俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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朝は時間あったからギリギリ投稿 間が空いたからね


俺の幼馴染の依存が深くて辛いのだがどうすべきだろうか?

「君、芸能界に興味ない?」

 

 とある休日の昼間、遥と飯を食いに行った後、カラオケで散々デュエットに付き合わされて少し疲れてきた時、一人の青年が話し掛けてきた。どうも古いカラオケボックスだからか音漏れがかなりあったらしく、芸能事務所のスカウトマンの彼は遥の歌声と容姿なら絶対に成功すると思ったらしい。

 

「興味ないね、微塵もない。むしろあった方が奇跡だよ。彼氏とデートの途中なんだ、邪魔しないで欲しいんだけど?」

 

 予想はしていたが容赦のない眼差しと口調で即座に拒否する遥。せめて名刺だけでもと差し出されるが受け取ろうともしない。だが、この青年も引き下がらない。どうも何を血迷ったか百年に一人の逸材と評価し、人に知られないのは勿体ないと言い張るのだ。

 

「……仕方ないな」

 

 遥の機嫌が見るからに悪くなっていくし、何かと思って集まった野次馬で人集りが出来て通行人の迷惑になる。少し抵抗があったが背に腹は代えられないと俺は覚悟を決めた 

 

「君も彼女を説得して……」

 

「悪いが断る。此奴と過ごす時間が減るのは悲しいからな。行くぞ、遥」

 

 即座に膝裏と腰に手を回して遥を抱き上げると駆け出して行く。背後から制止の声が掛かったが止まるはずもなく、付いて来られないように少し離れた距離にある公園まで逃げていった。

 

 

 

 

「しかし、私と一緒にいるのがそんなに幸せなのか~。うんうん、素直になったじゃないか。ご褒美をあげよう。キスして良いぜ?」

 

「黙って漕げ。代金が勿体ない」

 

 遥の希望で公園の池でアヒルボートを借りたのだが、急に先ほどの会話を持ち出して得意そうに笑う遥は俺の肩にあたまを乗せて得意気だ。此奴と一緒なのは当然のことで離れるのは落ち着かないから嘘ではないが、キスに繋がる程ではない。直ぐにこういった話題に進めるのは本当に悪い癖だ。

 

「……でもまあ、嬉しかった。何時も私から言って君が同意してくれるけど、君からは中々言ってくれないからね。少し胸がドキドキしてきたぜ」

 

「更年期障害……嘘だ、冗談だ、剣をしまえ。……しかし断るときに一切躊躇が無かったな。お前なら誉め言葉に調子に乗ったり、アイドルや女優と知り合えると少しは興味持ちそうなものだが……」

 

「それで君との時間が減ったら意味がないじゃないか。確かに私は子猫ちゃん達と遊んでいるけど、君と一緒にいるのが一番なのは変わらないんだ。まっ、色々摘まみ食いしたくなるのと同じだよ。……だから君の周りに女の子が増えて嫉妬しているんだぜ?」

 

 拗ねているのか頬を膨らませ顔を背ける遥の姿に不覚にも可愛いと思ってしまう。思わず抱きしめて頭を撫でたくなったがグッと堪え、平静を装った。

 

「それならナンパやら何やらを控えろ。その時間に相手をしてやる。お前が望む事にも……まあ、極力付き合おう」

 

「……じゃあさ、手を握って欲しいな」

 

「その程度なら、ほれ」

 

「……うん、嬉しい」

 

 急に沈黙して俯く遥。何となく恥ずかしくなった俺は遥の手を握ったまま反対方向を向く。しかし昔から思っていたが、遥は俺に依存しすぎな所があるな。口説いた女子とデートしても俺と遊ぶ方が楽しいと一度きりで止めてしまい、俺がその相手から相談を受ける始末。

 

 

 

 

「じゃあさ、次はね……私のベッドの上で絡み合おうぜ!」

 

「却下だ、馬鹿者!」

 

「えー? こんな美少女に抱いて貰えるんだぜ? ……あっ、初体験は攻めの方が良かった? 仕方ない。最初は君に譲ろう。でも、代わりに私のハーレムに入るんだ。……一線を越えて良いのは君だけだ。悪い話じゃないだろ?」

 

「いや、非常に頭の悪い話だ」

 

 俺以外の男とも友人程度に仲良く……はしなくても良いが、口説く対象にしない同性の友人の一人でも居れば落ち着くと思うのだが、と悩むも中々浮かばない。

 

 

「あっ、居たな」

 

 

 

 

 

 次の日、俺は早速美少女なら節操なしに口説きにかかる遥が口説こうとしない女子、エリアーデに遥と友人になれないかと聞いてみた。

 

「いや、突然だね!? っと言うか私、彼女にきらわれているんだけど!?」

 

「第一印象と普段の行動が最悪だからな。だからこそ口説く対象に選ばれないお前は遥の友人に成れる……のか?」

 

「いや、聞かれても困るんだよ!? 委員長君、君は友達多いんだし、友達になる方法位知っているんだろう? 私、心理学は専門外なんだねっ!」

 

 友達の成り方、正直言って分からない。友人全部普通に話してたら友人になっていたし、成り方と言われても困る。

 

「友人って普通に出来るものじゃないのか?」

 

「お前、今世界中のコミュ障を敵に回したんだねっ!」

 

 成る程、どうも俺はデリカシーが足りていないらしい。やはりエリアーデはボッチだったか。これはお詫びをしなくてはな 

 

 

「此処は謝罪させて貰う。ああ、俺で良ければ今から友人程度に思ってくれて構わないぞ」

 

「え? 君の中では私は友人じゃなかったのかね?」

 

「え?」

 

 どうも言葉を間違ったようだ。だが、初対面で実験材料扱いし、普段から珍妙な発明で迷惑を被っているのだから無罪を主張したい。

 

 

 

 

 

 

「……ふーん、へーん。じゃあ、彼奴と少し関係が進んだって訳かい」

 

 その日の夜、ベッドの上でトランプをしながら今日の話をしたのだが、エリアーデとの件がお気に召さなかったようだ。ジト目を向けて不機嫌そうになる。こうなると本当に厄介で機嫌を直すのが大変なんだ。

 

「よし。何か要求を言え。それで手打ちにしようじゃないか」

 

「……仕方ないなあ。じゃあ抱かせて……は流石にこんな形で進めるのは抵抗があるし、でも、君をつなぎ止める為にも関係を進めたいし……」

 

 腕を組み、ウンウン悩みながら要求を考える遥。安心しろ、流石に拒否していた。此奴とは幼馴染みのままでしかないが、見た目は好みだし関係が進展することに抵抗がなくなって来たのは認める。だが、俺にとって大切な関係性だったから安易に変えたくはないのだ。

 

「……今日のところは予行演習で我慢しておくよ」

 

 少し惜しそうにしながらも遥はベッドの上のトランプを片付ける。俺が勝ちそうだったのに勝負が有耶無耶にされて惜しい気持ちだ。

 

「……予行演習?」

 

 遥の言葉の意味が分からず聞き返す中、彼女はベッドに寝転がると抱き締めて欲しいかのように両手を伸ばしてきた。

 

 

「今晩は私を抱き締めて眠るんだ。それだけで良い。……でも、抱き締めた時に私を口説き欲する言葉が欲しいな……」

 

 最後の方は照れている様子で俺まで恥ずかしくなる。だが拒否はできない。したら泣く。泣かせたくはない。俺は遥を抱き締めて布団をかぶり、耳元でそっと囁く。

 

 

「……お前が欲しいんだ、遥。抱くぞ」

 

 ……ああ、明日はちゃんと顔を見られたら良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……寝たのかい? ちぇ、寝ちゃったのか。言うだけで良いって私が言ったけど……少し本気にしちゃったのにな。君になら嫌われる以外なら何をされても良いのに……」




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