「バカな!?超獣軍団は全部倒したハズだろ!」
そう、謎の強化を受けたアギラの活躍により、超獣軍団のリーダー、ブロッケンがたった今倒されたはずであった・・・。しかしどうであろう、空には暗雲が立ち込め、悪の笑い声が木霊しているではないか。
『フゥッハハハハハハ!!バカなやつらめ、このヤプールに敗北はないのだ!今までお前たちが倒してきた超獣どもなど、ほんの小手調べに過ぎんのだ!超獣軍団最強の刺客を今見せてやる!』
「超獣軍団・・・。」
「最強の刺客?!」
空がガラスのように割れ、その向こうへと倒された超獣たちが吸い込まれて行く。
『力はカウラ!』
『テクニックはユニタング!」
『霊媒術はマザロン人!』
『成長能力はマザリュース!』
『ボディの頑丈さはブロッケン!』
超獣たちの最も強い部分が合体し、あらたな超獣へと生まれ変わる。
『そして、その実体は・・・。」
『超獣軍団最後の刺客、ジャンボキング!』
「ジャンボ?!」
「キング!?」
いつかやりたいこんなネタ。
「おーぅ、お前らもこっち来たのか。」
「レッドキングさん、お疲れ様です。」
「レッドキングせんぱーい!すごかったッスねー!」
「あんまり活躍していたようには見えないけど。」
「それ言うなっての!」
部屋を出たシンジとミクラスはアリーナの観戦席にやってきていた。モニター越しでばかり見ていたが、生の熱気というやつに心も高鳴ってくる。
「レッドキングさんは、どっちが勝つと思いますか?」
「そりゃあやっぱり・・・自分で言っちまうのが癪だが、やっぱゼットンが勝つだろうなー。」
「うーん・・・やっぱりレッドキングさんもかー。」
「なにがだ?」
「いや、みんなゼットンさんゼットンさんって言うけど、ベムラーさんはどうなのかなって?」
あと一人、ゼットンさんLOVEな寝ぼけ眼はというと・・・ウインさん共々遠くの方で売り子をやっているのが見える。なんであの2人までしゅわしゅわコーヒー売ってるのか。あとで買ってあげよう。
「あーそっかお前ベムラーさん大好きだもんな。」
「ヘァア?!なんでそんな話になるんですか?」
「あっはは、ジョーダンだっての。」
「でも別に冗談の感情ではないのでしょう?」
「え?あっうん。」
「マジかよ。」
「ふーん・・・。」
「なに、この空気?」
好きか嫌いかじゃないといけないの?と問いたくなるが余計にややこしくなりそうなので口にはしない。
「でも、ベムラーさん強いよきっと。能力とか、パワーとかじゃなくて。」
「例えば?」
「・・・目を合わせて喋ってくれるところとか、かな?」
「目線の話?」
「確かに背高いし、スタイルいいもんねー。やっぱシンジさんスケベじゃん、ゴモたんの言う通り。」
「違うっての。エレキングさんも微妙に距離取らないで、傷つくから。」
実際、あの人の顔が近づいてドキドキしたことは何度もある。ひんそーでひんにゅーでちんちくりんなミカとは違う『匂い』だってする。自然とヒートアップする心臓を落ち着けるのに苦労していたし、反面そばに居ると不思議と心地いいと感じていたのも事実だ。
「そうじゃなくって、心の強さの話。人の心の動き方というか、揺れ方というのか、そういう感情の起伏を読み取ってくれる『頭のいい人』だから。」
「レッドキングには無理な話ね。」
「そこでオレに振るなよ。」
「事実よ。」
「そこはほら、力こそパワーだから!」
(頭痛が痛い的な?)
「それに、そんなベムラーさんだからこそ・・・。」
「おっ、始まるみたいだな。」
「シンジさん、なんか言った?」
「・・・なんでもない。」
試合が始まるというアナウンスが響き、スクリーンに対戦カードが映し出される。観客は本日最大と言ってもいいほどの盛り上がりを見せている。
その片隅で、小さくコール音が鳴る。
「あれ、ベムラーさん?」
「どしたの?電話?」
「うん、ちょっと外れるね。」
ちょっと歓声が大きすぎて通話するには齟齬が出る。出入口の少し奥まった場所で、耳にイヤホンマイクを挿しこんで着信に出る。
『もしもし、シンジ君?』
「ベムラーさん、もう試合なんじゃ?」
『ん、まあそれはそうなんだが。君の調子はどう?』
「ん・・・普通です。バリケーンさんとも仲良くなれましたし。」
『そうか、それならよかった。・・・やはり、君ならやってくれると思っていたよ。』
「そうですか?ありがとうございます?」
『うん、じゃあ私はそろそろ行くから。見ていてくれよ?』
「・・・はい!がんばってくださいね!」
====☆====☆====☆====☆====☆====☆====
「ふぅ・・・。」
「もう、いいの?」
「いいのも何も、もう時間が無いし。」
「用があったのなら、もっと早く掛けておけばよかったんじゃないの?」
「んー・・・別に彼に確認するために掛けたわけじゃなかったから。」
「じゃあ、なに?」
「・・・試合の前に彼の声が聞きたくなった、じゃ不満?」
「別に・・・その気持ち、わかるから。」
「そう?それじゃあ行こうか。」
何故にと問われれば、故にと応える。それ以上の意図も無ければ、それ以下の意味も無い。
『さぁこの大会もいよいよ後半へと差し掛かってまいりました!今カードも注目の一戦、まずはこの人。モデル界から異例の参戦?金色の装甲に身を包んだキングジョー&Ⅱの『ペダニウムシスターズ』!』
「みなサーン、応援アリガトウございマース!ほら、Ⅱも!」
「あぅっ・・・うぅ・・・恥ずかしい・・・。」
人気者であるキングジョーはさすが注目を浴び慣れているようだが、その妹は恥ずかしそうにしている。曰く、今回の大会参加は、姉が妹を勇気づけるために計画したらしい。
『対するは予選をぶっちぎりで突破し、一回戦も瞬殺したゼットン&ベムラーの『ブルースフィア』!』
「・・・。」
「・・・なんか言ったら?」
それに対して、こっちの人気者は相変わらずのポーカーフェイスである。もうちょっと愛想良くできないものか。
『ベムラーさーん!』
「おっ・・・ちゃんと応援してくれているな、感心感心。」
この大喝采の中から1人だけを聞き分けて、手を振り返すと、彼の顔も明るくなった。まるでサッカーの応援にでもきた子供のようで可愛いものだ。見れば、ゼットンの方も誰かへと手を振っていた。その視線の先には寝ぼけ眼の少女がいるだけだったが、今まで組んで戦ってきた中で一度も見たことが無いような微笑みを見せているぞこのパートナーは。なんか悔しい。
『それでは、Aブロック2回戦第二試合、レディイイ・・・。』
『『ゴォオオオオオオオオオオ!!』』
その宣言を皮切りに、両者とも一斉に戦端を切る・・・とはいかず、まずは安牌の様子見。
(キングジョーの装甲に、真正面から挑むのは危険か。)
(ゼットンの実力とマトモにぶつかるのハ避けたいデスねー・・・。)
「・・・仕掛ける。」
「い、行きます!」
そんな頭脳担当の思惑を知ってか知らずか、今一歩頭脳が足りていないのか、ゼットンとⅡは突撃を開始した。
「Oh...やる気満々デスねー。」
「まあ、攻撃は最大の防御とも言うけど・・・。」
大会も大詰めだというのに、なんとも締まらない展開だ。シンプルなのはキライではないが、もうちょっと探偵らしく頭脳プレーを魅せたいところ。
「Ⅱのスピードなら、ゼットンにも対抗できマスねー。ここは堅実に各個撃破を目指しまショウ!」
「おいおい舐められたものだな、私相手なら勝てると踏んだのか?」
「イエイエ、そんなことはないデスよ?ただワタシ、結構頭もいい方ダって自覚ありマスよ?」
「なら勝てる確率でも計算しておくんだな。」
ベムラーは軽く手首を捻って
対するキングジョーは、バーニアを噴かせて一気に距離を詰める。身軽なⅡよりもやや劣るとはいえ、この程度の広さのアリーナはキングジョーにとっては手狭な世界だった。
「獲ッタ!」
「っと思ったか?!」
トップスピードを乗せて振るわれた金色の剛腕を、ベムラーは絡めとると地面へと投げて反らす。土煙を巻き上げて、大地に傷跡を残してポイと捨てられる。
「っ・・・失敗しマシたね・・・。」
「いくら
キャー!おジョーさんのお美しい体がー!!という悲鳴がスタンドから響いてくるが無視。土がついてなおその装甲は輝きを失ってはいない。
「デハ一つ、手を撃ちまショウか。」
どこからか取り出したのはドラム状の腕輪。おもむろに右腕に通すと、銃身が伸びて巨大な
「『ペダニウムランチャー』!デス!」
「そんなんアリか?」
「『勝敗は始まる前に決している』と言いマスからネー。ワタシ結構スマートな
キングジョーのその身と同じ金色の砲身がキラリと光る。身の危険を生物的本能で察知したベムラーが素早く飛び退くと、さっきまで自分がいた地点が消失した。高熱に溶けているのだ。
「Oh!予想以上の
「なんてもの作ってくれたんだー!」
『ごめんなさーい!』
戦場で『ちょっと待って』などという弱音は通らない。圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躙する。キングジョー改めキングジョーカスタムの通った後にはペンペン草も生えないことだろう。
「ゼットン!助けを!!」
「わかった。」
ベムラーの叫びを耳にして帰ってきたゼットンがテレポートで奇襲し、水平チョップでランチャーの軌道をそらす。それがちょうどシンジの眼前に跳んできたのは偶然か。
「ハイゼットーン!どうしてでショウか、アナタには負けたくないッテ気がしてマース!!」
「それは私も同じ・・・。勝つのは、私。」
キングジョーのバーニアが火を噴いて距離をとると、間髪入れずに弾幕が張られる。ゼットンはシャッターを張ってそれらを凌ぎつつ距離を詰めようとする。
「こっからはチームプレーってわけ!」
「そっちはまかせた。」
戦っていた対象を失って棒立ちしていたⅡに、今度はベムラーが立ち向かう。
「背中を任せられたからには、仕事は必ずやり遂げる。それが私の流儀だ!」
「戦闘パターン・・・タイプG。」
力には責任が伴うように、マネーには仕事が伴う。それは労働と対価という二律背反でも矛盾でもない、ごくごく当たり前の事実であるが、ベムラーはそれを信条とする。それが大人として正しい在り方であると。
「ハッ!」
「ぬん!」
蹴りの連撃に極め技を織り交ぜたラッシュをベムラーは繰り出すが、それをⅡは難なくいなす。
(どうやら、オーソドックスな技では効かないらしいな。)
それも慣れたような手つきだ。学習能力の強いファイティングコンピューターを内蔵しているということは、この程度は織り込み済みということか。
「なら、こういうのはどうだ?」
小さくジャンプして上方向へフェイントをかけ、即座にかがんで足払い。そこからサマーソルトで空中へ打ち上げて、最後にパイルドライバーをかける。
「これで・・・どうだっ!?」
「・・・カウンター!」
「なにっ?!」
『キングジョーⅡ選手!地面に頭が着く寸前にブースターを噴かせて空に回避したぁ!』
そのまま空中で上下逆さまになると、背中に張り付いているベムラーを逆に掴み返し、重力に身を任せて落とす。
「『メイプルリーフクラッチ』!!」
「ごっはぁっ!!」
見事逆襲の技が決まった。ベムラーの肺から空気が漏れ出し、のたうつように転がって距離をとる。Ⅱはその動きを警戒してか様子を窺っている。
「くっ・・・パワーもスピードもテクニックも揃っているとはな・・・万能ねぎよりも万能だ。」
テクニックには自信があったが、ここまであしらわれてしまうとショックだ。だがいかに万能といえども、完璧などというものはあるまい。必ずどこかに弱点があるはずだ。それを捜すのなら、得意だ。
「ヘイゼットーン!」
「わかった。」
「オット!逃がしませんヨ!!」
「逃げることはないのさ!」
虚を突く形でゼットンと戦っているキングジョーに奇襲をかける。1対1で勝てないなら、乱戦に持って行くというわけだ。
「はぁっ!」
「クッ・・・お返しデス!」
「させない・・・。」
「うっ・・・うぅ・・・。」
「やはり、攻撃してこないな。ゼットン、ちょくちょく注意をひきながら叩くんだ!」
「わかった。」
(クッ、マサカⅡの弱点を見破ったとデモ言うんデスか?)
キングジョーも内心冷や汗を垂らした。Ⅱは敵味方入り乱れるところへ入ってこれずに狼狽えている。
「『ゼットン光弾』・・・!」
「クッ・・・!」
「『青色熱光線』!」
「うぅ・・・っ!」
2人は手を変え品を変え、様々な方法で攻撃を試みる。いかにキングジョーの乙女のガードが硬かろうと、ジワジワと精神力を削られていく。
「よっし、もう一息!」
「! そこデス!」
渇きに渇いて飢えに飢えた状態でご馳走が目の前に現れれば、どんなにタフネスな人間でも飛びついてしまうのは必至。ベムラーが一瞬見せた隙は、まさにそんな釣り餌だったわけで。
「! 反撃行動、『デスト・レイ』!」
「チョット、Ⅱ!」
『おっとどうしたことだー?!キングジョーⅡ選手、キングジョー選手に対して攻撃を始めたー!』
『流れ弾が当たったことで、攻撃プログラムが誤作動しているのかもしれませんね。』
「やはり、頭が硬すぎたようだな。柔軟性ならこっちの方が一歩上。」
「でも、ちょっと卑怯。」
「頭脳プレーと褒めてくれよ・・・。」
一息つきながらキングジョーがⅡを宥めている様を見つめる。キングジョーが慣れているように見えるところからすると、こうなるのは一度や二度のことではないらしい。
「Ⅱ!ストーップ!」
「きゅぅうう・・・。」
ぺしっと叩かれてⅡは一瞬フリーズするが、すぐさま再起動する。それによって正気にも戻ったらしい。
「大丈夫デスかⅡ?ドコかショートしてまセンか?」
「だ、大丈夫です・・・ごめんなさい、私また・・・。」
「Ⅱはちょっと硬すぎるんデス!初めて会う人ばかりで緊張したんでショウ?」
「うん・・・。」
「デモ、これもいいキカイですから、今回で慣れちゃいまショウ!だからもうちょっとだけガンバってくだサイ!」
ゆっくりとⅡは頷くが、表情は少し暗い。キングジョーも少し引っかかるものがあったが、すぐに思考を切り替える。
「今度は、ちゃんと戦って。」
「わかった、別の攻め方に変える。」
「・・・あの子、助けてあげて。」
「仕事は全うしよう。」
何かを感じてゼットンがベムラーに仕事の依頼をしてきた。その間キングジョーをひきつけるのが報酬だという。割に合わないけど、たまにはこういうのも悪くない。
「さて、も一回遊んでくれる?お嬢ちゃん。」
「・・・。」
「だんまりか。まあ無理もないわな。」
ブゥン!と鉄腕を振って威嚇してくるのを軽くいなしながらも、その視線はⅡの瞳から離さない。
「なぜ、攻撃してこない?」
「・・・Ⅱ、君は暴走したことがあるんだろう?」
「!」
「君はあまり攻撃することに積極的ではない。追撃することも出来る機会を何度も逃している。」
あまり表情を動かさなかったⅡの眉がピクリと動く。
「その暴走の経験から、君は人との関わりに消極的になった。そうだろう?」
「・・・。」
自分にもその経験はあった。そのころはまだ怪獣娘なんていう概念自体無く、暴走ともまた違ったケースだが、同じようなものだ。力に振り回されるということにおいては。
「力を恐れるな、過去を悲しむな、振り回されるんじゃなくてコントロールするんだ。」
「あなたは、お医者さん?」
「いいや、探偵さ。迷い犬の捜索から世界の危機を救うまで、幅広くやってる。」
「難しいことはいらない。ちょっとした気の持ちようで世界は変わる。」
逆にそれ以外特に必要ない。
「さあ踏み込んで来い、一歩を!」
「はぁっ!」
受け身の姿勢だった今までと違って、今度はⅡの方から仕掛けてきた。ベムラーはそれらをしっかりと受け止め、組み伏せてみせる。
「ふんっ!せいっ!」
「確かに強力だが、単調だぞ!」
「・・・これが狙いだったの?」
「ナンノコトカナ。」
こっちが防御側ということは、それだけ対策を考えるのも楽だということ。押してダメなら引いてみろってな。
「『デスト・レイ』!」
「甘い!『青色熱光線』!」
それに熱線の威力なら負けていない。一皮むければ、姉とよく似て押せ押せの一辺倒に偏りやすい。流れは掴めてきている。
「それともう一つ、君には決定的な弱点がある。」
「なに、それは?」
「姉に頼りすぎだ。と言うか、無意識的に依存している。姉の妹離れも、妹の姉離れも同時にしなきゃいけないな。」
「そんなことを言って、また惑わさせるの?!」
「そうでもあるがぁっ!」
キングジョーⅡが宙を舞っている。自らの飛行ではなく、相手に投げられて浮かんでいる。幼い見かけとは裏腹な重量級ボディに地面も砕ける。
「これでっ!トドメだぁ!」
「アブナイ!Ⅱ-!」
プロレスから学んだエルボードロップで最後の一撃を加えんとするその時、キングジョーのタックルがベムラーを吹き飛ばしてその窮地を救った。
「大丈夫デスかⅡ?」
「はい・・・でもまだ行けます!やりたいです!」
「! Ⅱがやりタイなら、ソレでいいんデスよ!」
Ⅱが強く主張してきた。キングジョーにとってそれは本当に久しぶりの感覚だった。この短い間で一回り大きくなったように見える。
(ヤッパリ参加してよかったデスね!)
「勝ちマスよⅡ!」
「はいっ!」
「「『ツイン・デスト・レイ』!!」」
もうこの時点で十分な収穫はあった。あとは勝利という果実をもぎ取るのみ!
「カウンセリングまでやったんだから、もうちょっと手心とか加えてくれてもいいじゃないか?」
「それとこれとは話が別。」
「お前は一体どっちの味方だ。」
2人なら威力は2倍!いやさ2乗で4倍!ゼットンもシャッターで防ぐのを早々に諦め回避に移る。
「そりゃぁっ!」
「ぐぅうう・・・っ!お前らには血も涙もないのか。」
「私たちは涙を流しません、ロボットですから。」
「うまいことを言うなっ。」
Ⅱのロケット頭突きをくらってもんどりうって倒れ込むベムラー。またゼットンと分断されてしまい、不利な戦いを強いられる。
(今まで戦ってきた中で、有利だった戦いも無いが、これは辛い・・・やはりゼットンに頼るしかない・・・。)
決してベムラーが弱いんじゃない。キングジョーが強すぎるのだ。
そしてそのキングジョーはというと・・・。
「ヤハリ強いデスねゼットン・・・。」
「まだ奥の手があるんじゃないの、あなたは?」
「フフッ、やはり気づいていまシタか・・・。」
「では、ソロソロ決めさせてもらいまショウか?」
不敵に笑ったキングジョーは、ランチャーのカバーを外して中のスイッチを押す。
「乙女の魅力、もっと磨いちゃいマスよ?『テンペリング』!!」
爆発、そうとしか言いようのない熱波がその瞬間破裂する。胸の発光機関が限界まで出力を高め、玉虫色の心臓が脈動する。
やがて反応が終わり、急速冷却によって獣殻は『黒』に染まる。
「・・・。」
「これは・・・さすがにマズいか・・・。」
「お姉さま・・・。」
ゆっくり・・・と、その瞼は開かれ、生まれ変わって初めての光が瞳に差し込む。
「・・・どうデスか?ケッコー似合ってマセン?黒ですよ黒!これからは『キングジョーブラック』と呼んでくだサイね!」
「見た目は変わってもキャラは変わんないんだな。」
「強さはマシマシデスよ!!」
焼き入れによって高耐久のボディを手に入れたキングジョーブラックなら、ペダニウムランチャーのさらなる高出力での照射が可能になった!
「サラにこんなことダッて・・『ペダニウム・・・ハリケェエエエエエエン』!!」
「ぐおぉっ・・・なんてメチャクチャな!」
ランチャーを真横に向けて発射しながら、グルグルと独楽のようにまわり、ビームを拡散する。まさに地獄のメリーゴーラウンド。
「これでトドメです!」
「くっ・・・まだ、もう一発『青色熱光線』!」
ベムラーの直上から、Ⅱが錐揉み回転しつつ高速で突撃してくる。その回転圧力に、熱光線も弾かれてあらぬ方向へと飛んでいく。
「おぉおおおおおお・・・りゃぁああああああああああ!!!!」
「ぐぅうう・・・もう・・・負けないっ!!『コークスクリュー・クラッシュ』!」
「ぐわああああああああっ!!」
『ベムラーさーん!!』
大きな土煙の中、金色のボディが飛び去って行く。徐々に晴れていく帳の向こうには、ベムラーが倒れ伏しているだけだった。
うーん、どうにも区切りが悪いけどとりあえず投稿。今回のお話は次で終わりの予定です。
5王子の中で正直ゼブラが一番勝つと思ってた。