今回オリキャラが三人出ます。
名前は若干適当。
イッセーの一発
Side空
堕天使の潜伏する教会に突入し、アーシアを奪還。
残るは全員無事に帰るだけとなったのだが、レイナーレが追いかけてきた。
俺がやればあっという間に終わらせることは出来るが、イッセーの意思を尊重して譲ることにした。
これから先、イッセーは多くの戦いに巻き込まれるだろうから少しでも慣れさせておく、という考えも含めてだった。
「……夕麻ちゃんの姿が憎いぜ」
レイナーレを見て、苦い表情で呟く。それを聞いた彼女は高笑い。
「ふふふ、それなりに楽しかったわよ。あなたとの付き合い」
「……初めての彼女だったんだ」
「ええ、見ていてとても初々しかったわ。女を知らない男はからかいがいがあったわ」
「……大事にしようと思ったんだ」
「うふふ、大事にしてくれたわね。私が困ったことになったら、即座にフォローしてくれた。私を傷つけないように。でも、あれ全部私がわざとそういう風にしていたのよ? だって、慌てふためくあなたの顔が可笑しいんですもの」
器用な女だこと。あいつらもそういうこと考えたりは……しなさそうだな。
「……初デート、友達に相談して念入りにプラン考えたよ。絶対にいいデートにしようと思ったから」
「アハハハハ! そうね! とても王道なデートだったわ! おかげでとてもつまらなかったわ!」
ムカつく。すごくムカつく。目の前で友達がコケにされるのは嫌だ。
「ねぇ、あいつ殴ってきていい?」
「それじゃあ、兵藤君を送り出した意味なくないかい?」
「……一発ぐらいならいいと思います。聞いててすごく不愉快です」
小猫の許しを得て、拳を構える。
イッセーが戦えなくなってしまうので手加減をして拳を振るった。いや、正確には拳圧を当てた。
「グハッ!? な、なに!?」
レイナーレの鳩尾に見事ヒットし、よろめかせた。
「イッセー、好きなだけやってきなよ」
「おう!」
構えや戦い方を知らないイッセーはただ我武者羅に駆け出す。
「舐めるな!」
「ガハッ!」
殴りかかったイッセーだが、体勢を立て直したレイナーレの蹴りで簡単に吹き飛ばされてしまった。
「イッセーさん!」
アーシアの悲鳴にも近い声が上がる。
慌てて駆け寄ろうとするが俺が行く手を阻んだ。
「どいてください! このままではイッセーさんが!」
「大丈夫だって。イッセーは負けない。治療はあと」
よろめきながらもなんとか立ち上がった。
「イッセー、自分が何をしたいか強く想え。そうすれば
頷くイッセー。その瞳の奥にはしっかりと光が灯っていた。
「俺の想いに応えやがれッ!
『
イッセーの叫びに応えるかのように、左手に装着された神器が動き出す。手の甲の緑色の宝玉が眩い輝きを放った。
籠手には紋様が浮かび上がる。
やっぱりあの神器は……。
初めて見た時は微妙なところだったが、今のでようやくわかった。
力が増したイッセーが再び駆け出して拳を突き出きだす。
レイナーレにはあっさりと避けられてしまった。
厳しいことを言うが、いくら神器の能力でイッセーの力が増しても、元が元だけにまだまだレイナーレには届かない。
『Boost‼』
宝玉から再び音声が発せられた。
また少しだけイッセーの力が大きくなった。
「プロモーション! 『
『
王が敵陣と認めた場所に入った時に王以外の駒になれる能力だ。
今イッセーがプロモーションしてなった『戦車』の特性は攻撃力と防御力。
これでイッセーの攻撃力は大分上がった。
だが、それでも足りない。
イッセーには経験も体力も魔力も知識も、そして何よりも速さが足りないのだ。
「へぇ! 少し力が増したの? でもまだね!」
イッセーの攻撃がまたしても避けられてしまう。
「力を込めてあげたわ! 喰らいなさいな!」
レイナーレが両手に作り出した光の槍を投擲。イッセーの両足を貫いた。
「ぐぁぁぁあああああああッ!」
あまりの痛みに絶叫を張り上げた。
悪魔にとって光は効果抜群。
ある程度の強さがあれば弱めることも出来るらしいが、下級悪魔であるイッセーにとっては治療法のない病気にかかるのと同じだ。
「ぐぅぅぅぅああああああああッ!」
光の槍を抜こうとして触れるが、光がイッセーの手を焼き焦がす。
「……もう……見てられないです……っ!」
隣のアーシアが力なく座り込み、手で顔を覆い、静かに嗚咽を漏らす。
「アハハハハ! その槍に悪魔が触れるなんて愚の骨頂よ!」
「ぬがぁぁぁあああああッ!」
レイナーレの嘲笑を受けながらもイッセーは叫びながら槍を引き抜いた。
それと同時に尻もちをつく。
すでに満身創痍。
立ち上がろうとしても力が入らないのか、何度も尻もちをつく。
少しだけアーシアに目を向けてから俺を見た。
「……なあ、龍神。こういうときって、神に頼むのかな?」
「うーん、どうだろ。俺は“神頼み”っていうのしたことないから」
「……そっか。まあ、なんにせよ神様はダメだな。だって俺の頼み聞いてくれなかったし、あんなに優しいアーシアのこと助けてくんなかった」
「神様っていっぱいいるから他の神様にしときなよ。例えば……龍の神様とか」
悪魔だから魔王の方が良かったかも。
「ハハ……龍の神様ってなんだか力貰えそうだな。じゃあ、その龍の神様に俺の頼み聞いてもらいましょうか。……いまから目の前のクソ堕天使を殴りたいんで邪魔が入らないようにしてください。ほら、乱入とかマジでごめんです。増援もいりません。俺がなんとかしますんで。ああ、脚も大丈夫です。今からなんとかして立ちます。だから、俺とこいつだけでのガチンコをさせてください。良い場面なんです。怒りが凄まじくて、痛みもどうにか耐えられています。―――一発だけでいいんで。……殴らせてください」
「うん。その願い、確かに聞き届けた」
誰にも聞こえない声でそっと呟く。
頼みごとが終わったイッセーはゆっくりと立ち上がる。全身震えながら、血を大量に流しながら、決してあきらめることをせずに。
「嘘よ! 立ち上がれるはずがない! 光のダメージで―――」
驚愕するレイナーレを余所にイッセーはついに立ち上がった。
視線を逸らさずに睨みつける。
……一発が限界か。
撃てば倒れるのは間違いない。そもそも立ってることすら不思議なことなのだから当たり前だ。
「なあ、俺の神器さん。目の前のこいつを殴り飛ばせるだけの力はあるんだろうな? トドメとシャレ込もうぜ」
『Explosion‼』
機械的な声が力強く発せられた。
宝玉から出る光イッセーを包み込む。
一時的ではあるがついにイッセーの力がレイナーレを上回った。
そのことに動揺するレイナーレは光の槍を投げつけた。
イッセーが横薙ぎに拳を振るうと槍は粉々に砕け散った。
「い、いや!」
逃げ出すつもりなのか黒い翼を羽ばたかせ、飛び立とうとしていた。
でも、イッセーがそれを許さなかった。
力の上回っている今のイッセーならなんなく捕まえることが出来た。
「逃がすか、バカ」
「私は、至高の!」
「吹っ飛べ! クソ堕天使!」
「おのれぇぇぇええええええええ! 下級悪魔ぁぁぁあああああッ!」
「うおりゃぁぁああああああッ!」
赤い籠手にすべての力が集まり、その拳でレイナーレの顔面に力の限り鋭く打ち込んだ。
吹き飛ばされたレイナーレは壁に激突。壁に穴を開けた。
しばらくすると舞っていた埃が落ち着き、レイナーレが地面に転がっていたのが鮮明に見えた。
「イッセー、おめでとう。アーシア、治療してあげて」
「は、はい!」
倒れ込むイッセーを支え、アーシアを呼ぶ。
急いでイッセーに駆け寄り、治療を開始してくれた。
「―――戦闘はもう終わってしまったのか?」
ほんわかな空気が流れるかと思いきや聖堂内に声が響いた。
声のした方向には三人の男がいた。
……面倒なのが来たな。
Sideout
Sideイッセー
レイナーレをぶっ飛ばしてアーシアに治療してもらってる。
ようやく終わった、と思ってたら誰かが現れた。
入り口付近にいたのは三人組の野郎ども。背丈も髪の色も服装も全部バラバラ。
なんとなくだけど、レイナーレよりも強いんじゃないか? ってか、増援いらないって言ったよな? どうなってんの!? 龍の神様!
「ふむ。お前が今代の赤龍帝か」
三人組の一人、赤髪の男が俺を見るなり、そう呟いた。
赤龍帝? なんのことだ?
「……弱いな。あまりにも弱い」
弱くてごめんなさいね! 俺は悪魔になりたてだし、魔力もほとんどないですから!
あの男にそう言ってやりたいが力が入らない。
言わなくてもわかるけどさっきの戦闘が相当体に響いてる。
「だがそれはそれで面白い。赤龍帝、俺達とこないか?」
…………は? いきなりの勧誘ですか!?
こちらに歩み寄ってくる男。
だが、そこに割って入る奴がいた。
「目的はイッセーの勧誘か?」
その人物は龍神だった。
いつもの穏やかな雰囲気が全くない。こんな彼を見るのは初めてだった。
「貴様……! なぜここにいる!?」
二人は知り合いなのか? ただならぬ関係みたいだけど……。
「質問してんのは俺だ。答えろ、ベルゼ」
ベルゼと呼ばれた赤髪の男性が渋々口を動かした。
「……そうだ。赤龍帝が目覚めるのを感じたのでな、様子を見に来た。……それで貴様がなぜここにいる」
「俺がどこにいようと俺の勝手だろうが」
「そのような子供じみた我が儘をまだ言うか!」
『ッ!』
す、すげー力だ……!
ベルゼが放つ圧力に体が言うことを聞かなくなる。
さっきまで戦っていたレイナーレが可愛く見えるくらいの力だ。
そんな中でも龍神は変わらず平然としていた。
「貴様は自分の立場を考えろ!」
「あのさ、それも含めてあの世界とおさらばしたんだけど」
あの世界? まあ、冥界や天界があるくらいだから別の世界もある……のか? おさらばした、というのも気になる。うーむ、これは龍神の謎が増えてきたな。
血を流し過ぎて返って頭が冷静になったのか、自分には全く関係のない話を頭の中で整理していた。
「貴様は我々―――」
「なぁ、もういい加減帰ろうぜ? 退屈凌ぎの相手が見つかるかと思ったけど、どいつもこいつも期待外れ過ぎんだろ」
何かを言いかけていたベルゼを遮ったのは後ろにいた茶髪の男だ。
体格がかなり厳つく、目付きの悪い大男。
「黙れ、ネイド。他はともかく、お前如きではこの男に手も足もでまい」
「…………ハ、ハハハ、ブハハハハハッ!」
それは大層可笑しそうに笑っていた。
普段真面目な奴がふとした時に冗談を言って大爆笑するみたいな感じだ。
「おいおい、ベルゼ。お前の眼腐ってんじゃねぇか? そこの男が俺より強い? ―――有り得ねぇよ!」
気付いたときにはネイドが龍神の目の前で腕を振り上げてるところだった。
龍神も動きが見えてないのか、立ってるだけだ。
「うわっ!」
ネイドの拳が豪快に振るわれた瞬間、発生した衝撃波でアーシアと共に吹き飛ばされた。
アーシアを庇うことを忘れずに慌てて起き上がって龍神のいた場所を見る。
「ほれ見ろ。こいつのどこが強いんだよ。力込めすぎて肉片一つ残らず消えちまった!」
そこには―――ネイドしかいなかった。
「た、龍神さん……が……」
アーシアの顔はすっかり青ざめていた。
あいつ……よくも龍神を!
頭に血が上る。
レイナーレへの憎しみよりもずっと強い怒りだ。
あいつに敵わないと分かっていても、身体が限界だとしても一発殴らずにはいられなかった。
「待つんだ兵藤君」
「離せよ木場! あいつは龍神を殺したんだぞ!? お前は憎くないのかよ!?」
駆け出そうとしたら木場に肩を摑まれて止められてしまった。
木場の顔が龍神が殺されたことに微塵も動揺していないのが俺の神経を逆なでした。
「……空先輩を勝手に殺さないでください」
「へ?」
小猫ちゃんに軽くチョップされ、少しだけ怒りが収まった。
「……見ていればわかります」
小猫ちゃんの指差す方向には笑うネイド―――とその後ろには無傷の龍神がいた! 良かった! ホントに良かった!
あの攻撃をどうやって躱したのかという疑問よりも、生きていたことの喜びが勝った。
「赤龍帝。今度はお前で遊んでやろうか? かかって来いよ」
未だに気付いていないのはネイド一人だけ。さっきまであいつに対して怒っていたはずなのに今は憐みしかない。
「ビビッて来れないのか? だったらこっちから―――」
「おーい、どっち見てんだ?」
「ん? なん―――ウゴッ!?」
ネイドは声に反応して振り返ったと同時に顔面に右ストレートを喰らった。
体重差があったからネイドは吹き飛ぶことはなく、その場に膝をつく。
「テメェ……生きてたのか。いや、これで俺の楽しみが増えたぜ!」
反撃とばかりにネイドが殴りかかって来る。
一発でも当たればやばそうなのに龍神は軽やかなステップでそれらを躱していく。
「ちょこまかと! 避けてんじゃ! ねぇよ!」
「お前が鈍間なだけ」
鈍間って……俺からすれば速過ぎて見えないんですけど!
「これならどうだ! オラァッ!」
ネイドの腕に魔力が集中すると、ただでさえ巨大だというのにさらに腕が肥大化した。
さながら当たれば木っ端微塵にされそうなハンマーと言ったところか。
「―――砕け散れ」
それを龍神は真正面から小さな拳で受け止めた! それどころか相手の腕を粉砕して押し返した!
最後に跳び上がった龍神が俺にも見える速度でネイドの脳天に踵落とし。
うつ伏せにネイドが倒れた。
よく見ると白目を向いていて気絶していた。
あの大男をあんなにあっさり倒したのか!?
「こいつ、ネイドとか言ったっけ? 新米?」
「せやで。一年前くらいに兵士になったんや。君が相手とはいえまだまだひよっこもいいところやな」
答えたのはベルゼではなく、一番離れた場所にいた細身の男。
いつの間にかベルゼの傍にいた。
糸目で薄ら笑い、おまけに似非関西弁。全体的に怪しさと不気味さしか感じない。
あれでひよっこ? ……そしたら俺はミジンコか何かですかね?
「そっか」
龍神は興味なさそうにネイドの太い首を掴み、雑に二人の下に投げ捨てた。
「そいつが目を覚ましたら伝えておけ。“俺を倒したいならもっと強くなれ”って」
「アハハ、相変わらず君は甘ちゃんやな。だからこそ選ばれたわけでもあるか。ほんじゃ、今日はこの辺りで失礼させてもらいますわ。紅い悪魔さんがそろそろ来そうやしな」
「……次に会ったときは貴様を連れ帰るぞ、龍神空」
ベルゼの足元を中心にして赤い魔法陣が展開され、すぐに光が三人の姿を消してしまった。どこかに転移したようだ。
三人が完全にいなくなってすぐに部長と朱乃さんが聖堂内に入って来たのだった。
主人公の活躍少ない……。