俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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私に絵心でもあれば絵を乗せるんでしょうね 小学生低学年レベルで絵描きソフトも持っていないし無理ですけど 習ったことさえないし中学で最後だった美術の授業では書きやすいものばかり選んで楽していましたし


私に対して辛辣で辛いのだけどどうすべきなんだね?

「うんうん。何も問題ないんだねっ! 流石は私の作った存在なんだよっ!」

 

 専用のレーダーで小鈴の体を検査した私は何一つ問題がないという当然の結果に満足する。ロボとと言っても人工臓器に人工筋肉、犬の魂を改造した人造魂魄など、天才である私でなければ実現不可な絵空事の存在が確かに目の前に居る。

 

「終わったか。なら邪魔だから早く其処を退け。台から降りられぬではないか」

 

 ……なのに、なのにどうして主のインプットが委員長君なんだねっ!? もったいぶってないで早く私が起動させていれば私の忠実な部下が完成してあれやこれやと研究が捗った筈なんだよ。今も私に鬱陶しそうな視線を向けているし、本当に運命はままならないものだよね……。

 

「しかし意外なんだよ。まさか夜伽と聞いただけで動揺するんなんてさ」

 

「貴様はやはり阿呆だな。私は女としてではなく、忍びとして主殿の傍にお仕えしている。お望みなら兎も角、草の者が自ら身を捧げたいなどと口にするなど恥と知れっ!」

 

 うーん。委員長君を誘惑させて色々とサンプルを得る為に性交を可能にしたし、誘惑の成功率を上げる為に知識のインプットと肉体年齢の操作を与えたんだけど、性格設定を間違ったかな? 今は十六くらいの設定だけど、その気になれば±十歳の変化が可能だから成功率は高いはずなんだけどね。

 

「あっ、遥ちゃんだよ」

 

「ひっ!?」

 

 こんな場所に居る筈がないのに彼女の名前を聞いた途端に小鈴は胸を守るように抱き締めて飛び跳ねる。冷や汗をダラダラ流し小刻みに体が震えているけどどれだけトラウマなんだいっ!? 天井に足の指の力だけで張り付いて怯えながらキョロキョロしている姿は少し愉快だったよ。居ないと分かった瞬間に私の腕を捻り上げたけどね。

 

「凄く痛いんだよっ!?」

 

「当たり前だ、痛くしなければ無駄だと分からないのか、大馬鹿者が」

 

「その大馬鹿者に作られたのは君なんだよっ!? それに私が創造主なんだから神として崇めるべきでなんだよっ!?」

 

「はっ!」

 

 鼻で笑ったよ、このロボットっ!

 

「大馬鹿者でも奇跡的に私の様な存在を作り出せる。それに貴様が神? 人が神になれるものか。主殿を実験に使いたいなどと企む貴様に払う敬意など皆無に決まっておろう」

 

 随分と辛辣なんだねっ!? でも、君は知らないんだね。君の目で捉えた物と耳で捉えた音は送信されて私のパソコンに記録されていることをねっ! さて、後でこっそり観察なんだよ。

 

 

 

 

 

「ふふふふ。忍びたる者、こうして主君のお傍に陰ながら居続けるもの」

 

 画面を付けると天井に張り付いて委員長君の部屋を見下ろす映像が流れる。……ストーカーではないんだね、うん。きっと犬が飼い主の外出について行きたくて悲しそうな声で鳴いたり、忠義がおかしい方向に振り切れているとかそっちなんだよ。

 

「ふぅ。今日も疲れ……」

 

 風呂上がりの委員長君が寝るのか部屋に入ってきて、天井を見るなり固まる。頭痛を堪えるかのようにこめかみに指先を当て、何を思ったのかカーテンと窓を開けると小鈴の真下にやって来て両腕を伸ばす。これはハグっ!? まさか既にヤッてたのかねっ!?

 

「ほら、来い」

 

「は、はいっ!」

 

 これは間違いないんだよっ! 小鈴は委員長君の胸目掛けて飛び付き、私は固唾を飲んで展開を見守る。・性癖なども研究の参考になるからねっ!

 

「はい、キャッチ」

 

 ……あれ? 脇に手を当てて小鈴を抱きとめた彼はそのまま体を回転させて……見てた私が酔いだした瞬間、委員長君は窓目掛けて小鈴を放り投げた。

 

「&リリースっ! 寝室に忍び込むなと何度言わせるっ!」

 

「主殿ぉ~っ!!」

 

 過ぎに空中で一回転し、屋根に飛び乗った小鈴は窓から入ろうとするが鍵を掛けられカーテンを閉められる。あっ、泣き出した。

 

「……グスっ」

 

 膝を抱えて涙ぐむ小鈴。その背後から窓が開く音がして委員長君が指先で肩を叩いて振り向かせると入れとジェスチャーで示す。やれやれ、随分と甘いんだよ。

 

「主殿っ!」

 

 咄嗟に抱き着こうとしたのを身を翻して躱した委員長君は背後から肩を掴んで動きを止め、そのまま押すようにして部屋から追い出した。

 

「出ていけ」

 

「お、お待ちくださいっ! 拙者は忍びとして主君のお傍に……ひぇっ!?」

 

 背後から聞こえてきた足音に気付いたのだろうね。小鈴が恐る恐る振り向くと風呂上りの遥ちゃんがパジャマ姿で立っていたんだよ。うん、同性の私から見ても凄い色気だよ。こんなのが近くにいるなら下手な色仕掛けは通用しないんだろうね。

 

「恥ずかしがらなくても良いさ。私に身を委ねなよ、小鈴。あっ、懐かしい物が出てきたんだけど遊ぼうぜ」

 

 遥ちゃんが差し出したのは旧型の携帯ゲーム機。しかも二台。同じ色だけど、片方はどうしたんだろうね?

 

「別に構わないが……泣くなよ? 壊れたと思って新しいのを買ったら電池の向きが逆だった時や負けた時にピーピー泣いてたからな、お前は」

 

「う、五月蠅いよ! 何時の話だよ、全くさ……」

 

 ふてくされた彼女の顔なんて珍しいんだね。家では気が抜けるということか……良い情報が手に入ったんだよ。そんな風に思いながらも私は小鈴の視線に注目する。ゲーム機と委員長君に向けているし、一緒に遊びたいけど忍びの誇りが許さないんだね。まあ、彼に恋する乙女でもないし、その辺は本人の問題なんだよ。

 

「じゃあ俺の部屋でやろう。おい、お前も遊ぶか? っというか参加しろ。俺と組んでこの馬鹿を倒すぞ」

 

「ふぇ? で、ですが忍びが主君と共に遊戯に興じるなど不敬では……」

 

 ……あー、少し駄目だよ、君。願望と責務を天秤に掛けて願望を選べない者は何も手に入らない。この世は好き勝手した者の勝ちなんだよ。実際、断るときの小鈴の声には元気が無いんだね。

 

「別に俺が良いと言っている。俺は自分のが有るから遥のを……触るのも嫌か。よし。俺のを使え」

 

「は、はい! 御意に御座います!」

 

 声が弾んでいるし、多分尻尾代わりのポニーテールは盛大に振られているんだね。今度、感情や思考を計測する風にしてみるんだね。先程追い出される時と同様に方に手を置かれて小鈴は室内に戻る。最後に遥ちゃんが入って当然のようにベッドに座っている委員長君の背後に寝転がった。体を斜めにしているし、アレじゃあ小鈴が彼の隣に座れないじゃないか。

 

「……拙者は床で」

 

 椅子があるのに敢えて床に座る小鈴。ただし場所は委員長君の足の隣に座りベッドに背を預けてだったよ。少しでも近くにいたいんだね。視線は膝の上に注がれてるけど。

 

 

「……そう言えば主殿。本体が三台有るのは分かりますが、ソフトが三つ有るのは何故でしょう?」

 

「遥が俺が持ってたのをやりたがっていたから誕生日にヌイグルミと一緒に中古の箱と説明書無しをやったんだが、俺と遊びたいって同じソフトを親に買って貰ってたんだ」

 

 実に残念だと思うよ。それなら親に別の物を買って貰えば良かったのにね。それが普通の想いだと思うんだよ。だけど遥ちゃんの想いは別だったんだね。

 

「アレは失敗だったよ。君に無駄な出費をさせて悪かったね。今更だけどお詫びに胸でも揉むかい?」

 

「揉まん」

 

 自分のではなく相手の損失を悔やむとか意味不明なんだね。天才の私じゃ常じ……変人の思考回路は理解不能だね。

 

 あっ、小鈴が自分の胸と遥ちゃんの胸を見比べて何やら呟いてる。ボリュームアップだね。音って意味で。あの体は私が計算した黄金比率だから弄らないんだよ。

 

「……普段から奴に揉まれているし、揉み心地が良いのなら是非主殿に堪能して頂くように提案を……いや、無理だ。命じられたならこの身をお捧げしますが……」

 

 真面目ってのも考え物だよ。世の中不真面目不道徳が一番なんだやっぱりねっ!

 

 

 

 

「あー! まーたー負ーけーたー!」

 

 遥ちゃんは手足をバタバタと動かし喚き立てる。まあ対戦ゲームで二人相手に攻められたら負けるんだね。私なら速攻で作ったチートプログラムを組み込むけど、戦闘力だけの彼女じゃね。

 

「っていうか能力使っているだろうっ!? 少なくても五個はっ!」

 

「いや、三個だ。『思考高速化』『高速動作』『器用上昇』」

 

「卑怯にも程があるっ! もう私は寝るっ! お休みっ!!」

 

 拗ねちゃった遥ちゃんは布団を頭から被る。此処は自分の部屋だからって委員長君が引き剥がそうとするけど、遉はレベルⅩ、凄い力だ。諦めたのか委員長君はベッドから降りて小鈴の横に座り込んだ。

 

「一緒に追い出すのですか?」

 

「いや? もう少し相手をしろ。その内機嫌が直るだろう」

 

「はっ!」

 

 追い出すって時に明らかに期待した声だったけど、窓をチラチラ見てるってことは窓から放り出す気だったんだね。怖い怖い。下手したら私も……。

 

 二人は肩を並べて携帯ゲームに興じる。時々小鈴の鼻歌が聞こえるし、流石は私の作品だね。感情が此処まで発展してるなんてね。

 

 

 

「……おい。俺の命令など聞かなくて良いぞ。いや、お前がそういう風に作られているというのは分かっているし、俺が起動させてしまったのだから放り出しはしないが……」

 

「ええ、確かにそれはありますが……この短期間で主殿の人柄が分かりました。やや厳しい方ですし、私の行き過ぎた行動には辛辣ですが、それでもお傍に居たいと思います」

 

「……そうか」

 

 委員長君はそのままゲームの操作を続け、そろそろ時間かと遥ちゃんの顔を覗き込むと熟睡してる。

 

「主殿、辞書をどうぞ」

 

「いや、流石にこの程度では……」

 

 小鈴が委員長君に恭しく辞書を差し出すけど委員長は手で制し、乱れた布団を掛け直そうとした手を遥ちゃんが掴んだ。あっ、寝ぼけてるし離さない。

 

「主殿、辞書を」

 

「……いや、別に良い。寝てるだけで殴るのもな」

 

 委員長君は溜息を吐くとベッド端に座り込む。どうやら起きるまで傍に居る気のようだね。小鈴は二人の顔を交互に見やり、最後に握られた手に視線を向ける。

 

「では拙者は待機させて戴きます。主殿、お休みなさいませ」

 

「ああ、お休み」

 

 小鈴は部屋から出ていき……光学迷彩で姿を消して窓の外から中の様子を窺っていた。

 

 

 

「まったくお前は何時も何時も……俺も寝るとしよう。もうお前が傍で寝ていようが気にしない事にした」

 

 委員長君は呆れたように呟くと遥ちゃんをベッドの隅に移動させて布団を被る。やがて寝息を立てだした頃に部屋に戻った小鈴は布団をきちんとかけ、部屋の明かりを消すと部屋から出て行った。

 

 

「……なんであの二人は付き合っていないのでしょうか? 拙者でも理解不能です」 

 

 本当にねっ!

 

 

「まあ、今回は結構なデータを取れたし、今後の改造計画も完璧なんだね。なはははははっ!!」

 

 今後の事を考えると楽しくなってくる。思わず高笑いをしていた私は背後から忍び寄る陰に気付かなかった。センサーとか仕掛けてあったんだけどね……。

 

 

 

 

 

 

「ほぅ。貴様、私を通して主殿を見張っていたのか……覚悟は出来ているな? 成敗っ!!」

 

 あっ、私終わったんだね。頭上高く振り上げられた辞書を見ながら私はそんな事を思っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、エトナは何処に行った?」

 

「旦那の所に行くってさー。それよりその首から下げてるのって……いや、良い。何にも訊かないでおくよ」

 

「ん? 何も無いなら別に構わないが……本当か? このアクセサリーについて何かないのか?」

 

「あーあー! 聞ーこーえーなーいー!」

 

 

 




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