怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 サブタイのネタ、尽きる。


燃えろ!大怪獣ファイター!

 「大怪獣ファイト・タッグマッチトーナメント?なにそれ?」

 

 なにそれ?と聞き返す必要もないわな。大怪獣ファイトのタッグマッチのトーナメントだ。

 

 「何って、大怪獣ファイトのタッグマッチのトーナメントだよ!」

 「それは知ってるよ。」

 

 あら?知ってることを聞くなんておかしいわね、と作業を続けながらエレキングさんは言った。今日はそのエレキングさんの作業の手伝いに来た。そしてそのエレキングさんも、雑務の手伝いの為に来た。つまりシンジとミカは手伝いの手伝いだ、下請けかなんかか。

 

 「今日刷ってる書類も、それ関連のだよね?トーナメントってことはイベントなのかな?」

 「そー!最近なにかと怪獣娘の評判落ちることあったじゃん?それを取り戻すのがこれの目的なんだって!」

 「それに、大怪獣ファイターの新規要員の獲得も念頭に置いているそうよ。」

 

 ミカたちにはシャドウガッツさんの事件が記憶に新しいだろうし、シンジにとっては忘れもしないアイラの暴走事件のこともあった。たしかにあの時は世間からのバッシングも激しかったのをよく覚えている。

 

 「成程ね、人気と人材を一度に集めるって寸法か。これを機に大怪獣ファイトにハマる人も出てくるだろうし。なんとしても成功させたいね。」

 「でしょでしょ??」

 「別にアナタが考えたわけではないでしょう?」

 「参加者だからいいの!エレちゃんは出ないの?」

 「私は遠慮しておくわ。戦闘タイプじゃないから。」

 (嘘でしょ?)

 

 今まで散々エレキングさんの戦いっぷりを目にしてきたが、どう考えても戦闘タイプではないというのは嘘だろう?頭は切れるし、腕もいい、何より自分の限界を知っている。クールかつクレバー、だから好きになったんだけど。

 

 「お?どったのシンちゃん、エレちゃんに見とれちゃってるの?」

 「ちがわい!仕事するよ仕事!」

 「むっつりスケベぇ!」

 「じゃかあしい!」

 「五月蠅いわ。」

 「「サーセン。」」

 

 まったく・・・とあきれた声を挙げつつも、仕事の手は緩めない。大人しくプリントアウトされたレジュメを纏めていく。

 

 「なんというか、紙の無駄だよねこれ。今は何でも電子で出来る時代なのに。」

 「それは以前から思っていたわ。電子パッドでなら楽に会議だって出来るはずなのに。」

 「今度掛け合ってみますよ。最近、会議に出ることも多いので。」

 「お願いするわ。」

 

 「シンちゃん、エレちゃんの気を引こうと必死だね。」

 「だまらっしゃい!」

 「おーこわww」

 

 ミカ、妬んでいるというよりも単に楽しんでいるだけのようだ。

 

 「エレちゃんこそ~、アギちゃんの次ぐらいにストレートに表現したんじゃないの?このこの?」

 「あんた、凍らすよ?」

 「おーこわww」

 「ミカ、仕事の邪魔しに来たの?」

 「ごめんごめん。」

 

 キーボードを叩く音が一瞬止まったかと思うと、エレキングさんの口からこの世の物とは思えないほどに冷たい怨嗟の声が顔を出した。

 

 「まあそれはそれとして、タッグマッチなんだよね?ミカのパートナー決まってるの?」

 「シンちゃんやりたい?」

 「僕人間。」

 「シンちゃんも出ても問題ないと思うけどなぁ。」

 「たとえ出られたとしても遠慮するよ。これ以上は荷が勝ちすぎる。」

 

 お生憎様、大舞台に立てるほどに十分に成熟しきっていない。

 

 「でもシンちゃん、大一番には強いじゃん?」

 「・・・それとこれとは違うんだよ。ただ、人前に出るのが怖いんだよ。」

 「雑誌のインタビューには応えていたのに?」

 「あれは・・・あれに関しては割り切っていられたんですけど、いざ衆人環視の前に立つとなると、震えが止まらなくなるんです。」

 

 口の中が渇いて、手が変な震え方をする。

 

 「人間が怖いの?」

 「・・・そうかもしれません。」

 「それよりもっと怖いはずの怪獣娘が平気なのに、ずっと弱い人間が怖いなんて、おかしな話ね。」

 「本当に、ね・・・。」

 

 対人恐怖症、というわけではない。人ではなく『人間』という集団が怖い。

 

 「ま、それはそれとして。はやく仕事終わらせて、遊びに行こうよー!」

 「そう思うんなら邪魔しないで。」

 「ちゃんと手伝って。」

 「ヘイヘーイ。」

 

 湿っぽい会話になっていたところにミカがちょいとちょっかいを出してくれた。そこから先はつつがなく仕事を終わらせられた。

 

 「さて!どこ遊びに行こうか!」

 「エレキングさんどこがいいですか?」

 「あなたに任せるわ。」

 「じゃあお好み焼き食べに行こう!」

 「じゃあ、ちょっと行ってみたいお店があるんですけど、そこでいいですか?」

 「構わないわ。」

 「ヒドくない?」

 

 向かったのは都内某所のイタリア料理店。まだ開店準備中らしいが、構わずシンジはその扉を叩いた。

 

 「大丈夫なの?」

 「大丈夫です、アッポとってありますから。」

 「準備がいいのね。」

 「まぁ、ね・・・。」

 

 お洒落でいい匂いのする店内に足を踏み入れると、すぐに奥から黒い服を着た人がやってくる。彼がこの店のオーナー兼シェフだ。

 

 「いらっしゃぁい・・・またお会いしましたね、シンジさん。」

 「ええ、今日はお招きありがとうございます、JJさん。」

 「いえいえ、シンジさんは同じおジョーさんファンの同士ですからね!」

 

 「シンちゃーん、この人って確か・・・。」

 「あっ、ゴモたんさん!ご活躍はいつもテレビで拝見させております・・・。」

 「あっ、どもども。ゴモたんだよー!」

 「キングジョーのファンの人ね。」

 「そうです、ここのお店穴場なんですよ。」

 

 見れば、店内にもキングジョーさん関連のグッズがちらほら。余程熱心なファンだと見える。

 

 「この前キングジョーさんとお仕事の帰りに、たまたま立ち寄ったのがこのお店だったんですよ。」

 「どんな確率だよ。」

 「これはもう運命だね。」

 「ささっ、立ち話もなんですのでお席の方へどうぞぉ?

 

 怪獣娘を応援してくれる人がいるだけでとにかく嬉しい。窓際の見晴らしのいい席に案内され、しばらくして見た目にも鮮やかな料理が運ばれてきた。

 

 「おいしいねこのイタメシ!」

 「でしょ?僕もすっかり常連だよ。」

 「お店の雰囲気もいいわね。」

 「身に余る光栄に存じます、お嬢さん(シニョリーナ)。こちらジェラートになります。」

 

 イタリアンのフルコースを堪能し、一行は満足で店を後にする。

 

 「おいしかったねー!また来ようね!」

 「そうだな、また・・・一緒に。」

 「ええ、構わないわ。」

 

 少しだけ、エレキングさんとの距離が近づいた気がした。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 翌日。

 

 「シンジさーん!見てみてこのチラシ!」

 「ああ、知ってる。昨日刷ったから。」

 「そんなー!」

 「サプライズ失敗ですね、ミクさん。」

 「ま、いいや!話が早くて助かるよー!」

 「立ち直り早っ。」

 

 さっそくタッグトーナメントの話に食いついてきたのは、最近大怪獣ファイターデビューしたばかりのミクさんだ。

 

 「ミクさんもトーナメントに出るの?」

 「もっちろんだよー!それでパートナーは誰にしようかなって考えてたところなんだ!シンジさんはどうするの?」

 「さすがに僕は出ないよ・・・アギちゃんかウインさんは?」

 「ボクは当日警備の方にまわるし・・・。」

 「私も・・・どっちかって言うと情報系なので・・・。」

 「なるほどなぁ・・・。」

 

 たしかに、アギちゃんは目立つことを嫌いそうだし、ウインさんは戦闘そのものが苦手そうだ。決してそういうわけではないんだろうけど。

 

 「それで今から探しに行くんだ!シンジさんいい人心当たりない?」

 「そうだなぁ・・・とりあえずミカを頼ってみようか。」

 

 困ったときはとりあえずミカ。出先で食べるものに困ったらとりあえずカレーか牛丼屋を探すようなものだ。たしかミカは今日はトレーニングルームにいるはずだ。

 

 「おーいミカ。」

 「おっシンちゃんおっすおっす!」

 「こ、こんにちはシンジさん。」

 「あれ?シーさんもいっしょなのか。」

 

 ミカと一緒にいたのは、以前話していた大怪獣ファイターの後輩のシーボーズさん。この時点で悪い予感がしている。

 

 「ひょっとして、ミカはシーさんとコンビを?」

 「そう!お笑いコンビ『Gボーン』の結成だよ!」

 「あれ?ミカとシーさんはM-1に出るの?」

 「ちがいます!」

 

 「なるほどねー、ミクちゃんの相方かー。」

 「そうなんっすよー、ゴモたん他にいい人知らないですか?」

 「うーん、そりゃあ色んなファイターの子は知ってるけど、その子達ももう今頃は相方を見つけてるんじゃないかな?」

 「うっ・・・やっぱり?そんな気はしてたんだ・・・。」

 「まあまだそうとは決まったわけじゃないし、色んな人を当たってみよう?」

 「それなら、レッドちゃんに掛け合ってみたらどう?ミクちゃんの憧れでしょ?まあみんなそうだろうけど。」

 

 レッドキングさん、大怪獣ファイトの初代王者。一般のファンのみならず、ファイターの中でも憧れる人は多い。その腕力に物を言わせたパワーファイトは、まさしく怪獣の戦いの王道を征っている。シンプル・イズ・ベストとはまさにこれ。

 

 「そうだね、レッドさんなら快諾してくれそうだし。」

 「うん・・・アタシも最初はそう思ったんだけどね・・・。」

 「もしかして、もう断られちゃったの?それともパートナーをもう見つけてたとか?」

 「ううん、まだ聞いてないんだけど・・・。アタシ、今回はレッドキングさんとは組まないつもりなんだ!」

 「それは、どうして?」

 

 「もちろん、レッドキング先輩はアタシの憧れの人だし、一緒に戦えたらいいなーっては思ってた。けど、それでいいのかな?って逆に思っちゃって・・・。」

 「レッドちゃんの影に隠れてしまわないか心配なの?」 

 「いや、ぜんぜん!そんなことはないんだけど・・・。」

 「レッドキングさんに頼りッきりはいけないって思った、ってことですか?」

 「そう!それにアタシ、うまく言えないけど・・・レッドキング先輩と、戦ってみたくなったんだ。今までずっとレッドキング先輩の背中を見て戦ってきたけど、今度は正面からぶつかってみたいんだ!」

 「ミクラスさん・・・そこまで考えて・・・。」

 「いやー正直言うとね、レッドキング先輩と一緒に組んでも、アタシ足引っ張っちゃうんじゃないかって心配なだけなんだけどね!はは・・・。」

 「ううん、ミクちゃんらしい考え方だと思うよ私は。ダイジョーブ!ミクちゃんなら誰と組んでも上手くやれるよ!私が保証するから!」

 「ミクラスさんは頑張り屋さんですから、足を引っ張るなんてことは絶対ないと思いますよ!」

 「ゴモたん・・・シーさん!」

 

 

 「じゃ、ミカまた後でね、シーさんも。」  

 「はい、また練習しましょうね!」

 「ばいばーい!練習ガンバってね!」

 

 

 「・・・行っちゃったよ2人とも?」

 「え?」

 「あぁ・・・そのようだ。」

 

 女子3人で話している間、扉の影にいる誰かにシンジとミカは気づいていた。誰?なんて考えるまでもない。あの尻尾のリボンをよく知っている。頭隠して尻隠さずとはこの事か。やはりかわいい。

 

 「レッドキングさん!いたんですか?」

 「途中から、な。あいつらには言わないでくれよ?」

 「手塩にかけてた後輩が、あんな風に考えてたなんて、ショック受けた?」

 「いいや、嬉しいぐらいだ。教えた身としてこんなに誇らしいことはないぜ。」

 「じゃあ、『寂しい』とかですか?」

 「・・・そうだな。オレとしては、誘われたら受けるつもりだったんだけど、その必要も無かったみてぇだ。」

 

 腕を組みながら、廊下を歩いて行った2人に思いを馳せる。いつの間にかデカイ口叩けるようになったもんだな、無論いい意味で。

 

 「ホントに、いいパートナーが見つかるといいですね。」

 「本当はもう見つけてるんだろうけどね・・・それに気づけるかどうか。」

 「そうだな、あいつらどっか抜けてんだからな。」

 「そういうレッドちゃんこそ、大丈夫なの?」

 「なんだよ?」

 「レッドちゃんの方こそ、パートナー探しは大丈夫?案外向こうから声かけてきてくれる人はいないかもよ?ミクちゃんほどじゃないけど、レッドちゃんに気が引けちゃってさ。最終的にペア組んでないのはレッドちゃんだけだったりして?」

 「いや・・・そんなまさか・・・。」

 

 はーい2人組作ってー。これほど憎たらしい言葉はない。

 

 「いやー・・・さすがに・・・それは・・・ねぇだろ?」

 

 レッドさんの背中に嫌な汗が立つ。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「うーん、なかなか見つからないね。」

 「そうだねー・・・みんな手が早いんだなぁ。」

 

 タッグマッチの情報が開示されて、そう時間は経っていないはずなのに、もう皆ペアを見つけている。というか、ミクさんだけが見つけていないという方が正しい。

 

 「練習する時も、大抵レッドキング先輩が相手だったからなぁ、あとザンドリアス。」

 「そのザンドリアスはノイズラーさんと組むって言ってたし。他に心当たりとかは?」

 「うーん、アタシいっつもあの2人といるからなー。」

 「あの2人はそのつもりが無いし・・・。」

 

 土下座して頼み込んだら引き受けてくれそうだが、そこまでするぐらいなら参加しないことを選ぶだろう。

 

 「よっし、じゃあ逆の発想で行こう。」

 「逆の発想って?」

 「逆に、誰も組まなさそうな人に頼みに行く!」

 「それって、誰?」

 「ゼットンさん。」

 「いやいやいやいや、ムリっしょ!」

 

 そりゃあ、ゼットンさんと組んだら優勝だって楽勝だろう。だってよ、ゼットンさんなんだぜ?だがおそらく誰一人として声をかけてはいないだろう。『いやさすがにそれはねーよ』って良識のある人間ならが思っているだろうし。

 

 「なら僕がやらねば誰がやる!行くぞぉ!」

 「えー!?でもどこにいるのかわかんの?!」

 「どうせいつもの河原でしょ。最悪の場合アギちゃんを交渉のダシ(・・)に使うことも視野に入れる!」

 「もっとダメでしょ!」

 

 適当に当たりをつけて動く。そしていた。

 

 「あれ?なんか見覚えのある人影が・・・。」

 「やぁ、シンジ君にミクラス。」

 「まさか、先を越された?」

 「そのようだな。私たちはついさっき『ブルースフィア』を結成した。タッチの差だったな。」

 「それが大人のやることか!」

 「大人だからやるんだよ!」

 (シンジさん人のこと言えないんじゃ?)

 

 当のゼットンさんはというとどこ吹く風だが。それにしても、ゼットンさんも参加するのか。群れることを嫌うタイプだから、大会なんかにも興味が無いと思っていたが。

 

 「参加要請が来た・・・現チャンプだからって。」

 「成程。そこへベムラーさんが声をかけに来たから渡りに船と・・・でも、ベムラーさんはどうして?」

 「私の目当ては優勝賞品さ。」

 「優勝賞品?」

 「チラシをよく見た前ワトソン君。」

 「なになに・・・。」

 

 どうやらゼットンさんへの参加要請と同時にチラシも送られてきたらしい。

 

 「優勝ペアには、黄金のトロフィーが贈呈されます・・・執務室にでも飾るんですか?」

 「いや、そっちじゃない。副賞の方だ。」

 「わっ!すごい!賞金200万円だって!これだけあれば牛丼いっぱい食べられるよ!」

 「一杯300円ぐらいだとして、およそ6700杯。」

 

 なるほど、これはたしかに魅力的だ。黄金のトロフィーといい、随分大盤振る舞いだな。よほど今回のイベントは成功させたいと見える。

 

 「最強の怪獣ゼットンと組めば、200万円はいただきさ!」

 「一人、100万円でしょう?」

 「ゼットンはいらないと言っている。」

 「ゼットンさん、まさかアギちゃんを人質にされたとか?」

 「私は賞金には興味が無い。」

 (シンジさん、あんたって人は・・・。)

 

 まだシャドウミストに憑りつかれているんじゃないかと疑いたくなる。

 

 「これでようやく悲願の・・・。」

 「別荘でも建てるんですか?」

 「いや、私の愛馬(バイク)を直せるし、もっといいパーツも調達できる。誰かさんを助けたおかげで、お釈迦になってそのままだったからな。」

 「さてなんのことやら。」

 

 そう言われてみると、この2人の接点も見えてくる。

 

 「まあとにかくだ、勝負となれば私だって容赦はしないぞ?その時は正々堂々と戦おう!」

 「いけしゃあしゃあと・・・その前にまずパートナーを探さないといけませんが。」

 「あーあ、誰と組めばいいんだろうなぁ・・・。」

 「・・・ミクラス。」

 「ぬっ、なんですか?」

 

 何かと付き合いは長いはずだが、ミクラスがこうしてゼットンさんと話すのは珍しい。というか、ゼットンさんから声をかけられること自体が珍しい。

 

 「あなたには、もう答えは出ているんじゃないの?」

 「答え?」

 「誰と組めばいいか、じゃなくて、あなたが本当に組みたい相手は、誰?」

 「えっ・・・それは・・・。」

 「それだけ。じゃあ。」

 

 またテレポートでどこかへ行ってしまった。

 

 「さっそくタッグパートナーを置いていくとは・・・。」

 「相変わらずマイペースですね。」

 「足並みをそろえるだけが付き合いじゃないさ。それじゃあ私も行くよ。いいパートナーが見つかるといいな。」

 「はい、ありがとうございます!」

 

 河原にもうすぐ夕日が沈む。結局、今日一日歩き回ってみたが、パートナーとなる人物は現れなかった。

 

 

 「・・・っ。」

 「まだ1日目だよ、大丈夫。すぐに見つかるって。」

 「う、うん・・・だといいんだけどね。」

 

 違う違う、そうじゃない。ミクラスの心はそう叫んでいるが、その声が喉を通ることはない。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ダメだなぁ・・・。」

 「ダメだねぇ・・・。」

 

 昨日に引き続き、一向に人材は見つからない。それどころか、昨日よりも人は減っていると言える。あっちこっち出向いてくたびれたので、今はサロンで休憩中。

 

 「あと声をかけてないのは、エレキングさんぐらいかな?」

 「無理無理!あの人苦手だし!」

 「いい人なのになぁ・・・。」

 

 「あっ、ミクちゃんシンジさん。」

 「その様子だと、パートナーまだ見つかってないみたいですね。」

 「みつからないよー!」

 「聞いた話によると、マガちゃんたちも出場するんだってね?」

 「うん、すごい気合入れてたよ。マガジャッパちゃんは相変わらずオロオロしてたけど。」

 

 あの2人なら初出場でもいいところまで行けるだろう。単純に空を飛べるというだけでも、十分なアドバンテージを得られるのだから。

 

 「おーっす、なにやってんのみんなで?」

 「ガッツたちに、ゴモたんもいる。」

 「ちゃおっす!シンちゃん景気はどう?」

 「不景気。」

 「あっそ、気晴らしにケーキ食べに行こう!」

 「・・・別に奢らないぞ?」

 

 まあ別に奢ってあげてもいいけど。けどこの人数はちょっとなぁ・・・。

 

 「もう、いいかな・・・。」

 「いいかなって、なにがミクちゃん?」

 「アタシ、今回大会出なくてもいいやって!見つからないんじゃしょうがないもん。」

 「ミクさん・・・。」

 「諦めないでください、ミクラスさん!」

 

 そこに待ったをかけたのは、後ろで見ていたシーボーズさんだった。

 

 「シィちゃん?シィちゃんが声張るなんて珍しいね。」

 「ミクラスさん、昨日言ってたじゃないですか!自分の力でレッドキングさんに立ち向かいたいって!」

 「それは・・・そうだけど。」

 「それを聞いて、レッドキングさんだって嬉しそうにしてたんですよ!ミクラスさんも強くなったって、それなのに!」

 (あー、それ言っちゃうのか。)

 「でも、ファイトならまだチャンスがあるだろうし・・・。」

 「今を逃したら、次なんて永遠に来ないんですよ!」

 

 通常のシングルマッチならまだしろ、タッグマッチトーナメントが今後も組まれるかはわからない。ひょっとすると、今回が最初で最後になるかもしれない。

 

 「私だって、ミクラスさんと戦うの楽しみにしてたんですよ・・・!」

 「えっ?」

 「ゴモたんと一緒に戦えるのと同じくらい、ミクラスさんと戦いたかったんです・・・それが叶うんだって・・・思ったのに・・・。」

 

 ぽろぽろと雫をこぼして、シーボーズさんは訴える。

 

 「・・・ごめん、シィちゃん、アタシまた弱気になってた。」

 「ミクちゃん!」「ミクさん!」

 「アタシ、まだ諦めないよ!このチャンス、絶対掴んでみせるから!」

 

 「けど、問題は何一つ解決してないわね。」

 「ガッツはどうなの?」

 「わたしはマコと一緒に『ジェミニィ』を組んでるから。」

 「やっぱり、私かアギさんが組んで・・・。」

 「いや、ムリしてくれなくっていいんだよ2人とも?」

 

 「なによ、簡単な話じゃない。」

 「マコさん、簡単ってなにが?」

 「あなたがミクラスのパートナーになれば済む話じゃない。って話よ。」

 「えっ。」

 「別に『人間が参加しちゃいけない』なんてどこにも書いてないじゃない。自分が賢い自覚があるなら、もっと頭使いなさいよ。」

 「いや、それはバカの真似事だよ。」

 「なんだって?」

 「いやその・・・その考えがなかったわけじゃないんだよ?」

 

 「一応、最後まで見つからなかったら、僕が立候補するつもりではあったんだ。あくまで最後の手段として。」

 「なんでそれを先に言わなかったの?」

 「一昨日も言ったけど、僕は正直あんまり目立ちたくないんだ。人前に出るのが怖いってのもあるけど、それ以上に『戦いたくない』って気持ちがあって・・・。」

 「戦いたくない?」

 「いくら大怪獣ファイトがスポーツだからといって、女の子に手を挙げるようなことはできるだけしたくないんだ・・・いや、女の子じゃなくっても、他人を傷つけるようなことはしたくない。したくない。」

 「・・・あんた、ちょっとセコいよ。」

 「?」

 「あくまで大怪獣ファイトはスポーツだって、それはわかる。けど、あんたが他人を傷つけたくなくて戦えないのは、自分の弱さから逃げてるってだけよ。他人を、私たちを逃げる理由にして。」

 「うっ・・・ごめんなさい。」

 「別に。ちょっとでもあんたのことを見直した私の方がバカだったってだけ。」

 「ちょっとマコ!」

 「あんたはだーっとれい!」

 

 また痛いところを突かれてしまった。マコさんはシンジに対して容赦がない分、歯に衣着せぬことを言ってくる、ミカとは別のベクトルで。

 

 「シンちゃん、たしかにシンちゃんの言いたいことはわかるし、気持ちも理解できるよ。」

 「ミカ・・・。」

 「けど、だからこそシンちゃんは間違ってる。大怪獣ファイトはスポーツだよ。スポーツだからこそ、全身全霊、力と心を込めてぶつかり合えるんじゃないかな?これは戦争とは違う、『愛』のある戦いなんだよ。」

 

 怪獣とは、戦う本能を持って、それを破壊のために使う生き物だった。

 

 殺し合うのが正義でないと知って戦うのが戦場だ。では、その『正義』を持って戦える居場所はどこか?

 

 そのために大怪獣ファイトという舞台がある。

 

 「怪獣娘のことを知るには、もっと直接ぶつかっていく必要だってあるか・・・。」

 「そうだね、見ているだけじゃわからないことだってある。」

 「よし!決めた!僕も出場するよ!」

 (今更だけど心配になるぐらいチョロいなぁ。)

 

 シンジが乗せられやすいのは今に始まった話ではないが。その様子を見てほくそ笑んでいるのが一人。

 

 「ふんっ。」

 「やるじゃん、さすが私。」

 「調子乗らないで私。」

 

 

 

 「で、だ。改めてお願いするよ。ミクさん、ボクとタッグを組んで欲しい。」

 「うん!こっちこそお願いだよ!シンジさん!」

 「めでたしめでたしだね。」

 「けどこれからが大変だよ?」

 「そうだよ、戦う相手は大怪獣ファイトの猛者ぞろい、そうじゃなくても、今まで見たことない怪獣娘も参戦してダークホースだらけなんだから。」

 「私たちとかね。」

 「ガッツは強いからね・・・。」

 

 そう言われると急に不安になってきた。少なくとも無様に負けて醜態を晒すようなことはしたくないが・・・。

 

 「おーっし!怪獣・超獣・宇宙人なんでもこいやぁ!」

 「おーやる気だねミクちゃん!」

 

 けど、こんなにやる気満天なパートナーがいればきっとうまく行ける。なんせ今度の戦いは、2人のパワーで戦うのだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうやら杞憂だったようね。」

 「お前もやっぱり面倒見いいよな。」

 「勘違いしないで。」

 

 その様子をドアの向こうから聞いていた者が二人。

 

 「あいつら、どんな戦いを見せるだろうな?」

 「そうね、ミクラスのパワーに、シンジは機転を利かせて上手くフォローしてくれるでしょうね。」

 「えらく高評価じゃねえか。」

 「別に、客観的な意見よ。」

 

 「それで、あなたは?」

 「ん?オレ?」

 「あなたも立ち聞きしにきたわけじゃないんでしょう?」

 「やっぱり普段から立ち聞きしてるって自覚あるんじゃねえか・・・。」

 「・・・パートナー、なってあげないわよ?」

 「頼む!それだけは許してくれ!」

 「まったく、人の心配をするよりも、まず自分の面倒を見なさい・・・。」

 「恩に着るぜ!」

 

 どうやら、こっちも上手くいったようだった。レッドキングさんの財布が少しだけ軽くなったことを除いて・・・。




 ちょっと補足。怪獣娘たちのシンジへの好感度ランキング。目安の数値を合わせて。

 1位:ゴモラ(120%)うち40%は幼馴染補正によるもの。
 2位:アギラ(90%)数値だけで言えばゴモラには負けるが、補正抜きの実数値上は1位。
 同率3位:エレキング・ベムラー(80%)好きは好きだけど一歩引いている。けどいつでも飛び出せるように準備はしている。
 4位以下:ウインダム・ミクラス・レッドキング(60~70%)せいぜいちょっと憧れている程度。
 数値では表せないが、ゼットン・ガッツ(ミコ)は「頭の片隅に置いている」程度。一方マコは「ちょっと気になる」レベル。ピグモン・ザンドリアス・キングジョー等は完全に友達レベルの認識。

 逆にシンジからの「異性としての」好意度は

 1位:ミカ ここでも幼馴染補正が大きい。
 2位:アギラ やはりこちらも実数値上は1位
 3位:エレキングさん 超タイプな人。

 ベムラーさんのことは「頼れる大人」として見ているため、ランキングのしようがない。ザンドリアスのことは「喧しい妹」のように思っているので唯一呼び捨てにしている。

 ちなみにアイラのことは別格に思っている。あくまで家族として。

 他、質問があれば気軽にどうぞ。感想もお待ちしております!

 

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