俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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彼に嫌われると思うだけで辛いけどどうすべきだい?

 鏡に映る完全無欠の美少女()の姿についつい見とれてしまう。この世界の主役たる私に相応しい美貌とスタイル。愛しい子猫ちゃん達が夢中になるのも納得だ。……まあ、今攻略中の子達は照れ屋さんだから素直に私への好意を出さないし、煩わしいことに男まで寄って来るのだけどね。

 

 私に惚れて良い男は彼だけだというのに本当に煩わしいと思いながらお気に入りのライダージャケットのチャックを上げていると途中でキツくなった。

 

「……あれ? チャックが……あっ」

 

 一瞬太ったのかと思ったが、よくよく思い起こせば胸がまた大きくなったのを思い出す。手足がブカブカになるからあまり大きなサイズは買わないようにしているが、この赤いライダージャケットは前に一人で買い物に行ったときに買ったっきりで初めて着るので買い直すのは嫌だと思う。

 

「さて、行こうか」

 

 胸が少し苦しいがピチピチになって体のラインが分かることで私の色気が増すのだから何一つ問題はない。ただ、彼がどの様な反応を示すのかが気になった。

 

 

 

「お待たせダーリン。さっ、楽しいデートに出掛けようか」

 

 先に着替えて外で待っていた彼の背後から忍び寄り、不意打ち気味に背中に体を預ける。無論、胸に体重が掛かって強く押し当てられる様にだ。だが、残念なことに予想されていたのか驚いた様子はない。少し残念に思っていると彼が振り返った。

 

「確かに恋人の演技をする上でその呼び方は了承したが……」

 

「ん? 言葉が止まるほど私が魅力的だったのかい?」

 

 珍しく言葉を途切れさせて私を見つめる幼馴染みを何時もの様にからかいながら正面から抱きつこうとするが避けられる。彼に接触を拒まれるのは嫌なので再び抱きつこうとするが、彼が顔を逸らしているのが目に入った瞬間、頭が真っ白になった。

 

「……えっと、もしかして怒っているのかい? も、もしそうなら何でもするから許してくれ。君に嫌われたら生きていけないんだ」

 

 自然と涙声になり目にも涙が溜まり始める。まるで拒絶するような彼の態度に胸が締め付けられるようで悲しかった。縋るようにして彼に抱きついた時、気まずそうな彼の声が聞こえてきた。

 

 

 

「……あー、なんだ。その格好が非常に似合っていてだな。恥ずかしくて直視が出来なかったんだ。不安にさせたなら謝ろう」

 

「……本当かい? うん、別に気にしていないから構わないよ。でも……ふふふ。君が素直に誉めるなんて珍しいじゃないか」

 

 ホッと胸をなで下ろすと彼の指先が涙を拭う。それにしても良いことを聞いた。今まで下着姿やバスタオル一枚の時にも慌てたが、今回みたいな反応ではない。水着の時も直視できないって事はなかった。つまり、彼はこういった服が好みだってことだ。

 

「そうかいそうかい。自分から言うなんて、君も漸く私が美少女だって理解したのか。なら、今からのデートが楽しみだろう?」

 

 彼の服装の好みは露出系よりも密着系だったと知れたのは本当に良かった。彼にずっと側に居てもらう為に一番の方法は男女の仲になる事だ。どのみち彼以外の相手など考えられないし、子猫ちゃん達を集めたハーレムの中で特別扱いをしてあげても良いとさえ思っている。

 

 だからこそ、彼の好みに一歩でも近付きたいと思うし、幼馴染みとしてではなくって女として見て欲しいと思う時もあった。この発見は本当に嬉しいよ。じゃあ、彼の照れる姿をもう少し堪能しよう。

 

 

 

 

「いや、俺は前からお前が美少女だと認識していたぞ? 少なくても好みの見た目程度には思っていた。だからまあ……そういった格好のお前と出掛けるのは本当に楽しみだ」

 

「う、うん……ありがとう」

 

 胸がドキドキ高鳴り、顔が一気に熱くなるのを感じた私はサッと反転してバイクの上のヘルメットを被る。照れる、本当に照れる。あー、少しの間、彼の顔を直視出来そうにないな。……まったく、不意打ちとか反則だよ、反則!

 

 

 

 

「見えてきたが……矢張りな」

 

 目的地である喫茶店間での道中で何とか余裕を取り戻した私と彼が到着すると店の駐輪場には何台ものバイクが見える。窓から店内を見ればカップルの姿が多いようだ。たぶん怖いもの見たさで集まったんだろうけど、男は帰って良いよと思うし、予想していたのか彼も困った様子だ。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、ここが噂のホラースポットよね」

 

「知ってる知ってる。この店に来たその日一番のベストカップルの前に首無しライダーが現れるんでしょ」

 

「私も彼氏が出来たら一緒に来ようかなー」

 

 店に入って評判のパンケーキのセットとフライドポテトを待っていると背後の女の子達の会話が耳に入ってくる。良い、実に良い。女の子が女の子している瞬間は実に素晴らしい。耳を澄ませているだけで時間が経つのを忘れそうだと感じていると注文の品が運ばれてきた。

 

「お待たせしました。パンケーキとドリンクのセットに大盛りフライドポテトです。ごゆっくりどうぞ」

 

 早速食べようと思いながらそれとなく周囲を観察する。カップルで来ているのに私に見とれている男の視線が鬱陶しい。直ぐに彼女の怒りを買って謝っているけれど、あんなのを守るために戦うと思うと情けなくなる。

 

 

「……ねぇ、あの人格好良くない? ほら、窓際の席の」

 

「本当だー」

 

 私に鬱陶しい視線が集まるように彼にも女の子の視線が集まり、注目する会話が耳に入ってくる。何故か腹が立ってきた‥…さて、任務に集中しよう。私は気分を切り替えるとパンケーキをカットし、フォークに刺すとそっと前に差し出した。

 

「ほら、ダーリン。あーん」

 

「……了解だ、ハニー」

 

 甘い声で周囲に見せつけるようにパンケーキを彼の口に運び、今度はフォークを彼に手渡す。ふふふ、事前の打ち合わせで強引に納得させたし、ターゲットに選ばれる為だから拒否は出来ないよね。実際、照れながらも差し出してきた。

 

「お返しだ、ハニー。ほら、あーん」

 

「あ、あーん」

 

 彼が照れているからか私も恥ずかしくなってきた。彼をリードする予定が狂って困るなぁ。互いに相手に食べさせあい、予定では同じフライドポテトを両端から食べるはずだったんだけど、頭が正常に働かなくって忘れてしまっていた。

 

 

「……仕方ない。失敗してもいけないし最後の手段に出よう」

 

 会計を済ませ、二人で店を出る。でも、このまま帰る訳じゃないんだ。もしもの時って口実で私が提案していた事をする時がやってきた。

 

 

 

「……何照れているんだい? キスなら何回かしただろうにさ」

 

「照れるものは照れる。お前が相手だしな」

 

 二人で人目がない店の裏で顔を近づける。そう、今からキスをするんだ。実際、遭遇したカップルの殆どがキスをしていたらしいしね。でも、普通のキスじゃ面白くない。だから私は彼を壁に押し付けると右手を掴み自分の胸に押し付けた。彼の指が布越しに私の胸に当たり鼓動が高鳴る。普段なら多少の色仕掛けをしてもこうはならないのに、、きっと出掛けるときに言われた言葉のせいだ。

 

「……抵抗したら駄目。君は私だけを見ていれば良いんだ」

 

 驚いた彼の耳元で囁き、喋るよりも前にキスで唇を塞ぐと同時に強く体を押し付ける。二人の体に挟まれた彼の手は私の胸にいっそう強く当たり、私はそれを意識しながら足を彼に絡ませ夢中で唇を貪る。私の方が力が強いから抵抗は意味を成さず、暫く頭がとろけそうになるのを感じていた。

 

(あっ、これ良い。彼に強引に迫って一方的に責め立てるのって凄く興奮する。……うん。絶対に君は私のモノにしてみせるぞ)

 

 この時、一瞬だけハーレムじゃなくても構わないと思ってしまった。まあ、諦める気は無いけどね。ふと手を見ると私の手の甲に変な模様が浮かび上がるそれは彼も同様で無事にターゲットに選ばれたようだ。

 

 

 

「じゃあ、覗き見野郎を倒しに行こう」

 

「……ああ、そうだな」

 

 顔を背けて先に行こうとする彼の腕に慌てて抱き付く。だって私達はカップルなんだからこうしないと不自然だからね。

 

 

 

 

 そして夜、バイクを走らせる私達の後ろから人間ではない気配と共に一台のバイクがけたたましい音と共にやってきた。

 

 

 

 

 

 

 でも、私達が攻撃するより先に、待機していた刹那の跳び蹴りが首無しライダーの脇腹に突き刺さった、……白か。

 

「……貧乳の敵は消え去るべし!」

 

 派手に転倒した首無しライダーのマウントを取った刹那は無表情で殴打を繰り返す。分析によると顔を見ようとした相手の前方にピアノ線を張る力があったみたいだけど、あれじゃあ使う暇も無いだろうね。

 

 一撃の度に首無しライダーの下のコンクリート製の道路にヒビが入り、攻撃の凄まじさを物語っている。うん、任務完了だね。じゃあ、このまま彼をツーリングの続きにでも……。

 

 

 

 

「おい、遥。まだ時間があるし、噂の絶景スポットでも見に行くか?」

 

「……うん!」

 

 本当に参ったなあ。何が何でも君を手に入れたくなっちゃうじゃないか……。

 




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新キャラはなしの方向にしました

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