俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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雑誌のオマケとかにあった見る角度で絵が変わるカード、あれってなんていう名前でしたっけ


彼の姿を見ているのは辛いのだけど、どうすべきだい?

「・・・・・・どうしてこうなった」

 

 私の横でうなだれる彼の肩に手を置くかどうするか少し迷う。やれやれ、常識を知らない奴は本当に困るよ。私の大切な彼にこんなストレスを掛けるなんてさ。

 

 

「へぇ、君は回復系の能力なんだね。実に興味深いんだよっ! 回復の効果はどの程度? 切断した四肢をくっつけられる? 抉れた部分に使ったらどうなるんだい? 間に異物があった場合は? さあさあ! 全部教えるんだねっ!」

 

「うーん。分かんないよー」

 

 矢継ぎ早の質問に鹿目も困っているし、あの女は少し無礼だよ。礼儀くらいちゃんとしないと駄目だよね。そろそろ止めようかな? 助けたお礼がしたいって言ったらお風呂で背中でも流して貰うとして、事故を装ってあの胸にワンタッチしても問題ないだろうしさ。

 

「なら、適当な敵を捕まえて実験スタートだ、ぬぇ!?」

 

「いい加減にしろ、馬鹿者」

 

 あっ、脳天に辞書がたたき落とされた。あれ痛いんだよねぇ。何時も食らっている私は見ているだけで頭がズキズキ痛む気がして思わず手でさする。受けた本人は悶絶して涙目だ。ふふふ、無様無様。見てて笑えるね。

 

「酷いんだよっ!? 私は天才だし、世界最高の頭脳に辞書を叩きつけるなんて何考えているんだねっ!?」

 

「何を考えているんだ、は俺の言葉だ! この大馬鹿者めっ!!」

 

 涙目で抗議する少女、エリアーデを彼は一喝する。そもそも彼女がどうして私達と行動しているのか。それは少し前に遡る・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「今日は転校生がやってくる。仲良くしてやってくれ。あと、余計なことするなよ、神野」

 

 さて、今日休みの担任の替わりにホームルームに来た体育教師(ジャージが似合う姉御系)が私を名指しにすると言うことは・・・・・・女子か! それも美少女だ。クラスメイトも察したのか男子が嬉しそうにしているし、早く顔が見たいね。ふふふ、右も左も分からずに困っている子猫ちゃんに優しく手を差し伸べれば・・・・・・。

 

 でも、問題は彼だ。委員長だし、皆に頼られているから世話を任されるだろうから、幼馴染みとして手伝うって口実で近寄っても彼には下心を読まれているからなぁ。

 

 だけど、転校生が入ってきた瞬間、私は思わず身構える。それは刹那や鹿目ちゃんも同じで、ついでに焔も驚いている。

 

 

「初めまして、諸君。私はエリアーデ・エトラーゼだよっ! 宜しく頼むんだねっ!」

 

 先日ピクニック中に襲い掛かり、鹿目ちゃんの手料理(劇物)を破壊してくれた命の恩人・・・・・・じゃなくて敵組織幹部の科学者だ。私達の視線はリーダーである彼に注がれ、何かを諦めた様な顔を見て察した。何かを知っているようだが、間違いなく苦労しているな、と。

 

 ・・・・・・許せないな。彼に苦労させるなんてさ。好みじゃないってのも有るけど、私のエリアーデへの印象は良くない物だった。

 

 

 

「組織を裏切った? またどうして・・・・・・」

 

 放課後、集まった私達は何故エリアーデが転校してきたのかの説明を彼から受けていた。私達と一戦交えてから三日後に投降を申し出てきたらしい。

 

「この前の襲撃は命令違反だったんだね。私人間だけど、元ボスは人間が嫌いだから始末されそうになって、面倒だから情報提供と引き換えに投降したらスカウトされたんだね。ってな訳で宜しく頼むんだよ」

 

 どうも彼女の科学力に目を付けた上層部が彼女の引込みを提案し、問題児ばかりのうちの支部に回されて来たとか。……信用できないなぁ。私、彼女は嫌いだ。私だけじゃなく、彼まで実験対象にするって言ったんだから。

 

「普段は他の人が見張るけど、学校では俺達が見張れとのことらしい。……はあ」

 

 心労からか深い溜息を吐く彼を見ると心が痛む。学校に通うのも私達の日常を観察する為らしいし、変な真似をしたら容赦はしないでおこう。

 

 何時も私の傍に居てくれる君。昔から私を守ってくれた君。私の大切な君。私が絶対に君を守るよ……。

 

 

 

 

「あの馬鹿、何を考えている……」

 

 エリアーデがクラスに入って来てから一週間、彼は気苦労しっぱなしだった。科学室での授業では怪しい薬品を調合し、お昼には妙なものが入った食べ物を勧めてくる。もう何度辞書が頭に落とされたか分らないほどだ。おかげで心労が溜まっている彼は忙しくて今までのように話す時間が減っているし……。

 

 今のようにソファーに隣り合って座るのも久しぶりだ。こういう彼との何気ない時間が私は好きだ。幼いころから一緒だったし、近くに居ないと妙な気分になるんだよね。正直、可愛い子猫ちゃん達と一緒にいる時より楽しい。

 

 まあ、それはそれ、これはこれ。私は彼の傍に居ながらハーレムを作る気だけどね。

 

「そもそも何故妙な奴らばかり集まるんだ……」

 

「そりゃ原作主人公が居るからじゃないかい? オリ主は私だけど、奴がトラブルを引き寄せているんだよ」

 

 あーあ、見てられないよ。彼がこんな風に愚痴るのは久しぶりで、本当に参っている証拠だ。仕方ないなあ……。

 

「ほら、私の膝枕で少し眠りなよ。少し休んだ方が良いって」

 

「……そうする」

 

 私が膝を叩くと彼は迷いなく頭を乗せる。右手で彼の髪を優しく撫でながら左手を伸ばすと彼も手を伸ばし、私達は手を握り合った。うん、落ち着くなぁ。昔から不安な時は手を握って貰っていたし、本当に落ち着くよ。

 

「私の膝はどうだい? ……あらら。余程疲れていたんだね」

 

 何時もなら、性格は最悪だけど頭の置き心地は悪くないな、位言うのに何も言わないと思ったら寝ているよ。安らかにすやすやと寝息を立てて、リラックスしている彼の姿を見ると少し安心した。

 

「子守歌でも歌ってあげようと思ったのにさ。私の歌が聞けないなんて残念だったね」

 

 私にとって彼は家族同様に大切な存在さ。昔から一緒に居て、何があっても傍に居てくれるって信じて疑わない存在。……そう言えば結婚する可能性もあるんだったね。

 

 彼の事は好きだけど、多分異性への好きではない。異性としてではなく、彼自身として好きなんだ。結婚は……しても良いと思っているし、結婚するなら彼以外にあり得ないけど、結婚したい訳じゃない。私達の関係が結婚するかしないか程度で変わるはずがないしね。

 

「私も少し眠ろうかなぁ……」

 

 彼の頭を膝に乗せ、彼の手を握っていると私の心も安らいで眠気がやって来た。そういえば昔はよく一緒にお昼寝したっけ。互いの家に泊まりに行って、布団を並べて夜遅くまでお喋りしてたら怒られたね。まあ、お喋りといっても私の話を君が一方的に聞いて返事をしてくれていたんだけどさ。

 

 

「本当に感謝しているよ。私の大切で大好きな君。これからもずっと一緒だぜ?」

 

 彼への思いを口にするのは何一つ恥ずかしくない。さて、本当に眠くて動きたくないな。このまま寝ちゃおうっと……。

 

 

 ああ、彼の気晴らしに何処か遊びに誘おう。どうせなら私も楽しめる場所が良いなぁ。ああ、あそこが良い。二人っきりで遊びに行って気晴らしをさせてあげよう。うん、そうしよう……。

 

 

 次の日曜日に彼を遊びに誘おうと決めた日の翌日、私達はエリアーデの家を探していた。監視に特化した後方部隊の人が見張っている代わりに提供した土地に住んでいるそうだけど……。

 

 

「……これかな?」

 

「住所は間違いないが……」

 

 渡されたメモを頼りに来てみれば、其処には巨大な大仏が鎮座していた。胡坐を組んだ足の裏に扉が有るけど、この前のロボといい、彼女は和風っぽい何かが好きなのかな? 

 

 

 これを断じて和風とは絶対に認めたくないけどねっ! 

 

 

 

「やあやあ。よく来てくれたんだよ。お茶でも飲んでいくんだね」

 

「その湯飲みの中の妙に泡立っている液体なら飲まん」

 

 出迎えたエリアーデが持って来たお盆の上には泡立ち続ける奇妙奇天烈な色の液体が入っている。こんなのに引っ掛かる訳がないだろ。

 

「じゃあレントゲン取るかい? 怪しい薬は飲まないかい?」

 

「取らないし飲まない。これ以上勧めるなら……」

 

「わ、分かったんだよっ! だから辞書は勘弁するんだねっ! あれをこれ以上食らったら私の天才的頭脳がパ~プリンなんだよっ!?」

 

 少ししつこいエリアーデも彼が懐から辞書を見せれば諦めた様子。あれ、本当に痛いんだよね。……おや? 

 

「これ何だい? ペアのブレスレット?」

 

 机の上に置いてあった装飾の少ないブレスレットが気になった私はそれを手に取る。金色と銀色のブレスレットは少し好みのデザインだった。

 

「なははははは! 聞いて驚くんだねっ! それは付けた二人をずっと傍に居させる力が有るんだよ」

 

「……ふーん」

 

 まあ、私と彼はずっと傍に居るけど? 最近、彼に言い寄るのが出て来たけど関係ないとはいえ、少し興味がわいた私は彼の右腕に片方を嵌め、もう片方を私の左腕に嵌めた。

 

「何も起こらないけど? あっ、トイレ借りるよ?」

 

「トイレならそこのドアを出て左の突き当りなんだね。それと効果だけど……」

 

 彼女の話に興味がない私はさっさとトイレに行こうとして、途中から先に進めなくなった。あれ?

 

「ふんっ! ……あれ?」

 

 どんなに力を入れて進もうとしても先に進めない。ところでブレスレットが怪しく光っている様な……。

 

 

 

「言った筈だね。二人をずっと傍に居させるって。まあ、試作品だから二十四時間で自動的に外れるんだよ」

 

「つまり一日経つまでは外れないのか。……鍵のような物は?」

 

「無いんだねっ!」

 

 私と彼の距離は約一メートル。明日が土曜で休みだったのは幸いか。

 

 

 

 

 

「じゃあトイレ行くからついて来て」

 

「少しは葛藤がないのかっ!?」

 

 君と私の間にそんな物がある訳ないじゃないか。馬鹿だなぁ……。




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本来繋がるのは轟の予定でしたが、書いているうちに彼女に持っていかれました

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