俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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思い付き第二弾 次はないかも モチベーションと思いつき次第

成りあがりの方で書けない無自覚系ラブコメを思いついたらこっちが更新です


幼馴染が残念過ぎるのだがどうすべきだろうか?

 ホームルーム前の教室で先程から感じる視線のした方を振り向くと、眼鏡の少女がサッと参考書に視線を戻す。だが、チラチラと俺の手元の作品に向けられていた。

 

「……」

 

 俺の手の中に有るのは虎のヌイグルミ。デフォルメされた虎が骨付き肉を両手……両前足? で抱えている、自分で言うのも何だがそれなりの出来栄えだ。

 

「こういうのが好きなのか? 意外だったな、轟」

 

「いえ、別に。私に必要なのは戦いと学問だけです」

 

 轟 刹那(とどろき せつな)、俺や遥と同様に組織に所属する少女。文系を思わせるショートヘアーで図書室にいそうなイメージを感じさせる。

 

 『疾風迅雷』という、まるで時間の流れが違うかのように超高速で動く強力な能力のレベルⅣだ。俺の能力は世界の何処かで能力が目覚める度にどういうのが使えるというのが分かり使えるのだが、レベルⅢだから彼女より遅い。其れこそ下位互換の『脚力強化』や『超加速』に『超感覚』等を重ね掛けすれば話は別なのだが……。

 

 うん? 俺は複数の能力を重ね掛けできるぞ? 同系統だけに限るが、重ねればレベルが上昇した場合と同じ効果を得られる。負担も大きいがな。……轟は両親を化け物に殺され幼いころから組織に所属しているという過去を持つ戦うヒロイン(メインヒロインと聞いている)だが、それを知った時に『ずるい』と睨まれた、まぁ、そうだろうな。所詮は貰い物の能力だ。ズルもいい所だろう

 

 ……まぁ、其れを言うなら彼女達も格が違う能力と補正的な幸運を作者という神に与えられた存在と言えるが。

 

「そういうの好きなんですか?」

 

「ああ、裁縫の類は趣味だ。ヌイグルミを作るのは好きだが、ヌイグルミ自体に興味はない」

 

「!」

 

 途端に何か期待するような光が轟の目に宿る。欲しいのだろうが……期待させるような事を言ってしまったな。

 

「あ、あの、其れでは……」

 

 このヌイグルミを貰えないか頼もうとした瞬間、轟の背後から陽気な声がしたそれを遮った。

 

「やあ! 今日も可愛いね、刹那。私と放課後にデートでもしないかい?」

 

「……しません」

 

 途端に苦々しい表情になる轟。何度も断っているのに朝っぱらからレズのKYにデートに誘われればそうなるか。だが、その程度で諦める馬鹿ではない。

 

 

「照れなくても良いんだよ? ああ、でも君はそんな奥ゆかしい所も魅力的だな」

 

 今日は(ほむら)(主人公)も治癒崎(ちゆざき)(回復担当のロリ系ヒロイン)も昨日の戦いの疲労で休んでいて、田中(こっちの世界を知っているだけの一般人。一応幼馴染系ヒロイン)は心配だからと休んでいるし、助けは入らない。

 

「おい、遥。ちょっと早いがハッピーバースデーだ」

 

 必然的に俺が何時もの様に止めるしかなく、ヌイグルミを押し付けると轟の顔があからさまに落ち込み、遥は逆にパァッと明るくなってヌイグルミを抱きしめた。

 

「やった! 今年は完成が早いんだね。リクエストした日は同じなのにさ」

 

「去年より俺の腕が上達しているだけだ。ほれ、授業の時は邪魔になるからロッカーにでも入れてこい」

 

「そうだね。行こうか、シャルル」

 

 手を動かしてさっさと行けと促せば愛おしそうにヌイグルミを抱きしめ、既に決めたらしい名前で呼びながら離れて行く遥。まったく、ああしている時だけは美少女なのだがな。何時もの言動が残念過ぎてマイナスが限界突破しているぞ。

 

「……あの人、意外な一面が有るんですね」

 

「うん? ああ、あの馬鹿者は可愛いもの好きだぞ。だから毎年毎年誕生日プレゼントに作品をリクエストされる。まぁ、俺も奴の頼みでなければ態々ヌイグルミなど作りはしない。他に趣味もあるしな」

 

 大体、彼奴は俺を何だと思っている。朝弱いから弁当が作れないからと俺に自分の分まで作らせるのだからな。いや、彼奴の両親は朝が忙しいし、昔は俺も両親が忙しい時は彼奴の家で平日の夕食や休日の昼夕両方を食べさせて貰っていたから別に良いのだが。

 

 

 

 

「それにだ。あの馬鹿者。俺は卵焼きは出汁巻きか塩胡椒が好きなのに、砂糖が良いと言って来るのだ。おかげで高校に入学してから昼食の弁当で甘い卵焼きしか食べていない。……どう思う?」

 

「……いえ、私からすればどうして貴方達二人が付き合っていないのか不思議です。むしろ付き合って下さればこちらに被害が出ないのにと抗議申し立てます。今直ぐ口説いてきて下さい」

 

 ……今、悍ましい事を言われたな。悪寒が走ったぞ。

 

 

 

 

 

 

 

「……むぅ。君と私がデキていると思われているから靡かなかったのか」

 

 いや、彼女達にそっちの趣味がなかっただけだろう、とは面倒なので口にしない。俺の内心など気付かない遥は今日のお弁当のツナサンドを片手に考え込んでいるが、どうすべきだろうか。

 

「私としては君が直ぐ近くに居るのは当たり前の事だし、君が居ないとか考えられないが……」

 

「光栄な事だな、まったく」

 

「ああ、そうだろう? 何せ私は絶世の美少女だからな。妖艶な容姿端麗頭脳明晰才色兼備。まさに完璧な美少女だ。クレオパトラや楊貴妃さえ私に嫉妬するだろう」

 

 俺は嫌味で言ったのだが、此奴の自信は何処から来るんだ? やはり神から貰った特典が悪い方向に作用しているのか。此処は一応言っておかないとな。

 

「貴様の何処が頭脳明晰才色兼備だ、馬鹿者。この前、オバさんは孫の顔は一生見られそうにないとか言っていたぞ」

 

 前世からある意味頭が良いのは認めるし、容姿に関する所も文句は言わん。隣に居るのが当然と言う所も否定はしないでおく。だが、言うべき所は言っておかないと此奴の為にならん。

 

「母さんがそんな事を……」

 

 珍しく顎に手を置いて考え込む遥。こうやって普通にしていればまともなのに、どうして此奴はこうも残念なのか。

 

 

「ああ。そうだ。可愛い子達とキャッキャウフフしながらも母さんに孫の顔を見せる方法を思いついた。君との間に子供を作れば良いんだ。万が一、いや、億が一、美少女ハーレムを築けなかった場合、最悪、君と結婚すれば独り身ではないと思っていたしな」

 

「まさに最悪最低な手段だな。唯でさえ後始末で苦労しているんだ。今の関係だけで十分だぞ、俺は」

 

 この馬鹿はこういう事を平気で口にするし、恥じらいを知らん。風呂が壊れたからとウチに風呂を借りに来た時、父さん達は居ないし別に気にしなくて良いかとバスタオル一枚で出て来て、ソファーでテレビを観ていた俺の隣で寛ぎ出したりと自由過ぎる。家でそうしているからと人様の家でまでそうするな。

 

 

 

「お前がそんなのだからオジさんから『ノシ付けてあげるからウチの馬鹿娘引き取ってくれないか?』とか言われるんだぞ」

 

「君に嫁ぐの自体は抵抗は無いが、馬鹿娘は酷いな。父さんに文句言わないと。あっ、そうそう。一応手付けを払っておこうか。今の所上手くフラグが立たなくて焦っているからね。……残りのヒロインは敵将軍とラスボスの娘か」

 

 何を思ったか遥は俺の手を掴み自分の胸に押し当てる。一瞬何があったか分からなかった俺だったが、我に帰るなり手を離し、即座に手刀を脳天に叩き込んでやった。

 

 

 

「こういうのをセクハラと言うんだ、馬鹿が」

 

「おいおい、スタイル抜群な上に美少女な幼馴染の胸を触っておいてその反応かい? ホモでないのは知っているが、流石に淡白すぎるよ? ちゃんと女の子の好みとかある?」

 

「貴様相手に正直に口に出すものか。調子に乗るのが目に見えている」

 

 悪くなかった、など決して口にはしない。俺は心に深くそう誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 この数年後、この馬鹿に酒の勢いで押し倒されて関係を持ったり、その後、残念な言動が少なくなって態度が恋する乙女になった馬鹿に何度も関係を持たされた際に攻守が逆転するのが何度も起きた結果、結婚を申し込むなど予想もしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 俺の好み? 何処かの付き合いの長い馬鹿から残念な言動を減らした様なのが好みだな。散々苦労掛ける阿呆も、俺と二人の時は比較的残念な言動が減るし、二人で遊びに行った時に見せる姿が何時もの姿なら俺も嬉しいのだが……。  

 

 ああ、残念な言動に苦労させられるが、此奴の個性だから完全に嫌いではない。何とかならないかとは思うがな。




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