ゆゆゆゆ辛いんですけどどうすればいいですかね?
「あなたでラストーーーッ!」
歌野は鞭を振るって最後のバーテックスを撃破する。
少し息を上がらせながら着地すると水都が駆け寄ってきた。
「お疲れ様、うたのん」
「ありがとう、みーちゃん。けど、私が戦っている時ぐらいは何処かで隠れててもいいんじゃないかしら?」
「けど……」
言い淀む水都に対し歌野は満面の笑みを浮かべた。
「まぁ、みーちゃん一人ぐらい守るからね!さぁーて、畑仕事の時間だわ!」
「こんなときでも畑仕事ってうたのんは本当に畑が好きなんだね」
「ええ!だって、畑を耕してるときは決まってそれが『日常』だもの!それを大切にしなきゃ駄目じゃない!!」
水都は歌野の在り方に対して感服する。
どれだけ辛くても、どれだけ苦しくても、決して後ろを振り返らない。前しか向かないその精神の強さがとても羨ましいと水都は感じた。
幼い頃から内気な性格だった水都にとって歌野は憧れだった。
「そうだね。私もそう思うよ」
「なら、みーちゃんも畑に魅了されるべきよ!」
「遠慮しておくかな。私、虫苦手だし」
「そっか。残念」
本当に悔しがる表情を浮かべる歌野。
「私、準備してから向かうね」
「オーケー!なら、シロのことお願いね」
「任せて、うたのん」
二人にはもう疑いというものがなかった。
それは、考えた末にではなく直感としてシロは安全だと、そう感じたのだ。
歌野は畑へ、水都は一度家へ向かい歩き出した。
何処かで、鈴の音が鳴った気がした。
これは夏の思い出と言わんばかりに。
それから、一年以上の時が経ったとき転機が訪れる。
いつも通りの違和感を伴って歌野は目を覚ました。そこを見ると大型犬ぐらいの大きさがあるバーテックスがいた。そのバーテックスは歌野の髪をガシガシと噛んでいる。
「おはよう、シロ」
重い瞼を擦りながら歌野は身を起こした。シロと会ってからかれこれ一年。ウサギ並みの大きさしかなかったシロはいつの間にか大型犬並みにまで成長していた。
そして、一番の変化と言えばーーー。
『オキロ、ミト、ヨブ』
片言で機械音を発しながら喋りだしたことだろうか。
「アンダースタン!なら、早くいかなきゃね!……ふぁ」
軽くあくびを漏らすとシロが首を傾ける。
『アンダースタン?イミ、ナニ』
「理解したってことよ。本当にシロは勤勉ね」
『リカイ、ウタノ、カンシャ』
「じゃあ、行きましょうか。早く行かないとみーちゃんが怒るわ」
シロが家に来たときと同じように早足で階段を降りる。
リビングの扉を開けるといつもの光景が広がっていた。
「おはよう、うたのん。シロも起こしてきてくれてありがとうね」
「おはよう、みーちゃん。あら、今日もおいしそうね」
「私とシロの力作だからね」
水都は威張るように言う。
歌野は苦笑いを漏らし、席についた。
「みーちゃん変わったよね」
「私が?」
「うん。シロが来てからなんか前向きになったっていうか……」
「そうかも。なら、シロに感謝しないとね」
そう言ってシロを撫でる手つきはもう慣れたものだった。
「みーちゃん。あとでノート買いにいきましょう」
シロが来てから始めた観察日記。その冊数も二桁を越えており、当初とは全く違ったバーテックスの認識を持つようになった。
水都はそれに頷く。
『フタリ、デカケル?』
「うん、シロはお留守番かな……。ごめんね、外に出してあげることが出来なくて」
『イイ、フタリ、イル、ソレ、ウレシイ』
その言葉に二人は目を輝かした。
「ふわぁぁぁ……!ねぇ、今の聞いた、うたのん!」
「ええ、シロは本当にイイ子ね」
水都は目を輝かせる。歌野も同じような反応を示した。
見た目はバーテックスだがもう一年以上同じ家に住んでいるのだ。故に愛着もわくのも必然。つまるところ、この二人はーーー。
「もうシロは本当に可愛いね。なんでバーテックスなんだろう?」
「ふっふっふ。この私は毎日シロに起こされる特権を持っているわ!!」
「それはだらしないだけなんじゃないかな?まぁ、私はシロと毎日ご飯作ったり掃除してるしうたのんにも負けてないよ」
「あら、みーちゃんも言うようになったじゃない。生憎、こっちには切り札としてシロの観察日記があるのよ!ラブはこちらのほうが上ね」
「あはは、うたのん。それ面白い冗談だね。私はうたのんよりも長い間シロと一緒にいるっていうのに」
「「シロはどっちのほうが好き(かな)!?」」
親(?)バカになってしまったのだ。二人がこのようになったのは約半年前。シロが少しずつだが喋れるようになった時期だった。
最初の頃はお互いがシロの良いところを言い合うと言うものだったがそれがヒートアップしこのような形になってしまったのだ。
『ケンカ、ダメ』
「「はい……」」
バーテックスに怒られる勇者と巫女は後世見てもあり得ないだろう。
すると、数秒後サイレンが鳴り響いた。
二人は勢いよく立ち上がる。
先程のことがなかったように二人は振る舞う。
「スクランブル!勇者白鳥歌野行ってきます!」
「気を付けてうたのん!今回はいつもより数が多いみたい!!」
「オーケー!シロ、いつも通りお留守番お願いね!!」
『フタリ、キヲツケテ』
二人はサッとシロの頭を撫でて玄関から飛び出した。
シロは窓際までより空を見上げる。
その空はーーーとても白かった。
「はあああああああっ!!」
勇者白鳥歌野は流れ込んでくるバーテックスたちに鞭を喰らわせていく。
滴る汗が地面を濡らすと苦悶の表情を浮かべる。
(今回は数が多いせいで手こずるわね……)
その思考は一瞬の隙を生んだ。
数体のバーテックスが歌野に襲い掛かる。鞭で迎撃するが一体だけ歌野の側を通り抜けていった。
「しまっーーー!」
しまったと言う前に気付いた。気づいてしまった。
まだ齢5才ぐらいの女の子が木の陰に隠れていることに。
そして、遠くから叫び声。おそらく母親のだろう。
(まずいわ!ここであいつを追ったら一気にバーテックスが流れ込んでくる!…しかも、この距離じゃ!!)
歌野の思考をよそにそのバーテックスは女の子の前で大きく口を開き、幼い体を噛み千切るーーーことはなくガチンと空を切った。
そこには女の子の服の裾を噛んで、浮いているバーテックスがいた。
異常なのはその大きさ。明らかに小さい。
それに気付くと歌野は攻撃を開始する。
鞭が縦横無尽に駆け巡り数が一気に減っていく。
そして、一瞬の隙に流れ込んだバーテックスを始末する。
「シロ!ナイスタイミングね!!その子をお願い!!」
『マカセロ』
小さいバーテックスーーーシロは女の子を母親の方へと届けにいく。
母親は最初恐怖の表情を浮かべたが次第に敵意がないことに気づき娘を抱き締めた。
「負けてられないわね!!なんていってもこのショーの主役は私なんだから!!!」
歌野は一層と気合いをいれて、腕を振るう。
守るべきものがあるのだから。
それから数時間後。
死亡者、重軽傷者なしというとてもよい結果で歌野はバーテックスの襲撃を退けた。
だが、それで終わりではなかった。
歌野は本社で祈りを捧げ結界を強固にしていた水都、そしてシロと共に壇上に立たされていた。
それを目にする観衆の眼差しは恐怖や憎悪。あまり良いものとは言えない。
諏訪においてもっとも権力のある老人が口を開く。
「それでソイツはどういうことだ?」
「この子は……バーテックスです。一年前、畑付近で見つけ、攻撃力の低さを省みて観察していました」
「つまり、勇者である白鳥歌野はバーテックスを飼っていたと?巫女の藤守水都と共に」
「そう、なります……」
何も否定することなく歌野は事実を口にする。
すると、壇下にいる民衆から暴言が飛び交った。
理由は簡単。日常を、希望を奪った敵を飼うことが許されないからだ。
歌野と水都は何も言い返すことはできない。 けれど、それではなにも変わらない。歌野は意を決して自信の思いを伝える。
「けど、この子は!シロはバーテックスだけれども人を愛しています!!シロは危害を加えないと公言しています!!!なら、シロに歩みより、バーテックスを知る方が先決ではないでしょうか!!?」
「煩い!所詮は化物の戯れ言だ!!早く始末しろ!!それが勇者の役目だろう!!!」
その声に賛同するようにほかのところからも声が上がる。
『恥さらし』『出ていけ』『勇者だからって』などなど、酷いものばかりだった。
そう言うのは家族をバーテックスに殺された人たち、憎しみをただぶつけている。
すると、小さな足音が壇上に届いた。皆も同じらしくそこへ声を向けると歌野と水都を糾弾していた老人が目を見開く。
バーテックスに近付く女の子に向かって叫ぶ。
「おい、戻ってきなさい!!そいつはバーテックスだぞ!!!」
老人の叫び声はそこに届くが女の子は気にしせず歩く。
そして、一言。満面の笑顔で言った。
「ありがとう、シロ!!」
『キニスルナ』
あのときシロが助けた女の子がお礼を言った。
そして、始めて聞くシロの声に皆が驚く。そして、続いてゆっくりとした足音が聞こえてきた。
女の子の母親だった。母親もまたシロの前に立ち腰を曲げる。
「娘を助けていただき、ありがとうございます。ーーーお爺ちゃん、確かにこの子はバーテックスです。私の最愛の人を、娘の父親を殺したバーテックスかもしれません……。けれど、娘を助けてくれたんです!!バーテックスではなくシロというバーテックスを信じてみませんか!?」
彼女もまたシロという存在がどのようなものか、どういった影響を与えるか本能的に感じ取ったのかもしれない。
そして、彼女は知っている。ここが、諏訪という地域がそう長くないことも。
持って1年、勇者ではない彼女ですらそう思ってる。勇者である歌野にとっては余計にそうだ。
だからこそ確変を、変化を求め何か打開する手を模索できる強さがあった。
愛する人を殺されても、愛する娘を守りたいがため、憎き相手を信じることにまで至るのだ。
そして、娘と孫のその様子に老人はほかの皆と話し合いをすることになった。
結論が出るまで数日かかるらしい、なのでそれまで二人はシロと共に謹慎処分を受けることになった。
二人は、どんよりとした空気ーーーではなく帰った瞬間嬉しげな表情でシロを抱き締めた。
「シロ、貴方は正しいことをした。とても誇りに思うわ」
「うたのんの言う通りだよ。シロが人を愛してるって改めて知れて私は嬉しいよ」
『ケド』
いい淀むシロに歌野は笑って言った。
「大丈夫よ。誰も貴方を責めやしないわ」
結局数日後にでた結論は、歌野が常に側にいることで決定した。
余談だが家を出た理由は何か嫌な予感がしたからだそうだ。
そして、バーテックスを受け入れる若い人とバーテックスを受け入れない老いた人とで意見が別れたらしいがシロが子供を助けたと言う実績と言葉を伝達できると言う点を踏まえることによって歌野が常に側にいるということに帰結したらしい。
それから日が立っていく内にシロという存在は皆に受け入れられるようになってきた。
疑惑に固まりはカビのように張り付きはするが、少しずつだが変化が訪れていた。
それから、約一年後、悲劇は起こる。
歌野は自室でペンを握ってノートに走らしていた。
2018年 8月11日
今日、やっと長老がシロと会談してくれました。バーテックスについての知識を増やすことが出来たのは行幸といえるでしょう。
日に日にシロについて書くことがなくなってきました。難しいものです。
あ、あとシロが子供たちと最近仲良くなって外で遊んでいます。いつもみーちゃんと眺めていますが微笑ましい限りです。
まるで親子みたいだなと自分でも感じてしまいつい口に出してしまいました。そのときのみーちゃんったらすごく可愛くて!!
……失礼しました。勇者、白鳥歌野の観察日記はこれで終わります。
ーーーあっ、乃木さんにも言っとかないと。
8/11 23:22 白鳥歌野
パタンとノートを閉じ、歌野は伸びをするとベッドの方から声がかかってきた。
「終わったの、うたのん?」
「えぇ。けど、最近は書くことがナッシングで大変だわ。たまにはみーちゃんも書いてみたらいいんじゃないかしら?」
「あはは。多分、家事関係のことしか書けないな」
「ーーーねぇ、みーちゃん。何か隠してるでしょ」
「……うたのんは鋭いね」
歌野と水都はいつからか一緒に寝るようになっていた。側にはシロが寝ており、寝息(?)をたてている。
ベッドに潜り込んで歌野は水都の手を握った。
「信託がね、降りたの」
「うん」
「今までのお陰で四国はバーテックスから身を守る術を手に入れた。お役目はおしまいだって」
つまり、勇者は終わりを迎えた。
勇者、白鳥歌野は生け贄だったのだ。諏訪は単なる囮で四国が本命だということを知らされたのだ。
「それでね、明日バーテックスの進行が始まるの。それも今までの比じゃないぐらい」
「うん」
「うたのんは怖くないの……!皆を精一杯守ってきて!頑張って傷付いて!!それを、切り捨てられるんだよ!?死んじゃうんだよ!!?」
歌野は先程までの笑みの表情を崩し、恐怖の表情を浮かべた。
水都は今までにない歌野を見て驚く。
「怖いよ……。すっごく怖い。本当は今すぐに逃げ出したい。死にたくないって叫んで背を向けて逃げ出したい」
「ならっ!!」
「けど、私が、私たちが今まで繋いできたバトンは無駄じゃなかった」
歌野は、凛とした表情で答える。
「みーちゃんに会えて、シロに会えて、乃木さん、諏訪の皆にも出会えた。例え、死んじゃってもその幸福は忘れない。私の思いが、希望が、願いが、ーーー勇気のバトンがあるの。切り捨てられても、バトンは繋がっていく。けど、安心して。そう簡単に死なないから。寧ろ、エネミーを撃退しちゃうんだから!!」
「ほんとにうたのんには叶わないな……。ねぇ、うたのん。聞いてほしいの」
「うん」
「私ね、夢ができたの。うたのんに憧れた私が誇れる夢。何も取り柄がなかった私が持てた夢」
「うん」
「私、配達屋さんになるよ。それでうたのんが作った野菜を皆に届けるの」
「うんうん!!」
「最初はケンカばっかりなんだけどね、後からは阿吽の呼吸で働くの!そして、私が野菜を世界中に届けるんだ」
「世界!?ワールドなの!!?」
「それで、皆がうたのんの作った野菜を食べて笑顔になるんだ。裕福な人も、貧乏な人も、苦しい人も、全員」
「うん」
「だからね、うたのん……。『生きて』。私"たち"が待ってるから」
「……ありがとう、みーちゃん」
歌野は優しく水都の頭を撫でる。
それから、二人は最後になるかもしれない夜を過ごした。
そして、絶望が始まる。
「朝からサイレンを鳴らすクレイジーな方々を懲らしめてきます!」
「うん、頑張ってねうたのん」
『ワレモイク』
「あはは、シロのその古風なしゃべり方ほんとにユーモラスね!!けど、とっても頼もしいわ」
歌野は水都を抱き締めた。
水都は胸元に顔を沈める。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
ただそれだけで二人は十分だった。
歌野が駆け出した後ろ姿を追おうとしたシロを水都は呼び止める。
「信じてる。だから、お願い」
その意味をシロは深く理解した。
だからこそ、シロは答える。
『マカセロ』と。
「流石に……はぁ……はぁ……きっついわね……。シロ!攪乱!!」
歌野は滴る汗と家を気にも止めずシロに攪乱するように指示する。
シロは持ち前のスピードでバーテックスたちの注意を引き、歌野が間髪入れずに鞭を振るった。
「はああああああああっ!!!」
肉が抉られる。血が吹き出す。今にも倒れそうだった。そして、そんなときに水都の顔が思い浮かぶ。
だったらと、一歩を踏み出す。
「ならっ!倒れるわけには行かない!!!待ってくれてる人がいるから!!!」
バーテックスの猛攻を一人で、いや、シロと共に立ち向かう歌野は雄叫びをあげる。帰るんだーーーっ!守るんだーーーっ!と心の雄叫びを。
だが、現実は非常であった。
「ぐああっ!!」
一体のバーテックスが歌野の横腹を噛み千切った。視覚から一気に接近され、やられた。
全身に駆け巡る激痛に体の機能が一瞬だけ止まる。ーーー敵にとってそれは十分だった。
バーテックスが歌野に群がる。時々血飛沫がバーテックスらを汚す。
シロは、生まれて始めて叫んだ。
『歌野!!!』
わずかな隙間から入り込みシロは歌野を奪還した。バーテックスらはもう歌野に対し何も仕掛けずにただ前進し始めた。
仕留めたと確信しているからだ。
シロは改めて歌野の体を眺める。
噛み千切られた横腹とお腹に開く大きな穴。そこから血液が止めどなく溢れて切れ内蔵もぐちゃぐちゃになっていた。
口許から血を流す歌野の左目は抉り取られ左腕も遠くに放置されていた。
歌野の浅い呼吸に対し、まだ生きていると知ったシロに追随するかのように悲劇が舞い降りる。
「嫌、嫌あああああああああっ!!」
遠くから聞こえる慣れ親しんだ声。シロは駆け出した。最大速力で、慣れ親しんだ声の主、水都のところへと。
群がるバーテックスらの隙間の先に赤色の巫女服を着た、いや、血で赤色に染め上げられている水都の姿があった。
歌野と同じように奪還された水都に対しバーテックスらは反応を示さない。
水都を抱え、歌野の所へと行く。
二人とも同じような姿だった。
『歌野……水都……』
「……ぃ……ぁ……。み……ゃん……」
「……ぅ……ん……」
二人は掠れる声で小さな力を振り絞り、手を握った。まるでお互いの存在を確めるかのように。
「し……ろ…」
『歌野…』
「たん…ょ…ぉ…」
『水都…』
歌野と水都はシロを呼んだ。
最後の言葉を伝えたかったから、二人は消え行く灯火を精一杯に引き寄せた。
二人が言った内容はこうだ。
「誕生日おめでとう、シロ。貴方の誕生日を私たちは見つけた日にしたわ」
「それでね、実はプレゼントがあるの。私たちが昨日の夜にね、いろいろと畑とかに細工をしてきたんだ。そして、私たちが貴方を見つけた木の根もとにプレゼントがあるの。それを使ってほしいな」
二人は涙をツーッと流して言った。
ーーー愛してる
と。
それっきり二人は動かなくなった。シロは何も言わず出会った場所に向かう。そこには一つのラッピングされた袋があった。
シロは器用に開けて中身を確認する。
『コレハ…種?………………。』
中身は種だった。そして、これは二人の願い。この種を使ってほしい。私たちがいるって思えるから。そういうことなのだろう。
シロは再び二人の所へと向かう。穏やかな笑みに白くなった体。
二人の顔をそっと頭でこすりつける。ーーーそして、二人を喰らい始める。
わからない、けれど、こうすべきだとシロは思った。だが、これがどういう感情なのかよくわからない。
そして、理解する。
これが悲しいことなんだと。
二人の体を喰らいし尽くしたシロに変化が訪れた。これは進化だ。
巫女と勇者を食らったシロのみに許された進化。
薄れゆく意識のなかシロは強く願う。
これほどまでに苦しいことなら、この記憶がなくなりますようにと。
そして、目を閉じる。不幸にもその願いが叶うこととは知らずに。不幸にも造反神に目をつけられ人類を蹂躙するという意識をインプットされているということにも。
それから、幾ばかりかの時が流れた。
我が目覚めたときそこは【火の海】だった。
本当は水都が絶叫するシーンを細かくやりたかったんですけどそれすると私が辛みで死ぬのでやめました。
次回からは日常パートです!友奈?あっ、元気っすよきっと(震え声)
アニメでも辛い目に遭って私のこの作品でも辛い目に遭って可愛そうなんで誰か友奈救済小説書いてください。