怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 最終回です。(最後とは言っていない)


光へ

 ここは、どこだろう?

 

 

 僕は、死んだんだろう?

 

 

 じゃあここがあの世?

 

 

 あの世って随分赤いんだなぁ。煉獄ってやつかな?

 

 

 

 

 『気が付いたか?』

 

 「誰だ?天使?死神?」

 

 

 それとも、何の変哲もないこの僕にチート能力を授けて異世界転生させてくれる都合のいい女神とか?

 

 

 『そのどちらでもないよ。私は、M78星雲の宇宙人だ。』

 

 「M78星雲の宇宙人?」

 

 『ある地球では、『ウルトラマン』とも呼ばれている。』

 

 「ウルトラマン・・・。」

 

 

 目を閉じて眠っているはずの自分が、そのウルトラマンを見上げていた。銀色の肌に赤いラインが入った体と、暖かい光を蓄えた目と柔らかな微笑みを浮かべた口元のマスクを持っている。

 

 もしかしなくても、かつて怪獣たちと戦っていた、あの光の巨人だ。たしかに夢で見た光そのもの・・・けれど、あの夢で見たような不安感はない。神秘的なその姿に、安心感すら覚えた。

 

 

 『君の体は、深いダメージを負い、危険な状態にあった。そこで私が一時的に一体化することで、その命を繋ぎ留めることにしたのだ。』

 

 「じゃあ、僕は生きていられるってこと?」

 

 『そうだ。かつて私が地球に留まっていた時もそうしていたのだ。』

 

 

 あの時確かに、自らの命が体を離れていくのを感じた。けれど今は心地よく感じるのは、そのせいなのだろう。

 

 「ありがとう、ございます。おかげでまた仲間たちのところへ帰れます。」

 

 『お礼を言わなければならないのは、我々の方だ。君たちは本当によくがんばってくれた。おかげで希望が見えた。』

 

 「それは・・・どういう意味?」

 

 「そこから先は俺が説明しよう。」

 「今度は誰?」

 

 驚いて。今まで閉じていた目を開いた。すると目の前に、今度はグレーと青の制服を着た青年が現れた。これは不思議なことだが、今自分は横たわっているはずなのに、目の前の青年は『立って』いる。この空間には上も下も無いのだろうけれど。

 

 「俺の名はレイ。地球人のレイオニクスだ。」

 「レイ・・・オニクス?」

 「レイオニクスは、かつて宇宙を支配していた『レイブラッド星人』の遺伝子を持ち、怪獣を操る能力を持った者たちのことだ。コレ(・・)をつかってな・・・。」

 

 青年、レイが掲げたのは青と金で出来たツノのようなものが生えた機械。バディライザーに少し似ているかもしれない。自分の物と比べてみてみるが、バディライザーは黒焦げてボロボロだったことに気が付いた。

 

 「こいつは『バトルナイザー』。レイオニクスが一つづつ持つものだ。」

 「バトルナイザー・・・。」

 「そしてかつて、巨大な悪が振るった、100体もの怪獣を操れる特別なバトルナイザーがあった。」

 

 「その名は『ギガバトルナイザー』。」

 

 「俺たちは、その悪と『怪獣墓場』で戦い、勝利した。その時、ギガバトルナイザーも消滅したはずだった・・・。」

 

 「けれど、消えずに残ってしまったギガバトルナイザーの欠片が、怪獣墓場を飛び出して別の宇宙にまで飛び散ってしまった。」

 

 『怪獣墓場は、あらゆる宇宙と繋がっている。我々もそこを通ってここへ来たのだ。』

 

 「そしてギガバトルナイザーの欠片は、この宇宙の太古の地球に落ち、今この時代に蘇った。」 

 「それがこの、バディライザーのシンセナイザーだったんですね・・・。」

 

 壊れたバディライザーの割れ目から、件のシンセナイザーを取り出す。レイの持つバトルナイザーに反応するように、それは光っていた。

 

 「俺たちはそれを探しに来たんだ。レイブラッドの力を悪用されないよう、封印するために。」

 「元々、あなたたちの世界の物だったんですね。これは、おかえしします。」

 

 

 途中から話のスケールの大きさに若干追いつけなくなっていたが、この力が悪用される未来・・・それなら容易に想像できる。あの悪夢の正体も、今なら理解できる。

 

 

 「いつか起こるかもしれないという懸念が、僕にあの夢を見させたのだとしたら。最悪の事態を避けられるなら、そうするに越したことはないでしょう。これもなにかの運命なんだろう。」

 

 安心半分、少し落胆した。シンセナイザーを失うということは、もうバディライド出来なくなるということ。 

 

 「そうだな。だが、人間には、そうした運命を乗り越えていける力がある。」

 「え?」

 「俺たちレイオニクスもそうだった。精神だけとなったレイブラッド星人の新たな肉体を選ぶために、俺たちは生み出されたんだ。」

 

 レイは、バトルナイザーを見つめて言った。

 

 「けど、最後にはレイブラッド星人も倒して、その運命を乗り越えられた。」

 

 「そこにはいくつもの光があったから。たくさんの仲間たちや、同じレイオニクスのライバル。そしてなにより・・・。」

 

 シンジもよく知っているはずの怪獣。

 

 「ゴモラ・・・。」

 

 レイは無言で頷いた。

 

 「仲間がいれば、どんな苦難も運命も乗り越えられる。お前には、そんな仲間たちはいるか?」

 「・・・はい、守りたいものも、共に戦う仲間も、いっぱいいます。」

 

 ホルダーの中には、たくさんのカードが入っている。今まで戦ってきた仲間たち、これから出会う友達。

 

 「なら、大丈夫だ。俺はそいつ(・・・)をお前たちに任せていいと思う。」

 『私も同じ意見だ。君の周りには、そして君たちの未来には、暖かく強い光が見える。』

 

 「お前の未来を決めるのは、お前自身だ。お前は、どうしたい?」

 

 そんなの、決まってる。

 

 「僕に・・・これを、預からせてもらっていいですか?きっと平和のために役立てて見せます。」

 「ああ、頼んだぜ。」

 『困ったときは、これを使うといい。』

 

 カードホルダーに光が宿り、一枚のカードが追加された。

 

 「これを・・・使うとどうなる?」

 『ヘッヘッヘ…シンパイスルコトハナイ。』

 「不安だよ!」

 

 「ははは・・・俺たちはもう行くぜ。こうしている間にも、新たな危機が迫っているかもしれない。」

 『君の体はもう大丈夫だ。』

 「はい、ありがとうございました・・・そうだ、僕の名前。」

 「名前がどうしたんだ?」

 「僕まだ挨拶していなかったです。僕は濱堀シンジ、えーと・・・ごく普通の高校生です。」

 「そうか、シンジ。また会おうな!」

 「はい!今度はゴモラとも会いたいです!こっちのゴモラと一緒に・・・。」

 『さらばだ、シンジ。』

 

 ウルトラマンが、スティックのようなものをシンジに向けると、それが眩い光を放った。

 

 

 「戻って・・・きたのか・・・。」

 

 

 瞼を開けると、右手を高く掲げたポーズで地上に立っていた。空の上には、赤い光の球が浮いている。

 

 

 「ありがとう、さようなら・・・ウルトラマン、レイさん。」

 

 ウルトラマンが頷いているように見えた。シンジは飛び去る赤い球を見送り、いつまでも青い空を眺めていた。

 

 

 「おーい!シンちゃん!!」

 「ミカ、ただい・・・うわっと!」

 「もー!心配したじゃん!!!一体なにがあったの?体は?指何本に見える?」

 「おーい、また死んでるぞそいつ。」

 

 お約束の光景だ。

 

 「うぇっへぇっごへぇ・・・昇天しかけた・・・。」

 「大丈夫シンジさん?」

 「大丈夫・・・みんなこそ平気?」

 「平気だよ!シャドウもばっちりやっつけたし!」

 「ゴモたんさんとシンジさんのおかげです!」

 「いや、僕はそんなに大したこと出来なかったかな・・・。」

 「謙遜しちゃってー、もー!シンちゃん大活躍だったじゃない!」

 「ミカの方こそ、すごかったじゃん。」

 

 「濱堀シンジ。」

 「エレキングさん?」

 「先ほどの私の発言、撤回するわ。あまりに無謀すぎる。お世辞にも冷静な判断とは言えないわ。」

 「ちょっと-!せっかくシンジさん頑張ってたのにそりゃないんじゃないの!」

 「客観的に見た意見よ。」

 「・・・そうですね、自分でやってて危なかったと思います。」

 「けど、あなたの的確な判断のおかげでみんなが助かったわ。ありがとう。」

 「え、ああ、どういたしまして。エレキングさんに褒められると嬉しいです。」

 

 ならいいのだけれど、と言ってエレキングさんは下がっていった。彼女なりに心配してくれたのだろう。

 

 「それよりもシンちゃん、あの赤い球はなんだったの?中で何が起こってたの?」

 「あれはね・・・怪獣退治の専門家と、怪獣使い。」

 「なにそれ?」

 「ひょっとしたら、僕はものすごい体験をしたんだろうか。あの光の中で、目が体を離れて、不思議な世界に入っていったような・・・。」

 

 

 

 

 「彼の名前は・・・ウルトラマン・・・。」

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 夕焼けに染まった河原に、ハーモニカの音色が響いている。

 

 「・・・ウルトラマンさん、お疲れさまです。」

 

 『君もよくやってくれたようだな、オーブ。』

 

 「俺は何も。ただ、夜道の迷子に明かりを持たせてやっただけです。」

 

 『そのおかげで、新たな希望を見いだせた。』

 

 あの風来坊が、夕陽に語り掛けている。

 

 『この世界は、我々が手出しせずとも平和を守っていけるだろう。あの怪獣使いの遺産を使いこなす少年と、怪獣の魂を宿した彼女たちがいれば。』

 

 「地球は人類自らの手で守ってこそ意味がある・・・けれどいつか、俺たちと肩を並べて戦える日が来るのかもしれませんね。」

 

 『そう願いたいものだ。』

 

 この星にはまだ無限の可能性が眠っている。まだ見つかっていない怪獣娘もいる。その数は計り知れない。

 

 『ベムラー、レッドキング、ピグモンにゴモラ、そしてゼットン。懐かしいな。』

 

 「かつて戦った怪獣たちが、今はこうして人間として生きているなんて、不思議な宇宙もあるんですね。」

 

 『私も驚いているよ。そして嬉しく思う、彼らが幸せに生きていられるこの世界のことを。』

 

 少し遠くに、その彼女たちの姿が見える。

 

 『そしてその中心にいるあの少年・・・シンジ。未熟な面もあるが、可能性を秘めた若さを持っている。』

 

 「最初にあいつのことを見た時から、そう思ってました。あの日、彼女たちと出会ったあの時から・・・自分の危険も顧みない無鉄砲さも。」

 

 何万年と生きるウルトラマンたちにとって、半年など瞬きするほどの時間もないだろうが、それでも貴重な思い出だった。

 

 『私はそろそろ行こう。今も宇宙のどこかに、私たちの助けを必要とする場所があるだろうから。』

 

 「俺もそろそろ、旅に戻ります。またどこかでお会いしましょう。」

 

 『ああ、さらばだ。』

 

 人知れず、赤い光の球は地球を去って行った。風来坊だけがそれを見届けた。

 

 「お前は月だ、シンジ。太陽の光を浴びて、夜の闇を、また別の誰かを照らす。そんな優しさを、お前は持っている・・・。」

 

 風来坊も、やがて夕焼けの光の中に消えていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん、いないか。お礼言いたかったのに。」

 

 人知れず二人の宇宙人が地球を去ったころ、シンジもまたその近くで途方に暮れていた。ラムネの瓶を二本手に持って。

 

 「名前も連絡先も聞いてないし、どうすっかなぁ・・・ん?」

 

 河原の土手をもう少し行った所にゼットンさんの姿が見えた。

 

 「ゼットンさん、お疲れ様です。」

 「シンジ・・・体は大丈夫?」

 「はい、もうすっかり。デブリーフィングの後にまた検査されましたけど、異常なしって。」

 「そう・・・。」

 

 やっぱり心配してくれていたんだな。アギさんが憧れるのもよくわかる。

 

 「ゼットンさんは、この辺りで風来坊さんを見ませんでしたか?黒いコートでハーモニカを吹いてる人なんですけど。」

 「・・・さっき会った。ファンだというから、サインをあげた。」

 「ゼットンさんがサインを?」

 

 雑誌のインタビューなんかも敬遠して避けているというゼットンさんには、ちょっと珍しいことなのかもしれない。

 

 「名前とかは、聞いたんですか?その人の。」

 「聞いていない。ただ、いつかまた会えると思う。地球は丸いから。」

 「あの風来坊さんも言ってたな・・・いつか会えるならいいか。じゃあこれ、ゼットンさんにどうぞ。」

 「・・・。」

 「ラムネ・・・いらなかったですか?」

 「ううん、ありがとう。」

 

 一人で二本も飲むつもりもないので、一本ゼットンさんにあげた。

 

 「ちょっとこぼれちゃった・・・。」

 「・・・。」

 「素朴な味ですけど、いいですね、これ。」

 「・・・。」

 

 「ケプッ・・・。」

 

 (ゼットンさんが・・・『ゲップ』した・・・。)

 

 ふふ、その、下品なんですが、『可愛い』と思っちゃいまして・・・。

 

 (また今度あげようかな・・・。)

 

 などと邪悪な企みを浮かべていた。そうしている間に、ミカたちがやってきた。

 

 「シンちゃーん!ゼットンちゃんも!なにやってんの?」

 「黄昏れてんの。」

 「ラムネだ!私にもちょーだい!」

 「ない。」

 「いいじゃんひとくちー!」

 

 と、シンジの飲みかけを強奪する。間接キッスとか全然気にしない。

 

 「ぷはー!懐かしい味だね!ヘック!」

 「下品だぞミカ。」

 「いいじゃん、2人しかいないんだし。」

 「あれ?さっきまでゼットンさんがそこに・・・。」

 「もう行っちゃったよ。」

 

 騒がしいのが嫌いなのか・・・いや、きっと気を使ってくれたんだろう。二人っきりになれるように。

 

 「シンちゃん、本当に体はなんともないの?」

 「なんともないよ。ウルトラマンに助けられたからね。」

 「本当に、ウルトラマンに会ったんだね、シンちゃんすごいね。」

 「かつてこの地球にいたウルトラマン本人なのかはわからないけどね。『この宇宙』とか言ってたし。それにもう一人会ったんだ、怪獣使いのレイさん。」

 「怪獣使い?」

 「かつて、怪獣を操る宇宙人同士で争っていたことがあったんだって。その時レイさんもゴモラをパートナーにしていたんだってさ。」

 「へー、そっちのゴモラにも会ってみたいな・・・。」

 

 「そういえば。」

 「なに?」

 「ミカの方こそ、体大丈夫なの?」

 「ボクは平気だよ!だってみんなのゴモたんだし!」

 「理由になってないと思うけど・・・聞いたところによると、レイさんのゴモラもミカみたいに進化するんだって。怪獣使い、レイオニクスの力で。」

 「ふーん、そうなんだ。じゃあシンちゃんもあの時なにかしたの?」

 「ううん、僕は何も。バディライザーも壊れてたし。」

 

 その後に無茶した結果、今はもっとボロボロになってるけど。

 

 「ってことはやっぱり、ミカ自身の意志で進化した、ってことなのかな?」

 「どうなんだろ、わかんないや。でもなろうと思えばなれると思うよ。コツは掴めたし。」

 「あの一回だけで?すごいねミカ。」

 「けど、大怪獣ファイトでは使えないかな。あれって完全に『殺す』ための力だし。」

 

 「ボクは、怪獣娘の力を『生かす』戦いがしたいから。」

 

 「生かすための力か・・・。」

 「だからかな、シンちゃんのことを思った途端、急に力が沸いてきたんだ。あの時は・・・あの時だけは『君だけを守りたい』って思ったから。」

 「・・・そっか、ありがとう、心配してくれて。」

 「思えば簡単な話だったよね。シンちゃんを危険にさらしたくなかったら、ボク自身が強くなればいいだけだって。なんでこんなことに気が付かなかったんだろ?」

 「・・・暴走する危険があったから、とか?」

 「・・・そうだね。本当に怖がってたのは、ボクの方だったんだ。自分を見失うことが怖かった。」

 「けど、僕を『生かす』ために力を発揮できた。それが、『闇を抱いて光となる』ってことじゃない?」

 「闇を抱いて?」

 「光となる。さっき風来坊さんから聞いたんだ。・・・きっと、あの人も・・・。」

 「風来坊・・・か・・・なんか珍しいね。」

 

 カラン、っと空になったラムネの瓶を置いて、2人で夕陽を見つめる。

 

 「・・・ミカが進化して。」

 「ん?」

 「その後目が合って、頷いてくれたでしょ?」

 「うん。」

 「どんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても、僕はミカとゴモラのことを信じてる。僕の事を救ってくれた、ミカと、ゴモラのことを。」

 「うん・・・ありがとう。」

 

 夕陽を見つめたまま、ぎゅっと手のひらを重ねた。その顔は非常に晴れ晴れとしていた。

 

 「おーい!ゴモたーん、シンジさーん!」

 「なにやってんの2人で?」

 「「黄昏れてんの。」」

 

 長い影を引き連れてみんながやってきた。

 

 「お腹空いたから、みんなでご飯食べに行こうよー!」

 「ミクちゃんさっきお菓子食べたばっかりじゃない。」

 「お菓子は別腹だって!アギちゃんこそめしめし食べてたじゃん!」

 「別腹って、メインを食べる前から発動できるものなんでしょうか・・・。」

 「30分後くらいに満腹中枢が働いてくるから、メインがあまり食べられなくなると思う。」

 「じゃあ、晩御飯までランニングしよー!」 

 「もっとやだよ。」

 

 あんな戦いの後だってのに、元気なもんだな。とシンジは感心した。けれどそれは、決して怪獣娘だから、というだけではない。

 

 「これが若さか・・・。」

 「シンジさん、おっさんぽいよ?」

 「自分だけ大人びたふりをして!」

 「なにがぁ!」

 「本当は御自分が一番冷静だと思っているのでしょう!」

 「そうでもあるがぁ!」

 

 違う、疲れてるんだ。変なことを口走る程度には。

 

 「まあそれはそれとして、早くいこ!ベムラーさんがお店抑えててくれてるからさ!」

 「走って?」 

 「ロンモチ!いくよー!あの夕日に向かって走るんだー!」

 「ちょっと待ってミクちゃん・・・速すぎ・・・。」

 「そっち反対方向ですよ!」

 「行っちゃった・・・。」

 「のんびり行こうよ、自分のペースでさ。」

 「そうだね・・・。」

 

 よく耳を澄ましてみれば、彼女たちの笑い声に混じってハーモニカの音が聞こえてきていた。けど、今はいい。今は彼女たちと一緒にいることを選んだ。

 

 「地球は、丸いんだ・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「ただいまー。」

 「おかえりなさいませ、シンジさま。」

 「んー。」

 

 日付が変わる前に家に帰ってこれた。2次会3次会でさんざんあちこち連れまわされてボロボロだ。正直シャドウを相手にしている時より疲れた。

 

 「シャドウを相手にするよりも大変だったかも・・・。」

 「温かいスープなどいかがでしょうか?」

 「一杯だけもらうよ。」

 「かしこまりました。」

 

 上着を脱いでハンガーをかけると、ダイニングに移動して待つ。しばらくする、ほかほかと湯気を立たせた皿が運ばれてくる。

 

 「今日はオニオンスープか、いただきます。」

 「脂っこい食事には合うと思いまして。」

 「ありがとう、うん、おいしい。」

 

 動き回って汗をかいて冷えた体に染み渡る。胃も少しスッキリするし、血管もサラサラになる。

 

 「ごちそうさま。」

 

 後は風呂入って、歯磨いて、また来週だ。

 

 「シンジ様、他に何か仰せつかることはございますでしょうか?」

 「・・・さすがに何もできないほど子供でもないしな・・・そうだ。」

 

 家事に掃除、炊事までやってもらってる身だし。ただ、ひとつ思い出した。チョーさんにしか頼めないこと。

 

 「んんっ。覗いてるのか、それとも報告を送らせてるのか知らないけど。」

 「・・・。」

 「一人息子が会いたがってるんだから、連絡の一つくらい寄越したらどうだ?と、伝えておいて。伝えられる機会があったら。」

 「承知しました。」

 「それだけ、おやすみ。」

 「おやすみなさいませ。」

 

 長い長い一日がようやく終わりを迎えた。文字通り命を燃やすような出来事の連続だったが、まだ終わりじゃない。今日と同じくらいか、それ以上の出来事が起こるだろう。

 

 けど、もう何も心配はない。

 

 今の僕には、かけがえのない仲間がいるのだから。

 

 苦難を共に乗り越え、これからも共に歩いていく仲間たちが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはよー!シンちゃん!!」

 「ふぁ・・・?おはようミカ・・・なんでここにいるの?」

 「起こしに来たんだよー!今日デートでしょ?」

 「・・・いや、さすがに今日はデートの約束した覚えないぞ?」

 「私じゃなくて、レッドちゃんとだよ!」

 「え?約束したっけ?ていうか、今日だっけ?」

 「昨日約束してたでしょ?次の日曜って!」

 「次の日曜って・・・今日か!」

 「曜日感覚失くしすぎだよ。」

 「・・・入院生活してたせいか・・・。」

 「だろうと思った。来てよかった、レッドちゃん待たせるとこだったよ?」

 「ありがとう、用意するからコーヒーでも飲んでな。」

 「ういうい!」

 

 

 

 さっそくこれだ。急いで支度をして朝ごはんも済ませる。

 

 

 

 「いってきます!」

 「いってらっしゃいませ。」

 

 

 

 でも、やっぱりこれが僕らしいってことなんだ。こんなに騒がしい毎日をおくっている僕が、一番僕らしい生き方なんだ。

 

 

 「でも今日から大変だね?」

 「なにが?」

 「だって、明日はエレちゃんとデートだし、明後日はミクちゃんと。そのまた次の日はウイン・・・ダム子とで、その次の日はアギちゃんと!」

 「・・・えっ。いつの間にそんな約束を・・・?」

 「だから昨日してたじゃん、覚えてないの?」

 「ぜんぜん・・・とんでもないことをやってしまったのか・・・僕は?」

 「まーまー元気だしなよ、せっかくのいい天気なんだからさ!」

 

 

 とほほ・・・と頭に雲がかかっている。

 

 「あーもう!こうなりゃヤケだ!とことん楽しんでやる!」

 「その意気だよー、人生は楽しんでなんぼだよ!」

 

 

 泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生。なら、笑ってないと損だよね?




 怪獣娘のカードスリーブがどこ行っても置いてない。せっかくバトスピのゼットンデッキに使おうと思ってたのに!

 それはそれとして、これにて一応完結です。(二回目)。感想などお待ちしております。

 ここまでお付き合いありがとうございました!

 ネタ解説

 チート能力授けられて転生:正直あんまり好きじゃないノリ。異世界転生まではいいとして、チート能力まで与える必要あるの?ところで、怪獣娘はジャンルとしては『転生』に入るんだろうか?

 ウルトラマンがスティックのようなものを向ける:さらばウルトラマンでの、ゾフィーがベータカプセルを使うシーンより。

 ギガバトルナイザー:その欠片とはいうものの、ウルトラファイトオーブではレイバトスが復活させたり、ジード本編でベリアルが使ってたり、そこんとこどうなの?ってなるけど、復活の際に戻らなかったほんのひと欠片がシンセイナイザーに使われていると思っていただきたい。

 ゼットンさんのファン:石黒さんがそうなんだって。ちなみに、ベムラーさんとも駄菓子談義で華を咲かせていたりする。

 その、下品なんですがry:吉良吉影とモナリザ。でもゼットンさんの意外な一面ってかわいいと思う。

 生かすための戦い:活人剣という考え方。守るための力も、振り方を間違えれば暴力になるし、逆に言えば傷つけるための力だって正しく使えるはずだ。

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