イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜 作:S・G・E
創良と日天が円堂たちと別れてから一週間、叔父から家に泊まるよう勧められたがやんわりと断り、二人は近畿地方を転々と旅行していた。
今は大阪、知人の家に部屋を借りて生活している。
「お兄ちゃん。この新聞見た?『雷門中学、エイリア学園に劇的大勝利!』だって。凄いよねー」
「ああ、これで安心。と思うか?その号外の次の日の新聞だ」
創良が見せた新聞のスポーツ欄の記事には『エイリア学園の新たな刺客⁉︎謎深い宇宙人』と書かれた記事が載っていた。どうやらジェミニストームを倒しただけでは脅威が去ったとは言えないらしい。
「うへぇ~、まだあんな変な人たちがいるの?」
またしても日天は顔に似合わぬ毒舌を披露する。本人曰く悪意はないらしい。
「ま、俺たちは気にせずゆっくりしようか」
「ところがどっこいウチの店は休みが稼ぎ時や!」
扉を破ったかのように豪快な音とともにいかにも今時のギャルといった風貌の少女が現れる。
浦部リカ。浪花節が服を着て歩いているような性格でとある縁から二人が部屋を間借りしている家の一人娘だ。
「分かってますわよガングロちゃん」
「うっさいわキヤセ!男の癖して舞妓さんみたいな肌しよってからに!」
「いやそこまで白くねぇよ!?」
妹もいるとはいえ同年代の男が泊りがけで来てもリカは普段と何ら変わらない。古い馴染みとはいえこれが彼女らしさだ。
「ウチは練習言ってくるからお母ちゃんにはよろしく言うといてな!日天ちゃんまた後で遊ぼうな~」
「は?あーはいはい、いってらっしゃい。さて、肉体労働開始と」
現在創良は家に泊めてもらう代わりに有る条件を提示されていた。
「おはようさん創良君。もう最後やけど四日目で慣れてきた頃かいな?」
「ええ、やってみると楽しいものですね。お好み焼き屋」
浦部家の営むお好み焼き屋にアルバイターとして働くこと。中学生ということもあって最初は不慣れだった食材の仕込みや注文の受付も筋が良いらしく、三日もすればしっかりとこなせるようになっていた。
「うんうん、やっぱウチの旦那に似てるわ。リカももーちょい見る目があれば即口説いとるで!あ、ところでそのリカは?」
「ん?裏口から出て行ったんじゃないですか?」
「はぁ~今日は手伝い頼んでたのにしゃあないやっちゃで!」
心底困ったという顔をしながらチラチラと創良の方に視線を向ける。このやり取りは実は二回目だ。リカ曰く『助けてちょーだい』のサインらしい。
「お任せ、仕事納めなことだし二人分しっかり働きますよ」
「もぉーほんまにええ子やな創良君は~!リカも1%ぐらいこんな愛嬌があればなぁ」
「は、はは。じゃあ買い出しに行って来ます」
~~~
お好み焼き屋に関わらず、飲食店は正午と夜の二回にかけて一気に忙しくなる。
そして大阪といえばランキングトップ10に食い込むワード。そう『おばちゃん』である。現金、ひょうきん、がめつい、人それぞれにイメージはあるだろうが今重要なのは若いイケメンは連中に可愛がられるということだ。
「いらっしゃいませ〜」
「あ、君が噂のイケメン君か?」
「またどうぞー」
「また来るわな。あははは」
創良の噂は少しずつ広まっていき、更には一日目でこれは使えると思ったのかリカ達店の方から『超期間限定のイケメンアルバイター』として口コミを流していった。
リカはイヤイヤだったらしいが所属しているサッカーのチームメイトからその母親と倍々式に伝わっていき、近所のおばちゃんの団体が断続的に訪れるようになった。
「ただいま帰りました〜」
「何だリカ?早い帰りだな?」
時計が一周してから初めての来客は何とリカだった。
「お前目当ての客連れて来たったで。はい後よろしく」
「んあ何だって?」
非常に気怠そうにカウンター席に座ったリカ。開いたままの入り口の方へ振り向くとリカと同じユニフォームを着た女子が十数名。
「うそやろ?」
「あのリカの家にこんなイケメンが居候とか」
「天変地異の前触れやで」
「てかエプロン姿が板に着きすぎちゃうか?」
女子それぞれが創良をみて印象を口にしていく。あまりマイナス評価がないのは嬉しいが声に出されると流石に気恥ずかしくなり空気を変えようとする。
「取り敢えずどうぞ、入り口に立たれると困るから。んでそこの親不孝者は俺の可愛い可愛い妹に構ってやってくれ」
「やかましいわ。キヤセに言われんでも日天ちゃんで癒されるからな~!」
そう言ってリカは奥へと去っていった。残っているのは創良以外全員が女子だ。
「んで?リカと付き合うてるん君?」
「ないさ、昔からの友達だよ」
「はぁー。イケメンは対応も余裕やなーこっちの中学生はちょっとからかうとオロオロする奴ばっかやけど」
「なあなあ、あんた学校でもやっぱモテるんか?」
「そりゃもうそらもう下駄箱には大量の手紙があって『屋上に来てください』とか書いてあるハズですの」
「博美アンタちょっとセンス古ないか?」
「バレンタインとか時々本気の
「甲子のそれは変なリアルさがあるからやめえや!」
結局席に座ったくらいで女子の勢いは変わらず、完全に自分たちの世界に入っていった連中に創良は口を挟むタイミングを計りかねている。押せ押せの気持ちが強い女子が苦手というわけだはないが女子三人寄れば何とやら。
十人いればさらに何とやらだ。
「あんた達世間話もいいけど、ここお好み焼き屋なんやからなんか食っていきや?」
『「「「はーい!」」」』
助け舟を出したのは仕込みを終えて余裕が出来たリカの母だった。
(はぁ、何とか助かった)
その後も一般の客が多数入り店は嬉し涙、働き手には労働の汗が流れる一日となった。
「よっしゃ。夜の分はウチとリカで何とかなる、お疲れさん」
「え、いいんですか?」
「明日から京都に遊びに行くんやろ、今日はもうゆっくり休みや!」
休日夜は家族連れのサラリーマンが主流、昼間からの創良の疲れを見越してリカの母は気を利かせてくれたらしい。
「じゃあお言葉に甘えて。先に上がります」
エプロンを片付け部屋へと戻っていく創良。日天は言葉通りリカが面倒を見ていたようだ。
「お~終わったか?日天ちゃんは相変わらず寝付きの良い子やなぁ」
「そうか、ありがとう」
朝方の喧嘩は何だったのか日天を起こさないように落ち着いた会話が始まる。
『リカー!降りてきて手伝い頼むわー!』
「ましゃーないなぁ」
かと思えば店は大騒動らしい。観念してリカは出ることにした。
「居間とかの片づけはこっちでしておくよ」
「お任せしましたお大尽様~」
リカが片付けられない系女子であることはとっくに見抜かれていているようだ。
『こんなぎょうさん居るんならあいつも呼ぼうや!』
『言ってる暇あるなら材料仕込まんかい!』
店先から聞こえてくる声を聴いて創良は妙な安心感を抱いていた。
「……仲の良い親子だことで」
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「日天ーそろそろ起きろー。朝だぞ」
「んーはぁ『カァーン!カァーン』うわああ!?」
朝すんなりと起きられない日天だったが朝一番に起きていたリカがフライパンをおたまで鳴らしながら入ってきたことに驚き飛び上がったように目を醒ます。
「こいつを喰うてみいだっ!?味見してください」
初手からの言葉遣いの悪さを母から拳骨でたしなめられたリカが言うには自分が作った料理、それも鉄板焼きのアレンジを味見して欲しいということだ。
アレンジといっても見た目が変に変わってはいない。特に何か疑うこともなく、創良と日天はそれを口に運んだ。
「うん。まぁ、いいんじゃないか」
お世辞抜きの感想を求めていただろうリカに対して率直に創良は述べる。食材が喧嘩してるわけでもなく家庭料理のような味がする。店で出す味ではない気がすると。
「よっしゃ!その感想なら大成功や!あとは隠し味を試して……ふ、フフフフフ」
「こっちはおばちゃんからの門出祝いや!」
感想を聞き思考に没頭する彼女をよそにリカの母からは特大サイズのお好み焼きが振る舞われた。
「わーい!はむっ、……美味しい!」
「そんな門出なんて大げさな……上手い!?」
「予算無視して店じゃ出せない超豪華版やからな!しっかり食べてや!」
四日間に亘った浦部家での最後の食卓はゆっくりと進んでいった。
「色々お世話になりました。またいつか」
「ありがとうございましたー!」
「またな日天ちゃん。……なぁキヤセ、最近物騒なことがあるやろ?気ぃ付けや?」
「エイリア学園か?大丈夫だ。そんなにヤワじゃないよ」
「うん。ああそれと約束、今度会う時にサッカーで試合しよう。どや?」
唐突に言いだしたリカの約束。少しの間創良は迷ったがしっかりとリカと顔を合わせる。
「いつになるかな?」
口ではそう言いつつも創良とリカはしっかりと小指を交わした。
そうして葦川兄妹は旅行を続ける。最後の目的地、京都へと。
書き始めてからリカの母親の名前無いことに気付いた奇妙な難産回。こんなことで躓くとは…しかも関西弁は文字に起こし辛い、私関西人なのに。