バーテックスは敵である   作:日々はじめ

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原初のバーテックスは人の形をしているだけで決して髪とか生殖器とかはありません。
鎧を着た人間みたいと須美は言っていますがその鎧は化け物のような形をしています。
ので、男とか女とかそういう次元のレベルじゃないです。クトゥルフ神話にでてきそうな感じです。
さぁ、ダイスロール行ってみよう!!


第4話 ゆうしゃ

 警報と時が止まったのは同時だった。さっきまで活気溢れていたクラスだがそれはもう見る影もなく不気味にただ立っていた。

 それは、お役目の合図。

 私は席から立ち上がりそのっちに声を掛けた。

 

 「そのっち!!」

 「うん……!!行こう、わっしー!!」

 

 大赦から渡されたスマートフォンを片手に勇者へと変身する。

 もう何度も見た神樹の結界を眺めて、敵を見据える。

 そのっちと顔を見合わせてお互いに頷き武器を重ねた。

 

 「そのっち、絶対に生きて帰ろう」

 「当たり前だよ~。帰って私たちの武勇伝をミノさんに聞かせなきゃ!!」

 「えぇ、そうね」

 

 いつも通りの調子のそのっちに自然と笑みが溢れた。

 もうあのときは違う。切り札もある、皆を守れる力がある。

 だから、踏み出して一つの矢を放った。

 

 人は私たちを勇者といい。

 勇者は敵をバーテックスという。

 

 ■■■

 

 地響きが家を伝った。その衝撃でベッドで安らかに寝ていた三ノ輪銀は地面へと叩きつけられる。

 

 「なんだなんだ、地震か!?そうだったら避難だ、師匠水は持ったか?」

 『寝惚けているのか?ここは世界と隔絶された世界、そんな天災は有り得ない。ここまでいったらあとはわかるだろう、銀』

 「……敵が攻めてきたってことか。よし、じゃあこのニュー銀さんの出番って訳か」

 

 そう言って勇者に変身した銀は両手剣を力強く握りしめた。

 それをみて我は諫めようとしたが変な感じに教われた。

 長い間この神樹の結界で過ごしてきたせいかなのかわからないが何かを得ようとしていると。

 嫌な予感がするというのはこういうことだろうか。

 

 『銀、すぐに向かうぞ。我はバーテックスだから須美と園子の前には出ることができない。お前はまずそうだな……。二人になるべく見つからないように、そしてもし仮にこの世界の真実を知った勇者がいれば』

 「わかってる。師匠のもとへ、だろ?というか、なんで須美と園子の前に姿表しちゃいけないんだ?そろそろこの銀さんでも人肌が恋しいってもんよ」

 『あぁ、よくわかっているじゃないか。あと、その理由は話すと少し長くなる。そこはわかってくれ』

 「師匠が頭を下げるなんて……。まぁ、わかったなるべく見つからないように……ってこのローブ着ろって?なかなかに用意周到だな……」

 

 まさか死んだと思われている人間が目の前に現れたら流石に動揺するだろうしな……。

 だが、なんだ拭えない違和感は……。

 

 『銀、場所は』

 「ここから南東に約53.23km。アタシの足で大体20分ぐらいかな」

 『上出来だ、行くぞ』

 

 これも我が教えた技術だ。手を地面に当て僅かな振動を便りに場所を特定する技だが、やはりそこは勇者、この卓越した技術をすぐに習得した。

 神樹を走っていくなか銀が声を掛けてきた。

 

 「師匠、須美と園子がさやられそうだったら助けてやってくれよ」

 『ーーー興味が湧いたらな』

 「師匠らしい答えだ。けど、アタシは助けるからな。そのために強くなったんだ」

 『ハァ……。顔を見られなかったらいいぞ』

 「それが意味わからないんだよなぁ……。まぁ、師匠のコトだしなんか考えがあるだろうけどなぁーんか納得がいかないと言うか」

 『無駄話もここまでにするか、行くぞ』

 

 話すことをやめてスピードをあげる。風を切る音が心地好い。

 そして、向かう先に一際大きな力の存在を感じた。

 それと同時に神樹に異変が起きたことをなんとなくだが察した。

 まるで、何かを供物として捧げられているような……。そんな思考を他所に大きな花が満を持して開く。

 銀はそれが須美と園子のものだと感じたらしい。また、その嫌な感じに気付きもした。

 

 「師匠!」

 『アァ!!これは明らかにーーー可笑しい!!!』

 

 あれは、明らかに勇者システムの一つ。

 だが、我はあれを見たことがない。つまりはあれは大赦からの切り札。

 そして、あの強大な力のリスクは計り知れない。

 二人の勇者と対峙する獅子座のバーテックスが応戦するがいとも容易く弾かれていた。

 

 「クッ!!待ってろよ、須美、園子!!」

 『しょうがないな……。先にお前が先行しろ』

 「どうするんだ?」

 『我が剣でお前を弾く。待て、そこまで不安そうな顔になるな。アイツらにはここで死んでもらっては困る』

  

 その言葉に頷いた銀はその場でジャンプする。それを剣の平面で弾き飛ばす。

 初めてやったが、上手くいったな。まずは頼むぞ、銀。

 

 ■■■

 

 「「満開!!!」」

 

 二人は切り札である【満開】を発動した。この力は大赦から与えられたものだ。

 だが、そんな中須美はやってしまったと後悔していた。

 この力は多分何か大きなリスクがある。けれど、この力を使わなければこいつに勝てないのも事実。

 相手のバーテックスが火球を放ってくるが、須美は砲台とも言える銃でそれと対抗する。

 

 「お前たちの攻撃はもう届かない!!」

 「わっしー、ナイスアシストだよ~……ハァァァ!!!!」

 

 私が、攻撃を打ち返すとそのっちが相手に向かい無数の剣劇を繰り広げる。

 しかし、相手のバーテックスに目立った傷は見当たらない。そこで今までとの敵の格の違さを思いしり恐怖する。

 このままでは……。という負の念は動きに支障を来す。

 体の奥底が震え上がるがそれを押さえようとする。

 左手で震える右手をおさえ、敵を睨み付ける。

 

 「放てッ!!!!」

 

 通常では考えられない威力で放たれたそれはバーテックスにようやく目立った外傷を与えた。

 そして、そのっちも相手に剣を突き刺し弱らせていく。このままいけば勝てるのは明白だったが、突如として満開の変身が二人して解けた。

 宙に浮かんでた二人は重力に逆らえないまま地面に衝突した。

 

 「ッ……!時間切れ、嘘でしょ!!ーーーあ、れ?」

 

 可笑しい。感覚が、いつもの感覚を感じない。

 そう思って違和感の原因に力をいれてもびくともしない。

 

 「足が、動かない?」

 

 その衝撃的な事実に気がつくとそれをサポートすると言わんばかりに勇者の服装にも変化が現れた。

 自由に扱える紐が頭から延びる。まさか、これを使って歩けと?

 受け止められない事実に身を震わせていると遠くからそのっちが駆けつけてきた。

 

 「わっしー、大丈夫!?」

 「うん、何故か分からないけど足が動かなくなっちゃったけど……」

 「実は、私も右目が見えなくなってきて……。一体これはどういうことなんだろう~……」

 「今はまだわからない……。もしかしたら【満開】の影響かもしれない。けれど、あれは【満開】を使ってようやく渡り合える、ということは答えは一つよね」

 「うん。私たちが皆を守らなきゃミノさんに怒られちゃうからね」

 

 覚悟を秘めたため息を口にだし、覚束無いながらも紐を駆使して駆けて、二人で叫ぶ。

 あのバーテックスは間違いなく今までの敵の中で2番目に強い。

 無論、一番はあの原初のバーテックスだが何故かあのときは敵対心というのが見当たらなかった。

 けれど、今はそんなことを気にするときではない。

 私たちは文字通りの命懸けの戦いをしているのだから。

 

 「「満開!!!!」」

 

 再度、姿が変わる。

 圧倒的な力の存在が場を支配し、勝利の結末を引き寄せようとする。

 一つ一つが強力な光線を相手へ放つとその衝撃で髪が後ろへ棚引いた。

 

 「はぁぁあ!」

 「ここから、出ていけぇぇぇぇ!!!!」

 

 私の叫び声に呼応するかのようにそのっちも際一杯の声をあげる。

 そして、この攻撃が決定打となったのか相手のバーテックスが撤退を始める。

 徐々に後ろに下がっていく光景をみて、ようやく終わったんだという気持ちに襲われて【満開】の変身が解ける。

 

 そこで、鷲尾須美としての私は死んだ。

 

 ■■■

 

 「ふぅ~。守ったよミノさん、見てくれてたかな。………………ッ!!」

 

 去っていったバーテックスを見ながら私は見えなくなった右目を押さえると2回目の【満開】が解けた。

 そこで、また体の違和感を感じる。

 先程まで動いていた右腕がまったくもって動かない。力をいれても何も感じない。

 そこで私は悟ってしまった。

 【満開】とは、勇者の一部を供物として力を得るというものだと。

 それがわかればあとは早かった。もう一人、【満開】を使った勇者がいるではないか。

 その彼女にもとに駆けつけた私は不思議に思った。

 【満開】が解けているのは納得できる。だけど、なぜ勇者の変身まで解けているの?

 

 「ねぇ、わっしー!!ねぇってば!!!!」

 

 震える彼女は私をみてただ一言言い放った。

 その言葉は私を動揺させるのに十分な言葉。

 

 「誰ですか、貴方は……?というか、ここは一体何処なんですか!?私たちの町はどうなったんですか!!」

 

 ーーーあぁ、酷い話だよ。本当に……。

 後ろから多くのバーテックスが来るのを感じた。振り向くとそこには今まで倒してきたバーテックスが姿を表していた。

 その数12体。先程撃退したはずのバーテックスすらいるではないか。

 記憶を供物として捧げられたわっしーは訳がわからず混乱している。

 大丈夫だよ、わっしー。

 

 「私の名前は乃木園子。貴方の名前は鷲尾須美。神樹館小学校に通う女の子だよ」

 

 一度、勇者の返信を解きありのままの私を見せて髪を結んでいた紐をわっしーの手首に巻き付けてあげる。

 これは、私が生きた証。

 私とわっしーとミノさんがここにいた証。

 

 「だから、あとは頼んだよ。ミノさん」

 

 気を失ったわっしーを抱いて、横に寝かせる。

 そして、茶色いローブを被って突然現れたものに言う。

 フードを外したその奥には見たかった顔があった。

 

 「あらら、ばれちゃったか。流石は乃木家の園子さまだな。ーーー須美は?」

 「う~ん。多分目の前の光景がショックで気を失ったんじゃないかな~?」

 

 すると、私とミノさんの横にあのバーテックスが到着する。

 私は、知っていた。三ノ輪銀が生きていると。いや、確信していた訳じゃない。その可能性があるかもと思っていただけ。

 そう思ったのは今ミノさんの隣にたつ原初のバーテックスと初めて戦ったとき。

 あの原初のバーテックスの肩にミノさんの特徴的な髪の毛が付着していた。

 その時はなんとも思っていなかった。

 けれど、やっぱりその髪の毛のことを頭から振り払うことが出来なかった。

 だから、これは私の夢物語だけどこう考えた。

 原初のバーテックスがミノさんを助けて、どうやったかわからないけど偽物を用意したって。

 無論、確信など全くないから0.1%ぐらいでしか信じなかったけど先程、勇者の変身を解除したときに勇者反応がわっしーのほかにもう一人いることに気付き確信したのだ。

 

 『その勇者の力は自信を供物として力を得るものか……。神樹め、面白くないことを。と、流石は乃木のものだ。気付いたか』

 「ーーーこの際貴方が何者でも私にとって関係ない。ミノさんを助けてくれたんでしょ?」

 「おいおいおい、なんだこの険悪なムードは。今からあのバーテックス達と戦うってのに」

 「ミノさんは一回黙ってて」

 「……はい」

 『そう怒るな。確かにあの時……。こう昔話に花を咲かせる時間などないか。どうする?』

 

 そう言って指を指す方向にはあのバーテックス達。この原初のバーテックスが何を考えているのかはわからないがそれよりも先にあれをどうにかしないとね。

 

 「私が、あれを食い止める。だから、わっしーのことをお願いします」

 

 敵に頭を下げるとは何事ですか!とわっしーがいたらそう言うだろうなぁ~。

 けど、今は形振り構ってはいられない。

 

 『いいだろう。ただ銀、お前は園子と一緒に戦ってこい』

 「いくら師匠の頼みでもそれは聞けないなぁ。師匠の命令じゃなくて私の意思で、園子と一緒に戦わせてもらうよ」

 『ふっ……お前らしい』

 「ちょっと聞きたいことがたくさんあるけどミノさんと一緒に戦えるんだね!!」

 

 特に、師匠ってどういうことだろう。あぁ、もう~!ミノさんってばほんとに自由人なんだから!!

 でも、やっぱり生きてくれて嬉しい。まぁ、私たちをいっぱーい悲しませたんだからその分お説教しなきゃね!

 

 「じゃあ、行くよ!」

 「あぁ!!」

 

 私とミノさんは神樹を駆ける。

 でも、数も数だし犠牲なしとはいかないよね……。

 

 「満開!!!」

 「園子、それは……!」

 

 先程の会話から銀はその力は何か代償を支払わなければいけないと感づいていた。だから、園子の姿をみて驚愕する。

 

 「大丈夫だよ、ミノさん!私パワーは全快だから、バーテックスなんてズカーンだよっ!!」

 「……くっそ!あとで説教だからな!!」

 

 ーーーあぁ、ほんとに優しいなミノさんは。

 

 「はぁぁぁああああ!!!!」

 「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 私は、乃木園子。勇者である。

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 「ここが、新しい家……?」

 

 目の前の和式の家をみて呟く。

 この車椅子の生活にも慣れたものだ。私は2年間の記憶がない。両親によると2年前大きな事故にあったかららしい。

 動かない両足に両手を乗せ風を感じているとふと扉の開く音が聞こえた。

 桜色の髪に、活発そうな雰囲気。

 幼げが残る顔で彼女は言った。

 

 「貴方が隣に引っ越してきた人?私の名前は結城友奈!!よろしくね!!!」

 「東郷……三森、です」

 

 桜の花びらが風にのってひらりと舞い、彼女の髪につく。

 それを手で取ってあげると彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

 「わぁ、ありがとう、東郷さん!!」

 「ううん、大丈夫よ。これから宜しくね、友奈ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勇者を信じた私たちがまさか生け贄だったなんて……。
神樹館小学校 乃木園子より
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