必死で攻略していようとしている。中でも染岡の抜けた穴を埋めるプレッシャーを背負う吹雪の勢いはすさまじく、他よりも頭一つ抜けている。
「吹雪!無理はするな!」
「いや、イプシロンが現れるのはもうすぐのはずだ。その前に少しでもレベルアップしないと……」
「風丸?」
「俺たちは負けられないんだ。多少の無理はするさ!」
「風丸……よおし!俺たちもや『ピィイイイイイイ!』」
吹雪の姿を見て焦りを見せる風丸。円堂が発破をかけようとしたところでホイッスルが鳴り響く。
「駄目ですよー連続での特訓は負担になるだけです。休憩とマッサージ!」
いい所なのにと不満の声が聞こえてくるがその足は笑っていた。女性陣がそれを見過ごすはずもなく。そして肝心の日天はリカにぬいぐるみのような扱いを受けていた。ちなみにその隣には逃げ切れなかった一之瀬の姿があった。
「あの、リカさんもマッサージ……」
「ウチにはダーリンと日天ちゃんが居ったらそれでええんや!もう一生こうしてたい~」
「え、えーっと……」
リカの相手を腕を組まれている一之瀬に押し付け日天は仕事に戻る。
「しかし、意外な繋がりがあったものだな」
「葦川とリカか、全然関係なさそうな二人だよな」
リカは頑として葦川との関係を語ろうとしなかった。だが『アレが日天ちゃんほったらかして地獄にはいかんやろ』と言い切った辺り奇妙な信頼関係があるのかもしれないと想像している。
「はい、壁山さん用のドリンクです」
「日天ちゃんありがとうッス!」
日天は選手の体調を整えるコンディショニングコーチとして全員に的確に専用のドリンクを用意している。
一例として壁山にはお茶に近いドリンクを用意し、栗松は柑橘類のフルーツベース。
「はい、木暮さん」
「お、おう……苦ああああああ!?」
木暮には何故か青汁ベース。脱兎の如き勢いで給水場に向かっていった。普段悪戯をする側の人間がやり返される様は一種のコントのような絵になっている。
「はい、鬼道さんで最後です」
「あれの後に渡されてもな……む、甘い」
「司令塔ですから頭動かしてもらわないと」
鬼道にはヨーグルト中心の糖分マシマシドリンク。円堂についてはドリンクよりもお茶とおにぎりが利く謎の身体バランスらしく一度作って微妙な顔をされて以来秋と夏未に全面的に任せている。
「円堂、少し外してもらえるか?」
「え?分かった」
「あの、鬼道さん?」
「奈良での時のことをまだ謝っていなかったな」
鬼道は日天に頭を下げた。奈良でのSPフィクサーズとの試合、狙ったはずはないにせよ鬼道のシュートがきっかけで危険をもたらしたのは事実だった。
「思い出した。葦川、数年前に放火によって死亡した愛媛の資産家だ。父と共に行ったパーティーで一度顔を合わせたことがある」
「ああ、それで……お兄ちゃん何も言わなかったから」
「パーティーに君はいなかった、幼かったんだろう」
「ですよね。私知り合いにそんな変な眼鏡の人いなかったから」
「これは眼鏡ではなくゴーグルだ」
鬼道としては何の気なしに言ったその言葉。
「ふ、ふふっ」
だが日天にはクリティカルヒットしたらしい。
「な、何だ?どうした?」
「だ、だって……そんな真顔で『ゴーグルだ』ってふくくく……」
いわゆる『シリアスな笑い』がツボに入ったようだ。
「いや、お兄ちゃんが言ってたんです。鬼道さんのこと眼鏡マントって、でもほんとはゴーグルマントふ、あはははははは」
今まで誰も気に留めなかった鬼道の服装に真っ向から指摘が入り、日天につられて笑い出す者も現れた
「おい、お前らー!」
本人は意識していないがこのやり取りの一環でどこか張りつめていた周囲の空気が和らいでいた。自然と『雷門の葦川日天』という認識が当たり前のようになっていた。
〜〜〜
ランド近くの身の丈に合わない立派なホテルで一夜を明かした次の日。杏は用意された部屋で一人悩んでいた。
「んーあー……どうしよ」
本来日帰りのつもりだったので着替えなど用意していなかった。だがわざわざホテルに二人分の部屋を用意してもらいチェックインし、深夜に星の使徒研究所に戻って一日分の着替えを持ちだした。
(あとで考えよ)
杏は低血圧だった。ドアがノックされると無警戒に鍵を開けてパジャマ姿で出るくらいには。
「あーい?」
「起きてる?」
「んー」
部屋を出ると創良はすでに待っていた。
「もうすぐ朝食だから」
「朝ごはん!分かった!」
その一言で杏の意識は急速に覚醒した。なにせ上述の面倒な手順を踏んでまでホテルに泊まった理由が夕食、朝食が豪華だという創良の言葉に乗せられてのことなのだから。
しかも夕食、朝食共にバイキング形式だった。でなければ一度研究所に戻って着替えを取って戻るなどと言う手間は掛けただろうか、いや掛けなかったに違いない。
「ご飯とパン。どっちもあるとか神かな?」
「泊まりの客も少ないから食い放題みたいな感じだな」
「食べ放題!?」
創良のその言葉に反応して杏は目を輝かせる。ちなみにだが昨夜ほぼ同じやり取りを交わしている。
「ああ~楽園。ここは壊さないように言おうっと」
「あまり食い意地張らない方がいいぞ。朝なんだから」
「別に、今日は走ったりしないし」
逆じゃないかと創良は思ったが杏は生まれてこの方カロリー計算などしたことがない。体力が必要なサッカーが主体の生活やその他諸々で体型の悩みを持ったことがない。
「いやだからこそ……まあいいか」
創良は自分が注意することでもないと判断して忠告に留めた。
「正午にチェックアウトするから荷物はそれまでにまとめといてくれ」
杏に予定を伝え創良は部屋へと戻る。その時、携帯が鳴った。電話越しでは初めてだが、最近では嫌でも見るようになった相手だった。
「もしもし」
『やあ葦川くん、首尾は上々かな?』
「用件だけ言ってくれ」
創良は研崎のことが気に入らなかった。子供と大人の違いが態度に現れている。それはいい、仕方のないことだ。だがそれとは別に、初めて研究所に来て以来、顔を合わせるたびに商品を品定めするような目つきで見てくることが不快だった。
『では、君が下見しようとしていた大阪の地下訓練場が雷門に発見されている』
「……成る程」
結果的に昨日の選択は正解だった。声には出さず安堵する。
「それで、イプシロンと雷門の試合は地下でやる。そういうことか」
『ご名答、期待しているよ』
通話が切れる。創良でいられる時間はしばらくは来ない。任された役割を演じる準備を始める。
そして正午になり、準備を整えて部屋を出た杏の前に貼り付けたようなアルカイックスマイルを携えた『彼』が立っていた。
「アンタのそのにやけた顔嫌い」
「助っ人宇宙人
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雷門が地下修練場での特訓を始めてから数日、全員が最高レベルの特訓を乗り越え、一気に強化されていた。
イプシロンの予告した再戦の当日。来るなら来いと万全のコンディションでコートに集合している。
「……!来たぞ皆!」
コートの中心が紫色の光を放ち全員の目を眩ませる。
「待たせたな雷門イレブンよ!」
かつて京都であった時と変わらず圧倒的な威圧感を放つデザームを初めとするイプシロンのメンバー。
「デザーム、今度は俺たちが勝つ!」
レベルアップした自分たちに自身を付けた雷門の面々は皆毅然とした態度で向かい合っていた。
「その意気や良し!受けて立とう!……だがその前にゲストが現れたようだ」
デザームの明らかに気分を害したような言いぶりから招かれざる客が訪れたといった感覚が伝わってくる。
次の瞬間、円堂は全身の毛が立つような寒気を背後から感じ、イレブンの全員が振り向く。
「え……?」
「まさか!?」
入り口の方向から歩いてくる。一人の男。イプシロンと同じユニフォームを纏い、コートへと一直線に向かってくる。
「どうも雷門中の皆々様方。俺はグクリ。
「おにい、ちゃん?」
その場の全員を混沌の渦に巻き込もうとする雷門対イプシロンの第二戦。その幕が開く。
白竜がイプシロンウェアを着た姿。合わない(確信)