俺の幼馴染が踏台転生者で辛いのだがどうすべきだろうか?  完   作:ケツアゴ

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仲の良さを見せられて辛いのだがどうすべきだろうか?

「俺がリア充? いや、違うだろう」

 

 お前のほうこそ違うだろ! 俺こと焔 伊吹(ほむら いぶき)はそう叫びたいのをグッと堪える。委員長は俺が何故そんな意見に達したのか本気で分からないと言った表情だ。

 

「確かに俺は友人が多いが・・・・・・・この馬鹿の世話を焼かなければいけない時点で非リア充だ。最近は婚姻を強引に迫ってくる奴も居るしな」

 

「アレは流石に同情する。委員長も大変だよな」

 

 俺の日常は少し前に終わりを告げた。突如現れた化け物と、目覚めた奴らと戦うための力。その力で誰かを助けられるなら俺は普通なんて捨て去ろうってそう思ったんだ。

 

 そんなある日、ファミレスに食事に向かった俺は同じタイミングで入店した仲間二人と合流(片方は心底嫌そうだった)、一人で来ていたもう一人の仲間と同じテーブルを挟んで座っていた時、何となく今の会話になった。

 

「はっ! どうだか。本当はあんな美人に迫られて羨ましいんじゃないのかい?」

 

 俺が所属することになった組織の仲間の一人である神野さんは凄い美人だけど極度の男嫌いだ。蔑んだ目で見られたいと玉砕を理解してデートに誘うのも居るくらいにはな。俺にはちょっと理解できないな。って言うか俺に対しては特に厳しいような……。

 

「焔は俺を心配してくれているんだ。あまり辛く当たるな。ところで今日は俺の当番だが、メニューは何が良い?」

 

 そんな彼女を唯一制御出来るのが幼馴染みである委員長だ。本人以外の全員からの信任を得て就任し、何かとクラスメイトに頼られている。少し頑固だけどな。でも、そんな委員長だけど告白どころかラブレターさえ贈られない。クラスの女子全員と他のクラスの女子の何割からバレンタインのチョコを貰ったが全部義理チョコだったほどなんだから逆に凄いよな。

 

「何でも良いよ。私は君が作ってくれる料理なら全部好きだからね。しかしあの女は美人だし、君も年頃だから性欲に負けてしまうかもしれないな。・・・・・・私が解消してあげようか? 取り敢えずセクシーショットを転送するから使いたまえ」

 

 相も変わらず本性を知っていてもドキッとさせられる笑みを浮かべながら携帯をいじる神野さんだけど、僅かに声に怒りが混じっていた。話題に出ている女ことアリーゼだが、どうも化け物の組織に所属しているらしく、馬鹿みたいに情報を垂れ流すから上の人は半信半疑ながらもっと聞き出すように指示してくるんだ。

 

 ただ、問題は性的な意味で委員長を狙っているって事。婿呼ばわりしてくる従者二人を引き連れて現れてはAVやエロ漫画で学んだ色仕掛けをしてくる。育ちが良いせいか何か羞恥心でガッチガチに固まって残念だけど、あまりの頻度にこっちまで辟易する。神野さんはアリーゼを本気で口説きながらも追い払っているけど、明らかに嫉妬だよな。

 

「お前という馬鹿は全く……。嫁入り前の娘がすることではないぞ」

 

 送られてきた画像を見た委員長が吹き出し。頭を押さえている。余程過激な内容だったのか……。

 

「お前ら実は夫婦だろ……」

 

 つい漏れた言葉。いや、だって毎日毎日こんな感じなんだぜ?

 

「男女二人が仲良くしてたら夫婦、とか小学生が囃し立てているみたいで程度が知れるよ。君もそう思うだろ? まぁ私が嫁入りするとしたら君以外に有り得ないけどね。お互いの両親だって既にその気で準備を進めて居るしね。庭を潰して双方の家に繋がる建物を増築する気だってさ」

 

「俺も将来結婚はしたいと思うが、お前の世話を焼くことを考えたら相手に悪いからお前と結婚するのが気楽な気もするがな。だが、一度家は出たいと思う」

 

「ふぅん。まぁ、結婚するとしたら君に合わせるよ。何だかんだとお世話になりっぱなしだしね」

 

 ぶっちゃけ、これ見せられてアタックしようとするの居ないだろ、普通。しかも恋人とかが冗談で言い合うような感じじゃなくって、何気ない日常会話みたいな話し方でこんな感じなんだ。それと委員長、もう神野さんの世話をずっと焼き続けるのは決定なんだ……。

 

「……チッ」

 

 何か隣から恐ろしいオーラが放たれた上に舌打ちが聞こえた様な気がしたけれど、気のせいだな、うん。俺は何も聞いていない。だから彼女の手の中のスプーンが折れたのも偶然だ、絶対。

 

「店員さん、スプーンの替えを。それとロイヤルジャンボパフェのお代わりを」

 

 俺の隣に座っている小柄な少女、轟さんは何処にそれほど入るんだって量を食べている。四人以上で食べるような量のパフェが彼女一人の中に納まるんだからビックリだ。

 

「相変わらず凄い食欲だね。そんな君も素敵だよ」

 

「……食事中は静かにしてください」

 

 神野さんはオープンな同性愛者……だと思う。委員長との遣り取りからクラス内では両刀派と委員長の嫉妬心を刺激する為派(女相手なのは他の男にモーションを掛けるのは嫌)に分かれている。

 

「ああ、そうだ。君も甘い物は好きだろう? ほら、私のモンブランを分けてあげよう。甘い物は落ち着くからね」

 

「俺ばかり貰うのも悪い。ほら、この抹茶プリンを一口やろう」

 

 だから互いに食べさせ合っておいて只の幼馴染みとか誰が信用するんだよ!? 今までの話からして両親すら二人がそういう関係だって思ってるんだろ……。

 

「チッ」

 

 再び聞こえた舌打ち。うん、仕方ないよな。ってか、轟さん、委員長の事が好きなの?

 

「……何ですか、ジロジロ見ないで下さい。余計なこと言いまくる焔さん」

 

 あっ、はい。空気読めない男でごめんなさい。命の恩人だけに彼女には逆らえない俺は目の前で仲良くしている二人や、無表情のまま不機嫌になっていく轟さんに精神をゴリゴリ削られていた。

 

 だが、どのような状況でも救いの手は差し伸べられるのか委員長の携帯に着信があった。この音は仕事関係。場の空気が引き締まる中、画面を見た神野さんは少し青ざめていた。

 

 

 

 

 

「……無様ですね」

 

 日頃の鬱憤を晴らすとばかりに神野さんに毒を吐く轟さん。普段から口説かれているからな、恋敵に。因みに委員長が好きなのかってこっそり訊いた結果、首筋に無言で刃物を突きつけられた。もう訊かないでおこう、命が惜しい。

 

 さて、どうして神野さんが無様と言われているかというと、俺達の中で、いや、組織の中で最強らしい彼女が極度の蜘蛛嫌いだからだ。今俺達が居るのは町外れの古びた洋館。持ち主が使用人ごと謎の死を遂げたとか、買い取った人が次々に失踪するとか噂が絶えず幽霊屋敷って呼ばれて放置されている。・・・・・・そう、古いんだ。周囲を取り囲む雑木林にも蜘蛛の巣が多く点在し、割れた窓ガラスから覗くと中にも蜘蛛の巣が沢山ある。

 

 結果、委員長が彼女を背負って中に入ることになった。どうも虫除け効果の能力を得たらしく、それを知った神野さんはアリーゼが来ても困るからと渋々参加を決意。委員長に背負われ、蜘蛛が少しでも自分から離れるようにと腕を回してギュッと密着しているんだ。

 

「こ、これで完璧だね。ふ、ふふふふ」

 

 あっ、だいぶ余裕が無い。まあ俺もさっき蜘蛛の子を散らすような、ってのがどんな光景なのか実体験して少し理解出来たからな。・・・・・・うん、凄かった。轟さんも委員長の服の端を握りしめている辺り、グロいと感じたんだな。

 

 

「遥と俺の機動力が落ちているから使う能力は……」

 

 こんな時でも唯一冷静に作戦を考える委員長。流石頼りになると思っていた時、屋敷の陰に人影を発見する。目を凝らしてよく見ていると、幼馴染みの田中由愛(たなか ゆあ)だった。

 

「あっ、蓮君、それに委員長達も。やっぱり此処って危険なの?」

 

 此奴は能力に目覚めるほどの才能が無い一般人だけど、俺が戦うことを決意した一件で巻き込まれたから事情は知っている。能力なんて一般人からすれば恐怖の対象だろうし、中世の魔女狩りみたいになっても困るからって隠蔽を得意とする後方部隊の人によって他人に伝えることが出来ないようになっているけどな。

 

「此処は私有地として立ち入り禁止になっているはずだが、どうして居る?」

 

「実は……」

 

 話は簡単だ。何人かの友人との会話に話題に不意にあがり、幽霊屋敷探検に行こうってなったらしい。でも、化け物の存在を知っているから怖くて入れなく、止められなかったけど屋敷の周囲で心配で残っていたらしい。連絡してくれたら良かったが、パニックになって思いつかなかったそうだ。

 

「じゃあ、中に入った人の救出も……」

 

「……放っておけば良い。巻き込まれたなら守るけど、自分から望んで危険に飛び込む馬鹿の世話なんて焼いていられない」

 

 冷徹な声でそう言いきると轟さんは中に入っていく。少し酷い気もするけど、実戦部隊も後方部隊も殉職者が出ていることを知っているだけに非難はできない。

 

 

「……まあ、確かに自分から危険に飛び込む者の為に危険を冒すのは馬鹿げているとの意見には賛同しないでもないが……人は助けたいよな」

 

「まっ、仕方ないね。さっさと終わらせて帰るとしよう。由愛ちゃん、君は後方部隊に保護してもらって帰ったら良いよ」

 

 二人も轟さんの後を追うように屋敷に入っていく。よし! じゃあ犠牲が出る前に解決するか!

 

 

 

 

 この後、どうにかこうにか解決したが『ラブコメ主体』という謎の言葉が浮かんだので割愛させてくれ。だいたいこんな会話があった。

 

 

 

 

 

「神野遥ぁ! 何故貴様が私の婿の上着を着ている!?」

 

「彼のせいで服が使い物にならなくなってね。ふふふ、でもこれはこれで全身を包まれているような気がするよ」

 

「ままま、まさか無理やり脱がされるか、汚されたのか!? それで足腰が立たなくなって……。昨日読んだ凌辱物の小説と同じだな。……わ、私は鬼だから頑丈だし、もっと手荒く犯しても良いぞ? 何なら後ろの二人ごと……」

 

「うっかり水系の能力に巻き込んでしまっただけだ。あと、帰れ。今すぐ帰れ。即座に消えろ、頼むから……」

 

 

 

 

 

「おい、そろそろ降りろ」

 

「いや、それが蜘蛛の大群を見たせいで腰が抜けちゃってさ。このまま迎えの車まで行こう」

 

「……仕方のない奴だ」

 

「所で実は下着も濡れたから今の私ってノーブラなんだぜ。……感触はどうだい? 何なら背負ってくれたお礼に後で触っても良いんだけど」

 

「馬鹿な発言のせいで台無しだな。別に落として引き摺っていってもいいんだが?」

 

 

 

 いや、お前ら爆発しろ!! ……俺も彼女欲しいなあ。でも、モテないし無理か……。

 

 

 尚、命が惜しいので轟さんには触れないでおこう。思考からも追い出そう。うん、そうするのが一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

~オマケ~

 

 

 

 

「教えて! 遥さん!! 今日も読者の質問に答えるぜ!」

 

「今回の質問は『かそくしまーす』さんの俺達の強さだが・・・・・・難しいな。この小説、何故か俺とお前のラブコメが中心だと作者が世迷い言を言うレベルで戦闘描写が薄いから」

 

「君もメタ発言に慣れてきたね。じゃあ、私もそれに習って私の強さは『打ち切り漫画の最終話で前回との間で急成長を遂げた主人公』か『最後の数コマにフラグもなしに敵として登場する行方不明だった父親』だね」

 

「分かりにくいにも程があるな。俺は同じ風に言うなら『打ち切り漫画の最終話のライバルキャラ』だな。焔はまあありがちな能力バトルの『元一般人だけど急成長する主人公』、轟は一応他の支部なら単独で任務をこなせるほどのエースだし『中盤に登場する幹部クラスに食らいつくも適わない強キャラ』だな」

 

「じゃあ今日は此処まで」

 

「しかしどう見れば俺達がラブコメしてる風に見えるんだ?」

 

 

 

 




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