怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 1試合1試合全部描写してたらいつ終わるのかわかんないなこれ。多分次の怪獣FESで怪獣娘黒の情報出て詰むパターン。いっそその時まで情報を待った方がいいかもしれないが、その時でまた考えよう。

 と思ってたらその前にルーブの情報が来てしまった。どうすんだよ・・・やべぇよやべぇよ・・・。


ライザー光る時

 『さて!トーナメントの発表の前に、ここでもう一度会場の安全設備の紹介をしたいと思います!』

 

 予選終了後のインターバルで、シンさんによる設備の説明が行なわれる。選手たちは、体を休めつつその放送を聞いたり、昼食を食べたり、思い思いの方法で休憩している。

 

 『皆さんのいる観客席のすぐ内側に、ガラスのような透明の壁が張られているのがご覧いただけますでしょうか?これが「特殊吸収防護フィールド」、通称S.A.Pと呼ばれるものです。今は普通のガラスやアクリル板のように、通常は基底状態にありますが、この状態で外部からのエネルギーや物理的ショックを受けると、励起状態となって、光や音を放出します。』

 

 と、ここで2人組の人物が競技場内に入ってくる。シンジにはこの2人に見覚えがあった。ラボチームのマモルさんとルイルイだ。

 

 『百聞は一見に如かず、これからビーム兵器を照射してみて、その威力を実践してみるッス!』

 『ちなみにこのビームガンちゃんは、ダイナマイト100発分の威力だよ~☆』

 

 ざわわ、と会場はざわめくが、それに構わずルイルイは派手な見た目の銃を斜め上に向けてトリガーを引く。

 

 『あわわ!!どうやって止めるんだっけぇ?!』

 『トリガーを離してぇ!』

 

 ドバーっと放たれたビームがあらぬ方向へ飛び交い、地面や空を飛ぶ雲に跡を残すが、肝心の観客席には傷一つつかない。ビームの当たった場所が、六角形の光を放ち、同時に腹の底に響くような重低音を出す。

 

 『このように、フィールドがショックを受けた瞬間だけ、エネルギーを通すことで、ショックを対消滅させます。攻撃を受けた瞬間にだけバリアが発生するようなものなので、電気使用量も非常に少なくて済むッス。』

 

 『加えて、S.A.Pそのものは六角形のハニカム構造のピースで作られています。六角形は最も強固な図形であり、自然界でもよく見られる形です。』

 

 シンさんとマモルさんの解説で、会場の人々も納得できたようだ。

 

 『それよりさーエレキングさんちょーカワいかったよねー??みんな見たー?ツノがグルグルしててね~♪』

 『あー、以上で解説は終わります!それではみなさんお楽しみください!』

 

 ルイルイが話を脱線させて長くなりそうだったのでそそくさと退場させられた。カメラは切り替わり、再び実況席が映り、アナウンスが続けられていく。

 

 「お久しぶりです、大地さん。」

 「久しぶり、シンジさん!」

 

 放送の途中から控室を抜け出して、向かった先は地下にある電力供給室の、その隣に急造されたモニタールーム。そこでアメリカ留学終了の時以来に顔を合わせる友人。2人は固く握手を交わし、その再会を喜び合った。

 

 「まさか、本業の傍らに研究していたシステムの方が先にお目見えするなんて、意外でした。」

 「必要性としては、こっち(S.A.P)の方がせっつかれていたから。目に見えて安全のためになるのは、やっぱり身を守る盾の方だから。」

 「けど、本来の研究の方だって、立派にみんなの役に立つ装備なのに。」

 「それを君が、一つの形として完成させてくれた。それだけで十分だよ。貴重なデータ収集にもなるし。」

 「そう、ちょっと見てみてくれますか?なかなか脳波コントロールユニットの調整が難しかったですけど・・・。」

 「シンジさんはどちらかというとハードの人だからね。ソフトウェアの方はこっちは9割完成してるから、最終調整だけ済ましちゃうよ。」

 「お願いします。」

 

 シンジが片手に持っていた鞄から、手のひらに収まるサイズの小さな機械を取り出し、大地に渡した。その同じころ、公開実験を終えたワタルとルイルイもモニタールームに戻ってきた。

 

 「あっ、シンちゃんおつ~!予選見てたよ!」

 「すごい活躍でしたね!いきなり3位だなんて!」

 「いえ、ルイさんの研究していた液体繊維のプロットと、ワタルさんの物理演算装置のおかげです。それに、ミクさんの協力があってこその大ジャンプでした。」

 「そのミクさんとは一緒じゃなかったの?」

 「ミクさんはお昼ご飯中です。」

 

 第一試合が始まる前には戻ってくると言っておいたので、今頃レッドキングさんとお話でもしているんだろう。

 

 「そういえば博士は?一緒だったんじゃ?」

 「今食後のお昼寝中。」

 「またか・・・試作品見て欲しかったのに。」

 「試合開始までには起きてくれるよ。」

 「私たちも手伝うよ!シンちゃんがどんなプログラミングしたのか気になる気になる!」

 「ほとんど手伝ってもらったんですけどね・・・。」

 

 GIRLS開発部のペガッサさん。ソウルライザーの雛型も作ったスゴイ人だ。このラボメンバーやSSPのシンさんも含めて話し合ったら、色々すごいものが出来上がるんじゃないだろうか。

 

 「なるほど、アームユニットに直結させて、そこから出力を・・・。」

 「糸まきまきはその実験段階ってコトだったんだね!」

 「糸まきまきって・・・否定はしないけど。」

 「ははは・・・けど、あとは僕たちのプログラムと、フィードデータを組み合わせれば上手くいきそうだね。」

 「どれぐらいかかりそうですか?」

 「まってねまってね、すぐ終わるから。」

 

 カタカタカタとすごい勢いでキーボードを叩き、情報を機械へとインプットしていく。シンジは完成を間近に控えたそれを、オーブンの前で菓子が焼き上がるのを待つように見つめる。

 

 「けど、とってもスゴイ発明なのに、それを最初に武器という形で世に出していいものだろうか。自分で作っておいてなんだけど。」

 「じゃあ、なにか綺麗なものも出せるようにしてあげようか??お花とか!!」

 「それすると、またプログラムを書き直す必要が出ますよ・・・?」

 「花か、拳を突き出されるよりも、花を差し出す方が平和になりそうだけど。」

 

 「正しい形か。果たして何が正しい形なのか、常に問いかけ続ける必要があるって、前にどこかで聞いたけど。」

 「そうですね、正義というのは時代によって変わります。昨日まで敵同士だった相手とも、次の日には味方になっていたりとか。」

 「そう考えると、争うこと自体が無意味なことって、思えて来るよね。」

 

 怪獣という存在が、まさにそれだ。一時期、怪獣頻出期の頃は、怪獣とは悪の象徴であったという。それが時代が進むにつれ、怪獣とは同じ星に住む生物であったり、共存していく仲間であったり、仲良くなれる友達になったりもしていった。

 

 「だから、シンジさんの考えるように、まず武器として形にするのは、間違ってないと思う。なによりシンジさんはずっと『賢い』人間だから、間違った使い方は出来ないはずだよ。」

 「僕は・・・そんなに賢くはない。」

 「そう自分で思ってるだけだって!シンちゃんは私たちに出来ないことだって出来るもん!」

 「誰だってそうっす。だから助け合って、僕たちはここにいるんすから。」

 

 「だから、俺たちの代表として、これをお願いします。怪獣娘と並んで、共に生きるための力にしてください。」

 

 出来上がった機械を、3人そろって手渡される。

 

 「これが、完成形・・・。」

 

 大いなる可能性(X)を秘めた、そのデバイスを右手に装着すると、シンジは誇らしげに掲げた。

 

 「ところで、ゴモラのサインはどうなったの?」

 「・・・本人がすぐ近くにいるんだから、直接貰えばいいんじゃないかな?」

 「やった!!日本に帰ってきてよかったぁ!」

 

 大地さんはやや冷静な人だけど、こう言うところで年相応な面を見せる。

 

 「ところで、シンちゃんゲート行かなくていいの?」

 「ゲート?なんの?」

 「だってシンちゃん1番手だよ。もうすぐ試合も始まるんじゃないかな?」

 「「「・・・え?」」」

 

 パッとモニターを見ると、そこでは既にトーナメント表が開示され、Aブロック一回戦第一試合の組み合わせが読めた。

 

 「第一試合『ミクラス&シンジペアVSナックル星人&チブル星人』??」

 「・・・急いでシンジさん!!」

 「このままじゃ不戦敗になっちゃうっすよ!!」

 「わー!!」

 

 あわてて廊下に飛び出し、来た道を駆けて行った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「あのっ、濱堀シンジさん、ですよね?」

 「はい?」

 

 ゲートへ向かう途中でシンジは呼び止められた。振り返ってみれば、金髪ブロンドの美少女がいるではないか。

 

 「僕に、なにか?」

 「あの、私シンジさんのファンなんです!よかったら、握手してもらえませんか?」

 「あ、ああ、どうぞ!」

 

 なんだただのファンの人か、と手袋をとって握手に応じる。女性にしては少し硬くて、ひんやりとした手の感触をしていた。

 

 「それじゃあ、がんばってくださいね!」

 「はい!ありがとうございます。」

 

 タタタ、と女性は廊下を行ってまった。

 

 「ちょっと、ツイてる・・・かな?」

 

 いけないいけないと邪な考えを振り捨てて、もう一度走りだした。

 

 よくよく考えると、関係者以外立ち入り禁止の場所なのに、ただのファンの人がいるというのはおかしいと気づくのは、試合後のことであった。

 

 「おっそーい!もうエントリーはじまっちゃってるよー!」

 「ごめんごめん、まさか一試合目だとは思わなくって。」

 「それはアタシも驚いたかな。トーナメント表だと、レッドキング先輩とは決勝で会えるみたいだよ!」

 「うわあすごいフラグ臭。」

 

 『決勝で会おうな!』は不確定要素や、新たな敵へのかませで敗北フラグ。いきなり廊下で膝に矢を受けても知らないぞ。

 

 「大体、その前にゼットンさんに当たるんじゃないの?それ以前に、レッドさんが負ける可能性だってあるし。」

 「レッドキング先輩は絶対負けないから!たとえゼットンさんと戦っても今度は勝てるかもしれないじゃん!」

 「『たとえ』ってことは、ゼットンさんAブロック(こっちがわ)にいるんじゃないの?」

 「うっ、それはそうだけど・・・。」

 「どうあがいてもゼットンさんに勝てる自信ないよ僕は?」

 

 全く策が無いわけではないのだけれど。それでも0が万に一つになったよりも低い。

 

 「って、そんなことより今はもっと大事なことがあるよ!」

 「そうだね、まずこの試合を勝たないと・・・。」

 「それもそうだけど、アタシたちのタッグネーム決めてないじゃん。」

 「タッグネーム?ミクラス&シンジでいいんじゃないの?」

 「えー他のみんなはカッコイイ名前持ってるのに、アタシたちだけ付けてないなんておかしいじゃん!」

 

 曰く、レッドキングさんとエレキングさんは『R/L』という名前にしたらしい。

 

 「なんて読むんだこれ。」

 「あーるえる?」

 「アールルェッ!」

 

 「具体的にはどんな名前がいいの?候補とか。」

 「んーと、1000万パワーズ!とかどうかな?」

 「僕はジンギスマンか。どっちかって言うとマーボーマンの方が好きなんだけど。」

 

 「それか・・・7番だったから、ラッキーセブンズとか!」

 「なんかタバコみたい。ここにいられるのはラッキーというより、もはや奇跡ってレベルだし。」

 「じゃあ、『ミラクルナンバーズ』とか!」

 「ふぅん・・・いいんじゃない?」

 

 昔レッドさんにミラクルマンと呼ばれたことを思い出した。出会って間もない頃の話だったが、今こんな状況なことを知ったら、当時の僕はどんな顔をしていただろう。

 

 「よし!名前も決まったところだし、行こうか!」

 「おう!って、シンジさんなにそのハチマキ?気合十分だね!もっと熱くなろうよ!」

 「冷えピタがついてるんだけどね。」

 

 熱くなるどころか冷える。頭はクールに、でもハートはホットに。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『さあみなさんお待ちかね!栄えある第一戦を飾るのは、この2チームです!』

 

 実況席のジェッタの声を皮切りに、重々しくゲートが開かれる。ワァアアア!と歓声が上がり、その始まりを祝福する。

 

 『予選3位通過!それを成し遂げたのは大怪獣ファイターのルーキーと、本大会唯一の人間としての参加の、ミクラス&シンジの『ミラクルナンバーズ』!』

 

 名前を呼ばれて若干慌てながら衆目の元に姿を現す。予選の時よりもより多くの人がスタンドを埋め尽くしている。手を振りつつ、先ほどと同じように友達の姿を捜そうとするが、あまりの人の多さに焦点も合わない。

 

 『対するは予選順位12位のナックル星人&チブル星人の『アサシンコマンド』!賞金稼ぎとしてその道では有名なナックル星人さんと、高度な技術力での武器製造を得意とするチブル星人さんのコンビだぁ!』

 

 反対側のゲートから現れたのは、白い毛皮のコートを纏い、獲物を狙い爛々と光る眼のような紅玉を身に付けたナックル星人さんと、黒いローブに身を包み、棘の生えた触手をもつチブル星人さん。2人とも自信満々といった感じでスタート位置につく。

 

 「シンジさん、作戦は?」

 「・・・ふんふん、ナックル星人は格闘が得意で、チブル星人は頭脳はいいけど戦闘はからっきしみたい。先に後衛を潰すのが戦いの基本だね。」

 「よーし!じゃあアタシ、ナックル星人と戦うね!」

 (・・・本当に理解したの?)

 

 「・・・予選は随分張り切っていたみたいだが、それがこんな駆け出しの青二才とはな。これは今回も頂きだな?」

 「それよりあんた、今回の分け前もわかってんやろうね?」

 「私とお前で半分ずつ、だろう?」

 「ちゃう、トロフィー貰うで。溶かしてパーツにするんや。」

 「お前ちょっと足元見すぎだろ?」

 「なにゆーてんねん、ウチがおらんかったら予選も突破でけへんかったやろ?」

 「抜かせ。」

 

 (チブル星人、関西弁だったのか・・・。)

 

 いくら元がタコみたいな見た目だからって中身までタコ焼きになる必要ないだろうに。ともあれ、向こうはかなりこちらを甘く見ているらしい。こっちこそアッと言わせて、手堅くいただいちゃおう。

 

 『さて、第一戦開始の前に、もう一度ルールの確認をしておきましょう!』

 『形式は2対2のタッグファイト。怪獣娘さんの変身が解除されるダウンか、バリアに触れる場外判定か、ギブアップによって勝敗は決します。』

 

 リング上にはわずかながらの障害物となる岩が点在している。ジョンスン島でのリングと大して変わらない仕様になっているというわけだ。

 

 そのほか、武器の仕様も可。元々怪獣娘に変身した時に、武器も手にする怪獣娘が多いからだ。シンジの場合はこのルールを最大限利用させてもらうことになる。

 

 ただ、反則行為なども特に定められていない。本家の大怪獣ファイトと違い、今大会はファイターではない一般怪獣娘も多く参加しているため、かたっ苦しいルールを廃止してあるそうだ。これから先、また大会が開かれて行く上でルールも整備されて行く事だろう。それは今回の結果次第だ。

 

 『それでは、いよいよ第一戦を開始します!』

 『大怪獣ファイト・・・レディー・・・』

 

 GO!!!ファンファーレと共にスクリーンに明かりが灯って、長い一日の幕が開く!

 

 「いっくぞぉー!」

 「行く!」

 

 ミクラスは得意の脚力を持って、シンジはライザーショットを抜いて走り出す。

 

 「ハンティング、開始だ。」

 

 一方ナックル星人は余裕そうに歩を進める。チブル星人はその場から動かずに、手元の機械をなにやらいじっている。

 

 「ちぇすとぉー!」

 

 先にしかけたのはミクラスだ。突進からの渾身のストレートを放つが、これはあっさりとナックル星人にいなされる。まっすぐ行ってぶっ飛ばすのが通じるかは、よほど地力を離していないと難しい。

 

 「目標をセンターに入れて・・・スイッチ!」

 

 シンジの方は落ち着いて自分の戦いを始めている。S.R.Iスーツも少しだけバージョンアップしたし、S.G.Mゴーグルもより精密になった。それでもって放たれた銃弾は、まっすぐとチブル星人めがけて飛んでいったが、狙われている当人は一切焦っていなかった。

 

 「『チブローダー』起動やで!」

 

 カツンッ、と手にした装置を叩くと、たちまちチブル星人の体には厚い装甲に覆われたアーマーが装着される。

 

 『おおっと、はやくもチブル星人は奥の手を出してきたぁ!さながらロボットのようだぁ!』

 『どうやら、戦闘能力の低さをカバーするためのパワードスーツのようですねぇ。まさしく機動歩兵のようです!』

 

 装着者自身が呼んだチブローダーという名のそれは、シンジの使っているものとは違う、パワーアシストや補助用の物ではない、兵器の満載された兵器としてのそれだ。

 

 自身の巨大な脳髄を保護し、それと同時に誇示するような透明のカプセルに、自身の手足の何倍もの太さを持った四肢。両肩にはレーザー砲やミサイルポッドが積まれ、両腕にはガンも装備している。成程、拡張性がありそうでまさに男の子好みなスタイルだ。乗っている本人がおれに当てはまるかは定かではないが。

 

 「これはおつりや、とっときやぁ!」

 「ツリは募金箱に入れといて!」

 

 一度は言ってみたいね。ミサイルが2発、シンジの方へと向かってくる。明らかに渡した分より多くなってる。

 

 「こんな商売やってて儲かるの?!」

 「あんたのガラクタも拾ってがっぽがっぽ儲けたるわ!」

 「ガラクタじゃないやい!」

 

 S.G.Mがあるとはいえ、シンジには一発撃ち落とすのがやっとだ。コンピューター制御されて正確な狙いでもってくるミサイルが、シンジの足元で爆散する。

 

 「ぐっ・・・一戦目からキッツイのと当たっちゃったかな・・・?」

 「心配するな、これがお前らの最終戦(ラストゲーム)だ。」

 「その言葉、そっくりそのまま返すよっ!」

 「ふんっ。」

 

 一方ミクラスの方も攻めあぐねている。ナックル星人は神経を研ぎ澄ました動きで相手の攻撃を見定め、素早く拳で打ち返すカウンター戦術を持っている。ひたすら攻め一辺倒の野獣が如きミクラスにはちと荷が勝ちすぎる。

 

 「まだまだっ・・・!」

 

 ならばっと、あえて打たせて討つ、単純ながら同じ手を使う。これならば、耐久力において分のあるミクラスも互角に戦える。

 

 「少しは出来るようだな・・・・では、これならどうだ?」

 「ぎゃんっ!」

 

 突然呻きをあげて腹を押さえて離れるミクラス。ナックル星人の右手には、いつの間にか銃が握られていた。

 

 「それ・・・映画で見たやつ・・・。」

 「ならば知っているだろう。この格闘技を極めることにより、」

 「ちぃっ!」

 「攻撃効果は120%上昇し、」

 「ぐっ・・・!」

 「防御面では63%上昇する!」

 

 その攻撃は、踊りのように銃撃と格闘を織り交ぜ、たちまちミクラスを壁際にまで追い込んでいく。

 

 『あれはもしやガン=カタ?!』

 『敵のいる位置や、相手の攻撃してくる場所を予測して銃撃を加えるという、某国に伝わる戦闘技法のことですね!ガン=カタは本来二丁拳銃を用いる格闘術ですが、その基礎の応用によって他の武器でも行えるそうです。』

 『さすが暗殺宇宙人、格闘技については達人級の腕前のようです。』

 

 「スペシャリストだ。」

 

 ダァン!と更なる追撃が重なる。それはミクラスのツノに当たり、反射してバリアに打ち消された。

 

 「さあ、どこを撃ち抜かれたい?5秒以内に答えればリクエストに応えてやる。」

 「ふざっ、けんなぁああああ!!」

 「時間切れだ。」

 

 まずは脚を撃って動けなくさせる、次に腕を狙って攻撃できなくさせる、トドメに頭だ。勝利への常套パターンに忠実に従う、それが(したた)かなナックル星人のやり方だった。

 

 しかしこれがタッグマッチであることを失念するとは、ナックル星人の考えも少し甘かった。

 

 「オラオラオラオラオア!」

 「なんや!あぶないなぁ!」

 

 「チッ!」

 「そこだぁ!」

 

 ここで上手く横槍が入ってくれた。シンジの放った銃弾がナックル星人の足元をかすめ、それに気をとられた隙をついてミクラスがタックルを放った。

 

 実際のところはシンジが適当に乱射した流れ弾があらぬ方向へ飛んでいき、たまたま当たっただけだったのだが。

 

 「近くに寄ったらこっちのもんだぁ!」

 「ぐっ・・・なんというパワー・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『おぉっとミクラス!マウントをとって、銃を奪い取ると、遠くへ投げ飛ばしたぁ!』

 『まさに一進一退の攻防ですねぇ!』

 

 一回戦から中々見ごたえのある試合展開に、会場も大盛り上がりだ。より正確に言えば実況が盛り上げている、というのが正しいが。

 

 「2人とも調子いいんだからー。」

 「こっちの調子はどうですか?」

 「あんまりよくないわね・・・。」

 「あの2人にも宣伝を手伝ってもらっては?」

 「普通に飲んでもらうだけで宣伝になるかも。」

 「そっか、そうしてみようかな。」

 

 スタンドの片隅に、先ほどと同じくアギラ、ウインダム、ナオミの三人がたむろしている。

 

 「ミクちゃんもシンジさんも頑張ってるね。」

 「相手は賞金稼ぎだそうですけど、2人なら勝てますよね。」

 「勝てるわよ!私たちが信じてる限り!」

 

 チブローダーから、再びミサイルが発射されるが、シンジの投げた二つの爆発物によって無効化される。

 

 『おっと、突然煙幕が張られたかと思うと、ミサイルがあらぬ方向へと飛んでいったぁ!』

 『煙幕弾と、チャフでしょうね。アルミ片をばら撒いて、電波を撹乱する兵器です。おそらく、ロボット怪獣への対策に用意していたんでしょうね。』

 『まさに転ばぬ先の杖!人間の叡智はどこまで粘りを見せるのかぁ!』

 

 あらぬ方向へとは言うものの、シンジの本当にすぐ後ろに着弾して火柱があがる。だが一瞬でも視界を奪えたこの機会を逃すわけにはいかない。

 

 「何の光?!」

 

 スーパーガンRのアタッチメントの一つを真上に放つ。これで赤外線も惑わさせ、同時に視線を上へと向けさせる。

 

 「信号弾?ちゃう、フレアか?」

 「正解!」

 「な、なにすんねんー!」

 

 そろっと後ろから近付いてきたシンジが、肩のミサイルポッドにしがみつく。

 

 「ええい、このコードだ!」

 「そんなとこ触らんといて、えっちぃ!」

 「誤解を招くようなことを言うんじゃありません!」

 

 ポッドを繋ぐケーブルを切断し、無効化させる。

 

 「これでもう、ミサイルは使えまい!」

 「ジョーダンはよしときや!まだまだ商品(エモノ)はぎょーさんあるんやで!」

 「全部クーリングオフしてやるよ!」

 

 チブローダーの体から飛び降りて、ズザーっと地面を足で擦ると、カッコイイポーズで手をついて着地する。

 

 「おーおー、2人ともやるじゃん!このままいけば勝てるかも?」

 「ゴモたん、控室にいなくていいの?」

 「次の試合レッドちゃんたちのだから、私はまだ先だからねー。」

 「ゴモたんさんは、対戦相手のあの2人のこと知ってますか?」

 「うーん、ナックルちゃんのことはよく知らないかなー。なんか、一匹狼っていうかミステリアスっていうか、つるむタイプじゃないから。チブちゃんは一緒にタコ焼き食べたりする仲なんだけどねー。」

 「やっぱり大阪出身だったのか・・・。」

 

 ずぞぞぞ、といつの間にか買っていたしゅわしゅわコーヒーを飲みながら観客に徹している。

 

 「油断しないでね、シンちゃん、ミクちゃん。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「うおりゃぁー!!」

 「くっ・・・しつこいヤツめ・・・。」

 

 ミクラスとナックル星人の戦いは、完全にミクラスがリードしていた。体重と腕力に任せたパワーファイトで、マウントを決してどかないミクラスが一方的に殴っている状態だ。

 

 「これで・・・トドメだぁっ!」

 

 しかし優勢と劣勢には翼があり、常に戦う者の間を飛び交っている。たとえ絶望の淵に追われても、勝負は一瞬で状況を変える。

 

 「今だっ!」

 「ぐぅっ!」

 

 ミクラスのトドメの鉄拳が刺さろうというその刹那、浮いたミクラスのマウントを抜け出してナックル星人の右手が喉へと伸びる。

 

 『おおっとナックル星人、一瞬の隙をついてネックハンギングツリーで逆襲だぁ!』

 『あの一瞬で逆転を掴むとは、まさに歴戦の勇士といったところでしょうか・・・。』

 

 「かっ・・・あっ・・・。」

 「ぬん!」

 

 ブゥンと腕を振るってミクラスを投げると、じっくり品定めするように大手を振るってのっしのっしと歩いて近づくと、

 

 「げほっ・・・げほっ・・・がぁああ!!」

 

 膝で立っていたミクラスの側頭部、こめかみを思いっきり殴った。

 

 『ああっと、ナックル星人、先ほどまでの華麗な格闘術とは打って変わって、残酷なラフファイトを始めたー!』

 『人体の急所を的確に狙う、なんともむごい攻撃ですね・・・。』

 

 こめかみを殴られると平衡感覚を失い、まともに立てなくなってしまう。先ほどまでの仕返しとばかりに、今度はナックル星人がマウントをとって殴りつけると、無理矢理立たせてまた地面に叩きつける。

 

 「あわわ、なんて残虐な・・・。」

 「大怪獣ファイトは、基本的にクリーンなファイトを想定してるから、こういうのも珍しいんだけど・・・。」

 「ミクちゃん!しっかり!!」

 

 さて、パートナーがひどい目に遭っているとはいえ、迂闊に助けに入れば自分が背中を撃たれるというこの状況。最適解はさっさと始末して応援に回るというところだろう。

 

 「ホントかったいなこの!雷おこしより硬いんじゃないの?!」

 「それをゆーなら粟おこしやろ!」

 

 ガンガンと殴りつけてもビクともしない装甲にさすがに辟易としてきた。それはちょこまかと動き回られて攻撃の当たらないチブル星人にとっても同じだった。

 

 『ここでシンジ選手、チブル星人にバックドロップをかけにかかる!』

 『しかし、これは失敗したようですね。チブローダーの重さが計算違いだったようです。』

 

 ならばと投げ技で攻めようとするが、その重量を持ち上げきれずに途中で断念する。

 

 「ホンマはこの()は使いたくなかったんやけど、このままやと赤字やししゃーないか・・・。」

 「どんな手か知らないけど、今の内に破産申告でもしときな!」

 

 装甲がダメなら関節を狙うのがセオリーだ、とシンジは大地を蹴ってチブローダーの腕にしがみつくと、肘を反対方向へと曲げさせる。

 

 『シンジ選手、チブル星人の腕をアームブリーカーにとらえたぁ!』

 

 アームブリーカーというよりは腕ひしぎ逆十字固めなのだが、チブローダーの腕の長さに体格が足りず、腕にナマケモノのようにぶら下がる形となっている。とはいえ、技としては完成しているので、このまま背筋力に物を言わせれば引き千切ることも可能だったろう。

 

 「そんなん・・・ポチッ、とな!」

 「ぐっ、ぐわぁあああ!!??」

 

 『おぉっとシンジ選手、技を解除してしまったぞぉ?!』

 『なにかダメージを受けたんでしょうか、苦しんでいるようです!』

 

 チブル星人が何かのスイッチを入れると、たちまちシンジは痙攣して墜落してしまった。

 

 「う、腕がシビれる・・・。」

 「そーれっ!」

 「ぐあはぁあ!!」

 

 チブローダーの腰の部分が駆動し、回転ブランコのようなパンチでシンジを遠くへ弾き飛ばす。

 

 「がぁああ・・・なんだ・・・これは・・・ぐっ・・・。」

 「オマケや、Sマインもくらぇ!」

 

 ボシュッと空へと打ち出されたカプセルから、多数の胞子が吐き出される。それらはシンジの周りに降り、爆風を浴びせる。

 

 「あの爆弾・・・。」

 「ひょっとして、予選の地雷もあいつらが?!」

 

 控室で次の試合の準備をしていたレッドキングたちも反応する。その声に応えるものはいなかったが、その答えはYesだった。

 

 「シンジ・・・さん・・・。」

 「他人の心配をしているヒマがあるのか?」

 「他人じゃねーし・・・パートナーだし・・・。」

 

 ふらふらな足取りで立ち上がるも、そこへ容赦なく最後の技が決められる。

 

 『あぁーっとナックル星人、両足でミクラスの両腿をロックし、両手で両腕をチキンアームのように反らせていくぅ!』

 『これは・・・当時校長先生によって禁じ手とされた、伝説の凶悪技・・・!』

 

 「『パロスペシャル』だあっ!」

 「ぎゃあああああああっ・・・!!」

 

 これほど簡単に、かつ残虐に痛めつけられる技もそうないであろう。肩が反対を向き、そこから全く脱出できないという苦しみは筆舌に尽くしがたい。

 

 『ミラクルナンバーズ二人とも完全にやられてしまったぁー!一回戦もこれで終わりかぁ?!』

 

 「終わりだっ!」

 「ぐっ・・・ぅううう・・・!!」

 

 その時、ミクラスの目に映ったのは、爆風に包まれるシンジの姿だった。次に見えたのは、スタンドにいる友達の姿。

 

 思い浮かんだのは、師匠との特訓の日々。毎日疲れ果てるまで走り、夕焼けを受けて伸びた影が重なって、より大きな存在に見えていた。あの背中に追いつくんだと決めたこと。

 

 そしてこの大会(チャンス)がやってきた。共に戦うと決めた仲間が隣にいる。共に歩んでいくと決めたあの日のこと。

 

 それらが脳をよぎって、電流火花が体を走る!ツノを通じて、全身にパワーを滾らせる!

 

 「まだ(ネバー)・・・。」

 「あん?」

 「まだ(ネバー)終わってない(ギブアップ)!『バッファローパワー』!!」

 「おぉっ?!なんだこのパワーは!?」

 

 『あぁっと!突然ミクラスの体から火の手があがったぁ!』

 

 それは追い込まれた獣の気迫が見せる蜃気楼ではなく、実際に熱を帯びている。その熱気にあてられ、ナックル星人もたじろぐ。しかしなによりの驚きは、

 

 「お、押され・・・ぐげっ!」

 「どぉおおおおおおりゃああああああああ!!!」

 

 脱出不可能と思われた肩力の檻を、力尽くで折り曲げると、看守の顎へと頭突きの一撃を喰らわせ、さらに頭を掴んでの背負い投げをお見舞いする!

 

 「シンジさん!!」

 「ミク・・・さん・・・ぐぅっ・・・。」

 「立てる?」

 「・・・立てなくても、立たせるんでしょ?」

 「勿論!アタシはまだまだ止まんないから!」

 

 笑顔で差し出された手に、バシッと固い握手で応えてシンジも立ち上がる(カムバック)

 

 「ん?」

 「どしたの?」

 「いや・・・シビれが止まった。」

 

 どうやら、スーツや機械の不調ではなかったらしい。まあいい、それは重要じゃない。今必要なのは、

 

 「どうやってアイツら倒す?」

 「心機一転、戦う相手を入れ替えてみようか!」

 「オッケー!」

 

 こちらが作戦会議している間に、ナックル星人は落とした銃を拾い、チブル星人も新しい武器の用意を始めていた。だが恐れることはない、恐れを跳ねのけられるだけの激しさが今の僕らにはあるから!

 

 「「本当の戦いは、ここからだ!」」

 

 「もっとちゃんとしぃやホンマに!」

 「うっせ、黙ってろ。」

 

 悪態をつきながらナックル星人は敵を狙う。ミクラスのあのパワーに真正面からぶつかるのはもうこりごりだ。ならばもっと頭のいい方と戦おうと、クルクルとガンプレイを魅せる。

 

 「ここはガンマンらしく、クールに戦おうか。」

 「来い!こっちは西部仕込みだぞ!」

 

 それぞれ横に動きながら、障害物となる岩に隠れたり、足の動きを止めて避けたり、激しい銃撃戦を繰り広げる。

 

 「くらえっ!」

 「スモークか!」

 

 ナックル星人の視界を遮る煙幕が張られる。投げた当人はS.G.Mゴーグルを起動させ、赤外線モードで姿を確認する。

 

 「舐めるなよ!こちとら暗殺宇宙人で通ってるんだよ!」

 

 額に輝くルビーの目が、同じくシンジの姿を捕捉する。

 

 「もういっぱあああああつ!!」

 「同じ手は・・・ぐわぁあ!!」

 

 投擲物を撃ち落とそうとしたナックル星人の目を、激しい閃光が襲う。

 

 『今投げたのはスタングレネードだったようですね。強い光と音で相手の感覚を奪う兵器です。』

 『ナックル星人、強化された視力でモロに浴びてしまったようだぁ!』

 

 おまけにこれは変身怪獣ザラガスや目潰し星人カタン星人といった怪獣娘の能力を使って作られた特性のスタングレネードだ。

 

 「目がぁ!目がぁああ!!」

 「これから死ぬ気分はどうだ大佐ぁ!」

 「ふざけやがってぇええ!」

 

 シンジは両手に銃を持って弾幕を張るが、怒りで乱れた精神を正したナックル星人はそれをピーカーブースタイルで突破して来て、戦いは格闘戦へと移行する。

 

 「お返しだぁ!『アサシンパンチ』!!!」

 「おわっと!!」

 

 急所を狙う速攻パンチの連撃に、銃を取り落とすが致命傷をなんとか免れる。

 

 「小賢しいお前にぃ!!真っ向勝負で勝機はあるかぁ?!」

 「だからやってんだよ!!」

 

 啖呵を切ってパンチを受け止め、レッグシザースで投げ返す。泣く子も黙る暗殺拳の使い手と、泣く子を救う活人拳の戦いが始まった。

 

 「パワー勝負なら負けないぞー!」

 「なんやコイツ!ものっそいパワーやないか!」

 

 真正面ら受け止めた機械の腕がきしみ、悲鳴を挙げる。

 

 「ほんならコレならどうや!」

 「ぐっ!しびれる!!」

 

 ポチッとスイッチを入れると、機体から電流が発せられ、ミクラスの体に流れ込む。

 

 「こんの・・・まだまだ・・・!」

 「まだ動けるんか!ホンマおっそろしい猛牛やで!」

 

 手を振り払って、バーニアを噴かせて距離を稼ぐと、腰を据えてチブローダーの最後の武器を取り出す。

 

 「こんなところで使いとぉなかったけど、しゃーない。それ行けや(パンツァーフォー)!『午前0時の軍隊(ミッドナイト・カンパニー)』!!」

 

 チブル星人の号令を受けて、チブローダーの背部のコンテナから戦車が飛び出してくる!

 

 「うぉっ?!って、ちっちゃ。」

 「ちっちゃくても威力はホンモノやで!!」

 

 世界各国の様々な戦車が、キュルキュルと無限軌道を鳴らして迫ってくる。サイズはミニチュアとはいえ、ディティールがなかなか凝っていて、接写アングルならば本物と見分けがつかないだろう。

 

 『先頭の機体はドイツのVI号戦車、通称タイガー戦車ですね。他にも旧ソ連のT-34や、イギリスのチャーチルもありますねぇ!あの大きさなら部屋にひとつ欲しいぐらいです・・・。』

 『多分経費では落ちないよ。』

 

 「それっ、攻撃開始や!」

 「いててっ!いてーなこの!!」

 

 バンバンと打ち上げ花火のような発砲音が響き、弾丸がミクラスの体に刺さる。もし本当におもちゃだったら蚊に刺されたようなものだったかもしれないが、これが正直かなり痛かった。

 

 「こんのぉ!『バッファフレイム』!」

 

 怒号と共に吐き出された火炎が、戦車隊を飲み込んで爆発する。すると今度は頭の上からポツポツとなにかが降ってくる。

 

 「うわっぷ!!こんどはなんだぁ!?」

 

 『今度は空から戦闘機の襲撃だぁ!』

 『B-29やイリューシンなどの爆撃機の他に、F-15やゼロ戦なんかの戦闘機も飛んでますね!』

 

 地上部隊は囮。本命は空からの攻撃だったようだ。空を飛ぶ手段を持たないミクラスにとって、これほど戦いにくい相手もいない。

 

 「おらぁ!」

 

 そのはずだったのに、なぜかお構いなしに近づいてきた爆撃機をカトンボのように叩き落とす。

 

 「つぎはドイツだぁ!」

 

 ミクラスも、善良ながら『怪獣』であるということを認識させられた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「いやー、2人とも盛り返したみたいだねー。」

 「うん、きっと勝てる。」

 

 片やナックル星人とガン=カタによるインファイトを繰り広げるシンジ、片やチブローダー相手に大立ち回り(ジャイアントキリング)をするミクラス。勝負の行方はまだはっきりとはしていないが、戦いは勢いのある(ノリのいい)方が勝つと相場が決まっている。

 

 「おー、ミクちゃん腕をもぎ取っちゃったよ!」

 「さすがパワーファイターですね!」

 

 「それにしてもシンちゃん、いつガン=カタなんて覚えたんだろうね?」

 「多分、スーツの機能じゃないかな。空手の技とかがインプットしてあるって言ってたから。」

 

 説明的なセリフが続いているのは、展開的に面白い物が無いから。つまり、シンジとミクラスの優勢が続いているまま、試合は最終局面を迎えた。

 

 「勝ったね!ご飯食べてくる!」

 「ゴモたん、」

 「それフラグです。」

 

 

 

 「そりゃぁ!」

 「くっ・・・!」

 

 一瞬の隙をついて、シンジはナックル星人の銃を叩き落すことに成功した。

 

 『あぁっとナックル星人万事休す!これは勝負あったかぁ?!』

 

 「そりゃ!そりゃ!!そりゃそりゃそりゃぁあ!」

 「どぉーあ!!」

 

 『ミクラス選手も、チブローダーを渾身のバックドロップで粉砕しましたね!』

 

 ガシャーン!とチブローダーの脳天を叩き割り、ポンコツの一歩手前にまで持って行く。

 

 「くそっ・・・くそっくそっ!」

 「おらぁ!」

 

 もはや勝敗が決したような状態だが、ナックル星人は悪態をつきつつもガッチリとシンジの腕をホールドしにいく。

 

 「2人に勝てるわけないだろ!おとなしくギブアップしたらっ?!」

 「ギブアップだと?ふざけるなあ!!」

 

 「私は賞金稼ぎだ!時には汚い手も残虐な手段もとるが、勝てる可能性がまだ残っている内にギブアップなんかするわけないだろ!」

 

 「たとえそれが砂一粒の儲けだったとしても、勝ち取りに行かなきゃあ、お(まんま)の食い上げなんだよ!!」

 

 渾身のパンチがシンジの頬に刺さり、数mも吹っ飛ばされる。

 

 「シンジさん!」

 

 自分の相手は仕留め、次は相方のフォローに廻ろうと、ミクラスは駆けだそうとする。

 

 「待ちぃや・・・っ!」

 「あべっ!まだ動けたのか!」

 

 しかし、半壊して攻撃する事すらできないチブローダーを、無茶を言って聞かせて動かしながらチブル星人がミクラスの脚に縋りつく。

 

 「なんや、ケチなネズミがウチに頼ってきたから乗ってやったもんやけど、おかげでエラい大損こいたわ・・・。」

 「このっ!離せ!離せよぉ!」

 

 ミクラスはゲシゲシと片足で腕を破壊しようとするが、そうなりきる前に、チブローダーのバーニアがぶすぶすと煙を立てながら火を吹く。

 

 「そ、そのウチに・・・こ、こまでさせたんやから・・・」

 

 「負けたら・・・承知せぇへんで・・・。」

 

 

 

 

 「ちょっ、アレこっちに来てない?」

 

 ミクラスを抱えたまま、チブローダーはスタンドへと突貫する。

 

 「わー!!ぶつかったー!!」

 

 キャアアアと観客席では悲鳴が起こるが、誰一人怪我をした者はいなかった。全ての運動エネルギーをバリアが打ち消したため、残骸は地面へと線香花火のように落ちたのだった。

 

 

 『あぁーっとなんということでしょう!チブル星人はミクラスを巻き添えにバリアにぶつかりに行ったー!!』

 『バリアに触れたことで、2人は場外となります!したがって、チブル星人選手とミクラス選手は失格となります!』

 

 

 「ミクさん!」

 「よそ見!」

 

 他人の心配をするよりも先に、自分の心配をしろ。目の前の敵から気がそれたその刹那、シンジの目の前には『星』が舞った。

 

 『おぉっとナックル星人、突然長い武器を取り出したぁ!どこに持っていたんだぁ!』

 『鎖付きのフレイル、明けの明星(モーニングスター)のようですね。』

 

 それはエレキングのムチのように、怪獣娘として生まれ持った武器のメイスだった。ただの人間だったならば、頭蓋が粉砕されて脳みそがプリンのようにブチ撒けられていただろう。幸いなことに、少しの間失神するだけで済んだが、攻撃はまだ終わっていない。

 

 「そぉらぁ!夕暮れ時の磔刑(クルシフィクション・オン・ダスク)!!」

 「ぐぅううぉあああああ!!!」

 

 ナックル星人の振り回す鎖付き分銅、逆さ十字架にシンジの四肢は囚われ、たちまちに自由を奪われる。

 

 「ぐぅうう・・・。」

 「ギブアップするのは・・・お前の方だぜ!!『ナックルアイビーム』!!!」

 

 ナックル星人の額の紅玉から、それと同じ色の真っ赤なビームが放たれ、逆さの磔にされたシンジを襲う。

 

 『決まったぁ!ナックル星人のビームが命中した!』

 『逆さ十字架への磔からの、光線での追撃、まさに処刑ですね・・・逆さ十字架というのは、皇帝ネロに処刑されるキリストの弟子ペトロのようですね・・・。』

 

 ナックル星人の逆さ十字架は、tの字ではなくX字のものだったがさておき。

 

 「ジ・エンド・・・。」

 「・・・まだだ、まだ終わってない。」

 「!?」

 

 立ち上る煙の中に、一筋の光が灯る。それを見た瞬間、ナックル星人は嫌な予感を感じとり、すぐさま鎖を引く。煙の中からあっさりとした手ごたえと共に、十字架だけが杖の戦端に戻ってくる。そこには、磔刑にされた罪人はおらず。

 

 「・・・切り抜け、やがったのか。」

 「こっちにも、隠し玉があったんでね。」

 

 吹き抜ける風の(とばり)の向こうから、光の剣を携えて跪く勇者が、天命を待っていた。

 

 『なんとシンジ選手!無事だぁ!しかもその手には、新たな武器が掲げられている!』

 『光・・・いえ、あれはまさか、超電子(メーザー)の剣?!』

 

 シンさんも驚く、その手甲に込められた驚異のテクノロジー。その発現に、笑みを浮かべる一団が地下にはいる。

 

 「どうやら、第一段階はうまくいったようッスね。」

 「ルイの作った液体繊維に超電子を纏わせ、発振させることによって破壊力を生み出させる。」

 

 そのエネルギー伝達と同様の技術が、S.A.Pに使われている。が、むしろこちらは副産物で、本命となるのはもう少し違う場所にある。

 

 「第二段階ではデザインにも凝ってみようよ!もっとこう、デコってる的な?」

 「外観デザインも、イメージを伝えるのに重要になるからね。」

 

 自分達の作った発明が、友達の手で活躍していることが嬉しい。その中心にいる大地にとっては、さらにもう一つ嬉しいことがある。が、それは今回の本筋ではないのでカット。

 

 フレイルが威嚇するようにブンブンと風を切って唸る。光の剣が挑発するように虚空に円を描く。

 

 『次の一撃で勝敗が決するのか・・・緊張の瞬間です・・・。』

 

 スタジアムにいる全員が、固唾を飲んで成り行きを見守る。

 

 勝つのは、暗殺者か。それとも、勇者か。

 

 

 「だぁああああああああ!!」

 「ぬぅん!!」

 

 互いに武器を構えた姿勢のまま、一直線にぶつかりに行く。

 

 さきにしかけたのは、ナックル星人の方だ。鎖に指をかけ、カタパルトのように腕全体のエネルギーを乗せて飛ばす。ぶつかり合うと見せかけての、奇襲攻撃だ。

 

 シンジにはそれを避けることはしなかった。勢いづいた脚を止めることも、止まることも出来ない。ここで避けてしまえば、勢いが死んでパワー負けすることは明白だったから。

 

 「つらぬけぇえええええ!!」

 「向かってくるかぁ!!」

 

 光の剣で向かってくる流星を最小限の角度で受け止め、滑走路を無理矢理胴体着陸するように火花を散らせながらいなす。

 

 「折れたぁ!」

 「貰った!『アサシンパンチ』!」

 

 剣は最低限の役目を果たすと、ポッキリと焼き菓子のように折れた。その最大のチャンスに、ナックル星人は黄金の右手で勝利を掴みに行く。

 

 「まだぁあああああ!!!」

 「うぉああああああ!!!」

 

 ここはひとつ、逆転の発想と行こう。頼みの綱の右の剣が折れたなら、左の拳を使えばいい。ちょうど今は『右手にブレーキがかかって』いる。

 

 『クロスカウンター!!!』

 『とっさに右手を後ろへ引いて、時計回りに回転して左手に勢いを乗せたんですね!!』

 

 ジェッタは端的に、シンさんは冷静に解説した。リングで戦う2人は密着し、どちらの拳が深く刺さったかはよく見えない。

 

 

 

 

 沈黙、その数秒後

 

 

 

 

 「濱堀シンジ・・・と言ったか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い体が、膝から崩れ落ち、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「次は・・・こうはいかん・・・ぞっ!」

 

 

 

 

 

 

 観客は勇者を讃える喝采を贈った。

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『それでは、第一試合の勝利者インタビューと参りましょう!まずはミクラスさん!』

 

 『いやー、アタシは途中で抜けちゃったし、今回の勝利はシンジさんのおかげだよ!』

 『ううん、ミクさんが手を引いてくれたから、僕も立ち上がれたんだ。ミクさんのおかげだよ。』

 『なにそれ照れるなー、もー!』

 

 次の試合との幕間に、2人へのインタビューがスクリーンに映し出されている。最初から白熱した試合模様に、観客も選手たちも興奮気味で食いついている。

 

 

 『それではシンジさん、優勝したら賞金は何に使いますか?』

 『えぇっ、えーっと・・・や、焼き肉100人前食べてやる!』

 『アタシも牛丼100杯食べちゃうよ!!』

 

 「2人ともなんか硬いな、相当緊張してるんじゃねえか?」

 「あなたほどテレビ慣れもしてないんでしょう。ましてこの大舞台じゃ。」

 「お前は、賞金の使い道とか決めてるのか?」

 「マンガアニメゲームスマホ。」

 「即答か。」

 「そういうあなたが欲しいのは、お金じゃなくてトロフィーでしょう?」

 「そうだなー、でもあんなデカいと部屋におけないだろうし、エレの家に置くか?」

 「遠慮しておくわ。」

 

 次に戦うレッドキングとエレキングは、新人の2人とは打って変わって非常に余裕のある様子で待っている。

 

 「さて、あの2人が健闘したんだ。今度はオレたちが会場を盛り上げないとな。」

 「せいぜい自分まで熱くなりすぎないことね。」

 「おまえはクールすぎるんだよ!」

 

 ベンチを立って、ゲートへと向かう。モニターの向こうでまだインタビューが続いているのを、横目に見ながら。

 

 「・・・決勝で会おうぜ、ミクラス、シンジ。」

 「見事なフラグね。」

 「堂々と立ってりゃ、折りやすいだろ?」

 

 戦いはまだまだ始まったばかり。各々が戦いの中で求め、見つけるものは何か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ナックル星人、腕は悪くなかったけど、勝負に弱い。」

 「チブル星人、頭はいいけど、感情に流されやすい。」

 

 そして、影で動くモノの正体は、一体何なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんか、どんどん流されて行ってる気がするのですが?!」

 「戦いの海は、ガタたんの触手で漕ぐのですぅ!」

 

 

 




 せめて週1投稿のつもりだったのに、大幅に遅れに遅れたのは、某ゆりしぃの引退にガチで寝込んでたのもあります。そうこうしている内に、最新ウルトラマンにはオーブダークまで出てくるし、もう怪獣娘黒どころの話じゃなくなってきた。

 こういう時、意志薄弱な作者はどうするか?別の話を書くんだよ!!!

 ということでまた投稿が遅れるかもしれないが、どうか辛抱ください。

 てか、怪獣娘に萌えを求めてこの作品を踏んでくれた層だって一定数以上いるはずなのに、こんな泥臭い話ばっかりやってていいのか疑問に思えてきたぞ!どうなってんだ!

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