「ふー!おなかいっぱーい!」
「食べすぎじゃない?次の試合大丈夫?」
「へーきへーき!腹八分目にしてるから!」
「お腹いっぱいじゃないのか。」
「じゃあ私はもうちょっと・・・。」
「ミカはもうやめとけ。太るぞ。」
「んもー、女の子にそんなこと言っちゃってー、デリカシーないなーシンちゃん。」
「今の僕が悪いの?」
「シンジさんが悪いですわ。」
「そんなー。」
なんやかんやあって和気あいあいと話せるようになったバリケーンさんを交えて、引き続き控室から試合を観戦する。
「次はゼットンちゃんとおジョーの試合だね。どっち勝つと思う?」
「うーん、そりゃゼットンさんだと思うけど、キングジョーさんも強いからなー。」
本当にモデルかと疑いたくなるぐらい、キングジョーさんは硬い・強い・遅いと揃っている。そしてその遅さをカバーできるⅡさんも一緒だ。
一方ゼットンさんの方はというと、ゼットンさん自身が文句なしの強さに加え、ベテラン怪獣娘であるベムラーさんが・・・。
「あれ、ベムラーさんってどんな戦い方してたっけ?」
「正直ゼットンちゃんが目立ってばっかりでベムラーさんの戦い方全然知らない。」
えーっとあれだ、東京タワーでのシャドウマンとの戦いの時。
「ゼットンちゃんと空の上だったね。」
「あとバイクで事故ってきた。」
じゃあ、アイラとの大戸島での戦い。
「ゼットンちゃんにバレーボールにされてたね。」
「ボコボコにされてたね。」
予選は・・・?
「ゼットンちゃんのテレポート。」
1回戦。
「ゼットンちゃんが瞬殺。」
「ひょっとしてベムラーさん、なにもやってないんじゃ?」
「ひょっとしなくてもそうだね~。」
決して何もしていないわけではないんだろうけど、いかんせん目立たない。逆に言えばそれだけ秘匿できているということだけど・・・。
「そもそも、ベムラーさんって強いのかな?」
「それ言っちゃダメだよ。最初の怪獣娘さんなんだから。」
「最初の怪獣娘だからって強いって保障あるの?」
「・・・プレミアはついてる。」
むか~~~しのグッズとかなら、一個ン十万とかの値段がついたっておかしくないし。
「シンちゃんいつもお世話になってるのに、何も知らないの?」
「ベムラーさん、あんまり自分のことは教えてくれないから。詮索するのもアレだし。」
(多分シンちゃんが聞かないから言わないだけだと思うけど。)
真実は本人のみぞ知る。
「で、仮にゼットンちゃんが準決勝に進出したとして、勝算あるの?」
「あると思う?」
「諦めんなよ!どうしてそこで諦めるんだそこで!」
「全くないわけでもない・・・かな?」
「なにか作戦があるんですか?」
「わかった!ゼットンちゃんのドリンクに薬を・・・。」
「そんなことしないよ、チブルさんやナックルさんじゃあるまいし。」
「なにが言いたい濱堀シンジ?」
「おっと。」
噂をすれば影が差す、そのナックルさんがやってきた。
「まるで私が試合前に工作を行う卑怯者のような言い草は、やめてもらおうか!」
「言い草もなにも事実でしょうに。」
「ゴモラもそうだそうだと言っています。」
「ぐぬぬっ。」
「で、なんの用です?」
「いや、チブルがこっちに来ていないかと思って。」
「チブちゃん?いないよ。タコ焼き買いに行ったんじゃないかな?」
「外へか?面倒だな・・・。」
「なにかあったんですか?」
「・・・秘密は守れるか?」
「情報料よこせって?」
「マネーのお話ですの?でしたらここはワタクシが・・・。」
と、バリケーンさんがさらっととんでもない値段を提示したために、ナックルさんが失神したり。
「さすがにこんな大金は貰えませんよ。商品の価値以上の対価を貰うのは、私のポリシーに反しますので。」
「あら、ではこの値段に見合った商品を持ってくるのが商売人ではなくって?」
(なんでナックルちゃん口調変わってんだろ。)
(あまりの巨額にショックを受けちゃったのか、媚びを売ってるのか。)
シンジは真面目に働くのが馬鹿らしくなっていた。
「で、どんな情報なんすか?」
「うむ、私が独自に調査した結果、あの『ジェーン・ドゥズ』という2人についてだが・・・。」
「ほうほう?」
まるでクイズ番組のようにナックルさんは口を噤んで間を作る。心なしかドラムロールの音が聞こえ、誰もが固唾を飲んで見守っている。
「『何もわからない』ということがわかった!」
「は?」
「あの2人の出自や目的、その他の情報は一切つかめなかった!以上!」
「自分
「ミカ、言葉。」
「だーって、ここまで引っ張っておいてオチも無しとかお笑い芸人失格だよ?」
「誰がお笑い芸人か。」
「だってナッちゃん、チブちゃんとコンビ組んでM-1出るんじゃないの?」
「M-1グランプリってもう終わっててないから。」
「うそ!?シンちゃんと一緒に出たかったのに!」
「出ないわ。」
「で、なんの情報も無いってどうゆうこと?なんかもっとあるでしょなんか?」
「恥ずかしながら、その言葉通りでしかないのだ。辛うじて2人の3サイズだけはわかったが、一体どこからきてそしてどこへ行くのか皆目見当がつかない状態で・・・。」
「その情報、もっとくわしく・・・。」
「シンちゃーん?」
「なんでもないですハイ。」
「でも、なんの目的もなく大会に出たってことはないよね?少なくとも賞金目当てとか?」
「でもキングジョーさんの言うには、2人とも働き口はあるみたいだし、そんなにヒマしてられるような立場でもないような?」
「謎ですわね・・・。」
「それで、チブルにも探りを入れさせているところだったんだが・・・。」
「本人が見つからない、と。」
「まー、心配しなくてもそのうち帰ってくるんじゃないの?チブちゃん約束は守る子だし。」
「・・・だといいんだが。」
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「ふぇえええええ~~ん!!!ゴモた~ん!」
「あれ、チブちゃん?なぜここに?」
「聞いてぇなぁもう~!散々やったんやでウチぃ!」
「おいチブル、一体どこへ行っていたんだ?随分探したんだぞ?」
「だから聞いてぇな!ホンマ酷い目に
「あれチブルさん、なんでそんな大きな袋持ってるんすか?」
「だからそれを今説明しようとやなぁ!」
「あれーチブちゃんタコ焼き買ってきたんじゃないの?」
「そんなん買ってられへんわ!それよりもっと大変なことがあってな!」
「お初にお目にかかりますわチブルさん、わたくしはバリケーンですわ。お噂はかねがね伺っておりますわ。」
「あーそりゃおおきにな。だからな、今大変なことに。」
「あの・・・チブルさん・・・。」
「だから!それを!今!言おうと!しとんのや!!」
「あの・・・大丈夫ですかって・・・ケガしてませんかって言おうと・・・その・・・。」
「あー、チブちゃんったらシィちゃん泣かせたー。」
「いーけないんだーいけないんだー。」
「せーんせーにー言ってやろー。」
「あん・・・えぇ・・・?その・・・ごめんな?堪忍してな?って、なんでウチが謝ってんの?」
「で、なにがあったの?」
「せや!これ見てーな!この無残な姿を!」
「ぎゃあなまくび。」
チブルさんが背負っていた袋の中身が床にぶちまけられると、ゴロゴロとシンジの足元に人間の首らしきものが転がってきて悲鳴が上がる。
「あれ・・・この人、っていうかこのマネキン見覚えがあるような?」
「そうだ、たしか一回戦の前に僕と握手したファンの人じゃない?」
「ウチが手塩にかけて
「001?」
「13までいそう。」
「なんでこんなことになったんだ?」
「それが、例の2人組を追跡させてたら、いきなり信号がロストして、やっと見つけたのはゴミ捨て場やったんや・・・。」
「む、むごい・・・いくら作り物とは言え・・・。」
「そう?マネキンと同じでしょ?」
「で、でも暗いところで見るマネキンや人形ってコワイですよね・・・。」
「昔、ガラス棚に入った人形を見るのがすごく怖かったですわ。」
数時間前に
「あれ、
「そうなんよ、本体は壊されてもせめてデータさえあれば・・・っと思っとったんやけど、ハードディスクが無いんよ。」
「壊されたわけじゃなく、丸々『無い』?ってことは、犯人が持ち去ったってことか。」
「あの2人が?」
「一体何のために?」
「そりゃ、探りを入れられたからとか、見られちゃマズいものを見ちゃったとか・・・。」
「そんなん言うても、あんまりええ映像撮れてないで?かろうじてレッドちゃんの
「なんだって?!大変じゃないか!早く見つけないと!」
「シンちゃーん?」
「なんでもない、なんでもない、なんでもないから顔から手離して。爪が、爪がすごい食い込んでるから。」
ギ、ギ、ギ、ギィ~~~!っと右から左へ突き立てられた爪がスライドし、シンジの顔に赤い痕がつく。
「これはひょっとすると、『警告』なのかもしれんな。」
「警告?誰に?」
「あの2人を調べようとする、そういうやつら全員に対してさ。」
「どうゆうこと?」
「理由はどうあれあの2人だって、この大会に参加しているからにはトラブルは避けたいはずだ。とすれば、干渉してくる相手は邪魔になるし、それに過剰に反応するわけにもいかない。」
「な、なるほど・・・全く気付かれずに『始末』できるんだぞ、っていうアピールでもあるんですね。」アイテテ
「じゃあ、ウチはやられ損?泣き寝入り?」
「まあまあ、ここは怪我しなかっただけ儲けものって思っとこうよ?」
「そんなー・・・。」
くすん、と落ち込むチブルさんを慰めるようにミカが撫でる。
「ほらほら、次の試合始まるよ?今は楽しもうよ!」
「そうだね、次の次が件の2人の試合だし、まずそれを見てみてもいいんじゃない?」
「んー・・・せや!」
その時、チブルの脳内に悪魔的発想が走る。
「なにすんのガラクタいじって?」
「ふふん、次に作る子はおジョー似にしたろ思てな!今のうちにおジョーの色んなアングルを撮影しとこうと・・・。」
「いいのそれ?」
「撮影は禁止されてなかったと思うけど・・・。」
「よっしゃ!ついでにおジョーの秘蔵写真も
「それはダメでしょ。」
「・・・上手くいった暁には、シンちゃんにはプリップリな生写真あげるから。」
「協力は惜しまない。」
「シンちゃん~ん?」
一同は、モニターに顔を向けてその激闘を見届ける・・・。
「そりゃあ僕が口を滑らせるのがいけないとはいえ、ここまでされる謂れはあるの?」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ。」
「動いてるから生きてるのはわかる。」
しかし、ライダーにしろその他ヒーローにしろ、まだ放送中or連載中の作品を、その先の展開もわからぬままに主人公に据えてしまうのはいかがなものか・・・。速さ優先の流行りのゲーム実況じゃあるまいし。(人の事は対して言えないのだけれども