俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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前回一気に下がった  何が悪かったのやら  お気に入りは上がったけど


彼女を意識すると辛いのだがどうすべきだろうか?

 組織に属する以上、色々としがらみも発生する。それは超問題児と認識されている馬鹿と、大変遺憾なことにその押さえ役として認識されてしまった俺も同じことで、この日は組織に関係する者達の船上パーティに支部長である父さんのお供で参加させられていた。

 

「ああ、不快だ不愉快だ。初対面の美少女に対し、財力をひけらかせば口説けると思って言い寄るなんてさ!」

 

 すこし潮風に当たりたいと言って会場を抜け出した遥は不愉快そうに言っているが、初対面の美少女に自分の力をひけらかして口説きにかかるのはお前であると言いたくなった。

 

「まあ、普段のように見下したような態度をとらなかったのは感心しよう。ほら、適当にお前好みの料理と飲み物を持ってきたぞ」

 

 普段は周囲の目を気にしないこの馬鹿も、弁えるべき場では見事に猫をかぶる。非常にストレスになるからと短時間しか保たないのだがな。

 

「だが、確かにひっきりなしに口説かれては辟易するだろうな。しかしこれで証明されて良かったじゃないか。お前が美少女だとな」

 

 今日の遥だが、文句の言いようの無いほどに綺麗に着飾っていた。黒いパーティドレスに結い上げた髪に付けた髪留め以外に装飾品は無く、薄化粧さえしていないが、それでも元々の器量の良さがそれを補って余りある。いや、寧ろ余計な装飾が無いことで本来の美しさを現していた。

 

 だからこそ悪評を知ってなお口説きにかかるのがいたのだが。

 

「へえ、君がそう言うなんて珍しい。私の魅力に気付いて惚れたかい? ははは、君にだったら口説かれても不快じゃないぜ?」

 

「ああ、初対面だったら声くらいは掛けたかもな。痘痕も靨ということで言動も気にならなく、は無理だな。寧ろ見た目が良いせいで言動の酷さが際立っている。千年の恋も、という奴だ」

 

 俺の発言にニヤニヤしていた遥だが、途中から拗ねたように膨れ面になる。それを見ているとついつい笑みが浮かんでしまった。

 

「ふむ。やはりお前はお前らしくしているのが一番だ。迷惑さえ掛けられないのなら、取り繕った時よりもずっと好きだな」

 

「そりゃ好きでもないのなら迷惑掛ける相手にずっと付き合いはしないだろ。あっ、そうだ。ちょうど抜け出したし、君から告白されて付き合うことにしたってのはどうだい?」

 

「迷惑を掛けている自覚があるなら何故自重しないんだ、お前は。・・・・・・そうだな。別に構わんが、告白したのはお前からだ」

 

 そこまで譲歩してやる気はない。只でさえ此奴と付き合うというおぞましい嘘を吐くのだから、せめて告白されたから受け入れてやった、ということにしたい。

 

 遥は指先を口元に当て、少し考えたがやれやれといった風にため息を吐いた。いや、俺がお前のために協力するんだぞ?

 

「じゃあ、小さい時から君が好きだ、付き合ってくれ、って感じのことを言ったってことで。じゃあ、そろそろダンスの時間だし戻る頃合いだけどさ・・・・・・此処で踊ろうか。偽物の恋人として踊る前に、私達本来の関係としてさ」

 

 何時もの飄々とした笑顔を浮かべながら差し出された手を取り、月明かりの下で習いたてのぎこちないダンスを踊る。さんざん苦労させられているが、此奴と一緒にいるときが一番楽しいな。

 

 

 

「・・・・・・むっ」

 

「おや? 新しい能力が開花したかい?」

 

 船内から漏れてくる音楽に合わせて踊っている最中、世界の何処かで誰かが能力に目覚めたようだ。『予知夢』という便利そうな能力ではあるが、確率の高い幾つかの未来の内、どれかの何時かの時間を無作為に夢で見るという微妙系だ。例え3%でも他が1%なら確率が高いということだし、一番目と二番目に大差があっても二番目の確率のを見る可能性もある。

 

「役に立たないね、それ」

 

「レベルが高ければ時期とかも分かりそうなのだがな。任意で使えない以上、基本無視の方向で、見た後で考えよう」

 

「もしかしたら君と私が結婚している未来を見るかもね」

 

 可能性は否定できない。家族に外堀を埋められているし、他に結婚しそうな相手も今は居ないので、互いに独身だし、ってな感じで結婚する恐ろしい未来予想図が浮かんでしまった。いや、結局誰と結婚しても遥の世話を焼くのなら、相手に気を使わない分良いのかもしれないが・・・・・・。

 

 

「うん。絶対にないな。一週間以内にそんな予知夢を見たらラーメンを奢ってやる」

 

「誕生日プレゼント、くれた人には贈っているから結構カツカツの癖に大丈夫かい? じゃあ、見なかったら普段のお礼に今度行く予定のピクニックのお弁当、全部私が作ろうじゃないか」

 

 笑いながらこんな賭をした日の夜、早速能力が発動した。どうやら明晰夢として見るらしく、頭もはっきりしていて周囲の状況も理解できる。

 

 

 

「・・・・・・マジか」

 

 ついつい口調が乱れてしまうが許して欲しい。俺はホテルの一室のベッドの中に居て、隣では俺の手を握った状態で寝ている少し成長した遥が居た。尚、互いに全裸である。それどころか汚れ具合や臭いからして何があったかは一目瞭然だ。

 

「いや、待て待て待て。酒の勢いでという可能性もあるし、まだ結婚したとは・・・・・・」

 

 空いた手で顔を覆いながら呟くと遥が身動ぎして起き上がる。心底幸せそうな表情を浮かべながらだ。

 

「・・・・・・幸せってこういう事をいうんだね。可愛い女の子と遊ぶより君と居る方が楽しいと分かっていても両方手に入れようとしたけど、ずっと君と居る方が幸せだよ」

 

 トロンとした目のまま腕が俺の首に回され、数年ほどで更に成長した肉体が押し付けられる。唇には当然唇が押し付けられ、舌の先が僅かに入ってきた。

 

「おはようのキスもしたし、昨日の続きと行こうか。最後は君に任せたし、私がリードしても良いだろう。ふふふ、これも夫婦の共同作業って奴か。二回目は君から頼むぜ? 激しいのも優しいのも君にお任せだ。宜しくね、ア、ナ、タ」

 

 飛びかかるように俺に飛び乗った遥は再びキスをして、そのまま・・・・・・。

 

 

 

「はっ!?」

 

 ギリギリのところで目が覚める。寝汗がビッショリで気持ちが悪い。いや、昨日潮風に当たったのに疲れたからと帰って直ぐに寝てしまったのもあるな。遥が調子に乗って腕に抱きついたり頬にキスをしたりとやりたい放題だったから精神的に疲れてしまった。

 

 

「風呂に入るか・・・・・・」

 

 母さんが水を張っていてくれたから能力で適温まで沸かし、入浴剤を入れてゆっくり浸かる。足を伸ばして天井を見上げていると疲れが溶け出すようだった。

 

「極楽極楽」

 

 夢のことは可能性の一つとして割り切ろう。遥に対して変な意識を持ちたくはないしな。・・・・・・ラーメンは適当な内容を言って奢ってやるか。ただ、家族に知られたら外堀が更に・・・・・・恐ろしい話だ。話すことが夢に繋がるかもしれんとは。

 

「・・・・・・だが、遥の奴、更に綺麗になっていたな・・・・・・」

 

 夢で見た姿を思い出すと恥ずかしくなる。だから注意散漫になってしまっていた。

 

「お風呂お風呂・・・・・・あっ」

 

 ドアが開き、遥が姿を見せる。此奴も汗を流そうとでもしたのだろう。当然全裸だ。隠そうともせずに入ってきたので全身を直視してしまった。

 

 

「っ! スマン!」

 

 俺が謝るべきかは別として、直ぐに後ろを向く。だが、夢での姿と先ほどの姿の両方が焼き付いて忘れられそうになかった。

 

「いやいや、私の不注意だ。でも、どうしようか。着てた服を洗濯機に入れて回しちゃったし・・・・・・」

 

「なら、俺は出る。・・・・・・少し後ろを向いていてくれ」

 

 返事を待ち、壁の方を向いたまま浴室を出ようと思ったのだが、浴槽を出る前に肩を押さえつけられた。

 

「前にも言ったけど、自分を犠牲にして私を優先するなよ。・・・・・・よし! 此処は折衷案で行こうか。ちょっと端によって」

 

 ついつい言われるがままに端によると湯が溢れる。何が浴槽に入ってきたか直ぐに理解した。なにせ背中に背中らしき感触が伝わって来たのだからな。

 

 

「うんうん。これで解決だ。小さい頃は一緒に入ったし、気にしなくて良いよ。あっ、直ぐに出ようとしたら悲鳴上げるから」

 

「お前は鬼かっ!」

 

 此処まで来たら仕方がない。俺は背後の存在をなるべく気にしないように心掛けた。

 

 

「そうそう。夢見たかい?」

 

「・・・・・・ラーメンは奢ってやる」

 

「そう。私達、結婚する可能性も有るんだ。ふぅん」

 

 遥の声からは特に何も感じない。・・・・・・うん。これは本当に気にしない方が良いな。意識するのは馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

 

「ところで今度のピクニックだけど治癒崎も来るらしいぞ」

 

「・・・・・・弁当は私達で作るって言い含めてくれよ?」

 

 当然、それは理解している。調理実習の時に起きた悲劇を誰が忘れるか。・・・・・・この世界には前の世界には存在するはずのない絶対的な法則が存在する。本当に恐ろしい法則が・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「皆とピクニック楽しみだなー。よーし! 私も何か作って持って行こー」




感想待っています

今回も募集から内容が浮かんだ。次回も感想を参考に浮かんでいます

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