怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 あーぁ、とうとうやっちゃった。なにがって?まさか怪獣娘黒のキービジュアルに、ガタたんがいてしまうとは誰が予想しただろうか。これではAブロック第三回戦、準決勝一試合目で、ゼットンさんが太平洋上に出現した邪神を封ずるために棄権する展開に齟齬が発生する可能性があるじゃないか。

 まあそこまでは予定通り行くんだけど。それよりもっと深刻な問題が依然ある。


風林火山を超えてゆけ!

 『ししょー!やめてくださーい!!』

 『逃げるなー!向かってこーい!』

 

 叫んで逃げるはザンドリアス、叫んで追うはレッドキング。今戦っているのは、予選2位通過のザンドリアス&ノイズラーの『Roll in Rock』と、予選7位通過のレッドキング&エレキングの『R/L』。ここで一度、予選通過順位とタッグ名を確認しておこう。

 

 1位:ゼットン&ベムラー(ブルースフィア)

 2位:ザンドリアス&ノイズラー(Roll in Rock)

 3位:シンジ&ミクラス(ミラクルナンバーズ)

 4位キングジョー&Ⅱ(ペダニウムシスターズ)

 5位:マガバッサー&マガジャッパ(マガ・ポテンシャル)

 6位:ブラックキング&ガーディ(CoC(complete of control)

 7位:ガッツ星人×2(ジェミニィ)

 8位:ゴモラ&シーボーズ(Gボーン)

 

 9位:レッドキング&エレキング(R/L)

 10位:ベロクロン&バキシム(DDD(different dimension disaster)

 11位:ヒッポリト星人&テンペラー星人(ジ・ゴク・アク)

 12位:ドドンゴ&ギランボ(ナイト・オブ・リザレクション)

 13位:ナックル星人&チブル星人(アサシンコマンド)

 14位:ゴルザ&バリケーン(風林火山コンビ)

 15位:クレージーゴン&ビルガモ(スクラップ&ビルド)

 16位:キリエロイド&ノーバ(ジェーン・ドゥズ)

 

 対戦カードは、このランキングの8位以上までと9位以下で一組ずつ当たるようになって、それをさらにA、Bブロック二つに分ける形となっている。

 

 『オラァ!せっかく上位に入ったんだからもっと気張れぇ!』

 『むぅりぃ~!助けてノイズラーちゃん!!』

 『こっちだってそれどころじゃないって!』

 『よそ見している暇があるの?』

 

 そして今行われているのがBブロック1回戦第1試合。この後、Aブロック第二試合、Bブロック第二試合、Aブロック第三試合・・・てな感じに続いていく。しかし1回戦だけで8試合もあるなんて長すぎやしないか、と思われるが1試合5分でインターバルが10分だとしても1回戦が終わるのは2時間後ぐらいだ。

 

 『応援してくれてるやつらがいるんだから、もっと頑張れよ!』

 『ママがご近所さんも集めて応援団結成してるのは言わないでぇ!』

 

 観客席の一角にカメラが向くと、『ザンちゃんがんばれ!!』とデカデカと書かれた横断幕やフラッグが並んでいる。その中央にいるのはやたら妖美なマダム。

 

 第一回戦の対戦カードは以下の通りだ。

 

 Aブロック

 

 ①ミラクルナンバーズ×アサシンコマンド

 ②Gボーン×風林火山コンビ

 ③ブルースフィア×DDD

 ④ペダニウムシスターズ×スクラップ&ビルド

 

 Bブロック

 

 ①Roll in Rock×R/L

 ②CoC×ナイト・オブ・リザレクション

 ③マガ・ポテンシャル×ジェーン・ドゥズ

 ④ジェミニィ×ジ・ゴク・アク

 

 いくつか既に結果が見えているような試合もあるもしれないが、上がるまでは一天地六の賽の目次第とも言うので、結果だけじゃなく経過も見て欲しい。ではでは。

 

 『がんばってー!ザンちゃーん!!ファイトよぉー!!』

 『がんばれー!』『やっちゃえー!』『ルーブでもがんばってー!』

 

 「んママーっ!ハズカシイー!」

 「逃げてばっかじゃ示しつかねぇだろっ!」

 「んぎゃー!」

 

 実際かなり手を抜いているのであろうとはいえ、レッドキングの攻撃を全て躱しているザンドリアスもなかなかのスピードだ。立ち向かいながら躱すのは簡単だが、逃げながら躱すのもこれで結構難しいのだ。

 

 「お互い苦労するわね、喧しいパートナーを持って。」

 「そうですか?アタシは結構好きですよ、アイツのこと。エレキングさんもそうなんじゃないですか?」

 「答える必要は無いわ。」

 「・・・ツンデレ。」

 

 その騒がしい戦いが起こっている一方で、静かな決戦も行われている。ノイズラーは普段明るくてハキハキとした性格をしているが、なぜかザンドリアスといる時は一転してクールを装うようになる。案外こっちが素の性格なのかもしれない。

 

 「エレキング先輩、結構やりますよね。」

 「おだてても何も出ないわよ?」

 「アタシも結構、親父に指導されて格闘技とかやってましたけど、エレキング先輩はきっとそれ以上ッスね・・・。」

 「護身術は乙女のたしなみ(・・・・)よ。」

 「違うわー・・・エレキング先輩ってやっぱ違うわー・・・。」

 

 バシィン!っと2人の間に閃光が走る。

 

 「勝ちを譲る気はさらさらありませんけどね?」

 「奇遇ね、私も同じ考えよ。」

 

 ジャァアン!とノイズラーはギターをかき鳴らし、エレキングは盾を構えて駆け出す。

 

 「いざ尋常に!」

 「勝負!」

 

 『大怪獣ファイトの初代チャンプのレッドキング選手とベテランGIRL調査員のエレキング選手による先輩コンビ『R/L』!曰くこれは『ルール』と読むそうです。』

 『対するのは新米GIRLS隊員のザンドリアス&ノイズラーの後輩コンビ、『Roll in Rock』!下剋上なるか!』

 

 引き続き実況のジェッタ&シンさんも試合を盛り上げていく。その傍らには、我らがキャップの買わせたしゅわしゅわコーヒーが置かれている。

 

 「んにゃー!!」

 「いつまでも逃げてっと本気でぶっ飛ばすぞぉ!」

 「どっちにしろぶっ飛ばされるんじゃないですかー!やだー!!」

 

 レッドキングの投げた岩の一発が、逃げ回るザンドリアスを捉えた。トンボとりのように撃墜され、地を舐めた。

 

 「うぅっ・・・もぉやだぁ・・・。」 

 「そら立てよ!」

 

 目をウルウルとさせながらザンドリアスは跪いて懇願するが、レッドキングは許さない。

 

 『ザンちゃーん!がんばってー!夕飯はカレーよー!』

 

 ふと、ザンドリアスの耳に聞こえてきたのは母の声。生まれた頃より耳にし続け、今までずっと寄り添ってきてくれた声。

 

 最近はそれがなんだかウザったく感じたりして、つい反抗したりしてしまったり、素直になれなかったりしているけど、それでも一番好きな人。

 

 「ママ・・・ママに・・・いいとこ見せないと!」

 

 涙を拭いてすっくと立つと、意を決したように空へと舞いあがる。その姿には、確かな『決意』が見て取れた。

 

 「ぐすっ・・・わぁああああああ!!」

 「へっ、やっとっその気になったかよ!」

 

 ザンドリアスは、足で助走をつけると飛行機のように上空へと舞い上がる。先ほどまでの逃げの飛行から、戦いへの飛行へと様相を変えている。

 

 『ザンドリアス選手の体内では、戦うためにアドレナリンを大量分泌していることでしょう!まさしくFight or Flightです!』

 『つまり火事場の馬鹿力ってヤツだね!』

 

 強大な困難を前にして、己を奮い立たせる体の機能と言ってしまえばそれだが、それを可能とするのは心に『愛』を抱いているからだ。感受性多感なお年頃だからこそ、それを無意識に行えるのがザンドリアスなのだ。

 

 (勝つことよりも、応援してくれるヤツらに応えるのがファイターの使命だぜ、ザンドリアス!)

 

 相手が自分より上か下かなんて関係ない。ただこの一所に命を懸けて!

 

 「自分になにが出来るか、自分が得意なのは何かって言われたら、アタシにはコレが一番ッスね!!」

 「国立競技場でリサイタルなんて、誉が高いでしょうね?」

 「夢は武道館ですけどねっ!」

 

 ノイズラーは風を斬って飛びながらジャジャーン!!とギターをかき鳴らし、旋律の波紋が目に見えて広がる。一見ただ飛び回っているだけのような行動に、エレキングは警戒を強める。

 

 「どうしました?攻撃しないんすか?」

 「・・・ギターの音に超音波を混ぜているわね?」

 「それが?」

 

 人間の耳に聞こえる音の高さには限界があり、2万ヘルツを越えると人間にはもう聞こえなくなる。感覚の鋭敏化した怪獣娘にとってはその限りではないが。

 

 『どうやら、ノイズラー選手はモスキート音を利用しているようですね。』

 『シンさん、モスキート音ってなに?』

 『モスキート音、単にモスキートを呼ばれることもありますが、1万7千ヘルツほどの領域の音波はギリギリ人間が、それも若い人だけが聞き取れる、例えるなら蚊が耳元で飛び回るような不快な音なんです。高すぎる音も低すぎる音も、人間にはストレスになります。その音を使ってノイズラー選手は牽制しているのでしょう。』

 『成程、例えるなら黒板やガラスを引っ掻くような音ってことだね。』

 

 加えて、ノイズラーの生態には大きな特徴がひとつある。それは騒音を好んで食べることで、食べられた音は周囲には聞こえなくなるということ。

 

 「アタシ、これでも結構音感には詳しい(グルメ)んで、『超音波以外の音』だけも食べられるんですよ。」

 「好き嫌いするのは、よくないわね。」

 「唐揚げについてるパセリなんて食べなくていいでしょ?」

 

 パセリ農家のみなさんごめんなさい。パセリを食べるなら刻んでスープに散らしたり、ライスに混ぜて炒めるのがいいと思う。

 

 「けれど困ったわね、私の放電光線は空を飛ぶ相手を狙えるほど精度は高くないのよ。」

 「奇遇ですね、今はアタシも出来る限り相手の様子を窺いたいところなんですよねぇ。」

 「そう、ならよかったわ。」

 

 ビシュッ!と空気を切り裂いて、白い刃が宙を舞う。

 

 「そこはまだ私の尻尾の射程距離よ。」

 「・・・っ!たく危ないのぉ!」

 

 寸でのところで、ノイズラーはエレキングの尻尾を躱す。だがそのせいでギターの演奏は止み、超音波の障壁は途絶え、隙が出来る。

 

 (あの距離から躱すなんて、なかなかやるわね。単に反射神経がいいだけじゃないさそうね。)

 (一瞬手が動く音を聞き漏らしてなくてよかったぁ!)

 

 均衡が崩れ、試合に流れが生まれ始める。シーソーのように風は行きかい、どちらに傾くかは読めない。だが順当に行くならば、ここは実戦経験の多いエレキングが勝るだろう。

 

 『エレキング選手!一切の容赦なくノイズラー選手に畳みかけるぅ!』

 『あのムチがあるとはいえ、距離を置かれると不利なことに変わりはありませんからね。この距離を守りたいところでしょうか。』

 

 攻め続ける理由はもう一つある。経験で勝ってこそはいるものの、この後輩にはまだまだ未知な部分が多い。事実、ストレートもフェイントも織り交ぜたこれだけの攻勢をかけても、ノイズラーは冷静に躱し続けて居られている。

 

 「不思議ね、既にあなたの体は2度は黒焦げになっているハズよ。」

 「アンプなら間に合ってますよ?」

 

 怪獣とはそれぞれ特異な能力を持っているものだ。レッドキングやエレキングのようなタイプは王道とも言えるが、その王道を外れた特殊なタイプの方が割合は多いはずである。そしてその能力にハマると、ちょっとやそっとの力でゴリ押すことは難しいということは歴史が証明しているし、現にエレキングの指導した2人はその最たる例だ。

 

 「ふぅん・・・。」

 「終わりですか?なら次は、こっちのターンですよッ!」

 「!」

 

 ノイズラーは翼をはためかせて急加速し、エレキングの懐、ムチの内角へと飛び込んだ。

 

 「セイヤッ!」

 「くっ!」

 

 空手仕込みの正拳突きがエレキングの頬をかすめたのを皮切りに、今度は逆に目にもとまらぬラッシュがエレキングを襲う。

 

 「はぁッ!」

 「なんの!セヤッ!」

 「ぐっ・・・!」

 

 負けじとエレキングも盾で薙ぎるように払うが、それを見越していたかのように頭を下げて避けると、ノイズラーは返しにアッパーを顎に喰らわせた。エレキングはわざと大きく跳ばされることによって、その衝撃を受け止める。

 

 「ッ・・・手の内読めたわ。耳がいいのね。」

 「そのとーり、ほんの僅かな物音や気配も聞き逃すことはありませんよ!」

 

 エレキングが攻撃を仕掛けた時、ノイズラーの耳がピクピクと動くところが見えた。攻撃の予兆を聞き逃さなかったのだ。

 

 「アタシにはどんな攻撃も当たりませんよ!たとえ四方から同時に攻撃を受けても躱せる自信がある!」

 「逃げてばかりじゃ成長しないわよ?」

 「モチロン、この際だからアタシのとっておきを見せてあげますよ!」

 

 ズサーッと身を引くと、どこからともなくアンプを取り出し、ギターを携えて指先に神経を集中させる。

 

 「『3Dエクスペリエンス(超感覚体験)第一幕:ゼロ系新幹線』!」

 「なにっ!?」

 

 プワァアアアアン!という警笛の音がアンプから放たれると、それと同時にエレキングの視覚には、先端の丸い白い車両が飛び込んできた。慌ててその場から飛び退くが、片足を引っかけてもんどりうって倒れる。

 

 「今のは・・・幻・・・ではないわね?」

 「いいえ幻ですよ。アタシは好きな『音』を吸収できる。なら逆に、吸収した音を再現すれば、相手は『聴覚』を刺激されて『視覚』からもダメージを受ける!今再現したのは『ゼロ系新幹線』の騒音、したがって聴衆は新幹線の衝撃を受けたというわけですよ!」

 

 迫る新幹線が見えていたのはどうやらエレキングだけではなかったようだ。音ばかりはS.A.Pでも完全に防ぎきることは出来ず、観客の中にもその衝撃を受けたものがいたようだ。とはいっても、目の前に迫ってくるように見えただけで、実害を被ったものはいないだろうが。

 

 「これがアタシの奥義『3Dエクスペリエンス(超感覚体験)っす!恐れ入ったでしょう?』

 「ええ、こんな能力があったなんてね。・・・うまく使えばあんなものやこんなものも具現化できるのかしら?」

 

 なにやらエレキングさんは一瞬邪な考えを抱いたようだが、すぐにそれを頭の中から払拭する。

 

 「次ィ!『3Dエクスペリエンス(超感覚体験)第二幕:F-15戦闘機』!」

 

 キィイイイン!という耳をつんざく音と共に、三角形の翼を持ったジェット戦闘機が飛び出してくる。惜しむらくは、その両翼の下に携えられたサイドワインダーがただの飾りに終わっていることであるが。

 

 「あのアンプを作ったのって・・・?」

 「ワタシデース☆面白いアイディアだと思いましタ♪」

 「キングジョーさん驚異のメカニズム!」

 

 控室で見ている面々も、新人ロッカー2人の活躍に目を離せないでいる。やはりこの大会は開催されて正解だったと言えよう。

 

 「まだまだ、こんなもんじゃないですよ!この世のあらゆる音がアタシの味方です!」

 「そう・・・なら力を借りるとしましょうか。」

 「それって誰の?レッドキング先輩とか?」

 

 名前の挙がったレッドキングはというと、空を飛び回るザンドリアスに以外にも苦戦を強いられている最中であった。

 

 「えぇい、逃げ足ばっかり磨きやがって!」

 「あれ?あたしって結構やるんじゃないの?」

 

 その内に調子に乗り出したザンドリアスは空から一方的にレッドキングを口から吐く炎であぶる。やはり空が飛べるというアドバンテージは大きかったか。ダメージとしては微々たるものであったが、レッドキングは手が離せそうにない。

 

 「じゃあ一体誰の手を?・・・って、スマホいじってるし!」

 「作戦は既に完了したわ。」

 

 スマホ、正確にはソウルライザーなのだが、戦闘中にSNSのチェックなんかをするエレキングさんではない。同じキングつながりの仲間から貰ったソフトウェアを使い、ある場所へとアクセスした。

 

 「なんだこの曲?!」

 「ふぅ・・・やはりいいわね。」

 

 にわかに会場の全スピーカーが騒がしくなってくる。観客の多くは頭に「?」を浮かべているが、一部の女性を中心とした者の中には大きく反応するものもいた。

 

 『おっと、この曲は一体?こっちなにもしてないよねシンさん?』

 『この曲は・・・たしかどこかで聞いたような?』

 

 「こ、これは・・・この曲は・・・!」

 「どしたのウィンちゃん?」

 「西湖さんのキャラソン!!」

 「それも『おまピト』?」

 「これはエレキングさんの推しのクニマスの西湖のキャラソンですぅ!」

 「説明どうも・・・。」

 

 「ドウやら、ワタシの作ったハックツールを使ったようデスねー。」

 「キングジョーさん、そんなのも作ってたの?」

 「趣味デスよ趣味。しかしまさかエレエレが使うとも思ってマせんデシたねー。」

 「エレキングさんのMP3フォルダを全部解放してるってことか・・・。」

 

 理屈は簡単だ。会場の音声管理システムにアクセスして、自前の音楽ファイルをスピーカーから流しているだけ。ただそれだけのことだが、

 

 「あぁあああ・・・気が散る!けどこの程度じゃ負けないし!」

 「♪」

 

 ノイズラーが好きなのは軽快なロックミュージックだが、大音量で響く低音ボイスに耳を塞ぎたくなる。魚嫌いなのに魚料理しか出てこない料理屋に連れてこられたような気分だ。そうなってしまうとノイズラーとしては死活問題だ。

 

 「こんなの・・・ロックじゃないし・・・うぉおおおおおお!」

 「自分の主張ばかりをかき鳴らしていても、相手には届かないわ。」

 「ぐふぅっ・・・!」

 

 「演奏するものがいて、聞くものがいて、初めて音楽は成り立つの。それは対話も同じ。孤高のギタリストでは、良いバンドマンにはなれないわ。」

 「そんな・・・理屈!」

 「だが、正しい物の見方よ。」

 

 未知の音楽に調子が狂ったか、精神的な動揺があったのか、いずれにしろエレキングの目的は既に達成していた。

 

 「どんなに魅力的なグッズが目に入ろうと、それで本命の品を逃したことは、一度もなくってよ?」

 「はは・・・負け・・・ました・・・。」

 

 ノイズラーの胴に巻きつけられた、エレキングの尻尾。それが意味するものはただ一つだ。

 

 「『エレクトリックテール』!!」

 「びゃあああああああ!!」

 

 迸る高圧電流、ノイズラーの喉から放たれるは断末魔。ようやく一試合片付いた。

 

 「まだあだぁああああ!!!アアアアアアアアアア!!!!!」

 「・・・来いよ!」

 

 ザンドリアスも最後の攻勢にかかるもはや勝機などない、だが最後の最後まで足掻く。

 

 「へんし~ん!!」

 「ちょっ、これはさすがに・・・。」

 

 『おおっとザンドリアス選手、巨大な石柱へと姿を変えた~!』

 

 赤く明滅する隕石の姿となったザンドリアスは、そのまままっすぐとレッドキングの頭上へと降っていく。

 

 「けど、逃げるわけにはいかねえな・・・うぉおおおお!!」

 『ガァアアアアアアアアアア!!!!』

 

 もはや駄々っ子ではなく暴れん坊と評するべきほどの咆哮と地響きがスタジアムを揺らし、そのすべてを覆い隠すほどの土煙が立ち込める。

 

 『レッドキング選手、隕石をまっすぐに受け止めたぁ!』

 『あの質量だと数十トンはあったかもしれませんね・・・。』 

 

 やがて土煙が晴れてくると、煙たがるような仕草を見せるエレキングが見えた。そしてフィールドの中央には・・・

 

 『巨大な石柱が突き立っているぅ!レッドキング選手の姿はどこにも見えないぞぉ!』

 『あの大きさには、さすがのレッドキングさんにも耐えられなかったんでしょうか・・・?』

 

 「おお・・・ザンドリアスすごい・・・!」

 「駄々っ子の底力ですね。」

 

 「レッドキングせんぱ~い!」

 「心配アリませんヨ、レッドならきっと・・・。」

 

 赤い光を放つ石柱の様子を、しばらく警戒していたエレキングであったが、すぐにその構えを解いた。

 

 「ふっ・・・ふっふっふっふっ・・・。」

 

 『おっと、この声は潰されたレッドキング選手の!』

 

 「この程度で潰されるオレじゃないぜ!そぉらっ!」

 

 ズズズッと石柱が持ち上がっていき、その下から白い体が姿を現す。

 

 「たしかにスゲェ威力だったがよ、これぐらいで参るようじゃ怪力怪獣No.1の座が聞いて呆れるぜ!」

 

 とうとう完全に石柱を持ち上げると、勝ち名乗りを挙げるように声を張り上げる。

 

 「くらえ!オレの全身全霊を込めたブレーンバスターを!!!」

 

 ぐらりっ・・・と背中側に揺れ、地面に突き立てられた時以上の衝撃が全てのものを襲う。

 

 「ぐっへぇ!」

 「勝負あったぜ・・・。」

 

 割れた石柱の中から、ザンドリアスが放り出される。

 

 「わ、わたし今回は・・・が、がんばったのになぁ・・・。」

 「よくやったぜ、お前はよ。師匠のオレが誇らしいぐらいだ。」

 

 もはや立ち上がる力すら残っていないザンドリアスであったが、心の中は何かに満たされていた。

 

 「だ、誰かわたしのこと見て笑ってる・・・?」

 「誰も笑ってなんかいないぜ。」

 

 会場はワァアアアアア!!!と色めき立ち二つのタッグの健闘を称える。

 

 「このオレが笑わせるもんか。」

 

 『決まったぁあああ!!Bブロック第一試合を制したのはレッドキング&エレキングのR/L!!』

 『今、フィールドではお互いをたたえ合うように手を取り合っています!』

 

 エレキングはノイズラーの手を取って立たせ、レッドキングはザンドリアスを抱え上げてその存在を誇示した。

 

 「ちょ、ちょっとししょー!高い高いとかハズカシいですってぇ!」

 「いいだろ別に!オレだって嬉しいんだよ、まさかお前があんなにやるなんて思わなくってよー!そーれそれそれ!!」

 「やめてー!ししょー!」

 

 『ザンちゃーん!がんばったわねー!ママ誇らしいわー!』

 「ママもやめてー!」

 

 きゃいきゃいと騒がしくも楽しそうに引き上げていく様がスクリーンには映し出されていた。

 

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 「次がゴモラの試合だよね!」

 「そうだね~!超楽しみだね~!」

 「2人とも、手を動かしてくださいよ。」

 

 地下施設ではラボメンバーが試合中継を眺めながら、ガジェットの調整を進める。ここにその使用者であるシンジはいないが、データは先ほどの試合である程度揃っている。

 

 「今回の大会で、必要なデータはあらかた揃いそうだね。」

 「そっスね。100度の試験よりも1度の実践。百聞は一見に如かずッス。」

 

 『eXtension idol optics』通称Xio。簡単に言うと、使用者の意志に沿って超電子の光を様々な形に作り替えるシステムだ。先の試合中に見せた、光の剣はその最も単純な形、ただ直線に伸ばしただけにすぎない。いずれはこれを骨格(フレーム)とした、様々な機械を作ることが当面の目的になっている。

 

 「そのためにはシンちゃんにはもっと勝ち進んでもらわないといけないけどねっ♪」

 「シンジさんなら大丈夫ッスよ。一回戦だってうまくやってたし。」

 「それに、パートナーとの仲もいいみたいだしね。いやーでも、二回戦ではゴモラと当たることになるだろうしなー、どうかな?どっちを応援すればいいかな・・・。」

 「どっちも応援すればいいんじゃない?」

 

 さて、そんな画期的な夢のようなシステムであるが、一つ問題がある。それは『使用者にはサイキックパワーが求められる』という点である。当然普通の人間には超能力など持っていないし、ただ実験するだけでも苦心する事となる。ただ一人、とある事情(・・・・・)で望まずも『念力』を得てしまったシンジを除いて。

 

 「へんぶくしっ!」

 「どしたのシンジさん、風邪?」

 「ちょっと汗かきすぎたのかな・・・。」

 

 その本人は控室でゆっくりコーヒーブレイク中。

 

 「ところで、そのハチマキはなんなの?」」

 「ちょっと頭を冷やすためのものだよ。戦闘になると余計にエネルギー発散しちゃうから、その予防策。」

 「ふーん、ところでこのコーヒー。」

 「炭酸入りだね、珍しい。」

 「けっこうイケるねこれ!」

 「そう?」

 

 アギちゃんたちから差し入れに貰ったものだが、ちびちびと飲み進める内にすっかりぬるくなってしまい、コップが大粒の汗をかいている。

 

 「炭酸入りのコーヒーよりも、炭酸抜きのコーラの方がよさそうだけどな、こういう時って。」

 「あっ、なんかそれ知ってる。あと消化にいいものがいいんだっけ。」

 「少なくともカツ丼食べて勝つことへのゲン担ぎはあんまりよくなさそうだね。」

 

 そうこうしている内にそろそろ次の試合が始まる時間だ。

 

 「ねね!ゴモたんの試合はスタジアムの方観に行こうよ!せっかくすぐ近場にいるんだからさ、テレビじゃなくて生で!」

 「えっ、僕この後またガジェットの調整に・・・。」

 「いいからいいから!ゴモたんの試合だけでも、ね!」

 

 しょうがないなぁ、と思う一方でそれもそうだなと納得する。ミクラスに手を引かれて控室を後にする。

 

 「そうだ!ゴモたんたちに会ってこうかな?」

 「もう今はダメなんじゃないかな?入場ゲートに行っちゃってると思うし。」

 「ふーん、まあゴモたんなら大丈夫だよね!なんせ期待のエースなんだから!」

 「うん、僕もそう思う。」

 

 それは揺るがない事実として、シンジも十二分に理解していた。

 

 果たしてここで無理に会いに行って、それで結果にどう関わるかは知ったこっちゃないから。

 

 「あっ、ミクちゃんシンジさんこっちこっち。」

 「おーっすアギちゃんウィンちゃん!どう警備のお仕事は?」

 「今のところなんの問題もありませんよ。バリアのおかげですね。」

 「おつかれ、コーヒーご馳走様。」

 「シンジさんこそ、さっきはお疲れ様。」

 「すごい戦いでしたね!」

 「えへへー、すごいっしょ!」

 「なんでミクちゃんが威張るのさ。」

 

 『さて、続いてAブロック第2試合を始めたいと思います!まずは選手の入場です!』

 

 一回戦注目のカードが始まる。それを務めるのは本家大怪獣ファイトのエースと、それが初陣を務めた期待のルーキー。

 

 『ゴモラとシーボーズのGボーンと、ゴルザとバリケーンの風林火山コンビ!』

 

 片や、ゴモラと同じ古代怪獣の分類でありながら、岩肌のような硬い甲殻に覆われた、パワーと防御力双方に優れる『超』古代怪獣ゴルザ。

 

 「おぉー!ゴルザだ!」

 「大怪獣ファイトのベテランだっけ。雑誌に載ってた。」

 「ミカとの勝率はほぼ五分五分らしいね。」

 「もう一人、バリケーンさん?」

 「ミクちゃん知ってる?」

 「ううん、大怪獣ファイトじゃ見たことないや。」

 

 片や、海に浮かぶ水母(クラゲ)のようにふよふよとした柔らかい笠と触手を引っさげた、台風怪獣バリケーン。どうやら彼女は元来ファイターではないらしい。

 

 「知ってるわ。」

 「うぉっ!?いきなり後ろから?!」

 「レッドキングさん、エレキングさん、お疲れ様です。」

 「よう、オレらもこっちに見に来たぜ。」

 「ザンドリアスとノイズラーさんは?」

 「おやつ食べに帰ったわ。」

 

 先ほどの試合を終えたR/Lも観客席へとやってきた。つい先ほどまで激しく動いていたというのに、息一つ切らしていないのはさすがというところ。

 

 「エレキングさんはバリケーンさんのこと知ってるんですか?」

 「前に社交界で会ったわ。実家の。」

 「社交界?!そんな世界が本当にあるんですか!?」

 「私は興味は無かったけれど、これも経験の内だと思ってね。その時に彼女に会ったわ。」

 「どんな性格でした?」

 

 『オーッホッホッホッ!みなさまご覧あれ!ワタクシの鮮烈にしてセンセーショナルなデビュー戦を!!』

 

 「あんな性格よ。」

 「だいたいわかった。」

 

 高飛車、傲岸、高慢ちきとはまさにこれ。あんなプライドの高そうな相手とコンビを組むのは相当難しいことであったろうに。むしろゴルザさんはよくぞOKを出したものだ。

 

 「あいついつも金に困ってるからな。大方大金で雇われたんだろう。」

 「お金遣いが荒いんですか?」

 「知らん、とにかく月末はいつも水ばっかりの出やがる。」

 

 ナックルさんのような賞金稼ぎというわけでも、守銭奴というわけでもなさそうだけど。まあお金の使い道にケチつけるのはナンセンスだろう。趣味であれ生活費であれ道楽であれ、必要なものに必要なだけ使うことの何がいけないか。

 

 「あっ、ミカこっち見たかな?」

 「ゴモたーん!がんばれー!!!」

 「ここから聞こえてるんですかね?」

 

 さすが人気なだけあって、ミカが手を振って観客席にアピールすると、ワァアアアッ!!とミクラスの声をかき消さんばかりの歓声が上がる。シンジたちが手を振ると、ミカも手を振り返し、シィさんも軽くお辞儀をしてきた。

 

 「聞こえてなくても聴こえてるみたいだな。」

 「ミカー!がんばれー!」

 

 

 

 「よーっし行くよシィちゃん!準備はいい?」

 「はいっ!よろしくお願いしまひゅっ!」

 「それは相手に言おうよ!」

 

 「はじめましてゴモラさん。いつもご活躍を拝見させていただいておりますわ!ワタクシの初陣にちょうどよいですわー!」

 「あー、まあよろしくな、シーボーズも。・・・なんか調子狂うなぁ。」

 「何か言いまして?」

 「いいえ、なにも。」

 

 挨拶もそこそこに、両チームとも臨戦態勢をとる。約一名、これが初戦闘だというお嬢さまを除いて・・・。

 

 (せっかくの機会なんだから、シンちゃんにはちゃんと『イイとこ』見せないとね!)

 

 「とか思ってるんだろうな。」

 「なにか言ったか?」

 「いえ、そういえばミカとはタイマン張ったり共闘したことはあっても、こうしてマジな試合を『生』で見るのは初めてかも?って。」

 「まあ、生試合見るのはここにいるほとんどが初めてだけどな、お前に限らず一般人は。」

 

 何度でも言うが、本来大怪獣ファイトは離島で行われるものを、今回は特例的かつ試験的に大都市のド真ん中で行われている。非常時でなければ滅多に起こりえない、貴重な体験なのである。

 

 「そういう意味では本当に『希少種』だなアイツは。」

 「アイツって、バリケーンさんのこと?」

 「そうだ、本来ファイターでもないやつが、こうして本戦に残るってこと自体が稀の稀だろ。」

 「単にゴルザさんが強すぎるだけなんじゃ?」

 「果たしてそれだけかな・・・。」

 「考えすぎッスよ先輩!ゴモたんなら絶対勝ちますって!」

 

 長年の経験からか、それとも怪獣としての勘か、未知数なバリケーンに対してレッドキングは警戒を強める。

 

 『さて、それではいよいよゴングのお時間です!勝つのは期待のエースか、それとも今大会きってのダークホースか!大怪獣ファイトォ!』

 『レディイイイ!!!』

 

 『『ゴォオオオオオオオオ!!!!』』

 

 「では、後はよろしくお願いしますわ。」

 「ん。」

 

 開始早々、バリケーンは頭の笠を回転させて空へと舞いあがっていってしまった。

 

 「いきなりぃ?!」

 「なら一緒にゴルザちゃんをやっちゃうよ!」

 

 フンッ!と筋肉をアピールし、ガードを固めたゴルザに対して、2人は代わる代わるの素早い連携攻撃を浴びせていく。しかしそこへ助太刀する様子もなく、バリケーンはただふよふよと浮いているだけだ。

 

 『おおっと早くも試合放棄かぁ?!バリケーン選手空中から戦いを見下ろすばかりでなにもしていないぞぉ!』

 『まさに、高みの見物ですね。会場からもブーイングの声があがっているようですねぇ。』

 

 「オーッホッホッホ、ブーブーブーブー騒がしいブタさんですことねぇ。」

 

 「こんな貧乏くじ引くなんて、ゴルザちゃんもツイてない、ねッ!」

 「今はな。今はまだ、な。」

 「なにか作戦があるんでしょうか?」

 「て言っても、空飛ばれちゃうとなぁ・・・シィちゃん、お願い!」

 「はいっ!やってみます!」

 

 前線から一歩引いたシーボーズは、んん~っ!と胸に力を込め、ポンッ!と解き放つ。

 

 『おおっと、シーボーズ選手の胸から、ボールが飛び出してきた!』

 『あれは、サッカーボールでしょうか?骨のデザインの。』

 

 亡霊怪獣シーボーズ、その魂を受けた少女・滑川シイナの特技はサッカーであった。怪獣娘として目覚めたが為に、普通のサッカー選手としての道は絶たれてしまったが、その時抱いていた夢は変わらず今も彼女の胸の中に燃え続けている。

 

 「これが、『サッカーボーン』です!」

 

 骨のサッカーボールだから、サッカーボーン。名付け親が誰かはともかくとして、放たれたシュートは軽く弧を描きながら正確に空を舞うバリケーンへと吸い込まれて行く。

 

 「あらっ。」

 「外れたっ?!」

 

 ふよふよと浮いているだけの標的を撃ち損じた。ただそれだけの事であったが、シーボーズは少し驚いていた。そりゃ今まで戦ってきた相手にも空を飛ぶやつらはいた。そいつらは『ただ浮いている』だけじゃないんだから、当然避けたりだってするさ。

 

 だが今のバリケーンは、『避ける』ことすらしなかった。それどころか、ボールの方が外れたように見えた。

 

 「なにか・・・変!」

 「よそ見。」

 「させないよ!」

 

 考えることに夢中になって、周囲への警戒がおろそかになっていたシーボーズを、ゴルザの爪が狙っていたが、それをゴモラは受け止める。

 

 「シィちゃん、考えるのは後あと!」

 「よし、もいっぱぁあああああつッ!」

 

 今度はさらに勢いをつけたオーバーヘッドシュートを放つ。急激な螺旋を描きながら、今度こそバリケーンへと向かって行く。

 

 「あらあら、どこを狙ってらっしゃるの?」

 「そんな!」

 

 今度こそはと放たれた必殺シュートを、またしても外した。余裕しゃくしゃくという態度でバリケーンは見下してくる。

 

 「所詮あなたたちのような空を飛べない怪獣は、地べたを這いつくばって右往左往するのがお似合いでしてよ!オーッホッホッホッ!」

 

 「タッグパートナーに言えるのかそれー!!」

 「うるさいですわね外野が!」

 

 あまりの横暴な発言に、思わずシンジも野次を飛ばす。空を折べることは確かにアドバンテージだが、ただそれだけで勝ったつもりでいるとは言語道断である。

 

 「気流ね。」

 「え?」

 「バリケーンの周囲の気流が乱れているのを感じるわ。」

 「そうか、それでボールが上手く当たらなかったんだな。」

 

 エレキングの三日月レーダーがクルクルと回って、フィールドの状況を分析する。

 

 「どうやら、何の考えも無しに宙に浮いているだけでは無さそうね。」

 「ゴルザは囮で、自分は何かの下準備をしているってことか?」

 「あの不遜な態度も、油断を誘うための演技だと?」

 「あれが演技かどうかは知らないわ。」

 

 ひょっとすると素で言ってるのかもしれないが、それはさておき。

 

 「相変わらず硬いねゴルザちゃんはさっ!」

 「戦うことしか能が無いから。」

 「ホントお堅いよね。」

 

 ゴモラは得意のテールスマッシュを浴びせ続けるが、それをゴルザ意に介さず突っ込んでくる。真っ向からの殴り合いともなれば、その剛腕が意識を彼方へと吹き飛ばす威力になる。

 

 「『ソニックヘッドバット』!」

 「ぐっはぁ!」

 

 武器となるのは腕だけではない。足を踏み込めば地は裂け、頭を振りおろせば星が舞う。まさにこれ、全身凶器。

 

 「ぉラァッ!」

 「ぎひぃっ!よ、容赦ないのも相変わらずだね・・・。」

 

 ロックアップで組み合えば、超音波エネルギーを込めた頭突き『ソニックヘッドバット』で地面へ叩き落とし、さらに転がる相手に蹴りを喰らわせ続け、そして、

 

 「『超音波光線』!」

 

 『出たー!ゴルザ選手の必殺コンボ!』

 『超音波は波長が合えばあらゆる物体を破壊できます、まさに死のコースですねぇ!』

 

 そのほか、お風呂にマッサージ効果をつけたり、洗浄機に利用できたりと大活躍だ。

 

 「負けるかっ!『超振動波』!!」

 

 『おおっとゴモラ選手も超振動波で打ち返してきたぁ!』

 

 超音波と超振動が、鎬を削る。この鉄火場を制するのはどちらか?

 

 

 「風が・・・。」

 「エレキングさん?なぜ突然男子高校生のようなセリフを?」

 「断じて違うわ。」

 

 

 火花散らす戦場に割って入ってきたのは、一迅の風であった。

 

 

 「オーッホッホッホッ!!ついに来ましたわー!わたくしの『春』が!!」

 

 吹いたのは春一番、始まりを告げるプレリュード。

 

 「ここからはネクストステージ!わたくしのターンですのよ!!」

 

 

 「ようやく始まったか・・・。」

 「これは・・・この風は?!」

 

 みるみるうちに、フィールド内を巡る空気には流れが生まれ、それはやがて巨大な『大渦(メイルシュトローム)』となる。

 

 その発生源こそ、宙に漂うバリケーンである。

 

 『おっとこれはどうしたことかー!?今まで静観していたバリケーン選手を中心として、フィールドに竜巻が起こっています!』

 『まさに台風の目ですね!』

 

 「わたくしは『台風怪獣』、わたくしは世界を廻す風、つまり!わたくしこそが世界の中心なのですわぁ!オーッホッホッホッ!」

 

 そうこうしている間にもどんどん風は強くなる。

 

 『物凄い風だぁ!フィールド内の風速計が、40mを指しています!』

 『風速40mというと、非常に強い台風の規模です!』

 

 あまりの強さに、ゴモラとシーボーズも身を支えるのに必死になる。その一方で、ゴルザは風の中も平然としている。

 

 「ひぅうう・・・これちょっとマズいかも・・・?」

 「このままじゃ・・・飛ばされちゃいます!」

 

 リングアウト、会場を守っているバリアに触れると即刻負けとなる。にわかにその危険性が跳ねあがってきた。

 

 「そうか、風林火山、こういうことだったのか!」

 「どういうことだ?シンジ。」

 

 ()きこと、風の如く。

 

 (しず)かなること、林の如く。

 

 侵掠(しんりゃく)すること、火の如く。

 

 動かざること、山の如し。

 

 「バリケーンさんはさっきまで宙に浮かんでいただけのように見えて、エネルギーを貯めこんでいた、それが『林』。一方ゴルザさんは、ひたすら攻撃に耐えて反撃するチャンスを窺っていた、これが『山』。」

 「そして今のバリケ-ンは、エネルギーを開放して攻めに掛かる『風』、というワケか・・・。」

 

 つまり、攻めと守り、陰と陽、対極を持った戦法と、それを可能とするコンビ。ごくごくシンプルな話であるが、それ故に極めやすい。

 

 『風林火山とは、戦国時代の武将・武田信玄が用いたとして有名な四字熟語ですが、その源流は中国の兵法書の『孫子』にあるんです。孫子は様々な形を変えながら、現代でも生かされている有名な戦術書でもあるんです。例えばビジネス論や人付き合いなど・・・。』

 

 例えば、『戦争に勝つ智将は、戦いの前に計画を練るものなり、戦争に負ける愚将は、先頭前の準備を怠ったものなり』というものがある。あらかじめ用意をしていた方と、何もしていない方とでは、どちらが勝つかは火を見るよりも明らかだ。こういう基礎的なことを纏めてあるのが孫子である。

 

 その他、『城攻めをするときは敵の3倍は兵力を用意しとけ』とか、『即断即決速攻スピードは命』とか、なろう小説でも流用できそうなありがた~~~~~い格言が乗ってるから物書きを志すならオススメする。さっきも言った通り、現代でも孫子を元にした本は探せばいくらでも見つかるから。マンガで読みたいなら『デッドプールの兵法入門』がオススメだ。絵付きだとなおよく理解できる。

 

 閑話休題

 

 「で?なにが言いたいわけ?」

 「地の利はわたくしにありましてよ!つまり、この戦いを制するのはわたくし(・・・・)ということですわ!」

 

 「どうやらあの人も孫子を読んだらしい。」

 「教養はいいようね。」

 「ただ経験が足りないな。」

 

 「空を飛べるのが、そっちだけだと思わないでください!」

 

 再び、シーボーズはオーラを高める。そして具現化させるのは、赤い装飾の施された銀色の流星。

 

 『なんとぉ!シーボーズ選手、今度はロケットを生み出したぁ!』

 

 かつてシーボーズが宇宙へ帰るために用意された、ウルトラマンを模したロケット。もはや何でもござれ。

 

 「これでっ・・・!」

 「いっけーシィちゃん!!」

 

 「たしかにオドロキですけど、そんなおもちゃでは物の数にもなりませんわよ!」

 

 『あぁーっと、しかしロケットは風に煽られて非常にアンバランスだぁ!』

 『ロケットの打ち上げには天候も大きくかかわりますからねぇ。』

 

 予定されたコースを大きく外れ、ふらふらとした軌道で天へと昇っていく。

 

 「ちょっと・・・ピンチかも?」

 

 それでも降りる気はさらさらない。

 

 「ならちょっと、『本気』で行かせてもらおうかな!」

 「・・・来るがいい。」

 

 はぁあああああ・・・

 

 ゴモラが息を吸い込み、全身の力を『丹田』に込める。生きとし生けるものは皆、秘められた力を持っている。その多くは、進化の過程で忘れていくものであり、それは怪獣とて例外ではない。

 

 事実、かつてジョンスン島で暮らしていた初代(・・)ゴモラは、凶暴性を失い、穏やかに暮らしていた。

 

 「ぁああああ・・・ハァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 その体の奥底に閉じ込められていた野生、凶暴性、それらを纏めあげる『闘争本能』が目を覚ます!

 

 

 

 「これがッ!『EXゴモラ』だ!!」

 

 

 

 『出ましたっ!ゴモラ選手の最強形態『EXゴモラ』!!その姿が今!第一回戦にして披露されました!』

 『これは早くも勝負ありましたかねぇ?!』

 

 「そんなっ!わたくしの嵐が・・・!」

 

 嵐が逆流し、熱風が巻き起こる。進化への余剰エネルギーが、バリケーンの風を封じ込める。

 

 「すぅー・・・シィちゃん!!今!!」

 「はいっ!!」

 

 軌道を取り戻したシーボーズロケットが、今度こそバリケーンを狙い撃つ。

 

 「くっ・・・よくもわたくしの体にキズをつけましたわね!」

 「そういうの流行らないんですよ、大怪獣ファイトじゃあ!」

 

 高速で飛び回りながら、バリケーンを包囲するように突撃を畳みかける。

 

 「この姿になったからには・・・3分、いや1分でケリをつける!」

 「やってみろ、『超音波光線』!!」

 「『テールスピアー』!ダダダァ!」

 

 一瞬のうちに、鋭利な尻尾がゴルザの体に3突きされる。その実、放たれたのは4発で、最初の一発は超音波光線をかき消すために使われた。

 

 「まだまだぁ!『ローリングアタック』ゥ!!」

 

 体を丸めて体当たり、ギザギザと鋭利になった体表で放たれるそれは、簡単に相手を轢き潰すローラーになる。

 

 「くぅ・・・やはり、やる・・・。」

 

 散々殴られても蹴られても堪えなかったゴルザが、一転してダメージを負い始めた。

 

 「やっぱり、すげぇよミカは。」

 「つえー!ゴモたんつえーよ!!」

 「あぁ・・・。」

 「レッドキングさん、どうしたの?」

 「・・・静かすぎる。」

 「え?」

 

 レッドキングのそんな言葉に、アギラだけでなく大怪獣ファイトに疎いものたちは頭に?を浮かべた。

 

 「たしかにゴルザは物静かな、何考えてんのかよくわかんねぇところもあるけど、ここまで一方的にやられ続けてるなんて・・・。」

 

 太古の眠りより目覚めた古代怪獣を止められるものはいない。

 

 

 「これでトドメだぁ!!『EX超振動波』ァアアアアアアアア!!!」

 

 『ゴモラ選手!極太の光線を発射したぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、もしいた(・・)とすれば、それは、

 

 

 

 

 

 「待っていた・・・この瞬間(とき)を!」

 

 

 

 

 なんと、ゴルザはEX超振動波を大の字で受け止める。

 

 『ゴルザ選手、もろに喰らったぁ?!』

 『いえ、待ってください・・・超振動波のエネルギーがどんどん消滅していきます!!』

 

 どこから持ち出していたのか、シンさんの持つ機械がピコピコ音を立てて、その異常を伝える。

 

 

 「こんのぉ・・・なにを?!」

 「まだまだぁ・・・。」

 

 やがて、会場全体が目を覆わんばかりの眩い超振動波の光は勢いを衰えさせはじめる。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・そんな・・・まさか・・・?!」

 「もらったぜ・・・『ガイアストリーム(地球の叫び)』・・・。」

 

 それとは対照的に、今度はゴルザの胸が赤熱化していた。まるでマグマ吹き出す地殻の様に・・・。

 

 「『地球の叫び(ガイアストリーム)』・・・ってなに?」

 「そういえば、アメリカにいたとき聞いたことがある。地球そのものは生きていて、絶えず『命を生み出す』力がどこかでは湧き出していると・・・。」

 

 地球は生きている。その上で生きているモノと、地球は相互に反応し、時に反発する。ある一定の『エラー』が発生すれば、それを地球は『排除』しようとする。つまり地球には、自己を統制するシステムが備わっている。それを『ガイア理論』という。

 

 『ガイアストリーム』とはつまり、そのエラーを排除するためのある種のオーガニック的な、『意志の力』である。

 

 『サバンナでシマウマが草を食べ、そのシマウマをライオンが食べ、やがてライオンが死ねば大地に還り、草を育てる・・・その食物連鎖のサイクルも、ガイア理論のひとつと言えるでしょう。』

 『地球そのものの力・・・それって・・・なんか・・・すげぇじゃん。』

 

 「つまり、EX化も『地球の叫び』の力の一端だったと?」

 「わかるな、そもそも初めてあの姿を見せた時も、シャドウとの戦いの中でだった・・・。」

 「その神髄を得るために、ゴルザはわざと攻撃を受け続けていたのか!」

 

 

 「そんな・・・?!」

 「『地球の叫び』によるパワーアップが、お前だけのものだと思うな!」

 

 纏うはマグマ、地球の血潮。遥か46億年前より、未だ燃え続ける原初の力。それを手にし、操るは3000万年の眠りより目覚めた『超』古代怪獣。

 

 

 「『ファイヤーゴルザ』・・・そう呼んでもらおうか!」

 

 『山』は目覚めて『火山』となる。

 

 「こんな・・・こん・・・な・・・っ?!」

 

 ショックに打ち据えられるEXゴモラの体が淡い光を放ち始め、やがて元のゴモラの姿へと戻る。

 

 「1分、時間切れだな。」

 

 『なんとぉ!誰が、誰が予想できたでしょうか!!この展開、この逆転劇を!!』

 『それだけじゃありませんよぉ・・・地球の神秘を・・・垣間見ました・・・!』

 

 スタジアムはワッと湧き立ち、再び『風』が巻き始めていた。

 

 「また・・・嵐が・・・うわっ!?」

 「言ったでしょう?わたくしこそが『世界の中心』であると!」

 

 空の上では、伸びた触手がシーボーズを捉え、強力な電流を発する。

 

 「『スカイクラーケン・ショック』ですわ!」

 

 シーボーズの四肢を拘束し、電気椅子の拷問のように生命力をみるみると奪っていく。

 

 「はぁ・・・ホネは地面に埋まっていなさいな。」

 

 操る糸がプッツンと切れたように、シーボーズの体は真っ逆さまに転落する。

 

 『おっと、シーボーズ選手!ダウンです!一方バリケーン選手はなおも健在!』

 

 「シィ・・・ちゃん・・・。」

 

 『ゴモラ選手、打つ手なしかぁ!?』

 

 「オーッホッホッホッ!他愛無いですわねぇ!大怪獣ファイトというのも!」

 

 バリケーンは降りてくるなり、ゴモラとシーボーズを貶してくる。確かに戦闘そのものが初めてだというのにこの戦果には目覚ましい物がある。

 

 「なぁに・・・まだまだ、これからだよ・・・。」

 「見苦しいですわねぇ、もうわたくし(・・・・)の勝利に揺るぎはありません事よ?あなたがどんなに足掻こうが、地を這う獣に空を飛ぶ鳥は落とせませんことよ?」

 「へっ・・・あんたなんかに言ってんじゃないんだよ、これだから素人は困るんだよねぇ・・・。」

 「なんですって?」

 

 「ボク(・・)が相手したいのは、ゴルザちゃんだけだよ。大怪獣ファイトのイロハも知らない素人は、先に帰ってていいよ?」

 

 ワナワナ・・・と目に見えてバリケーンの機嫌は悪くなっていく。それから何かを言おうと口を開いた時、ゴルザはそれを制した。

 

 「待ってもらおうか。」

 「・・・なんですの?あなたはわたくしに雇われた身、わたくしの方が上でしてよ?」

 「なら、お客様には『プロフェッショナル』に任せてもらいたいものだな?・・・ゴモラとは、私が戦う。」

 

 口調は変わらず物静かなそれであったが、目力がバリケーンを威圧する。まだ何か言おうとしたようだったが、存外あっさりと折れて一歩引いた。

 

 「・・・わたくしに意見したこと、覚えておくことよ?」

 「契約書の裏面にでも書き加えておいてくれ。石頭なんでな。」

 

 ふわりと空に上がって、バリケ-ンは再び高みの見物を決め込んだ。

 

 「言ってくれるじゃん、ゴルザちゃんも。」

 「さぁな、私は仕事を万全に全うするだけだ。」

 

 ゴリゴリッと腕を鳴らすゴルザ改めファイヤーゴルザに対して、ゴモラは尻尾を大きく振り乱して威嚇する。今だ闘争心は折れてはいない。

 

 「ほわたぁっ!」

 「ハァッ!」

 

 ゴッ!!と重たい衝撃を空間に響かせ、大怪獣ファイトが再開された。

 

 「上がってるのは、パワーだけじゃないみたいだね!」

 「昂る・・・すべてが・・・今まで感じた事も無いほどにな!」

 

 強大なる獣が、走る、跳ぶ、そしてぶつかる。これが真の大怪獣ファイトだ!と観る者全てにアピールせんほどの激しいぶつかり合い。そこに野次や茶々をいれるものはいない、泣く子も黙る闘争。

 

 「けど・・・たしかにパワーアップしてるけど、EXほどの力じゃないね!」

 「・・・ッ哀しいかな、やはりお前は天才だよ。」

 「そりゃ、そうだよ!なんたってボクは!!」

 

 ちらっ、観客席のある一点に一瞬だけ目をやる。

 

 そして目が合った。

 

 「大怪獣ファイトの、怪獣娘1の、『人気者』なんだからぁ!!」

 

 意地があるんだよ、女の子にも!渾身の力を込めたテールスマッシュを叩きつける。さすがのゴルザもこれにはふらつくが、すぐに立て直す。

 

 「もう一発ぅ!!」

 「ぐぅ・・・っ!!ぐぅうううう!!!!」

 

 わき腹への攻撃を、なんとか掴んでみせる。

 

 「こ、これ以上、付き合ってられないぞ、お前の根性には・・・!」

 「全然、こっちはまだまだ元気だよ!!」

 

 そういうゴモラであるが、息も完全に上がり、肩を大きく上下させている。無理もない、EXの力を最大限振り絞り、さらに今なお戦っているのだから。もはや気力だけで動いていると言っても差し支えない。

 

 「そうか・・・なら・・・今、楽にしてやるッ!!」

 「ぎぃっ!!ギャァアアアアア!!!」

 

 脇で抱えた尻尾を無理矢理引っ張り、ゴモラの腰を同時に蹴り、痛めつける。いや、痛めつけるなどという生易しいものもでも無い。

 

 「ォオオオオオオオン!ドリャァアアアアア!!!」

 「ぎゃぁあああああっ!!あああああああ!!!」

 

 大蛇のような、ゴモラのトレードマークとも言える尻尾が、

 

 『千切れたぁ!なんという腕力!恐るべし、ファイヤーゴルザの猛攻!!』

 

 千切れた尻尾は乱暴に投げ捨てられると、しばらくビタンビタンと動き回っていたが、やがて力を失って消えてしまった。

 

 「がぁっ・・・あぁ・・・ッ!!!まだぁ!!!」

 「・・・ハァハァ・・・来い。」

 

 それでも、まだ倒れない。倒れるわけにはいかない。古代怪獣としての本能が、大怪獣ファイターとしての誇りが、そして、誰よりも、なによりも・・・

 

 「ミカぁああああああああ!!!」

 

 「ボクが倒れたら!!!次、シンちゃんが戦わなきゃいけないんだから!!!!」

 

 ただ君だけのために。

 

 

 

 「『ゼロ・シュート』ォオオオオオオ!!!」

 

 ゴモラのもう一つのトレードマークであるツノが、ファイヤーゴルザの胸に突き刺さり、ありったけの超振動を流し込む。

 

 『決まったぁ!!!今度こそ逆転かぁ!!!』

 

 漏出したエネルギーの奔流は、地を走り、空を裂き、

 

 「きゃっ!?」

 

 『天』にまで届いていた。

 

 『今、フィールドの中はもうもうと土煙が立ち込めています!果たして、立っているのはどちらなのか!?』

 

 

 皆が固唾を飲んで見守っている。しかしその目当ては『試合の勝敗』ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうか、そういうことか・・・ならばっ!」

 

 キッと、ゴルザも『覚悟』を目に宿して、ゴモラに向き直る。

 

 「見せてやろうか、お前に捧げるに鍛えた技!」

 

 と、自らの胸に突き刺さったツノに手をかける。

 

 

 

 

 「『怪獣角折り刑・キャストレーションサージ』!!」

 

 

 ボコッ!と鈍い音がした。

 

 

 「・・・ぁっ・・・はぁ・・・。」

 

 

 脆くも崩れ去る、矢尽き刀折れる体。

 

 

 「ごめんね・・・シィちゃん・・・巻き込んじゃった・・・ね・・・。」

 

 

 

 そこにあったハズのツノの片割れは、『火山』の手元に。

 

 

 

 「ありがと・・・ゴルザ・・・ちゃん・・・。」

 

 

 

 誇りと意地をかけた『最後の一撃』は、『火山』の中腹()に突き刺さっている。

 

 

 

 「それから・・・シン・・・ちゃん・・・。」

 

 

 

 瞳に映ったのは、最愛の人のぼんやりとした輪郭。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aブロック第2試合は、波乱の展開で幕を閉じた。

 




 くぅ疲。前回の投稿からどれだけ経っているというのか。果たして待っていてくれた人がどれだけいたのか・・・感想お待ちしております。


 投稿が空いた間に、あまりに多くの事がありすぎた。とりあえず、祝☆ルーブ放送開始!!あと怪獣娘のキャラソンも発売されたし、怪獣娘の新しい絵も出てたね。ミズノエノリュウとか、まだアニメにも小説にも出てないキャラも映ってたりはてさてどうなるのか・・・。



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