俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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俺の幼馴染みが直ぐに調子に乗って辛いのだがどうすべきだろうか?

また予知夢が発動した。もう慣れたし、それ自体は問題ない。だが、流石にこの内容は無いだろう……。

 

「……おい、流石に冗談では済まないぞ、遥」

 

 大人の俺は切羽詰まった様子で遥に止めるように言うが、全く言うことを聞く様子がない。寧ろ、俺が抵抗することにさえ快楽を感じているようだった。

 

「んっ! そんな事言わないでおくれよ。今、とっても気持ちが良いんだ。君だってそうじゃないのかい? 私と一つになってさ……」

 

 この時、俺は馬乗りになった遥に無理矢性行為をさせられていた。床に散乱する酒の空き缶、脱ぎ散らかされた衣服。俺の服は無理に脱がされかけている状態だ。身体能力はレベルによる関係で遥の方が高く、力で引き剥がせない様子。結果、なすがままだ。

 

「あはっ、あはははは! 今、漸く分かったよ。私は子猫ちゃん達より君が……」

 

 流石に自分と遥の濃密な性行為を見せられるのは精神的にキツいと思った時、目の前の光景が煙のように揺れて溶けて消える。気付けばベッドの中で目を閉じていた。

 

(……僅かにコントロール出来るようになったのか?)

 

 何やら肉体に違和感があり、それが何か予想が付いていた。この世界に転生した際に既に今の状態に至っていたが、混乱を避けるためか存在したこっちの世界での人生の記憶。そこにヒントがあった。

 

「レベルアップか。……少し厄介だ」

 

 試しにその辺に置いてあってペンを握ってみると音を立てて折れる。レベルの上昇による身体能力の強化の影響だ。……今日は学校を休んで体を慣らさなければ。

 

 

 

「やあ、お早う」

 

「お前が早起きして朝ご飯を作っているとはな。……救急車は必要か? いや、必要だな」

 

 毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日っ! 俺が苦労して起こしている遥が俺よりも早く起き朝ご飯の支度をしている。ふと目を向ければテーブルの上には既に用意された二人分の弁当。これは絶対に病気に違いない。感染症でない事を祈ろうと俺が本気で思ったのが伝わったのか、遥はやや不機嫌そうな顔をしながらも二人分の飯を机に並べた。

 

「私だって早起きくらいするさ。ああ、これからは弁当も当番制ね。ほら、君の好きな出汁巻き卵だ」

 

「お前、本当にどうしたんだ?」

 

「……私が作れば昨日の様な事にはならないだろ? 私が君の為に作ったんだ、当然だ」

 

「昨日の様な……?」

 

 はて、何のことかと思考を巡らせる。昨日は又しても全裸で布団に潜り込んできた遥が起き抜けにキスをしてきたので辞書で殴り、登校時に腕組みをせがんできたので仕方なく五分まで了承したけど結局十分まで延長する羽目になり、夜はバスタオル一枚で背中を流すと言って風呂に入ってきただけだが……。

 

「ああ、昼のことか」

 

 友人達から日頃のお礼として何かを貰うのは良くあることだから忘れていたが、中学時代の友人に絡まれていたから止めるように言った見慣れぬ後輩がお礼と言って弁当を作ってきたな。

 

「あの後落ち込んでいたが大丈夫だろうか……」

 

 俺は自分で作ってきたのがあるが、だからと言って貰わないのも無礼だ。幸い、一人分しか作れなかったと言ったので代わりに自分のを渡したが、弁当箱を返すときに消沈した様子だった。渡したときは喜んでいたのに、負けたの何だの呟いて少し妙だったな。……ダイエット中だったのに誘惑に負けて食べ過ぎたのか?

 

「ふふん。刹那達も君の弁当を食べてみたいと言っていたが失敗したね。少なくとも今日は私の手料理だ。嬉しいかい?」

 

「ああ、そうだな。お前の料理は美味い。寝坊助だから休日しか昼に食べられないが、こうして朝昼食べることが出来て幸せだ」

 

 本心で思う。自分の拘りの料理も良いが、遥の料理も美味しい。毎日三食だって食べられる程にな。

 

「そ、そうかいっ! ふふふ、漸く君も私の魅力にメロメロって訳だ」

 

「いや、違うぞ? 後、悪いが俺は学校を休む。どうもレベルアップした様でな。身体能力を今日一日かけて馴染ませなければ……」

 

 この瞬間、俺は失態を犯したと察する。遥は一瞬キョトンとした後、最高に機嫌が良さそうな顔になって俺に擦り寄って来た。後ろから首に手を回して絡みつかせ、体重を預けて胸を押し付けると耳に息が掛かる距離で囁いて来た。

 

「なら、今日一日は私が何から何まで世話をしてあげるさ。食事も私がさせてあげるし、着替えも私に任せたまえ。……ああ、どうせなら性欲処理も任せて貰おうか。さっそく風呂場に行ってさ」

 

「いや、別に良いから学校でのフォローを頼む。風邪を引いたとでも言っておいてくれ」

 

「ええい! それでも健全な男子高校生かっ!」

 

「少なくともお前は健全な女子高生ではないな」

 

 服の中に滑り込ませようとした手を振り払い、これ以上するなら容赦しないとばかりに辞書を見せ付ける。やや不満そうにしながらも遥が離れたので朝飯をゆっくり食べようとしたのだが、手元から箸が折れる音がした。

 

 

 

「はい、あーん。まったく素直じゃないんだから」

 

「……あーん」

 

「どうせなら口移しで食べさせてあげようかい?」

 

 結局、朝飯は遥に手伝って貰う事になったのだが、はっきり言って恥ずかしい。昔から俺がこいつの世話を焼く事があっても、此奴が俺の世話を焼くなど殆ど無かったからな。悪い気はしないのが幸いだが、確実に調子に乗りそうで不安だ……。

 

 

 

「あっ、着替えはどうする? 勿論私が下着まで着替えさせてあげるけど」

 

「いや、裏を知らない級友が見舞いに来た時の為に寝間着で居よう。慣らしの為のトレーニングなら家で出来るからな」

 

 

 

 

 

 

『そうか。なら慣らしが終わったら申請書類を書いておけ。レベルがⅣになったのならば手続きが必要だからな』

 

 何とか電話を使って父さんに連絡した後、トレーニング器具を使って体を動かしていく。重りを変え、器具その物を変え、普段の速度や力と同じ数値が出るまで調整を繰り返す。何とか慣れて来たのは昼飯前、遥が置いて行った弁当を食べる前に携帯を見ると画像付きのメールが送られてきている。遥からで件名は大丈夫かい? だ。心配してくれたようだな。まずは有難うとお礼のメールを送り、開き忘れていた画像を開く。

 

 

 

 

「……先程のメールは取り消しだ、馬鹿者め」

 

 送られて来たのは自撮りした下着姿の写メ。あの馬鹿が調子に乗ったり周囲が誤解する前に抗議のメールを送ると焔から電話が掛かって来た。

 

 

 

『委員長、調子はどうだ?』

 

『ああ、何とか慣れた。今は遥が作った弁当を食べる所だ』

 

『神無さんの弁当……愛妻弁と……さ、さて、俺も飯を食うか。じゃあなっ!』

 

 何故か恐怖にかられた声で話題を変えた焔が通話を切り、俺も食事に戻る。桜田夫でハートが描かれた白米にヒレカツやヒジキの煮物、タコウィンナーや何故かこれもハート形にカットされた野菜サラダ。ふとテレビを見るとドラマをやっており、主人公が恋人に作ったもらった物とよく似ていた。

 

「偶然もあるものだな。……おや、こんな時間に来客か」

 

 チャイムの音がしたので玄関まで向かう。宅配便ならば注文していた名産品セットが届く頃だからうれしいと思っていたのだが、開けてガッカリだった。

 

 

 

 

「ふははははははっ! 私が顔を見に来てやったぞっ! 嬉しいか? 嬉しいだろうっ!」

 

「帰れ」

 

 アリーゼだったのでドアを閉めて鍵を掛ける。近所迷惑だから騒がれると嫌だなと思いつつ遥の手製弁当を食べ続けた。

 

 

 

 

「……そういえば原作ではラスボスの妹が転校してくる頃だが……エリアーデが来ている時点でないか。俺達みたいな異物が居るんだ、展開も変わる」

 

 特に居ないと詰む様な描写もなかったし、ネットでも居ても居なくても展開は同じだと評価されていた。何かあってもそれに応じて対処すれば良いだけだと納得し、最後にお茶を飲む。この日は俺好みの味にしていたので何時もより美味しく感じた。メールで令状を送ろう。

 

 

 

 

 

『そうかい? なら結婚しよう。私のハーレムに入れば毎日食べさせてやるぜ。当然口移しでなっ!』

 

 速攻で送られて来た返信を読んで送ったのを後悔した。




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