俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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今回も感想からのネタがあります


互いに馬鹿の世話で辛いがどうするべきだろうか?

「うーん。反応がイマイチ。これは似合ってないか」

 

 俺の前で水着姿になった遥は俺の反応を見て少し残念そうな顔になる。毎年のことだが水着を何着も買っては俺に意見を求めるのだ、この馬鹿は。今は黒のハイレグ水着を着ているが、身長に合わせたサイズのためか少しキツそうだ。何処が、とは言わないがな。

 

「……どれでも変わらんだろうに」

 

「へぇ、どっちの意味だい? ああ、どれも似合ってるって意味か。それならもっと反応してくれてもいいと思うけどね」

 

「お前の好きな方の解釈で良い。それと反応しろというが……無茶言うな」

 

 この馬鹿の見た目がいいのは俺も認めよう。だが、付き合いが長すぎて美少女とは認めても、異性としての好意を向ける気にはならんし、先ほどから水着を見せられても欲情する気にもならない。まあ、祖父母の頃からの付き合いだからな。父さん達も何か切っ掛けがあって相手を異性として見だしたと言っていたが、その切っ掛けは覚えていないらしい。

 

 まあ、俺達には関係のない事だ。俺が此奴を女として見るなど天地が引っ繰り返っても有り得ないからな。

 

「君は相変わらずノリが悪いな。此処は”遥ちゃんマジ美少女! 今すぐ好きにしたいZE!”とか言う所じゃないかい?」

 

「言う所じゃないな。いくら美少女でも言動でマイナスだ。もうそろそろ終わりにしよう、飽きてきた」

 

 正直言って怠い。着替えの度に部屋の外に出て、ソファーに座って色々とポーズを取るのを見せられているが、レンタルビデオ屋にでも行って海外ドラマでも借りた方がずっと有益だ。いや、そもそも休日の時間を使ってまで俺はいったい何を律義に付き合って……。

 

 

 

 

「飽きてきた、ねぇ。……なら、もっと過激なことするかい? た、と、え、ばぁ……」

 

 遥は熱病にでも浮かされたのかしなを作りながら俺の隣に座り、腕を絡みつかせて体を摺り寄せる。……ああ、成程。色仕掛けか。一瞬何をしたいのか分からなかった。

 

「偶には二人で保健体育の勉強と洒落込もうじゃないか。前にも言ったけど、君になら好きに触れられても構わないんだぜ? 男女関係なく個人としてそのくらいの好意を向けているんだ。 ……でも、君が望むなら君を異性として好きになろうじゃないか」

 

「……そういう事は本当に異性として好きになってからにしろ。おふざけでないのなら俺も真摯に対応しよう」

 

 しかし信頼あっての事なのだろうが、此奴のスキンシップは激し過ぎるな。いや、他の男は毛嫌いしてるから妙なことになる心配はないのだが。俺より強いしな。

 

「おいおい、恋の形は人によりけりだぜ? 勢いで関係を持ってから始まる恋だってあり得るんじゃないかい? ……まあ、君が嫌なら此処で止めておこう。嫌われたくはないしね」

 

「前も言ったが俺がお前を嫌いになることはない。嫌うほどのことは事前に止めるからな」

 

 それに何だかんだ言って最終的には俺の言葉に従って止めてくれる。だから慌てず冷静に対処できるんだ

 

 

 ……だが、俺にも分らんな。俺が此奴を異性として見ることはないと思ったが、此奴がそんな関係を求めてきたら、俺はどのような対応をするのだろうか。流石に今のままの関係では居られないだろうしな……。

 

 

「うん。それこそ君だ。好きだぜ。もちろん異性としてではないけれどもね」

 

「俺もお前は好きだ。ラブではなくライクでな」

 

 遥はクスクス笑いながら次の水着を手に取り、ドアを指差す。まだ続ける気らしいが、此処まで付き合ったのだから最後まで……おや、誰か来たようだ。

 

「客人だ。恥になるからお前は姿を見せるな」

 

 遥に釘を刺し、チャイムを鳴らした相手のもとへと急ぐ。さて、このような休日の昼間にやって来るのは一体誰だ?

 

 

 

「久しぶりだな、元気にしていたか?」

 

 ドアを開けると其処に立っていたのはアリーゼだった。どうやら住居はバレていたらしい。服装は何時もの軍服ではなくスーツだ。

 

「申し訳有りませんが何方でしょうか? 貴女様のご尊顔に私めは一切の記憶がございません。では、少々立て込んでいますので此処で失礼いたします」

 

 即座に門を閉めようとするが指が差し込まれる。ドアに指先が挟まり、それなりの力で占めているが流石は人外、鬼の肉体はドアで挟まれても然程痛痒を感じてはいないらしい。つまりあのドⅯはどれほどの強さで責められたいと思っているのやら、考えるのでさえ頭痛を覚える。

 

 これ以上馬鹿の相手などしていられるかっ! 遥だけで十分だっ!!

 

「ちょっと待てっ!? 何度も会っているだろう!?」

 

「人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです」

 

「ええい! 今日は詫びに参った。ここ最近、夢に従者が侵入しては痴態を晒して無礼を働いていると知ってな。詰まらない物だが菓子折りを受け取ってくれ」

 

 片手で無理やりドアを開けられ、紙袋を差し出される。菓子折り……これはまさか、かの有名な……。

 

「山吹色のお菓子か?」

 

 饅頭の箱の中に大判小判がザックザク。俺はさしずめ悪代官か。さて、だとすると犬将軍に犬の毛皮を送ったらしい老人は誰が当て嵌まるのだろうか。……下らんことを考えてしまったな

 

「いや、いたって普通の白いクリーム大福だ。チョコかカスタードかで迷ったが、両方入っているのにしておいた。馬鹿が媚薬を仕込もうとしたから止めておいたぞ。調べるなら調べろ」

 

「……お前も苦労しているな」

 

 ……なんだ、違うのか。まあ、探知系の能力に反応はなかった事だし、今後の情報収集のためにも大人しく受け取っておくか。……上層部には引き込めないかと言って来るド阿呆が居るが、俺の胃を壊す気か? あの馬鹿の扱いを他の誰に任せるというんだ……。

 

 うん。此奴も馬鹿には変わりないが少しだけ共感してやれそうだ。とんでもない馬鹿の面倒を見なくてはならないという点においてだけだがな。

 

 

「……少し待っていろ」

 

「なんだ? 私とデートでもしてくれるのか?」

 

 ……この女、初対面から段々化けの皮が剥がれて来たな。当初の傲慢不遜な態度が一変して、焔を前にした時の田中の何かを期待する様子似た物が見え隠れしている。俺は玄関でアリーゼを待たせ、冷蔵庫の中で邪魔になっているナメタケの瓶を大福を入れていた紙袋に詰める。

 

 

 

「余っていてな、お裾分けだ」

 

 別名、不要な物を押し付ける。嫌いではないのだが、轟と半分に分けても量が凄まじくてな。微妙に賞味期限が近いし、残りの未開封の物を全て押し付けた。

 

 

「むっ。わ、悪いな。……なんだ。私は異性からの贈り物など、下の者からの貢ぎの品しか経験が無くてな。惚れた相手からの贈り物とは此処まで心が温かくなるものなのか……」

 

 ナメタケが入った紙袋をギュッと抱きしめるアリーゼの姿を見ていると心が少し痛む。まあ、敵だしな。なんでラスボスに従っているのか『原作』を流し読みでしか読んでなかったから忘れたが、何でだったか?

 

 

「私が組織に離反せずに属している理由? 呪いを掛けられているというのもあるが、私の敵は私の一族を滅ぼした奴だけだ。どの様な理由であれ、仲間と認めた相手を裏切る真似はしない」

 

「……それは俺も同じなのだがな」

 

「安心しろ。貴様は私が無理やり連れ帰る。故に裏切りではないぞ? では、さらばだ。次の語らいは寝所で行おう」

 

 自信に満ちた顔で断固お断りしたいことを言い切ると去って行く。……疲れた。本格的に精神的な疲労がやばいぞ。

 

 

 

 

「おや、終わったのかい? ……どうかした?」

 

「疲れた。……寝る」

 

 青のビキニを着ている遥の隣を通り、俺はベッドにうつ伏せに倒れこむ。すると背中に重みが加わった。

 

「マッサージしてあげよう。……普通のと性的なのと、どっちが良いかい?」

 

「普通ので頼む……もうツッコむ気力も無い」

 

「ふふふ、突っ込むとか大胆になったね。君からしなくても私がリードしてやるぜ? まあ、私も経験はないけど知識は君より豊富だし? ある程度の年齢を重ねたら痛みが増すらしいから君が望むならさ……って、寝てるよ」

 

 馬鹿な事を言いながらもマッサージはちゃんと行われており、俺は心地よい眠りにつく。遥は俺の寝顔をしばらく眺め、体が冷えないように上から布団だけ被せると部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

「しかし私がオリ主なのにヒロイン達との百合フラグがそれほど進展しないなぁ。まあ、無理な時は誰かに奪われる前に君と……なーんてね。全然そんな気はないよ。たとえ君とそんな仲にならなくても、君は私のそばにずっと居てくれるからね」

 

 ……ああ、余談だが俺が奴に感心していることが一つある。神話に存在する武器を呼び出せるということは、キューピットの矢も呼び出せるという事なんだが(実際、自分の飼い猫の恋に使った)、好みの女子を口説くのに一切使っていない。転生前はフラれた事で引き籠ったのにな。

 

 あの時は本当に大変だった。毎日様子を見に行って話をして、漸く出かけたら……だからな。

 

 

 

 

 

 

「見てくれ! 彼奴の家に行ったらこれをくれたんだ。ナ、ナメタケの花言葉は何だ? 取り敢えず一生の宝物にして、二人の子供に”お父さんから初めて貰った物だ”って見せなくては」

 

(キノコの花言葉は『疑い』でしたわね)

 

「取り敢えず食おうぜ、アリーゼ様」

 

「嫌だっ! 凍らせて一生保存する!」

 

 

 

~オマケ~

 

 

「教えて! 遥さん!! さてさて、久し振りなこのコーナー! 張り切って行こう」

 

「今回は俺達に対する一般生徒からの印象だ」

 

委員長

 

『少し頑固だけど頼りになるよな。頼れる委員長だ』

 

『実は結構人気有るんだけど、あそこまでラブラブなの見せられたらね。え? 付き合ってない? エイプリルフールはまだ先よ?』

 

神野

 

『蔑んだ目で見られたいって奴が多いよ。絶対零度のツンがたまらないってさ』

 

『委員長とすごいラブラブだよねー。女の子には優しいし、委員長に嫉妬して貰うためにレズの振りしてる所も可愛いわ』

 

 

『うーん。委員長達とは関わるけど、少し孤立してるからな』

 

『警戒心の強い小動物っぽくて可愛いわ。お菓子あげると喜ぶし』

 

 

『良い奴だよ。少し暑苦しいときあるけど』

 

『絶対鈍感よ。見ていて分かるわ。部活に青春を捧げるスポーツマンって感じね』

 

治癒崎

 

『ちっこいけど胸が大きいし人気あるぜ。天然系だしな』

 

『・・・・・・うん、良い子よ?』

 

田中

 

『うん。クラスメイトにいたな』

 

『焔君に惚れてるっぽいけど、どうなるかしら。濃いメンツの中に入るから印象が薄いのよね』




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