バーテックスは敵である   作:日々はじめ

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楠芽吹は勇者であるの登場人物が出ますが少しだけなので!亜弥ちゃん好き!(直球)


第11話 危険な快楽

 「へぇー、夏凜ちゃんって一人でバーテックスを倒したんだ!!」

 「ふふん、まぁね!まぁ、その時は友奈は入院してたらしいじゃない。私の雄姿を見せられなくて残念ね」

 

 部室で夏凜ちゃんの話を聞くに私が入院しているときに大赦から派遣された勇者だということ。訓練もしっかりと行われておりバーテックスには遅れを取らないということを知った。

 (じゃあ、あの時助けに来てよ)

 心の中で友奈は悪態を付くと直ぐに自分の愚かさに気付く。

 (ううん、夏凜ちゃんの勇者システムはその時はまだ不完全で調整のため戦えなかったって聞いたんだ、しっかりしろ!私!!)

 誰にも気づかれないように深呼吸をする。

 最近、私は変だ。

 元気一杯が取り柄の私なのに何故か皆に嫉妬?ううん、何か嫌な感じを抱いてしまう。

 そして、それが口に出てしまうのでなおたちが悪い。

 

 「あはは、けど次はしっかりと目に焼き付けるから!お願いね、夏凜ちゃん!!」

 「まっ、任せなさいよ!!」

 「おやおやおや~?もしかして照れてるのかしら、夏凜ちゃ~ん」

 「うっさいわよ風!!」

 「お姉ちゃん!!すみません、夏凜さん、うちの姉が……」

 「……まぁ、いいわ。じゃあ、私は帰るから」

 「あら、もう帰るの?」

 「まぁね。私は完成型勇者なのよ。貴女たちと違って暇じゃないの」 

 

 そう言って夏凜ちゃんは部室から出ていきました。私もまた夏凜ちゃんと同じく家に帰りたいけれどこれから迷子の猫ちゃんを探しにいかなくては行けません。

 

 「まぁ、夏凜のことはおいおいってことね。じゃあ、早速だけど勇者部出動よ!!」

 「「「おー!!!」」」

 

 ーーーあぁ、早く終わらないかなぁ……。

 

 場所は変わって目撃証言があった公園に来ています。

 即席の歌を口に出しながら茂みを探しますが一行に見つかる気配はありません。

 

 「ねこちゃ~ん、出ておいで~」

 「ちょっと樹。猫語で呼んでみてよ」

 「えっ!?……にゃ、にゃーんにゃーん」

 「くっ!写真を撮りたいけれどこの動かない足のせいで!!」

 

 東郷さんが何か喚いていますが私は気にしません。気にする必要なんてないから。

 すると、茂みの奥に目的の猫がいました。

 手を差し伸べます。

 

 「ほら、早くこっちにおいで。……ほら早く、早く!!」

 

 一行に来る気配がなかったので大声で怒鳴ってしまった。そこでハッとなる。

 

 「どうしたのよ、友奈」

 「いや、猫ちゃんがいて早く誰か手伝ってくれないかな~、なんて。あはは」

 「呼ぶにしても別の方法があるでしょうよ。そんな大声じゃ逆に逃げちゃうわよ……。って、わっ!」

 

 私が頭をかいて謝ると風先輩の胸にその猫が飛び込んでいきました。

 どうやら怯えています。

 けど、それよりも依頼は達成しました。別に依頼が達成出きるならどんな方法を使ってでも……。それが勇者なんだから。そうだ、勇者なんだもん、人一倍頑張ってるだもん、……じゃあ、なんで皆は、親は、クラスメートは、先生は笑って過ごしてるの?勇者じゃないから?そうだ、それだ。勇者じゃないだもん、けど私は勇者、皆より上にいる。命令が出来る。支配できる。なんで笑って過ごしていられるの。私は痛い思いをしてるのに。なんでなんでなんで……。意味がわからない、なんでなんでなんで……。

 

 

 「友奈ちゃん、大丈夫?」

 「……うん。ごめんね、東郷さん。少し考え事してた」

 「本当に大丈夫?この頃友奈変よ?」

 「……大丈夫です。すみません!!私、家に帰りますね!!」

 「あっ、ちょっと!友奈っ!」

 

 風先輩が私を呼び止めるけど足を動かす。多分、今の私は笑ってるんだと思う。醜悪に、勇者というステータスを思う存分利用しようと考えてる。

 小さく笑いが込み上げてきた。わからない、わからない、わからない。

 おかしい、私は誰?私はこんなことしない。私は私は私は……。

 気が付くと家にいた。玄関を開けて家にはいると両親の声が耳に届く。

 

 「おかえり、友奈。ご飯は」

 「ただいま、あと、ご飯はいらないかな」

 

 そう言って駆け足で階段を上って自室へと入る。

 

 「……最近、友奈変じゃないかしら?」

 「大変なお役目があるんだ、私たちには想像もできない苦労があるんだろう。だから、見守ってあげよう」

 「そう、ね。けど、心配だわ」

 

 

 

 

 

 「はっ……!はっ……!なんで私、あんな事考えて!!」

 

 友奈は苦しそうに胸を押さえる。変な汗が吹き出し、体温が上昇していく感じがした。

 心が辛い。体が痛い。涙が出てくる。

 

 ーーーなんで貴女だけが痛い目を見るの?

 勇者だから。私は、讃州中学勇者部、結城友奈だから!!

 

 ーーー勇者だから痛い目を見なきゃいけないの?それを受け入れなくちゃいけないの?

 そう。勇者部は勇んで人のためになることをする。そういうものだから!!

 

 ーーー憎いと思わないの?無垢な少女だからって勇者に勝手に選ばれて死にに行ったりして。

 勇者だから。それは仕方のないことなんだ。

 

 ーーー辛いでしょう?逃げたいでしょう?

 ゆ、勇者部五箇条一つ!成せば大抵何とかなる!

 

 ーーー心が辛いでしょ?体が痛いでしょ?

 ……あ。

 

 ーーー痛い、苦しい。

 逃げたい……。

 

 「あは、あはははは……」

 

 私は乾いた笑いを溢す。 

 今、私に語りかけてきたのは私だ。心の奥底に眠る本心の私。

 表面上は取り繕っているけれど痛いのは嫌だ。苦しいのも嫌いだ。そして、それを知らずに日常をのうのうと過ごす皆がーーー大嫌いだ。

 友奈は唇を噛み締めた。

 すると、チャイムがなった。玄関の方へ行くと白いお面をつけた女性が居て、無機質な声で言った。

 

 「結城友奈様。貴女に信託が降りました」

 

 その日を境に結城友奈は勇者部の前から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友奈は今壁の外にいる。数日前に大赦のほうからこの世界の真実というのを知らされた。

 本当の世界はもうとっくの前に滅んでいたのだ。

 そして、私に下ったお役目。それは、外の調査のサポートだという。

 【防人】という勇者の素質がありながらも勇者になれなかった人たちとともに赤色に染まる世界を目に納める。

 化け物が闊歩し、それが襲いかかってくる。防人は勇者に比べ戦闘能力が格段に落ちるため馴れるまで私がサポートにつくらしい。

 そして、その時出会った巫女の国土亜弥ちゃんにこう言われた。

 

 「道を見失わないでください、勇者様。貴女の思い、貴女の勇者としての素質の根元は貴女自身なのです」

 

 最初は何を言われているのか理解できなかったが徐々にその言葉の意図に気付く。

 大赦は友奈の変化を知っている、それに加え原因も知っているということなのだ。

 だから、巫女の存在を私にぶつけた。確かに、このような可愛らしい女の子に諌められては格好もつかないし考えさせられる。

 だが、何を言われようが今の友奈の考えは頑固足るものとして形成されていた。

 そして、これは調査が終わって帰っているときである。

 完全体のバーテックスが一体出現した。防人のリーダーは直ぐに撤退指示を出した。私は殿を努めて、避難に助力する。

 撤退が完全に完了すると4人の勇者が姿を表した。

 数日ぶりだが皆の顔の表情は変わっていた。多分、夏凜ちゃんとうまく言ったのだろう。

 友奈は勇者部の方へと合流する。

 

 「風先輩、お久しぶりです」

 「ゆ、友奈!?アンタどこに行ってたのよ!!皆心配したのよっ!」

 「そうですよ、友奈さん。特に、東郷先輩が大変で……」

 「あはは、ごめんね。ちょっと大赦のほうからお願い事をされていて」

 「怪我とか大丈夫?」

 「うん。大丈夫だよ、東郷さん。左手だけでも戦えるから!」

 「そう。じゃあ、友奈私の活躍を見ていなさい!!」

 

 そう言って夏凜は両手に剣を携えて駆け出した。その剣を振るう度にバーテックスに傷がついていく。

 圧倒的技量だった。

 そして、皆でサポートし合いながらそのバーテックスの御霊を封印することに成功した。 

 回りが光に包まれる。

 

 「じゃあ、友奈。あとで話を聞かせてもらうわよ」

 

 風の言葉に友奈は苦笑いを浮かべながら頷いた。そして、呆れる。

 この世界の真実を知るものだけがこの戦いの無意味さを実感するから。バーテックスは封印しても意味をなさない。何度も何体でも産み出されるからだ。

 だから、その真実を知らない勇者部の面々を見て失笑と呆れが出てくる。

 

 そして、友奈を残して勇者部は姿を消した。本来、勇者はバーテックスが出現したときに自動的に決壊の中へワープする仕組みなのだが友奈は自ら結界の外へ出ているため歩いて帰るのを余儀なくされた。

 そこで友奈は一つあることを思い出した。

 最初の戦闘時、原初のバーテックス擬きの戦いの後に見えた小さな家らしきもの。そこへ向かうため友奈は記憶を便りにそこへ向かった。

 歩いて数十分。神樹の結界の中に畑と家があるのを見つけ友奈は呆気に取られる。

 

 「ここは……畑?それに家もある。誰かが住んでる……?」

 

 尽きない疑問に友奈は意識を傾けるばかりに油断していた。後ろから声をかけられてビクッと肩を跳ね上がらせる。

 

 『友奈……?イヤ、人違イか』

 

 その声は機械のようなものだった。友奈は額に汗を浮かべる。頭のなかは混乱していた。

 後ろにいても正体がわかった。

 ゆっくりと振り替える。

 そして、目を見開いて驚いた。

 そこにはーーー麦わら帽子をかぶり、篭に大量の野菜をいれて首にタオルを巻いている原初のバーテックがいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に大きく歪んだ大橋が目に入った。と、同時にいつもの場所ではないことに東郷三森は気付く。

 いつもの学校の屋上ではない。風と樹、夏凜もまた辺りをキョロキョロと見回していた。

 すると、マイペースな声が耳に届く。

 

 「わっしー、やっと来てくれた。先輩たちも」

 

 声が聞こえた方へと4人は向かう。誰一人として声を発しない。この異常事態に皆が混乱しているのだ。

 そして、そこへ向かうとベッドがあった。ベッドには一人の女の子が包帯をぐるぐる巻きにして横たわっている。

 そして、風と樹、東郷はそのベッドに腰かけている女の子に驚きの声をあげた。

 

 「銀!?」

 

 銀はなにも言わずこちらを見るばかりだった。まるで、今からこの女の子が喋るから静かにしてほしいと言わんばかりのものだった。

 

 「もう、ミノさんだけわっしーに名前呼んで貰うのはずるいなぁ。あっ、今は東郷さんか」

 「えっと……東郷の知り合い?」

 「いいえ、違います」

 

 東郷がそう言い切るとその女の子は悲しそうな表情を浮かべた。そして、その表情に見覚えがあった。かつて、銀と最初に出会ったときの彼女の表情と一緒だと。

 

 「お姉ちゃん…」

 「大丈夫よ、樹。すみません、貴女は?」

 「私の名前は乃木園子。まぁ、いわば貴女たちの先輩かな」

 

 乃木園子という名前を聞いて一番ビックリしたのは勇者部につい最近慣れてきた三好夏凜だった。

 

 「乃木園子……っ!あの伝説の??!」

 「知っているの、夏凜?」

 「えぇ、大赦で鍛練していたときに噂で聞いたことがあるわ。今までの勇者のなかで最強と名高いってね。けど、まさかこんなことって……」

 「あはは~。今、私の体は神樹様と似たようなものなんだ~。だから、ここに皆を呼んだの。お願いがあってね」

 「そのお願いっていうのは?」

 「原初のバーテックを撃ち取ってほしいの」

 

 その言葉に全員が驚愕した。原初のバーテック、風と樹と友奈は紛い物と戦ったがその力はとても恐ろしいものだった。

 オリジナルとなるとどれぐらいの強さになるか想像もしたくない。

 

 「原初のバーテックってあのっ!?勇者システムが最初にできたときの最優の勇者ですら敵わなかったていう!」

 「うん、その原初のバーテック。前、精霊が働かなかったときがあったでしょ?その原因が原初のバーテックにあるみたいなんだ~。だから、今後のことも考えて今のうちに手を打っておきたいってのが大赦の意向なんだ」

 「けど、今の私たちじゃ……。って、友奈ちゃんは!?」

 「今ごろ気付いたの東郷!?」

 「その子にも関係のある話。まず、原初のバーテックは本当に強いよ。私が戦ってどっこいどっこいって感じかな。う~ん、ちょっと私が不利かな。まぁ、こんな体だしね。そこで原初のバーテックをよく知っている人に弱点とか攻撃手段とかを教えてもらってそれを活用して戦ってほしいの」

 「友奈ちゃんにも関係のある話……?そして、原初のバーテックをよく知る人って銀の事かしら」

 「あぁ、その通りだ。と、言っても私は大赦のほうからあまり動けないからここで出きる限り伝える。だから、手を出すなよ」

 

 銀は東郷たちの後ろを睨み付ける。振り向くと大赦の神官たちがひれ伏した。

 だが、その敬意は全くもって銀に向かれていないにはすぐにわかり、園子のみが崇められていることに誰もが気付いた。

 

 「私は勇者だった。けど、それは昔の話。今は、最強の勇者の乃木園子のそばにいてただ日々を過ごすか弱い女の子さ」

 「……生身で人間3人をフルボッコにした女の子の台詞かしら」

 

 風は合宿の時に友奈、樹、自分とで戦って返り討ちになったことを思い出す。

 銀は少し顔を赤らめた。

 

 「おぉ~、恥ずかしがるミノさん!打点高いよぉ~!!」

 「意味がわからないぞ!……ごほん、まぁ、私が園子と一緒にいる理由。それは監視なんだ」

 「監視……?勇者なら戦わせた方がいいんじゃないの?」

 「三森の言う通りだ。けど、それは出来ない。大赦は私を恐れている。何を仕出かすかわからないんだとさ」

 「その恐れる理由って……」

 

 樹が控えめに問う。

 銀は困り下に言い放った。

 

 「原初のバーテックはアタシの師匠。んで、アタシが弟子。それが理由かな、多分」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「ええええええええーーーー!!!」」」」

 

 

 勇者部の驚きの声が響いた。

 そして、心のなかでこう思う。

 どう考えても理由はそれじゃん!と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えぇー!銀ちゃんが弟子ぃー?!」

 『そこマデ驚クか。トイウカ、何故馴染む』

 「わかりません!なんか、ここにいると落ち着くっていうかなんというか……」

 『確か、精霊を憑依サセたんダな?』

 「はい!……私の名前を知っていたり、精霊を憑依させたりよく知っているんですね」

 

 友奈は原初のバーテックの住みかでコーヒーを飲んでいた。

 最初は戦闘体制に入ったのだがその風貌のせいかそれが削がれてしまった。また、原初のバーテックも畑のあるところで問題を起こしたくないらしくこうやって家に招きいれたのだ。

 また、友奈が落ち着くと言った理由はここでは穢れが振り払われているということに帰結する。

 嫌な感じを抱かない、故に、冷静な判断を下せることが出きる。だからか、ここに来て数分後、自身の愚かさに愕然とし、震えが止まらなず意識を失いかけた。そこに救いの手を差しのべてくれたのがこの原初のバーテックというわけだ。

 自身のことを放す原初のバーテックを見て、友奈は敵意と言うものをまったくもって抱かなかった。

 すると、原初のバーテックが突如一つの話をしてあげると言った。

 昔々の勇者の話。友奈は笑顔でそれを聞きたいと言った。

 だが、そのとき誰もが思いもしなかった。原初のバーテックは最早中立ではなく、バーテック側に位置していると。その話によって結城友奈が変わってしまうと。

 

 『デは、話そウか。コレハ一人の勇者の悲シい物語。その勇者の名はーーー郡千景と言った』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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