ハイスクールD×D ~蒼天の神龍~   作:コロ助なり~

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友達

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Side空

 

俺こと龍神空が朝食を終えると、今日の予定を思い返した。

 

今日は確か……友達と遊ぶ約束してた!

 

しかし、約束の時間はまだまだ先だ。それまでの時間をどうやって過ごすべきか頭を悩ませていた。

 

「サッカー、しよっと」

 

自分の部屋に戻り、サッカーボールを中身が少ないおもちゃ箱から取り出す。

靴を履いて庭に出て壁に向かってボールを蹴りだした。

子供の筋力ではプロのような強烈なシュートは出来ず、跳ね返ってくるのは弱々しいボールだ。

そんなものだと自分でわかっているから落ち込むこともせずに、飽きるか疲れるまでは何度も何度もボールを蹴り続けた。

 

「空ー、そろそろ約束の時間だよ」

 

「え、もうそんな時間?」

 

士織に声を掛けられて一時中断。家の中にある時計を見れば、あと十分ほどで約束の時間になるところだった。

 

「やばっ、急いでいかなきゃ!」

 

「あ、待って! 私も行く!」

 

ボールを庭に放置し、家を飛び出す。

片づけをしないとシオンさんに怒られそうだが、それよりも約束優先だ。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……。お待たせ、ヴァーリ」

 

「こんにちは、ヴァーリ」

 

「遅いぞ、空」

 

待ち合わせの公園に着くとブランコに乗っていたダークカラーの強い銀髪の少年―――ヴァーリが俺達の傍に駆け寄って来た。

 

「今日は何して遊ぶ?」

 

かくれんぼ、鬼ごっこ、サッカー、野球、街の探検、図書館に行く等々、色々な提案が俺達三人の中で出された。どれにするかはジャンケンで勝った人が決めることになり、士織が勝利したことによってかくれんぼになった。最初の鬼は俺からだ。

 

「もーいいかーい?」

 

『もーいいよー』

 

二人からの返事が返って来たので、探し始める。

その際、ふと目に入ったブランコに一人の女の子が座っていた。俯いて表情は窺えない。

 

「ねえ、君も一緒に遊ばない?」

 

声をかけたが一切見向きもしない。

 

「……遊ばない」

 

「かくれんぼなら隠れるだけだから簡単でしょ?」

 

「……遊ばない」

 

「どうして?」

 

「……あなたには関係ない」

 

「関係あるよ。だって俺は君を誘ってるんだから、理由を聞かないと納得できないし、諦められない」

 

「……そんなの身勝手なの」

 

「身勝手? そうだね。でも、だから何?」

 

「え?」

 

ようやく彼女が顔上げた。

 

「自分のしたいことを言えないようじゃ、つまらない人生になるから」

 

ってどっかの高校のちびっ子生徒会長が言っていた。碧陽……とかいう高校だったはず。

 

「……あなたは凄いね。なのはにはそんなこと出来ないよ」

 

なのは、というのが多分この子の名前だろう。

 

「今からすればいいじゃんか」

 

「…………い」

 

「ん? なんて?」

 

彼女の声が小さ過ぎて聞こえなかったのでもう一度聞き返した。

 

「そんなの出来たら苦労しない! なのはがこんな寂しい気持ちになることもない! だから、だからッ、お母さん達に迷惑かけないように『良い子』にしてるの!」

 

俺の言葉が癪に障ったせいで彼女が怒り出した。

お母さん、迷惑、良い子。彼女の家庭では何かあったのかもしれない。

 

「えーっと、君の家庭の事情は聞くつもりはないけど、君にとって『良い子』って何? 親に迷惑かけないなら誰かと遊ぶくらい良いんじゃないの?」

 

そもそも『良い子』の定義とは? 迷惑を掛けない子供ってどんなの? 子供には難しい問題ですなぁ。

 

「そ、それは……」

 

彼女もそこまではわからないのか答えに迷っていた。

 

「というか寂しいってわかってるなら尚更ほっとけないよ。俺と遊ぼ?」

 

多少強引に彼女の手を取って立ち上がらせようとしたら―――

 

「うぅ……グスッ……」

 

泣き出した。

 

「ええッ!? ちょ、ちょっと! 泣かないでよ!」

 

困った。これは非常に困ったぞ。誰かが泣くところなんて見たことない。どうやって泣き止ませればいいかなんてさっぱりだ。

 

「ご、ごめん! なんか変なこと言っちゃって! それとも引っ張るの痛かった!?」

 

反射的に口から出たのは謝罪の言葉だ。

 

「……違う……違うの。誰かに心配されたのが嬉しくて……」

 

彼女が理由を言ってくれたのおかげで少しだけ安堵した。

 

「そうだ! 君の家族のところに行こうよ!」

 

「……え?」

 

「場所はわかる?」

 

「わかるけど……」

 

「よし、じゃあ、行こう! あ、士織達も呼ばないと……。士織! ヴァーリ! かくれんぼ中止ー!」

 

公園のどこかにいるであろう士織とヴァーリに向かって大声で呼ぶ。しばらくすれば、二人が隠れていた場所から出てきた。

 

「どうした? なにかあったのか?」

 

「うん、まあね。今からこの子の家族のところに行くから」

 

「唐突過ぎだよ!」

 

「イタッ!」

 

急な提案に士織は俺の頭をはたいた。

 

「もう、ホントにいつも勝手なんだから……」

 

愚痴ったり呆れたりしながらも反対しないあたり、士織の優しさを感じる。もしかしたら慣れたのか、諦めたのかもしれないが俺の知るところではない。

 

「で? その子の名前は?」

 

「あ、知らないや。なんて言うの?」

 

なのは、というのは自分で言っていたが苗字までは知らなかった。

 

「……なのは。高町なのは」

 

高町と言えばどこかで聞きおぼえがある。

 

「高町? それって道場やってるところの?」

 

「うん。あと、翠屋っていうお店もやってる」

 

翠屋と言えばシュークリームが人気の喫茶店で何度かシオンさんに連れて行ってもらった。雑誌やテレビでも取り上げられたと街の人から聞いたこともある。

 

「それならすぐそこだな。何度か行ったことはあるから道も大丈夫だ」

 

「んじゃ、レッツゴー!」

 

なのはの手を引いて四人で翠屋に向かった。

向かう途中で事情を知らない士織が尋ねたら、ポツポツとなのはが家庭のことを話し出してくれた。

なのはのお父さんは護衛の仕事で大ケガを負って入院。

入院の費用が必要なので、最近始めたお店の経営で大忙し。

その分、働くことが出来ない子供のなのはを一人にさせることが多くなってしまった、ということだ。

 

「翠屋とうちゃーく!」

 

なのはの話を聞いている内にお店に着いた。

まだ開店前みたいで、中で準備をしている人が窓から見えた。

 

「話をするならお店が始まる前の今がいいね」

 

士織の言葉に頷いてお店の扉を開けた。

 

「こんにちはー! あれ、まだおはようございますの時間?」

 

「今はそれどうでもよくない!?」

 

「えー? 結構大事だよ?」

 

「……すまないが挨拶がどうのこうのより、まだお店は開いてない。もう少し待ってくれ」

 

準備中に俺達に気が付いた黒髪のお兄さんが俺達の前にやってきた。

 

「今日は別の用事できた。店が始まる前の方がちょうどいいんだ」

 

「用事? ―――ッ! なのは! ……どうしてここに?」

 

「お、お兄ちゃん……」

 

この人がなのはの話に出ていたお兄さんか。

なのはが口を開くが何と言えばいのかわからず沈黙が続く。

 

「恭ちゃん、もうじき開店だから早く終わらせ―――あれ? なのは?」

 

「お姉ちゃん……」

 

今度は眼鏡をかけたお姉さんが現れた。なのはのお兄さんをお兄ちゃんと呼んだということはなのはのお姉さんということになるだろう。

 

「代わりに言う?」

 

「…………」

 

無言で肯定を示すために首を縦に振った。

 

「この子、寂しがってたんです」

 

「寂しい? どういうことだ?」

 

知らないということは、なのはは家でも家族に心配を掛けないように『良い子』でふるまっていたのだろう。

 

「家族が入院してるんですよね?」

 

「……ああ」

 

「それで入院費を稼ぐためにお店の経営で忙しい。最近は人気も出てますからね」

 

「……そうだ」

 

「その分、なのはに構ってあげられる時間が減った」

 

「……そうだ。だが――――」

 

「だけど、なのはは『良い子』だから一人でも大丈夫だろうと思って気にしなかった」

 

「! そんなことはない! いつだってなのはのことは気にかけていた!」

 

この人は本当に気にかけていたのだろう。今日初めて会話をしたが、家族を蔑ろにするような人にはとても思えない。

 

「……でも、なのはは寂しがっていたことを見抜けなかった」

 

「それは―――」

 

「あなたの言う通りよ」

 

「母さん!」

 

お兄さんを遮ったのは厨房から出てきたなのはそっくりの女性だった。

 

「なのはに何度聞いても、寂しくない、平気だっていうから、ついその言葉を鵜呑みにしちゃってお店にかかりっきりになっちゃったの。ごめんなさい、なのは……本当にごめんなさい」

 

なのはの前にやって来た女性はなのはに頭を下げた。

 

「なのはは全然寂しく…………ううん、ホントはすっごく寂しかった。いつも家に独りぼっちで嫌だった。お母さんたちのお手伝いができるわけじゃないから辛かった」

 

なのはが自分の秘めたる想いを曝け出すと、それを聞いていて途中からお母さんとお姉さんは何度も謝りながらなのはを抱き締め、お兄さんは何もできなかったことを悔しそうに拳を握りしめ、静かに涙を流していた。

 

「うんうん、これにて一件―――」

 

「いや、まだ根本的なことが解決してない」

 

根本的なこと? あ、これからもお店は忙しいから、その間なのはをどうするかを決めないと!

 

「コホン……えーっとですね、家族の絆が深まったのは良いんですけど、これからのことどうしますか?」

 

『…………』

 

士織の問いに答えられる人は誰もいなかった。今お店の経営を止めるわけには行くはずもない、かと言って再びなのはを一人にさせてしまうのも論外だ。

 

「それでしたら龍神家で過ごすというのはどうでしょうか? 高町様の旦那様が目覚められるまでの間という条件ですが」

 

「シオンさん!?」

 

突如、会話に割って入って来たのは家にいるはずのシオンさんだった。どうしてここにいるのか気になるが、今できる最善の選択肢を出したことに間違いない。

 

「もちろん、送り迎えも宿泊のご用意もさせていただきます」

 

「私達としては大変助かりますけど……」

 

なのはのお母さんはなのはの様子を窺っていた。

 

「一人でいる時間は俺達と遊ぼうよ」

 

「……いいの?」

 

「もちろん!」

 

「ありがとう! メイドさん、なのはもそれがいいです! お願いします!」

 

「かしこまりました。では、私は一足先に準備させていただきますので失礼します」

 

シオンさんが一礼をしてお店を出た。多分、俺達が家に着くころにはなのはがたまに寝泊まりする部屋を用意してるだろう。

 

「今度こそ……これにて一件落着だね!」

 

「だな」「そうだね」

 

ヴァーリと士織も問題が解決して小さく笑っていた。

やや重たい話題がきっかけでなのはという少女とその家族と仲が良くなった。

 

「公園に戻ってかくれんぼの続きやろうか」

 

「おー! 今度はなのはも一緒にね!」

 

「うんっ!」

 

「ケガしないように気を付けてね、四人共」

 

『はーい!』

 

なのはのお母さんに見送られ、公園に向かって駆け出した。

 

 

 

 

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