イナズマイレブン 〜サッカーやりたくないのか?〜   作:S・G・E

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ようやく京都のストーリーへ。なのにあの子の出番が短く、何故だ……


6話 再会、奇縁

『あああーーーっ!』

 

 風情のある京の街。意図的に残されたものではあるだろうが関西といえば旅行最後の場所として最高の場所だ。

妙に聞き覚えのある叫び声がこだまするがそれもまた風景の一部として――

 

「ねぇ後ろ」

「ん?げ……」

 

 日天に言われて振り向くとこれまた見覚えのあるジャージの集団。

 

「葦川!お前葦川じゃないか!何で京都に?」

「雷門中とは、偶然ってある物だな。とりあえず久しぶり。そしておめでとう……はまだ早いらしいな」

「イプシロンのこともう知ってるんだな。あ、そうだ俺たちはそのことで来たんだよ!」

 

 円堂の言葉を要約するとジェミニストームの後に現れた新しいエイリア学園チーム、イプシロンが京都の隠れた名門校。漫遊寺中学に襲撃予告をしたらしく、雷門中はその漫遊寺中学を目指しているとのことだ。

 

「それでその漫遊寺中がどこにあるのかなんだけど……」

「漫遊寺中ならあれだよ、あの山にチラッと見えてるの」

 

 創良が指さす先には頭一つ高い山に少しだけ頭を出している寺。あれが漫遊寺の目印だ。

 

「成る程あれか!」

「ここを道なりだが、良ければ案内しよう」

「今回は随分と協力的だな」

 

 奈良で会った時と創良の雰囲気が違うことにいち早く気が付いた鬼道がそれを追求する。

 

「それはまあ、君達が悪人じゃないというのは分かったからな。観光目的だから寄り道へ行っても構わない」

「そっか。ありがとな葦川……うおおおおお!」

「あ、待ってほしいっすキャプテンー!」

 

 道が分かれば善は急げと言わんばかりに疾走する。

創良からすれば久し振りだが相も変わらずの熱血漢ぶりに安心かすら覚える。

 

「俺達はここで休憩だ。お先にどうぞ」

 

 円堂についていこうとした数人と創良と同じくゆっくりと歩こうとしている二組に分かれていたが階段のところで一旦全員と別れた創良と日天。

 

「……お兄ちゃん。やっぱりサッカーもう一度やってみたら?」

 

 二人だけになったところでようやく話せる話題を日天から振っていく。

 

「やるかやらないかは別として、俺にできるかな?」

「きっとやれるよ。だってお兄ちゃんサッカー好きでしょ?」

「それは…………?日天、ここで待っていろ」

 

 話を途中で打ち切り街中へ駆け出していく創良。というのも、見覚えのある姿が見えたからだ。

 

「え?お兄ちゃん⁉︎」

(あいつは……まさか)

 

 創良が見つけた男は他のものに目もくれず裏路地へ向かう。

 

「やはりそうだったか。なぜおまえがここにいる、レーゼ」

 

 創良が裏路地で対峙した相手は忘れもしない。エイリア学園ジェミニストームのリーダー。レーゼだった。創良と日天が散々に挑発した髪は下ろしているものの着ているユニフォームはそのままだった。

 

「レーゼ?それは、俺のこと…なのか?」

「は?何を言ってるんだ?」

「思い出せないんだ。自分のことも……何も……」

 

 一瞬開き直っているように見えた態度だが嘘を言っているようには感じられなかった。

 

「記憶喪失か?いやそんなまさか雷門に負けたショックとか……はさすがにないよな?」

 

 創良自身、直接エイリア学園と関わっていたたわけではない以上的確な判断は出来ない。

 

「一緒に来い。色々話はあるがまず合わせたい奴がいる」

 

 こんな時は雷門中(専門家)に限る。そう考えた創良は漫遊寺を目指して日天の居場所まで戻る。

 

「あ、お兄ちゃん……もしかしてその人あの抹茶ソフトさん?」

「抹茶ソフト?俺そんな変な髪型じゃないと思うけど……」

(抹茶ソフトで髪型を連想するということは無意識の反応か?)

 

 レーゼへの謎は深まるばかりだがここで立往生するわけにもいかない。何かのきっかけになるかもしれないと雷門のメンバーと合流することに決めた。

 

「じゃあ上がっていこうか」

 

 漫遊寺中への道のりは先が見えないまでの階段、階段、階段。体力のない日天は早々にギブアップした。

 

「疲れた〜お兄ちゃん抱っこー!」

「はいはい。お前は大丈夫か?」

「ああ、何ともない。それどころか不思議と体が軽い」

 

 時折レーゼを監視しつつ漫遊寺中のグラウンドに到着する。そこでは既に集合していた雷門中が漫遊寺中サッカー部と短時間の練習試合を行なっていた。

 

「キャプテン、あの人がいるッス」

「ん?お、来たな葦川!ところで後ろの人誰だ?」

 

 15分経過し前半終了の合図が鳴る。ベンチに戻っていく際に壁山が創良に気付き円堂に伝える。

 

「まさか……レーゼ⁉︎」

 

 一番に気付いたのはやはりというべきか鬼道だった。雷門の皆が身構え、染岡が創良に向かって食ってかかる。

 

「お前、何でそいつと一緒にいるんだ!」

「待て、どうも様子がおかしいんだ。話は後でする」

 

 皆レーゼを警戒しているが創良が前面に出て庇い、監視するということを説明し一先ずその場は落ち着いた。

 

(ん、そう言えばあの豪炎寺とかいうFWが居ないな?)

「なあ、どうしてあの人達……俺を時々見るんだ?」

「本当に、覚えていないんだな」

 

 試合は再開され、一進一退の攻防が繰り広げられる。塔子のドリブルがスライディングで止められ、スローインへ。

ボールは丁度レーゼの足元で止まった。

 

「パスしてみろ。あのゴーグルとマントの男に向かって軽くボールを蹴ればいい」

「お、俺が?」

 

 創良に勧められ、レーゼは覚束ない動きだがボールを鬼道にパスする。レーゼからのボールは予想外だった鬼道だが持ち前の反応速度でしっかりと受け止めた。

 

(理想的なコースだ……ナイスパス)

「出来た……」

 

 記憶が消えても身体が憶えている。パス一つだが、しっかりとレーゼはサッカーをした。

 

「〈ワイバーンクラッシュ〉!」

「〈火炎放射〉……ぬおっ⁉︎」

 

 試合終了目前、染岡にボールが繋がり、ジェミニストームとの決戦で編み出した必殺技がゴールポストに突き刺さった。そこでホイッスルが鳴り、1-0で雷門の勝利となった。

 

「善き試合でした。雷門の強さは本物のようだ」

「ありがとう。楽しい試合だった!それじゃ……」

 

 試合後の礼を終えてすぐに円堂達はレーゼの方へ向き直る。

剣呑な雰囲気を消すために橋渡し役を創良が務める。

 

「記憶喪失⁉︎」

「敗北して用済みとなったチーム、そのキャプテンが記憶喪失、偶然と思うのは無理があるだろう」

「ごめん……俺、そんな酷いことをしていたのに何も思い出せないんだ!」

 

 人から聞かされる己の罪というのは想像出来ないほどの苦しみだったらしく。頭を押さえて苦悶の表情を浮かべるレーゼ。

 

「キャプテン?」

「許せない……!サッカーで人を傷つけるだけじゃなく仲間まで傷つけるなんて!」

 

 円堂は怒っていた。レーゼにではなく、エイリア学園に大量の破壊活動を行い、使えないと判断されたならば仲間ですら平然と切り捨てるその在り方そのものに。

 

「レーゼ!これをやる」

「サッカーの、ボール?」

「いつかお前が、サッカーの本当の楽しさに気付いてくれたら。また一緒にサッカーやろうぜ!」

「……うん。いつか」

 

 今の円堂にレーゼの憎しみは無い。これが円堂守という男だと皆がその行動に納得する中、創良は戸惑いを必死に隠していた。

 

『捕まえたぞ木暮!』

「ん?何だ?」

 

漫遊寺の学生が背の低い同校生を取り押さえている場面だった。

 

「だから!ほんの少し借りただけだよ!」

「嘘を吐くな!お前がバスから出るところを見たんだ!」

「あの、どうしたんですか?」

「雷門の皆さん、木暮はあなた達のバスから秘伝書を盗み出そうとしたんです!」

「違うっつーの!」

 

 木暮と呼ばれた漫遊寺の生徒らしき少年と他の生徒が言い争いを繰り広げる。内容が内容だけに雷門メンバーも穏やかではいられない。その流れを絶ったのは創良。木暮が現実として手にしている秘伝書を強引に引ったくり、中身を確認する。

 

「君。DFか?」

「だれだよアンタ?」

 

 この中で最も中立に物事を量ることができたのは創良だった。その創良から見て木暮は泥棒には見えなかった。

 

「全てディフェンスに関わる技ばかりだ。ノート泥棒ならこんなことにこだわる必要ないだろう」

「試合に出たことない……でもDFが向いてるって言われたから」

「木暮君、あたしの言葉を信じて?」

 

 どうやらこの問題児、木暮と雷門のマネージャーの一人である音無と少し前からサッカーについての話をしていたらしい。その過程で今回の騒動が起きたのだろう。

 

「でもバスに勝手に入ったんだよな?それはどうなんだ?」

「それも問題ないぞ」

 

土門が口にした疑問に答えたのは運転手を務める雷門中のベテラン用務員、古株さん。その言葉によればキャラバンの中を掃除することを条件に秘伝書を借りる許可を木暮と約束していた。つまり木暮は完全に無罪ということだ。

 

「やっぱり信じたってこうなるんだ……」

「木暮君……疑ってごめ「うるさい!サッカーなんてこっちからお断りだ!」木暮君!あたし、謝ってきます!」

『「「「…………」」」』

 

周囲に気不味い空気が流れ、創良は勿論日天まで口を挟まないでいる。悲しい行き違いの一言では済ませられない後味の悪いことになってしまった。

だが、時間は待ってはくれない。頂上、漫遊寺校舎では誰が最初に気付いたかグラウンドに黒いボールが降り、着地と同時に紫色の光が溢れ出す。

 

「我らはエイリア学園ファーストランク、イプシロン。予告通り漫遊寺中学に勝負を申し込む」

 

遂に現れたエイリア学園の新たなチーム、イプシロン。

山間の名門校漫遊寺中学で新たな戦いの幕が開こうとしていた。




to be continued ……
みたいな終わり方がしたかった。
レーゼ関連の話はゲーム版を自分なりにアレンジしてみました。
木暮に関しては次話で何とかしたいところです。
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