俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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俺の幼馴染みに泣かれると弱くて辛いのだがどうすべきだろうか?

「そうそう。今日、ウザい奴に会ったんだ。先輩の子猫ちゃんとのデートを楽しんだ後、一人で帰っていたら高級車が急に止まってさ。どこぞのボンボンが、気に入った、名を名乗れ女、だってさ。初対面の相手を口説くとか常識を疑うよ」

 

「そうか。じゃあ、泡を落としてやるから目の前の鏡を見ろ」

 

 遥の事を知る者ならば大体が言いたいであろう事を告げ、シャワーで髪に付着した泡を落としてやる。昔はシャンプーが目に入ったと言って泣いていたものだ。

 

 

「鏡かい? ああ、実に美しい私が映し出されているね。一生眺めていたいよ」

 

「そうか。なら一生風呂場に居ろ。うん、其れが良いな」

 

 鏡に映る自分にうっとりしているバカの脳天に辞書を叩きつけたい衝動を我慢する。生憎此処は風呂場だから辞書は持ち込めない。……此処までの描写で分かるだろうが、俺は風呂場で遥と一緒にいた。

 

 

 

 

「やあ! 偶には一緒に入ろうじゃないか。ああ、君が私の中に入って来ても……あべしっ!?」

 

「偶にどころか頻繁に俺が入っている時に乱入してくるのは何処の馬鹿だ? 俺の目の前の馬鹿だな」

 

 今日はバスタオルを体に巻いているから良いが時に全裸で入ってくるから困る。視線を外せば幸いと抱き付いて来るし本当に仕方がない奴だ。俺は退室を促すが、何時に増して頑固に出て行こうとしない。うっすら涙目になっているのを見てしまって強く出る気が削がれてしまった。

 

「……髪を洗って貰ったら背中合わせに入るだけで我慢するから」

 

「家の風呂だし、バスタオルは巻いたままだ。……まったく、両親が不在で助かった」

 

 もし両親が居て、俺と遥が混浴をしたと知られれば勘違いをされる所だ。実際、将来の結婚式に呼ぶ客や式場の相談を互いの両親がしているのを見たことがある。これ以上の誤解は避けたいからな。

 

「じゃあ、私が背中を流すから後ろを向くんだ。ああ、前も洗って欲しいなら洗ってあげるよ?」

 

「……さて、今日はもう出るか」

 

 浴槽に入れないのは惜しいが馬鹿に調子に乗られても困るから出て行こうとするが腕を掴まれて動けない。何か一言言おうとしたが、また泣きそうな顔だ。……一体どうしたというのだろうか。

 

 

「……一緒に入るだけで良い」

 

「そもそも約束ではそうなっている。さっさと入れ」

 

 仕方なしに抵抗を止めて浴槽に入ると背後で遥も入るのが分かる。背中に背中が当てられるのも感じ、先程のシャンプーの香りが漂って来る。少し緊張して来たな。

 

「……君とは幼い頃から何度もこうしてお風呂に入ったのに、なんか緊張するね。背中合わせだっていうのにさ」

 

「其れが成長するって事だ、愚か者。分かったならばもう少し自重しろ」

 

 緊張しているのは俺だけではなく遥もの様だ。声で緊張が分かり、背中越しにも緊張が伝わってくる。つまりは俺の緊張も伝わっている訳だな。少しばかり泣かれても良いから断るべきだったか。

 

 

 

「……また一緒に入ってくれるかい?」

 

「気が向いたらな……」

 

 まったく、仕方のない奴だよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、先輩。先輩の好みってどんなのですか?」

 

 次の日の昼休み、柳堂寺が不意にその様な事を聞いてきた。轟や治癒崎は何故か固まり、焔は何かに怯えているように顔を青くする。調子でも悪いのだろうか?

 

「俺の好みか。玉子焼なら砂糖より出汁巻きだな。全体的に塩気のある方が好みだが、濃すぎても良くないな」

 

 其れを言うなら遥が作った今日の弁当は実に俺の好みだ。今までは俺が遥の好みに作ったが、こっちの方が良い。俺の作ったのを美味しそうに食べる姿を見るのも悪くはないがな。

 

「あ、あの、そうじゃなくって、その……あっ、そういう事ですね?」

 

「……うん?」

 

「や、やっぱり! ……失礼します!」

 

 何がそういう事なのか分からず聞き返したが、何が矢っ張りなのだろうか? 俺には遙以外にも女子の友人は多いが、どうも理解できん。

 

「……むぅ」

 

 ……そんな事よりも遥が何やら不機嫌そうだ。こんな時の此奴は何をするか分からんから怖い。帰ったら何かお菓子でも作ってやるか。

 

「何が良い?」

 

「エクレア」

 

 うん。特に何のことか言わなくても伝わるのは楽で良い。本当に此奴と居ると気が楽で良いな。甘い物を与えておけば変な事はしないだろうしな。

 

 

「……ああ、アッチは何だ?」

 

「猫科の猛獣」

 

 今年の誕生日プレゼントのヌイグルミは猫科と……。虎とライオンどっちにするか……。

 

 

 

 

「変なことはしないと思ったんだがな……」

 

「おいおい、何処が変なのさ? 只の朝の挨拶じゃないか……」

 

 次の日の朝、赤いチャイナドレスの遥が俺の上に寝そべって起き抜けにキスをしてきた。不機嫌そうな俺に対して微笑みかけ、再びキスをしてくる。二回目は先端だけだが舌も入れてきた。

 

「君を犯す夢を見てさ。興奮してるから相手をしてくれよ。……良いだろう?」

 

「いや、良くないな、うん。腹が減ったから退いて朝飯を作ってくれ」

 

「私の料理が食べたいのかい? 仕方ないなぁ……」

 

 機嫌良さそうに俺の上から飛び降りる遙だが、降りた際に短い裾が翻る。……下着は穿けと言っておこう。

 

 

 

 

 

「あっ、今夜は私も食べるかい?」

 

「いや、食べない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩ったら大胆なんですから。他の先輩の前で私が好みだって遠回しに肯定してくれるんだもの。でも、口に出して言って欲しかったなぁ。あっ、駄目駄目。先輩って奥手なんだから。私の全てを受け入れてくれるんだから、私も先輩の全てを受け入れないと。恋人ってそういうものだもん。でも、互いにもっと好きになって欲しいから相手の好みに変えていくのも大切よね。互いに相手の色に染まっていくの。……素敵。何時か先輩と同棲して、朝はお早うのキスから始まって、一緒にご飯作って、お風呂も一緒に入って……先輩と体を洗いっこして、そのまま先輩に……きゃっ! は、恥ずかしいけど先輩が望むならどんな事でも受け入れるけど、受け身の女ってどうかしら? 私から積極的に行った方が先輩の好みかもしれないけど、奥手な方が好みだったら一瞬だけ失望されるかも。私と先輩の仲だから直ぐに受け入れてくれるだろうけど、一瞬とはいえ嫌われるのは嫌だよね。どっちでも大丈夫なようにお勉強しないと……。あっ、料理の方も頑張らなきゃ! 奥さんになって旦那様である先輩の体調を管理するためにも好みの味で健康的な料理を作れるようになるの。そして次は私を食べたいって先輩に押し倒されて……あっ。……先輩、()()貴方が大好きです。先輩の顔を思い浮かべるだけで切なくなって……はしたない子でごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 




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