大橋の大決戦から一年後、一体のバーテックスが座禅を組んでいた。
2本の刀を傍らに起き、黙々と意識を神樹のほうへと傾ける。
内なる声。我がバーテックスの枠組みから外れたときから聞こえてきた声。
今まで無視をしてきたが【満開】のこともある。少しばかり話に付き合ってもらうぞ。
すると、意識だけが何処かに飛ばされる感覚がした。
目を開けると真っ白な空間に一人の少女が立っていた。
彼女を表すのなら桜。
そんな彼女が通学路で友達に話しかけるように奇策に声をかけてきた。
「ーーー」
『あァ。気が変わっテナ。ソレヨリモ貴様は誰ダ』
「ーーー」
『……。ナルほドな。貴様はもう神樹の一部と言う訳カ』
「ーーー」
彼女の話を纏めるとこうだ。
神樹に長く滞在すればするほどその存在が昇華されていく、つまり近づくということらしい。
そして、近づいた者には恩恵も与えられる。
彼女の恩恵は精霊らしい。よくわからないが勇者にとってとても大事なものだと言う。
そして、我が司るは散華。
ここから予測されるに長ければ長いほど重要なものが付与されると言っても過言ではない。つまり、銀も例外ではないということだ。
だがしかし、散華か……。そうかそういか、ーーーまったくやってくれる。
一通りの用事を済ませその場を後にしようとしたら彼女に引き留められた。なんでも久しぶりに会話をしたいのだという。
教えてくれた礼にと聞いていたがほとんどが他人の自慢話。
だが、その時間は居心地が良かった。
時間だ。と言い立ち上がる。
『有意義ナ会話だッタ。感謝すルぞ。ーーー高嶋友奈』
「ううん、こっちも久しぶりに話せたから。ありがとう」
彼女は静かに微笑み、次第にその姿を薄らと揺らめかした。
『アレが、初代勇者の一人。高嶋友奈カ』
意識が戻り珍しくもない自宅の雰囲気に飲まれながらそう呟いた。
彼女はまだ旧暦の時代に勇者として活躍していたらしいがバーテックスとの激戦の末神樹に取り込まれたらしい。
乃木若葉と高嶋友奈を筆頭とした勇者たちか……。会ってみたかったものだ。
原初のバーテックスは静かに畑を耕し始めた。
■■■
「ハァァァァァ!!!!」
「もっと脇を閉めろ!!!!」
アタシこと三ノ輪銀は絶賛指導中であります。
今やっているのは組み手。結城友奈という元気一杯な女の子とやっている最中だ。
だが、まぁ。須美との再会は嬉しかったんだけどまさか記憶に無いにも関わらず泣いてくれたことにはちょっとびっくりして、そしてとても嬉しかったな。
あの後、勇者部の皆が騒ぎ始めて大変だったけど……。
「ならっ!!」
「うお!!」
いきなり友奈が回し蹴りを繰り出すもんだからびっくりして仰け反ってしまった……。けどッ!!
「うわっ!!!」
「ふぅ~…。アタシの勝ちだな。まだ甘いところあるからそこは後で教えておくよ」
「はい!!!」
友奈が自信の体を支えていた軸足に足をかけて転ばす。
元気よく挨拶して向上心もあり、常に前に向く。確かに勇者気質だな……。
「けど、銀ちゃんって本当に強いね!」
「まぁな。師匠がかなりスパルタだったからな」
「へぇ、師匠がいるんだ」
「あっ、はい。まぁ、今は何処で何してるかわからないんスけど…」
「なんか流離いって感じがして素敵……!」
樹がそう言うもんだから何故か園子と似た感じがし苦笑が漏れた。
風先輩と樹は駆け寄ってくるが須美はただ呆然と海を眺めているだけだった。
「なんか、東郷のやつさっきからあぁなんだよね…友奈、なんとかできない?」
「う~ん……なんか今の東郷さんはソッとしといたほうがいいと思います」
友奈は気難しい顔をする。
それは当たり前のことだった。
涙を流した東郷は震える口で訴えた。
『わか、ら、ないの……!なんでこんなに苦しくて辛くて……そしてこんなにも嬉しいのか……!!貴方は、一体…誰、なんですか……?』
『言ったろ?アタシの名前は三ノ輪銀って』
『ぎ、ん……!銀……!銀……!!』
『おぉ、甘えん坊だな。三森は』
彼女は涙ながらの顔を銀の腹部へと擦り付けた。
溢れてくる涙を止めようとしないでただ淡々と名前を呼び続けていた。
ここではアタシは真実を言えない。言ったら大赦から勇者のほうへと少なからず不信感を抱かせる結果となるからだ。
実際、昔に勇者に手を出した勇者が居なかったことにされている。
「まさか、あの東郷がねぇ……」
「まぁ、三森にも何かあるんじゃないスかね?それよりも、次は風先輩の番ですよ」
そう言って木刀を渡す。
ちなみにだが今は生身で練習している。生身での練習は勇者に変身したときに多大な効果を与えるのは昔、師匠から教えてもらったのだ。
その日、東郷以外の勇者には傷が沢山ついててお風呂が困難だったというのは言うまでもない。
■■■
夜、ザザーッという波の心地好い音を聞きながら銀はこれからどうするか考えていた。
すると、背後からカラカラと聞きなれない音がし振り替えるとかつての親友がいた。
「なんだ、三森か。どうした?」
「あら、お話しに来たと言えば不服かしら??」
いじわるそうに東郷三森/鷲尾須美は笑った。
あの後、なんとか持ち直し彼女はいつも通りに近い感じまでに戻っていた。
「貴方は……銀はなんでそこまで強いの?」
「……アタシなんて強くないさ。大事な友達二人も守れずただのうのうと生きていくだけ。本当に強いのは友奈みたいな勇者だよ」
「そう……ごめんなさい。銀のことも考えず。それで、その……お友だち二人はーーー」
「あー、何か勘違いしてると思うけどその二人は生きてるよ。そして、三森がアタシを強いって言ってくれるんだったらそれは守りたいものがあったから」
彼女はその言葉に首を傾ける。
すると、雲に隠れた月が顔を出し、月光が二人を照らした。
「アタシが守りたかった家族、友達、この町の人……そして園子と須美っていう大事な大事な、宝物を守りたかったから。だから、アタシは少しでも強くーーー三森?」
銀が東郷を見ると彼女はただ顔を俯かせて震えていた。
「なん、で、かしらね…。銀といると涙がでてくるわ……銀アレルギーかしら……?」
「人をタマネギみたく言うな……」
そして、銀が意を決したように口を開いた。
「なぁ、すーーー」
だが、その言葉は最後まで続くことがなかった。
何故なら、後ろから大きな声が響いたからだ。
そちらに目を向けると風呂上がりだと思われる浴衣姿の少女が3人。
「あぁー!銀ちゃんがまた東郷さんを泣かした!!風先輩、迎撃許可を!!」
「そうね……、こう何回も仲間を泣かされていちゃ勇者部の面子が丸潰れね!!行きなさい、友奈!!!そして、派手に散りなさい!!!」
「お姉ちゃん、そこは止める場所だよ……」
そう言って友奈が銀へと抱きついてくる。
これは、夜は寝れないなと。
銀は幸せな時間を噛み締めながら、そう思った。
「どりゃー!かかってこーい!!」
「もう、友奈ちゃん。銀が迷惑してるでしょ」
「もう、そんな連れないこと言わないでよ。ママ」
「そうだぞ、お前。銀だって楽しんでるじゃないか」
「もう……貴方が銀を甘やかすから……」
「樹、これは何かしら」
「……さぁ」
だが、どこから伝わったのかこの夫婦漫才的なやり取りが園子の方に知られていて帰ったら羨ましがられたのはまた別の話。
■■■
「はい、はい。わかりました」
マンションのとある一室。そこにツインテールの少女が携帯の相手と会話をしていた。
話が終わり、通話を切る。
「讃州中学に入学するには次週ね……。今の勇者根性はこの私が叩き直してあげるわ!!
この完成型勇者、三好夏凜様がね!」