怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 作品タイトルをどうしようか迷う今日この頃。こんなに続けるつもりもなくってテキトーにつけてしまったからな・・・。


怪獣娘は隣にいる

 シンジはひとり談話室にて、カチャカチャと工具と部品を弄りながら机に向かっている。ボロボロになったバディライザーの外装を外して、中の配線を整えている。

 

 

 「これで・・・ひとまずはいいか。」

 

 「おっ、もう直ったのそれ?」

 

 「ボロボロだったみてくれと、最低限の機能だけはね。本格的に使うにはもっといる。」

 

 

 とりあえず電源は入って、中のライブラリやデータを見ることはできるようになった。元々通信機能が付いていない機械だったし、データが見たければコンピューターで抽出すればいい話だったが。

 

 

 「一応ボディも応急処置ぐらいしたかったけど、こればっかりは新しいのに交換するしかないか。」

 

 「それで色だけ塗って誤魔化してるんだ?それなら持ち運ぶ必要もないんじゃない?」

 

 「なんかもう、愛着が湧いちゃったから。手放してると落ち着かないよ。」

 

 「それスマホ依存症って言うんだよ。」

 

 「通信も出来ないスマホか。」

 

 「それだって、スマホの画面が壊れたままでも意地でも使い続けようとしてるようなもんでしょ?」

 

 「いや、それはちょっと・・・まあそうだな。」

 

 

 少し改良を加えれば、通信ぐらい出来るようになるが、それをしたせいでなにかしらのバグが発生したりしたら大変なので手が付けられないでいる。実際通信には携帯かビデオシーバーで十分だし。

 

 

 「そういえば、カードが増えたんだよね?前は私とアギちゃんのしか無かったけど。」

 

 「うん、あの場所にいた怪獣娘さん全員と、それから・・・。」

 

 

 赤い怪獣カードの中で、一際目立つ銀のカード。そこに描かれているのは、光の巨人。

 

 

 「これがウルトラマンかー。怪獣の映像は見たことあるけど、ウルトラマンは初めて見たな。」

 

 「会ったのはウルトラマンだけじゃなかったんだけどな・・・。」

 

 「なに?」

 

 「ううん、なんでもない。」

 

 

 このバディライザーのルーツも含めて話すとなると、色々ややこしいので今日は説明はやめておこう。

 

 

 「それに怪獣カードもこんなに!30枚ぐらいあるのかな?」

 

 「いっぺんに増えたね。怪獣だけじゃなくて、ウルトラマンのカードもあるよ。」

 

 「おぉーホントだ!」このカードにはどんな効果があるの?」

 

 「それもわかんないや。詳細なことは教えてくれなかったし。ただ、使わずに済んだらそれが一番じゃないかな。」

 

 「それもそうだけど、どうなるか興味ない?」

 

 「よしんば何か起こったとして、実害被るの主に僕だからやらない。」

 

 「えー、つまんないの。」

 

 「それはそうと、今は目の前の問題をどうにかしないと。」

 

 

 テーブルに7並べのように広げていたカードを仕舞い、すべてを腰に戻すと本題に入った。

 

 

 「レッドキングさんって、なにが好きなんだろ?」

 

 「やっぱ筋トレとかじゃないかな?都内一周マラソンとかどう?」

 

 「休日にまで訓練とかしたくないなぁ。それデートって言える?」

 

 「楽しかったらデートなんじゃないかな。レッドちゃんがどこ行きたいかも大事だけど、シンちゃんが楽しめる場所でもないとダメだよ?」

 

 「うーん、一理ある。」

 

 

 デートの場所=相手が楽しめる場所であっても、相手が楽しめる場所=自分が楽しめる場所とは限らない。勿論そういうところも纏めて飲み込めるのが人との付き合いってもんなんだろうけど、今はまだその前段階だ。軽ーくジャブで牽制してみるのもいいだろう。

 

 

 「僕だったらそうだな・・・最近なにかと忙しかったから、『癒し』が欲しいな、かわいい動物とか。」

 

 

 「と、いうわけで。」

 

 「なにがというわけなんだ?」

 

 

 時計の長針が3回ほど回ったところで。レッドキングさんと共に、場所はお洒落な店の立ち並ぶアーケードへと移していた。

 

 

 「で、どこに行くんだ?」

 

 「ここです、ここ。」

 

 「ここって・・・。」

 

 

 ファンシーなお家のような外観に、1時間1000円と書かれたオシャレな看板。そして窓から覗くモフモフな生命体。

 

 

 「猫カフェです!」

 

 「猫・・・ネコ・・・。」

 

 

 思わずにゃーん!と口にするところを思いとどまり、レッドキングさんの反応を窺う。シンジの目には無反応、というか放心状態のように映った。

 

 

 「レッドキングさん、ネコ嫌いでしたか?」

 

 「いや・・・別に嫌いじゃないぜ?・・・かわいいのはむしろ好きだし。」

 

 「OK!レッツゴー!」

 

 

 店内に入ると、休日なだけあって結構な客入りであった。老若男女問わず猫と戯れている。ドリンクを注文して適当な席に座ると、一口啜って話を切り出す。

 

 

 「お前、こういうとこ来たことあるのか?」

 

 「いいえ。猫カフェは無いですが、動物園のふれあい広場にならあるんですが。」

 

 「そことはどう違うんだ?」

 

 「うーん、猫だけじゃなくて、犬にも触れました。あとアルパカとかカピバラとか、プレーリードッグもいました。」

 

 「動物園か・・・最後に行ったのいつだったかな・・・?」

 

 「この前ミカと行ったのは、動物園もある遊園地でしたけど。やっぱり、生で見る動物もかわいいですね。写真や動画とも違って。あっ、ほら、ネコちゃん来ましたよ。」

 

 「おっ・・・。」

 

 

 トテトテと、白い毛におおわれた仔猫がやってきた。まだ小さいからか、色んなものに興味津々なんだろう。

 

 

 「かわっ・・・、ああっ。」

 

 「逃げちゃった。」

 

 

 いきなり手を出されてびっくりしたのか、仔猫は逃げて行ってしまった。

 

 

 「やっぱ、オレみたいなガサツなやつには懐かないのかな・・・?」

 

 「そんなことないですよ。レッドキングさん、私服もかわいいですよ。」

 

 

 パンツルックで活発そうな服装で、髪にはかわいいリボンがあしらわれている。

 

 

 「特に、髪型にはそうとうこだわってるんじゃないですか?その縦ロール、女の子らしくってかわいいと思いますよ。」

 

 「そ、そうか・・・?変じゃないか?」

 

 「ぜんぜん、その髪だったら服もロングスカートとか着ても似合うと思いますよ。」

 

 「そうか・・・似合うか・・・。」

 

 

 「よーし、じゃあこうしましょう。」

 

 「なんだ藪から棒に?」

 

 「今日はレッドさん『オレ』って言うの禁止で。」

 

 「はぁ?」

 

 「そんなにご自分の可愛さに気づけないのなら、もうちっと口調とか気を使ってみればいいんでは?と思って。」

 

 「なんでオレがそんなこと!」

 

 「はい、1ペナ。」

 

 「ぐぬっ・・・まだやるって言ってねえし・・・。」

 

 「じゃあ、これからやるんですね。」

 

 「そうでもなくってな・・・!」

 

 

 「あっ、また来ましたよ、さっきのネコちゃん。」

 

 「ん?」

 

 

 さっきの仔猫がまたやってきていた。楽しげな雰囲気を察して、惹かれてきたのかもしれない。

 

 

 (レッドさん、今度は触らずに、近寄ってくるまでじっとしてみましょうか。)

 

 (そうか、わかった・・・。)

 

 

 トテトテとレッドキングさんの足元まで寄ってきた仔猫は、すんすんと鼻を動かして脚をくすぐった。

 

 

 「あっ・・・。」

 

 (まだ動かないで・・・。)

 

 「ほっ・・・ほっ・・・。」

 

 

 やがて気に入ったのか、仔猫はレッドキングさんの膝の上に乗ってきた。居心地がいいのか、丸くなって動かなくなった。

 

 

 「か~っかっかっかっ・・・。」

 

 「もう大丈夫じゃないですか?触ってあげたら。」

 

 「お、おう・・・はぁ・・・。」

 

 

 背中や頭を撫でてやっても、今度は逃げずにいてくれている。レッドキングさんの顔も思わずほころんでいる。

 

 

 「かわいぃ~~~~♡」

 

 「よかったですね、レッドさん。」

 

 「なぁ~これすっげぇあったかいよ!この重さが、すっごい幸せだ・・・。」

 

 

 大怪獣ファイトの時や戦闘の時のような荒々しくも凛々しい先輩怪獣娘はなく、そこにいるのはただの可愛い物好きな女の子であった。

 

 

 (ここに来て正解だったな。)

 

 「なぁ、お前も撫でてみろよ。」

 

 「あっ、はい、じゃあ失礼して。」

 

 

 思った通り、毛は柔らかい。一見硬いと思いきや、思いのほか柔らかい。そしてなにより暖かい。

 

 

 「・・・おい。」

 

 「はっ。」

 

 「なんでオレを撫でるんだよ!」

 

 「あまりに可愛すぎたんで、つい・・・。」

 

 「アホー!」

 

 

 超音速の拳が、弁解を述べる口を強引に閉じさせて吹っ飛ばした。天井から青空が覗いてる。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「あなた、バカ?」

 

 「返す言葉もございません・・・。」

 

 

 翌日。今度はエレキングさんと、お洒落なカフェテラスでお話中。

 

 

 昨日は結局、お店に多大な迷惑をかけてしまい、うやむやなままにお開きとなった。なお、壊した建物の修理代などはGIRLSにつけておいた。

 

 

 「いくら親しい仲だからと言って、女性にみだりに触るなんて失礼よ。」

 

 「ミカとのなれ合いで、麻痺していたようです・・・。」

 

 「なら、もっと好感度を上げてから出直してらっしゃい。」

 

 (触ることについては否定しないのか・・・。)

 

 

 落ち着いた大人の雰囲気を漂わせるエレキングさんの言うことには、黙って従わざるを得ない『重さ』がある。その恰好も加味すると、なお一層の事だ。

 

 

 「エレキングさん、オフの日もスーツなんですね。」

 

 「ええ、私は普段からこの恰好よ。」

 

 「そのせいで、なんか学校の先生と面談してるような感覚ですけど。」

 

 「なら、先生の言うことは聞いてちょうだい。」

 

 「はいせんせー。」

 

 

 曰く、いかなる時もTPOを選ばず、コーディネートを考える時間を削減できる選択らしい。なんつーか、テスト勉強のためにテキストのページを丸々暗記するような暴論である気もするが。

 

 

 というか、仮にも(仮じゃないけど)デートだってのに、ファッション選ぶ気もないって、それってつまり、僕との付き合いも仕事上の話でしかないってこと?ちょっとショック。

 

 

 「服装の話をするなら、あなただって普段からあのスーツを着ているんではなくって?」

 

 「はい、今も下に着てます。いつでも戦えるように。」

 

 「見せなくていいわ。」

 

 

 常に待機状態のS.R.Iスーツを着込んでいる。そのために、服は脱ぎやすいものを選んでいる。脱ぐだけなら少なくとも電話ボックスは必要ない。

 

 

 「でも、そのメガネは最高にクールっす。」

 

 「ありがとう。」

 

 

 シンジの正直な意見に一言だけ応え、温かいお茶をすすり、甘い香りの立ち込めるパンケーキにぱくつく。このお店の一番人気メニューが、この『帝王パンケーキ』だ。家で作る物よりも分厚く、それでいてふわっとしているスポンジに、生クリームやシロップがこれでもかとふんだんにかけられている、まさにスイーツのエアーズロックだ。

 

 

 「・・・ふっ。」

 

 

 ふと一瞬、エレキングさんの口元が上を向いたように見えた。本当に刹那で、見間違いかもしれないと思ったが、ただその一瞬だけ、目の前にいるのが年相応な女の子の素振りに見えた。その一瞬をもう一度見たくて、ついエレキングさんの顔を凝視していた。

 

 

 「なにかしら?」

 

 「いえ・・・頬にクリームが。」

 

 「あら。・・・ありがとう。」

 

 

 声をかけられたとき、鐘が響くように胸が高鳴るのを感じた。なんというか、不思議な魅力のある人だ、この人の瞳は、声は。

 

 

 「お待たせいたしました、こちら『アイゼンパフェ』になります。」

 

 

 「おっ来た来た。これ一回食べてみたかったんですよ。」

 

 「そう。」

 

 

 シンジが注文したのは、イチゴの赤とメロンの緑が特徴的な大きなパフェ。一人分とするには、少々大きすぎる。

 

 

 「注文できるのが『カップル限定』だったかしら?」

 

 「そうそう、そのためのスプーンもふたつ。どうですか?一口。」

 

 「結構よ。」

 

 「さいですか・・・。」」

 

 

 おいしっ、と口へと放り込んでいく。甘いはずのクリームが、ちょっとしょっぱく感じるのは気のせいだろうか。

 

 

 「それが食べたかったのなら、最初からゴモラとここに来ればよかったのではなくて?」

 

 「ミカと一緒だと、大抵ソース味のものになるので。タコ焼きも嫌いじゃないんですが。」

 

 「ならなおさら、たまに別の物をって提案するべきじゃないのかしら?」

 

 「いやーでもその、なんというか、ミカと一緒にいる時は、タコ焼きが食べたくなるんです。金曜日には必ずカレーを食べるとか、最初の一報は信じてもらえないとか、右顎は必ず折られるとか、そんなお約束なんです。」

 

 「そう。仲が良いのね。」

 

 

 食べ始めると、会話が弾まなくなる。元々弾むほどの会話のキャッチボールをしていたわけじゃなかったけど、食べながら喋るのはマナー違反だって言われそうで言い出せない。なのでもくもくと目の前の山に挑む。クリームばかり食ってちゃ胸焼けして体に悪いぜ、間・・・間にフルーツを食べるんだ。お茶もちょっと渋いぐらいがいい。

 

 

 「・・・。」

 

 「どうしました?じっと見て。」

 

 「・・・メロン、もらっていいかしら?」

 

 「どうぞ、はい。」

 

 

 はい、とやってはたと気が付いた。今、自分の手はどこを向いているのか。そのスプーンは誰のものか。

 

 

 「・・・いただくわ。」

 

 「ごめんなさい・・・。」

 

 「なにが?」

 

 「いえ、なんでも・・・。」

 

 

 つい、『いつもの癖』で、相手に『食べさせて』しまった。自分のスプーンで、相手の口に。

 

 

 エレキングさんは何事も無かったかのように自分のパンケーキに戻っていった。慌ててお花摘みに行かれたとか、そんなことされたりしたらもう泣いてたね。

 

 

 「・・・。」

 

 

 じゃあ、このスプーンはどこに置こうか?自分も何事もなかったかのように使い続ける?それとも、あらかじめ用意されていた、もう一本のスプーンに持ち替える?どっちをやっても気まずくなるだろう・・・。

 

 

 「・・・じゃあ、持って帰る?」

 

 「ダメよ。」

 

 「はいせんせー。」

 

 

 どうしよう、甘さに舌が痺れてきたのかな、味がしなくなってきた。コーヒーが足りない。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「へー、そんなことが。やっぱ疲れるよね、あの人とタイマンなんて。」

 

 「別に喧嘩してたわけじゃないんだよ?」

 

 

 翌日。ミクさんとアリーナにて。今日は新必殺技の開発に付き合うこととなった。遠巻きにアギさんとウインさんもいるが。

 

 

 「それにしても、いやな天気だね。」

 

 「一雨来そうだね、早いとこ完成させよ?」

 

 「おっけー!じゃあこっちに向かって走ってきて!」

 

 

 曇天の下、特訓が開始された。

 

 

 「これってデートって言えるのかな?」

 

 「本人たちが楽しめているなら、デートなんじゃないでしょうか・・・。」

 

 

 ミクラスは、突進してくるシンジをラリアットでかちあげ、空中で足を掴んでブレーンバスターの体勢に入る。

 

 

 「とりゃー!」

 

 「ゲェッ!」

 

 

 ズガーン!と地面に脳天を突き立てられる。ちょうどこれと似たような状況を、つい先日目の当りにしたばかりだ。

 

 

 「うーん・・・レッドキング先輩のみたいに綺麗に行かないなぁ・・・。」

 

 「無理に再現する必要ないんじゃない?」

 

 「でもアタシもなんかオリジナルの必殺技欲しいし!なんか参考になるかと思ったんだけど。」

 

 

 そこまで行くまでにシンジの体が持つかはともかく。大怪獣ファイターとして活躍するミクラスにとっては、これは大きな問題だろう。レスラーたるもの、フィニッシュホールドの一つ持っていなければならない。

 

 

 「でもアタシ、頭使うの苦手だし。」

 

 「その為に僕がいるんでしょ?決してサンドバッグやカカシの目的で連れてこられたんじゃなし。」

 

 「なにかいい案ある?シンジさん。」

 

 「そうだな・・・。」

 

 

 実際のところ、多少強化はされどシンジには怪獣娘ほどの超パワーは持っていない。それゆえ、シンジに出来ることは人間のプロレスの延長線上でしかない。

 

 

 「だから、最大限怪獣の力を振るうには、ミクさん自身のひらめきが必要になると思う。」

 

 「人任せじゃいられないってことだね、わかった。」

 

 「それで、両方のドライバーを受けた身としての意見だけど。」

 

 「ふんふん。」

 

 「なんというか、レッドキングさんのはかなり『加減』されてた気がする。」

 

 「加減?手加減ってこと?」

 

 

 「手加減もそうだし、なによりコントロ-ルされてた。バランスや角度を正確に、地面に突っ込まされたって感じ。ミクさんのは、メチャクチャ力任せに叩きつけられてたって感じだった。」

 

 「えー、それこそ力こそパワーじゃん?」

 

 「えっとね・・・どんなに肩力があっても、それをストライクゾーンに投げられなきゃ名ピッチャーにはなれないんだよ。レッドキングさんの技は、力任せなようでその実かなり計算されてるよ。」

 

 「そうなのか・・・。」

 

 「あのレッドドライバーは、乱戦で出せる技じゃないや。トドメの一押しの、決まれば確実に勝てる、まさしく『必殺技』なんだ。」

 

 

 要は戦闘開始初っ端から放った光線技が弾かれるのと一緒。

 

 

 「ミクさんには、どっちかっていうと乱戦中からチャンスをもぎ取るようなタイプの技がいいんじゃないかな?スピアータックルでマウントとるとか、バックブリーガーで離さないとか。」

 

 「なるほど・・・じゃあさっそく試してみようか!」

 

 

 習うより慣れろとも言う。さっそく訓練にとりかかる。

 

 

 「でりゃー!」

 

 「ゲェフッ!」

 

 

 タックルからのパワーボム、ジャイアントスイング。バッファローの脚力と膂力を持って、反撃する隙を与えない技のラッシュ、ひとまずは形になってきた。

 

 

 「うん、なんか習得できたかも!」

 

 「そりゃよかった、付き合った甲斐があったってもんだ。あいたたた。」

 

 

 体の節々が痛むけど、それは別に構わない。この笑顔には変えられない。

 

 

 「じゃあ、次はアタシがシンジさんの技に付き合うよ!」

 

 「そう?そうだな・・・ちょうど色々試したいものもあったから、それでもいいかな?」

 

 「おーけーおーけー!」

 

 

 そいじゃさっそく・・・と、シンジは一つのガジェットを取り出した。

 

 

 「なにそれ?銃みたいだけど?」

 

 「そう、銃。やっぱり丸腰で戦うのもなんだと思って、ちょっと作ってみたんだ。『ライザーショット』ってところかな。」

 

 

 シリンダーを引いてカートリッジを詰め、安全装置を外して適当な岩に狙いを定め、トリガーを引くとレーザーショットが発射され、岩が爆散する。

 

 

 「へー!すっげーカッコイイじゃん!」

 

 「でしょ?カートリッジ交換で麻酔弾や冷凍弾も撃てるんだ。これも怪獣娘の研究の賜物だよ。」

 

 

 怪獣娘のデータを使えば、シャドウにだってきっと効果があるだろうという算段だ。

 

 

 果たしてこれが、怪獣娘の力を兵器として転用するという、以前から抱いていた懸念事項に引っかかるかはさておいて。

 

 

 「じゃあ、ちょっと戦ってみようか、模擬戦。」

 

 「おっけー!またやっつけてやるじゃん!」

 

 「僕だってやられっぱなしじゃないよ。」

 

 

 パンッ!と拳同士をぶつけて意気込む。毎度ボコボコにされているけれど、さりとてこれ以上負けたくないと思い、また無謀にも挑んでいく。

 

 

 それでも日々様々な策を弄しては、皆をあっと驚かせるようなものを投じてくるのは進歩と言えよう。

 

 

 「いっくぞー!まずは顔面にボディブローだ!」

 

 「どっちだよ!」

 

 

 振るわれた腕をとって、小手捻りで軽くいなす。

 

 

 「銃使わないんだ・・・。」

 

 「なんか、いざ撃とうと思ったら申し訳なくなっちゃって。」

 

 「気にしなくていいよ、練習になんないじゃん。それに、同じ怪獣娘にだって飛び道具持ってる人はいるし。」

 

 

 ミクラスにとっても、飛び道具への対処の掴み方にはなる。ならば遠慮なくと、

 

 

 「構えて、撃つ・・・!」

 

 「させるかおりゃー!」

 

 

 シンジは冷静に狙って撃ったつもりだった。が、突進してくるミクラスに当てられなかった。

 

 

 「ぎゃっ!」

 

 「もいっぱつ!ハリケーンミキサー!」

 

 

 対象が近くに寄ってくると、焦って照準がブレやすいという。この辺りは射撃の腕前以上に、いかなる時も平常心を忘れない、精神力の問題となるだろう。空中に放り投げられながら心の中でかみしめる。

 

 

 「レーザーなら、薙ぎ払って使うことも出来る!」

 

 「くっ!」

 

 

 シンジの反撃に、ミクラスは歩みを止めてしまう。そうなれば、ますます集中砲火の餌食となる。

 

 

 「このまま押し切れるか・・・?!」

 

 「なんのー!まだまだ!」

 

 

 ミクラスは拳でレーザーを弾きながら、無理矢理突破してきた。とて、それを予測できないシンジでもない。

 

 

 「接近戦になると、レーザーは使いにくいか・・・。」

 

 

 冷静に冷静に、かわして避けて退く。シリンダーを引いて、カートリッジを交換する。試しに当ててみるがひるむ様子もない。

 

 

 「威力が足りないか・・・なら。」

 

 

 再び振るわれる拳を受け止め、今度は銃口を突き付けてゼロ距離射撃を試す。

 

 

 「ちょっとは効いた?」

 

 「ぜんぜん、へっちゃらだし!」

 

 

 おかえしにとボディに強烈な一撃をもらう。効かないと言われたが、やせ我慢だと思う。少しプルプルしている。

 

 

 「なるほど・・・ちょっとわかった。」

 

 「なにが?」

 

 「無理に銃使う必要ないわ。」

 

 

 ライザーショットを仕舞い、立ち上がって息を整える。

 

 

 今回見れたのは銃そのものの性能と有用性。そこに使用者の技能が合わさって、初めて戦力になったと言えるだろう。つまり、要練習、要研究。

 

 

 「じゃあ、もうやめる?」

 

 「全然、性能テストと勝負はまた別だし。」

 

 「そうこなくっちゃ!シンジさんもなかなかのバトルマニアになってきたね?」

 

 「いつまでも、守られっぱなしってわけにはいかないからね!意地があるんだよ。男の子には!」

 

 

 研究していたのは武器だけじゃない。技の修練にも余念はない。相変わらずのプロレス技主体だが、その組み合わせ方は無限大だ。

 

 

 「じゃあ今度はこっちが!バッファフレイム!」

 

 「うぉっ!そういえばミクラスは熱線を吐けるんだった!」

 

 

 ミクラスの資本は格闘能力にあるだろうが、かといって遠距離攻撃にも隙が少ない。パワー重視のオールラウンダー、思えばかなりの強敵を相手にしているんだと、己のうかつさを嗤った。

 

 

 「けど、こっちには作戦があるんだ!」

 

 

 瞬発力ならばミクラスが勝るかもしれないが、全体的なスピードには今のところシンジに軍配が上がる。

 

 

 「将を討たんとするなら、まず馬を射よ!」

 

 「なに?しょー・・・ショーウィンドウ???」

 

 「ちがうわっ!まずフランケンシュタイナー!」

 

 

 一気に詰め寄り、足で相手の首をとって振り落とす。仰向けで地面に倒れた相手の片足を掴み、一回、二回、三回とそこを軸に回転して締め上げる!

 

 

 「スピニングトーホールド!」

 

 「あぎゃー!!」

 

 「続いて!」

 

 

 さらに相手をひっくり返してうつ伏せにし、もう片方の足も巻き込んで固める!

 

 

 「テキサスクローバーホールド!」

 

 「こ、この技は・・・『テキサスキッド』の・・・!」

 

 「そうさ!足を徹底的に痛めつけるのさ!」

 

 

 あらゆる攻撃、あらゆる格闘技において、足運びが重要なことは言うまでもない。その足を破壊して、徐々に有利な状況を作っていく。相手が武器を持っているなら、まずはその武器を奪ってしまえばいいのだ。

 

 

 「決してあきらめず、最後には勝利をもぎ取る、それが僕の好きなテキサスキッドさ!」

 

 「なるほどね・・・けどデビルバッファローのほうがパワーは上だよ!!」

 

 「テクニックはテキサスキッドの方が上さ!」

 

 

 もがくミクラスを制し、さらにギリギリと締め上げる

 

 

 「ぐっうぅ・・・さすがにこれはキツイ・・・かも・・・。」

 

 「どうだ!まいったと言え!」

 

 「まだ・・・まだまだぁ!アタシだって・・・もっと強くなるんだ!うぉおおおおおおおおお!!」

 

 

 吠えるミクラス、それに呼応するように全身が熱く燃える。

 

 

 「バッファローパワー!!」

 

 「ぐぅう・・・こんなパワーが・・・!」

 

 

 持っていた足に、強引に振りほどかれ、たまらずシンジは飛び退いて様子を窺った。

 

 

 「なんてすごい・・・だけど、十分にダメージは与えたはず!」

 

 「アタシに・・・限界はない!!」

 

 

 両腕を、前脚のように地面に叩きつけ、ロケット頭突きでシンジの足を掬う。空中に投げ出されたシンジに、さらに頭突きの追撃を行う。

 

 

 「ハイ!ハイ!ハイ!ハイィイイ!」

 

 「ぐわぁあ・・・!押され・・・るっ!」

 

 「いける!今ならいける!」

 

 

 その時、ミクラスに電流走る。天啓を得た、新たな技のひらめき!

 

 

 両腕と、傷ついた両脚も総動員して、ロケット頭突きに回転を加える。宙を舞うシンジの背中を、その逞しいツノが捉える。その状態から、タケトンボのようにきりもみ上昇し、その頂点でシンジの頭を掴み、神の鎚のように大地へと振り落とす!

 

 

 「バッファロー・・・ストーム!」

 

 

 

 

 

 しかし、その振り下ろす直前、本物の雷が2人を直撃して、技は不発となり、仲良く墜落することとなった。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「さぁー今日も張り切っていこー!」

 

 「いや本当に大丈夫なんですか?昨日雷落ちてましたよね?!」

 

 

 翌日。今日はウィンさんと映画を観に行く予定だった。

 

 

 「どうやらあの瞬間、ミクさんが潜在パワーを発揮したことによって、『あの場で最もトガった物体』として認識され、雷に狙い撃ちされたらしい。」

 

 「どんな理屈ですか。」

 

 

 そんなバカな、とあきれるウインダムをよそに、シンジはずんずんと歩を進めていく。その眼は渦を巻いて正気を失っているようにも見える。

 

 

 「で、今日は『おまピト』の劇場版の再上映だっけ?」

 

 「そうなんです、当初の予定より半年以上延長されたロングランから、さらに今回リバイバルまで決定したんですよ!」

 

 「快挙だねー。」

 

 「それよりもシンジさん!しっかり予習はしてきてくれましたか??」

 

 「漫画は全巻読んだし、アニメも一通り見たよ。OVAと小説は見てないけど。」

 

 「それだけあれば大丈夫です!さあ行きましょう!」

 

 (Wikiとかで先にネタバレ見ちゃったんだよなぁ・・・。)

 

 

 公開当時、ウインさんはひと悶着あったらしいけど、今はこうして楽しくやってるんならいいんじゃないかな。

 

 

 「上映時間になってからが長いよね。宣伝とか。」

 

 「ああ、ありますね。」

 

 「その中でも、明らかに映画そのものの対象年齢から外れてるような広告とか見ると、なんだかなぁ・・・ってなったり。」

 

 「ありそうですね、そういうの。」

 

 「明らかに対象年齢『下』だろって、思ったり。」

 

 「『下』?・・・ああ、そっちの。てっきり『上』かと・・・。」

 

 「なに?」

 

 「いえ、なんでもありませんアハハ・・・。」

 

 

 ・・・。3秒考えてシンジも悟った。

 

 

 「ああ、そういうことね。ウインさん、女児向けアニメとかも見るの?」

 

 「え!?あ、まあ、結構・・・ネットとかでもよく話題になりますので、一応。」

 

 「決して子供向け作品が幼稚とか、そう言いたいわけではないよ?実際子供向け作品って、侮れないぐらい面白かったりするし。」

 

 「そう・・・ですよね、いつ見ても面白いですよね。」

 

 「子供向けだからこそ、大人も本気で作ってるんだなって、そう思う。」

 

 「おまピトだって負けてませんよ、子供向けじゃないかもしれませんが、製作者から作品への愛を感じます!」

 

 「・・・中高生向けじゃなかったっけ元々、おまピト?」

 

 「あっ・・・そうですね、中高生も子供ですよね、アハハ・・・。」

 

 

 「えっと、つまり何が言いたいかっていうと、誰が何を好きなのかなんて、結局自由なんだって。それだけ。」

 

 「私も・・・そう思います。今度は、シンジさんの好きなものをオススメしてくださいね。」

 

 「と言っても、好きな漫画といえばマッスルマンぐらいだけど・・・。」

 

 「ミクさんも好きって言ってましたね。私も興味あります!」

 

 「そっか、じゃあオススメのシリーズは・・・。」

 

 

 ~2時間後~

 

 

 「面白かったね、原作愛に溢れてたと思う。」

 

 「そうでしょう!そうでしょう!!特にあの一話のあのシーンがリフレインして・・・。」

 

 

 リバイバルにあたり、追加された新グッズを手に劇場を後にした2人。

 

 

 「なにか軽い物でも食べますか?」 

 

 「そうだね、今度はなにかしょっぱいものが食べたいかも。」

 

 

 ファーストフード店でポテトとクリームソーダを注文した。クリームソーダは魔法の飲み物だ。何歳になってもその甘美な誘惑には勝てない。

 

 

 「ソーダに氷を浮かべておかないと、アイスが沈んでとけちゃうから、家で作るときは気を付けようね。」

 

 「外は寒いのに、アイス好きなんですか?」

 

 「どっちかっていうと、クリームが好きかな。」

 

 

 んー♡と甘いのを口にしては、しょっぱいポテトを味わう。交互に食べることで違う食感を味わうのだ。

 

 

 「なんというか、幸せそうに食べますね。」

 

 「うん、おいしいよ。ウインさんもアイス一口どう?」

 

 「えっ。あー・・・じゃあ一口だけ。」

 

 

 コーヒーのマドラーでアイスクリームを掬い、はむっと頬張る。口の中でじゅわっと溶ける甘味に頬が綻ぶ。

 

 

 「なんていうか。」

 

 「はい?」

 

 「今までで一番デートらしいデートをしている気がする・・・。」

 

 「大変・・・だったんですね。」

 

 「うん、大変だった。」

 

 「でもみなさん、それだけシンジさんのことを信じてるってことじゃないでしょうか?シンジさんのこともっと知りたいって。」

 

 「そう思ってくれてたら、嬉しいかな。」

 

 

 「・・・シンジさんって。」

 

 「うにゅ?」

 

 「力を恐れたことって、ありますか?」

 

 「いつも恐れてるよ。コレに関しては特に。」

 

 

 パンパン、と上着の上から腰を叩く。

 

 

 「封印することも出来るかもしれないけど、それでもやっぱり逃げきれないと思うし。だからもう、一蓮托生って思ってる。」

 

 「・・・強いんですね、シンジさんは。」

 

 「そんなことないよ、みんながいるおかげ。」

 

 「・・・こんなこと、言われても困るかもしれないんですが。」

 

 「聞くよ、悩みごとでも懺悔でも。」

 

 「私、以前は周囲と壁を作ってたんです。こんな趣味してるから、相入れないだろうって思って。」

 

 

 「そのせいで、この映画が最初に放映された時、暴走しかけてしまって。本当に自分が情けなくって。もしも他に誰か、同じ気持ちを共有できる友達がいたら、もっと違ったのかもしれないなって、今になって思ってて。」

 

 

 「あんな・・・あんな下らない理由なんかで、暴走しかけたってことが、なんだか恥ずかしくって。」

 

 

 「下らなくは、ないでしょ。」

 

 「・・・。」

 

 「下らなくはない。僕だって、小さいとき、そのマッスルマンのテキサスキッドが死んじゃった時は本当にショックを受けたんだ。今だってそう、好きな女優さんが結婚したり、好きなシリーズの打ち切りが決定したときは落ち込むよ。ウインさんの場合、それがたまたま当たり所が悪かったってだけでしょ?それに今はもう乗り越えられたんだろうし。」

 

 「それは・・・。」

 

 「あの映画、本当に面白かった。特にラスト5秒のパスラッシュからの逆転ゴールには、思わず息をのんだくらい。試合にどんなに負けそうになっても、最後逆転しちゃえばOKってことだよ!それにこの興奮を教えてくれたのは、立ち直ってくれたウインさんじゃん。」

 

 「・・・あっ。」

 

 「その・・・正直言っちゃうと、最初はウインさんのことを知りたいって思って読んでた。けど今は純粋に、僕もおまピトのファンになったよ。ウインさんが教えてくれたおかげで。本当に、ありがとう。」

 

 

 「だから、これからもよろしく。」

 

 「・・・はいっ。」

 

 

 ぎゅっと、固い握手を交わす。今ここに、同じ星の下に強い同盟が結ばれた。

 

 

 「ふふっ、それにしても・・・。」

 

 「なに?」

 

 「ゴモたんさんと同じようなことを言うんですね、シンジさんも。」 

 

 「・・・どこが?」

 

 「人生ショックなことぐらいあるってことと、次から気を付ければいいってところです。」

 

 「・・・かなわないなぁ、ミカには。」

 

 「ふふふ、がんばってくださいね、シンジさん。」

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「・・・王手。これでどうだ?」

 

 「ふぐっ・・・。」

 

 

 パチン、パチンと駒を弾く音がサロンに響く。

 

 

 「さぁ、今度こそ勝った。」

 

 「いや、まだまだ。シンジさん嘘吐いてるから。」

 

 「僕が嘘?」

 

 「シンジさん嘘吐くとき、指組むから。まだどこか詰めれるってことだ。」

 

 「ぐぬっ、なら逆転してみせい。」

 

 「望むところ。」

 

 

 前回の対局との違いは、現状シンジが優勢だということ。アギラは盤面をじっと見て考え込んでいる。

 

 

 「こっち・・・かな・・・?」

 

 

 アギラは、自分が駒のひとつに手を伸ばしたその時、一瞬シンジの口角が動くのを見逃さなかった。

 

 

 「やっぱこっち。」

 

 「あ゛ぁ゛っ゛!?」

 

 

 一瞬の油断が命取り。

 

 

 「なんでだよ、なんなんだよ、一度ぐらい勝たせろよ・・・。」

 

 「ゴメン、勝負は真剣だから。」

 

 

 「っていうか、なんかごめんね。せっかくデートだっていうのにどこにも行かなくって。」

 

 「ううん、ボクもゆっくりするのが好きだから。シンジさんも疲れてるでしょ?」

 

 「まあ、毎日大変だったからね・・・。」

 

 

 ずずっとお茶をすすって一息つく。連日ハードワークの体を気遣ってくれてか、GIRLS本部での遊びを提案してくれた。やることと言えばボードゲームぐらいなものだが。

 

 

 「バディライザー、もう直ったの?」

 

 「いや、もうすぐ発注してたパーツが届くから、それに交換したら終わりかな。」

 

 「そんなことできるの?」

 

 「うん、ほとんどのパーツはごくありふれたものだったし、それに勉強したからね。特別なのは一個だけ。」

 

 「シンセナイザー、だっけ。」

 

 「うん、バディライザーの中核部分にして、ブラックボックス。」

 

 

 自分の指先よりも小さいようなちっぽけなパーツに、世界の命運を左右するほどの威力を秘めている。

 

 

 「シンジさん、ちょっと詰め込みすぎじゃない?」

 

 「なにが?」

 

 「毎日、怪獣娘と会ったり、勉強したり、体を鍛えたり、もうちょっと自分の体をいたわったら?」

 

 「うん、よく言われるよ。けど、どれだけやっても、どれだけ研鑽を積んでも、足りないような気がして。」

 

 「足りない分は、ボクたちが補えばいいんだよ。もっとボクたちを、頼ってね。」

 

 「うん、ありがとう。」

 

 「・・・ホントにわかってる?」

 

 「わかってるよ。」

 

 「嘘、また指組んでる。」

 

 

 シンジは自分の手を見て、あわててパッと離した。

 

 

 「シンジさんみたいな、人の事を頼りにし辛いヒトのことは、よくわかるよ。他人の事を信じてないわけじゃなくて、それ以上に自分を信じてないってこと。」

 

 「ほ?」

 

 「自分に自信が無いから、自分で何もかもやらなきゃいけないって重圧に考えてしまう、そうでしょ?」

 

 「まぁ・・・たしかに。」

 

 「けど、それを補い合ってこその仲間でしょ。ボクに出来ないことを、みんなや、シンジさんがやって欲しいんだ。」

 

 「・・・じゃあ、今度一発芸フラれたら、アギさん身代わりなってね?」

 

 「えぇ?!・・・って、ボクは真面目に話してるんだよ!

 

 「ごめんごめん、わかったよ、今度こそわかった。」

 

 「ほんとにぃ?」

 

 

 大事なことだけど、すぐ忘れそうになる。けど、忘れた時には思い出させてくれる。一人じゃないって。

 

 

 「ほんとのほんと。アギさんの寝ぼけ眼見てたら、安心してきたよ。」

 

 「んもー、地味にひどい事いってる。」

 

 「ごめんごめん・・・なんだか、僕も眠くなってきたや。ごめんね、せっかく一緒にいるのに。」

 

 「ううん、それじゃあ・・・。」

 

 

 「ひ、膝枕、してあげよっか?」

 

 

 「・・・なんだって?」

 

 「もー!人がせっかく勇気だして言ったのに!」

 

 「ごめん、ごめんって。いいのほんとに?」

 

 「ボクがいいって言ってるんだから、いいに決まってるじゃない。」

 

 「そっか、じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・。」

 

 

 とはいうが、内心シンジもバックバクだった。女の子の膝、どことは言わないが、女の子の大切な部分に色々と近づいてしまう。多分、普通にハグするよりも緊張するんじゃないだろうか。けど、アギさんの好意をフイにするわけにもいかない。さっき言われたばかりだ、ちょっとは甘えろと。だから、シンジもちょっと歩み寄ろう。

 

 

 「失礼、します・・・。」

 

 「ど、どうぞ・・・。」

 

 

 ほどよく柔らかく、そして暖かい。自室のベッドの枕とも違う感覚、けれど安心感がある。

 

 

 「あぁ・・・。」

 

 「ど、どう?」

 

 「至福・・・。」

 

 「そう、よかった・・・。」

 

 

 こんな感覚、最後に味わったのはいつだったろうか。いつか、ミカと抱き合った時とも違う、もっと柔らかい羽毛に包まれるような、元始に回帰するような、懐かしく暖かい光・・・。

 

 

 (あぁ・・・これだ・・・僕が欲しかったもの・・・。)

 

 

 本当に、アギさんには何もかもを見透かされる。不思議な人、とても大切な、僕の仲間・・・。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「おはよーシンちゃん!大変だったね!」

 

 「あー、ミカか・・・。」

 

 「なにさ!ミカか・・・って!ほかの女の子に夢中だから、幼馴染はもう眼中にないっての?釣った魚に餌やらんの?」

 

 「なにそれ、意味わかんない。」

 

 

 翌日、やっと平穏が戻ってきた。今日は、なにかしらをやるものの、なにもない日だ。今日の午後にはバディライザーのパーツも届く予定だし、それまでにもう少し修正する箇所があったので、そこを詰めるもよし、あるいは体を動かすのもいい。とにかくフルに使う。

 

 

 「それよりもシンちゃん!お楽しみだったんじゃない?」

 

 「ん?そうだね、色々あったけど楽しかったな。また約束出来たら、一緒に遊びに行きたいかな。」

 

 「そっか、ところで、あと一人誰か忘れてない?」

 

 「あと一人?」

 

 「そう!あと一人、大切な人のこと!」

 

 「うーん・・・。」

 

 

 ポク、ポク、ポク、チーンと頭を回してひらめいた。

 

 

 「そっか、ピグモンさん。ピグモンさんにはいっつもお世話になってるから、何かお返ししないと。」

 

 「そうじゃない!そうだけどそうじゃないよ!」

 

 「違うの?じゃあ・・・ゼットンさんとか?でもゼットンさん、そういうの断りそうだしなぁ。」

 

 「ちがうよ!」

 

 「違う?じゃあベムラーさん。『仕事だから』って割り切られてそうだけど、やっぱり何かお返しもしたいし。」

 

 「もー!わざとやってるでしょ!」

 

 「わざともなにも、この前行ったばっかりでしょうが!」

 

 

 もはや漫才のようなかけあいだった。

 

 

 「違うの!みんなと行ったんだから、次は私にも同じのが欲しいの!」

 

 「同じのって?」

 

 「ネコカフェ行って、喫茶店行って、バトルして、映画観に行って、膝枕してもらうの!アギちゃんに。」

 

 「最後のはアギさんに頼みなよ。」

 

 「とにかく!絶対行くの!今すぐ!」

 

 「いつかは行ってあげるけど、今日は勘弁して。もうクタクタだから。」

 

 「ホント?じゃあ明日行こうね!」

 

 「明日?全部?」

 

 「イエス!」

 

 「・・・わかった、他ならぬミカのお願いなら、一緒に行こう。」

 

 「えっ、ホントに?」

 

 「えってなんだえって。」

 

 「だって、疲れてるんでしょ?無理してくれなくって、いいんだよ?」

 

 「無茶だけど、無理じゃないよ。ミカと一緒に行きたいって思ってたのは事実だから。いつもありがとう、って気持ち。」

 

 「!!!!んもぉ~!!シンちゃん大好き!じゃあ明日ね!約束ね!」

 

 

 ついつい、軽はずみで約束をしてしまった。けどまあいい、明日を楽しみにして、今日を過ごそう。

 

 

 

 

 そして、翌日。時計は午前6時。

 

 

 

 「シンジ様、お目覚めください。」

 

 「ふぁ・・・なに?自分で起きられるよ・・・?」

 

 「朝早くから失礼致します。お客様がお見えになっておいでです。」

 

 「お客?」

 

 

 お客、って表現はミカには当てはまらない。顔パスで玄関を通って、部屋にまで上がり込んでくるのがいつものミカだ。それに、こんなに早い時間に突撃してくるなんてことは今までなかった。

 

 

 「わかった、すぐ着替えるから、ちょっと待っててもらって。」

 

 「それまでに、温かいスープなどはいかがでしょうか?」

 

 「あー、一杯だけ食べるよ。あとパンも一つ。」

 

 「承知いたしました。」

 

 

 いそいそと支度をし、軽い朝食を流し込むと応接室に急ぐ。

 

 

 

 ドアノブに手をかけたとき、何かを感じ取った。

 

 

 

 これはまた、長い一日が始まるのかもしれない、と。

 

 

 (鬼でも蛇でも、シャドウでも怪獣でも何でも来いだ。)

 

 

 窓から取り込まれた、朝の陽ざしがシンジをつつんでいく・・・。

 

 

 




 クロゥリア出ねぇ・・・しかもその直後にシンシアも来た。さらに怪獣娘コラボも控えている。果たしてこの先生きのこれるのか。

 そうそう、ジード試写会行ってきました。ネタバレ:面白い。ここでこうくるかーっ!てなるポイントとか、見所満載でした。上映後のトークショーには、りっくんと、飛び入りでジャグジャグも来てくれました。りっくん、本当に大きかった・・・。


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