怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 今回から試験的に、1話平均5000字程度で、3,4回に分けて投稿してみようと思います。区切りが付けられれば目標も達成しやすいし、精神的にも健康。


金と黒の戦い①

 「んー、一汗かいたあとのタコ焼きはおいしいね!」

 「でしょー?さすがミクちゃん!わかってるねー!」

 

 塩分が欲しければスポーツドリンクとかの方がいいと思うんだけど。でもまあダウンバーストで冷えた体にはよく染みる。

 

 「これが庶民の食事なのですね。水で薄めた小麦粉を丸く焼いて、ソースと鰹節と石蓴(あおさ)をかけて、箸ではなく爪楊枝を刺して食べるなんて変わっていますのね。」

 「中熱いから気を付けてね。」

 「この中身は・・・タコですの?」

 「そりゃタコ焼きだからね。」

 「タコが入っていればタコ焼き、ではお好み焼きにはお好みが入っているのですか?」

 「お好みのものを入れるからお好み焼きなの。」

 

 そこに相席してBブロック二回戦の試合を見ているのは、先ほど戦っていたバリケーンさんとゴルザさん。戦いが済んだら、仲良くテーブルを囲みたいと誘ったのだった。試合の中で心境の変化があったのか、バリケーンさんは快諾し、ミカも特にわだかまりもなく参加してくれた。でもゴルザさんは何考えてるのか今一わからない。

 

 「次の試合だね、ガーディさんの試合。」

 「レッドキング先輩もね!」

 「彼女も怪獣娘になって、変わってしまった人なんですのね。」

 「そっ。今はこうして元気でやってるけど、当時はすごい落ち込んでたんだって。」

 「バリケーンさんがこれからどうするか決めるのは、ガーディーさんを一目見てからでいいんじゃないかなってね。」

 

 早々に自分の分を食べ終わりシンジの分にまで手を伸ばすミカを放っておいて、全員モニターの方へ顔をむける。

 

 『さて注目のカード!赤の王と黒の王、レッドキングとブラックキングの戦いです!」

 

 『やれやれ、スター選手は注目されて困るぜ。』

 『別に私はファイターというわけではないのだけれど・・・。』

 

 かく言うブラックキングさんも、ガーディーさんと同じく陸上の道を断たれた身だった。この大会に参加したのも、道のひとつと捉えてのことと、友達であるガーディさんから強く希望されたからだ。お互いにいい影響を与え合う仲間だ。

 

 「私とシンちゃんも影響しあってるよねー?なんか褒めるスキルが伸びた気がするよー!ほれほれ!」

 「やーめーい!撫でるな!僕はそんなにベタベタしないぞ!ちょっ、マジでやめて、くすぐったいから・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 さて、シンジが酷い痴態を晒しているのと同刻、アリーナでは激しいぶつかり合いが起こっていた。

 

 「やっぱパワーもスピードも一級品だなお前!アスリートにしておくにはもったいない・・・ぜっ!!」

 「私には走っている方が性に合ってますから、遠慮しておきます。」

 「へっ、お前もどっかのインテリと同じようなこと言うのな!」

 

 どっかのインテリとは、戦闘タイプではないエレキングさんのことである。

 

 「全く、色んな人に声をかけて節操がないわね。」

 「あたしもさっき誘われちゃった・・・。」

 「やめておいたほうがいいわ。彼女のしごき(・・・)は無駄に強烈だから。」

 

 一見パワータイプではないこっちの2人も、それぞれテクニックとスピードを武器に戦っている。エレキングの変幻自在のムチ裁きを、ガーディーはその間を縫うようにして躱す。

 

 「あたし、スピードには一家言あるんですっ!」

 「そのようね、片足しか捉えられなかったのは初めてよ。」

 「あり?」

 

 ガーディーが知覚するよりも速く、全身をエレキングの放電が襲う。

 

 「ひでぶっ!」

 「おっと、慈悲深い仲間を持っているようね。」

 「おいコラァ、それじゃあオレが無慈悲みたいに聞こえるじゃねぇか。」

 「あなたを助けたことはあっても、あなたに助けられた試しがないわ。」

 

 ブラックキングの火炎放射(ヘルマグマ)に邪魔されて、放電を止めざるを得なくなった。パワー一辺倒な戦い方では、レッドキングには分が悪かったらしい。

 

 「しょうがねえだろ、相手は得物(大剣)持ってんだから!」

 「ならもうちょっと頭を使って戦いなさい。頭突き以外で。」

 「ハッ、なら選手交代!」

 「いいわ。」

 

 作戦会議もそこそこに、戦う相手を入れ替えて様子を見ることにしたようだ。実際肉弾戦オンリーで身体能力の実を武器にしてくる相手の方がレッドキングにはやりやすい。

 

 「打たせて・・・殴る!」

 「おっと!」

 「もう一発!!」

 「ぐぅっ!!さすが元チャンプ・・・。」

 

 経験がものを言う。ガーディーとブラックキングはファイターではないため、どんな戦い方をするかは見たことが無い。が、どういう風に攻めてくるかは経験則でわかるというわけだ。

 

 「元は余計だぜ元は!いつか、いや今日こそ返り咲くんだからよ!」

 

 この戦いを見ているであろうあの澄まし顔を思い浮かべながら吠える。恐らくなんのリアクションもしてないだろう。空しい片思いだ。

 

 「強いっ・・・けど、負けっぱなしってのは、悔しいんだよねぇ!」

 

 さりとて圧倒されるばかりガーディーでもない。怪獣娘になる前の自分はまさに無敵だったと思う。才能も未来もあった。けど、それは怪獣ソウルの発現によって潰えた。

 

 「けど、何もかも変わってみて、初めて自分が井の中の蛙だったって思えた!アタシよりすごいヒトが、もっといるんだって!」

 

 今隣で共に戦っているブラックキング、黒柳ナミさん。それに、怪獣娘じゃないただの人間だけど、大切な友達のジュンだって本当にすごい。

 

 「だから自分の可能性をもっと信じる!そのためにアタシは挑戦し続ける!」

 

 地面を蹴る力が強くなる。自分にも抑えきれないほど胸が熱く高鳴っている。

 

 「おい、なんかピコピコいってんぞ!」

 「あっ、ホントだ。」

 

 胸のカラータイマーが点滅を始め、危険信号の合図だ。だが、ガーディーは負けない!ブラックキングとジュンとの友情が、彼女の心の支えになっているからだ!!

 

 「どぉおおおおおりゃぁああああああ!!!」

 「くっ、なんて速さだ!捉えきれねぇ!」

 

 なおも衰えない健脚で砂ぼこりを巻き上げ、レッドキングの周りに円を描く。リングに砂嵐が巻き起こり、たちまち視界を奪う。

 

 「そこだぁああ!!」

 「ぐぉっ!!しまっ・・・?!」

 

 一瞬の隙を突いて、ガーディーがレッドキングの足を払う。重力に体を引かれ、自由を喪うその一瞬。

 

 「これで・・・決めるっ!!」

 「ぐっはぁ!」

 

 サマーソルトのようにレッドキングの身体を蹴り上げる。無防備なまま空を舞うレッドキング。今こそ最大のチャンス!!

 

 「『タイマァアア・・・

 

 左右に開いた腕を腰へと引き、胸の前で交差。それをカラータイマーの下に沿える。

 

 フラァアアアアアアアッシュ!!』」

 

 砂塵の中に十字の光が灯り、やがて眩い虹色の閃光が煙幕を引き裂いて上空へと放たれる!

 

 「これはっ!?」

 「すごい・・・綺麗・・・。」

 

 超古代の守護獣が放つ極光、その光景に誰もが目を奪われていた。それは明らかに光の巨人の力と言っても相違ないのだから。

 

 「まさか、ここまでの力があったなんて・・・!」

 「だからすごいの、あの子は。」

 

 クールなエレキングもこれには目を見開いて驚くが、ブラックキングはまるで自分の事かのように誇らしげに語る。一番そのすごさを見せつけられているのは、一番近くにいたブラックキングなのかもしれない。

 

 「うぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

 虹の光が一層強くなり、太陽とも寸分違わぬほどの輝きが世界全てを覆いつくそうとしている。

 

 「くっ・・・うぅううううう・・・!!」

 

 だがその天下も既に終わりを迎えようとしていた。

 

 「あれ?なんか光弱くなってきてない?」

 「どうやらあの技は体力を大幅に削るらしい。」

 

 見た目は派手だが、どうにも燃費が悪いらしい。事実、これと同じ技を使った相手は、光に弱かったり、実体のない幻だったりするから。

 

 「おぉおおおおおおっりゃあああああああ!!!」

 「ふがぁっ!?」

 

 体内のエネルギーを撃ち尽くして勢いの弱まった虹の奔流を押し返すように、レッドキングの流星パンチがガーディーの鼻っ面をへし折る。

 

 「へへっ・・・見た目は派手だけど・・・全ッ然効かなかったし・・・!」

 

 ギリリッと歯を立てて、レッドキングは不敵に笑う。

 

 「そうやって虚勢を張るなら、足の震えぐらいどうにかしたら?」

 「武者震いだっての・・・ハハッ・・・。」

 

 一方エレキングの方は割とあっさりとブッラクキングをK.Oしていた。

 

 「お前こそ、尻尾焦げてるじゃねえか。」

 「彼女、意外と情熱的だったみたい。」

 「・・・お前が言うか。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『決まりましたぁ!勝者レッドキング&エレキングチーム!!』

 

 「・・・すごかったですわ。」

 「バリケーンさんだって、さっきはあれぐらいやってたんだよ?」

 

 感動に打ち震えるように瞳を輝かせながらバリケーンさんは声を漏らした。性質こそ違えど、ガーディーさんとバリケーンさんの2人が発揮した力の絶大さはお互いに全く引けをとらなかっただろう。

 

 「怪獣娘は誰だって可能性の塊だよ!さっきガーディーちゃんが言ってたみたいに、挑戦できるチャンスが増えたんだよ!」

 「ゴモラさん・・・。」

 「それに、がんばってるのはガーディちゃんだけじゃないんだよ?」

 「そうそう、デビュー戦でゴモたんと激しくぶつかった人がいるよね!」

 「それは、どなたですの?」

 「あ、あの・・・私も昔、怪獣ソウルに目覚めてサッカーの道が途絶えってしまったんですけど、今は大怪獣ファイトでがんばってます!」

 

 今までずっと出番の無かったシーボーズさんにもやっとセリフが回ってきた。ずっといたんだよ?ホントだよ。

 

 「よーしよーしシィちゃんよくがんばったねー?ちゃんと主張できてゴモたんは嬉しいよぉ~??よしよしよし・・・」

 「はうぅ・・・やめてくだしゃいぃ・・・。」

 

 まるで飼い犬にそうするようにミカがシィさんを撫でまくる。まあ実際シィさんは小動物系でかわいいと思う。だからって本当に小動物のように愛でるのはいかがなものか。

 

 「お?シンちゃんも撫でられたいの??よーしよし!!」 

 「やめーい!」

 「ほれほれほれ?ここがええんかここが?」

 「ちょっ、マジでやめろ!」

 

 いつからこんなに的確に弱点を突くようになったのか。

 

 

 閑話休題

 

 「で、バリケーンちゃんはどうしたい?」

 「わたくしは・・・。」

 「ここにいる全員が、バリケ-ンさんのことを支持するよ。なんだって力になる。」

 「シンジさん・・・。」

 「アタシも、一回拳を交えて、一緒にタコ焼き食べたんだからもう友達だよね!」

 

 誰もがうんうんと頷き、期待の眼差しを向ける。

 

 「・・・私も、今度からはノーギャラで助っ人に来てやる。」

 「ゴルザさん・・・ありがとうございます、皆さん!」

 

 目尻に水滴を浮かべて、バリケーンさんは微笑んだ。どうやらこれで一件落着かな?いや、これからが大変になるんだろう。

 

 「さて・・・さっそくですが、シンジさん?」

 「なに?」

 「シンジさん、ご趣味はありますの?」

 「趣味?」

 「休日はなにをして過ごしていらっしゃいますの?」

 「休日?」

 「お付き合い、されている方はいらっしゃいますの?」

 「まあ、いない、かな?」

 「今度、ウチの別荘にいらっしゃいませんこと?父と母にも紹介したいですわ!」

 

 ちょっとそれは気が早すぎるんじゃないかな。面談なら局長に任せたいし。

 

 「ちょっとー!いきなり何手出してんのバリちゃん?!」

 「あら?なんでも協力してくださるのではなくって?」

 「そうは言ったけど、そうじゃないのー!シンちゃんはあげないんだから!みんなでシェアするものなんだからもー!」

 「僕の人権は?」

 

 いきなり大変なことになってしまった。

 

 「やれやれだぜ。」

 

 その空気にイマイチ馴染めないゴルザさんの溜め息が部屋の隅にこだま(・・・)した。




 大変長らくお待たせしました。そしていつの間にやらお気に入り登録が100を越え、感涙の極みに至ります。初期からお気に入りしてくれた方も、あるいはたまたま目に映ったから登録してくれたという方も、本当に本当に感謝感激雨あられです。しばらくはこれぐらいの長さで出来る限り早く投稿できるように努めてまいりたいと思います。感想、評価などもお待ちしております。

 ところで、大分前のあとがきに書いていた、IS×ウォーズマンのプロットが着々と出来上がっている一方で、「これもうキン肉マン関係ないな」という根本的な問題にブチ当たりまして。主人公もほぼほぼオリジナル、これってクロスって呼んでいいのかと疑いたくもなってしまう始末。どうして名前ばかりのクロスオーバー作品がこんなに多いのかを身をもって知ってしまった。知りたくも無かった。まあその極みが本作なんですが・・・。

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