怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~   作:バガン

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 なお、この作品には既存の登場人物たちへのオリジナル設定が存在しています。ご了承ください。


私とボクの名前

 「はやくいこーミカちゃん!」

 

 「まってよシンちゃーん!」

 

 

 その日はたしか晴れていた。天気のいい日は布団を干して、子供は外で走り回る。そんなごくごくありふれた、普通の人間の日常だった。

 

 

 ずっと忘れていた、僕とミカとの遠い記憶。あの頃はたしか、僕の方がミカを引っ張っていた。毎日大人しいミカを泥だらけにしたり、泥だらけにされたりして遊んだものだった。

 

 

 その日が来るまでは。

 

 

 「ミカちゃーん!おいてくよー!」

 

 「まってまってー!」

 

 

 ほんの僅かな悪戯心だった。いつもやってることだった。僕だけ先に走って行って、後からゆっくり来るミカのことを座りながら待っている。それが習慣だった。

 

 

 「シンちゃーん・・・きゃっ!?」

 

 「ミカちゃん?!」

 

 

 人気のない道に出たその時、一台の車が僕たちの間に割って入った。ドアが開いて、数人の大人たちがミカを捕えた。

 

 

 「!!待って!!!」

 

 

 僕は必死で追いかけた。けれど、子供の足で自動車に勝てるわけもなく、すぐに曲がり角で見失ってしまった。

 

 

 「ミカちゃん!ミカちゃーん!!」

 

 

 僕は泣きながら走っていた。もうどうしたらいいのか、全くわからなかった。子供心には、もうミカに会えないんじゃないかと言う恐怖心があった。

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・ミカちゃん・・・。」

 

 

 そして、息を切らせて曲がり角を越えた。涙も引っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオン!!!!

 

 

 

 

 

 そこにいたのは、あの大人しかった幼馴染ではなく、

 

 

 「ミカ・・・ちゃん?」

 

 

 一匹の『怪獣』であった。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 いつからだったろうか。どこにいても、どんなときでも、子供の泣き声に反応してしまう。なにかをしてあげたいという衝動にも駆られるが、自分にどうしろと言うのだろうか。誰かが助けを求めてる、どこかで誰かが泣いている。そう思うと走り出さずにはいられない。

 

 

 「答えは・・・既に持っている。」

 

 

 じっと手を見る。今は何も握ってはいないけど、確かに一昨日まではあった。

 

 

 「答えは、既に持っている・・・!」

 

 

 懐かしい夢から覚めた時、風邪は治っていた。相変わらず空は曇っているが、気にしない。服を着替え、身支度をしていた時、携帯が鳴った。

 

 

 「ピグモンさん?もしもし。」

 

 『シンシン、今大丈夫ですか?』

 

 「元気溌剌、どこへでも行けますが?」

 

 『そうですか・・・シャドウが現れて、ゴモゴモやアギアギが出動しました!』

 

 

 突然だ、悪いことは何もかも。

 

 

 でも、いいことだって突然なハズだ。

 

 

 「ピグモンさん、すぐに会えますか?」

 

 『・・・いつでも待ってますよ、ピグモンも、ゴモゴモも、みんな!』

 

 「・・・はい!」

 

 

 決断は済ませた、あとは実行するだけだ。

 

 

 「お目覚めですか、シンジさま。」

 

 「うん、行ってくる。」

 

 「その前に、温かいスープはいかがですか?」

 

 

 キュゥとお腹が鳴った。そういえば昨日からロクなものを食べていなかったのを思い出した。

 

 

 「軽いのを何か、ちょうだい。」

 

 「かしこまりました。」

 

 

 元気が出る温かいスープと、ビタミンたっぷりのサンドイッチと、デザートのリンゴを貰って家を飛び出した。まず目指すは、GIRLS本部だ!

 

 

 「ハァ・・・ハァ・・・横っ腹痛い・・・。」

 

 

 豪快に食べて走り出せばそうもなるが、今は我慢する。自分でも、こんなに早く走れるんだと驚きながら、目当ての建物に駆け込んだ。そしてエントランスのすぐのところに、ピグモンさんはいつもの笑顔で立っていてくれた。

 

 

 「やっとついた・・・ピグモンさん!」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「バディライザーを、貸してください!」

 

 「どうして、ですか?」

 

 

 答えは一つ。

 

 

 「『僕がやりたいから』、です!」

 

 

 自分でも驚くほどの大きな声が出た。

 

 

 「シンシン、元気元気ですね!元気があればなんでもできます!」

 

 「なんだってしてみせます。」

 

 「はい、どーぞ、です☆」

 

 

 一昨日渡した時と寸分変わらない、バディライザーを手渡された。シンジはそれを懐かしむように撫でる。

 

 

 「また何か調査して、わかったこととかありますか?」

 

 「いーえ、調査もしてませんよー。っていうか、誰にも渡してません。」

 

 「? どうして?」

 

 「だって、シンシンから『ピグモン』に預けられたものですからー☆」

 

 

 実際、本当にGIRLSの技術部へと預けられていたならば、昨日の今日でシンジの手元に戻ることはなかっただろう。

 

 

 「その・・・いいんですか?こんなことしてて?僕が言うのもなんだけど。」

 

 「何が悪いんですか~?ピグモンはただ、『友達』から大事なものを預かっていて、それを今返しただけですよ~☆」

 

 

 ピグモンさん、マジ天使。

 

 

 「ピグモンさん、ミカは、ゴモラはどこに?」

 

 「練馬です!」

 

 「ちょっと遠いな・・・。」

 

 「人間の足じゃあ、駆けつけた頃にはもう終わってるかもしれませんねぇ。」

 

 

 それはそれでいい、と言うか、その方が危険が少なくていいと思うけど、

 

 

 「今すぐ会いたいんだ!遠くっても行くぞ!」

 

 「れっつごー、です!」

 

 

 と言うより、今日を逃したらもうチャンスはないと思った。何が理由かとか、そんなものはないけど、本能的にキャッチした。『今日』は出来る気がする。

 

 

 本部の玄関を出て、いざ走り出そうとした時、蒼いバイクが停まっているのが目に入った。それに跨っていたのは・・・。

 

 

 「ベムラー、さん?」

 

 「覚悟、決めたの?」

 

 「・・・はい!」

 

 

 真っ直ぐ目を見て、そう答えた。ベムラーさんは納得したように頷くと、後ろを指さした。

 

 

 「乗せてくれるんですか?」

 

 「じゃあ、ピグモンも乗りまーす。」

 

 「3人乗りはマズいんじゃないかな?道交法的に。」

 

 「問題ない。」

 

 

 手元のスイッチを弄るとガチャガチャと音を立ててバイクが変形した。

 

 

 「さあ、テイクオフだ!」

 

 「えっ、飛ぶの?」

 

 「飛びます飛びます☆」

 

 

 ちょっと待ってと言う暇もなく、マシンは青い流星となってビルの谷間を駆け抜けていった。なお、シンジはこの前のタワーの事件以来、高いところが苦手になっていた。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 道路がひび割れ、ビルは瓦礫の山と化す。このような光景も、この世界では珍しくもない。街が危ない、火が迫る。

 

 

 「ほわたっ!」

 

 「てぃやー。」

 

 

 2人の怪獣娘が、次々と現れるシャドウの群れを蹴散らしていく。一方は素早いツノのラッシュで、もう一方は強靭な尻尾の一撃で。

 

 

 「結構倒したね、大丈夫アギちゃん?」

 

 「平気、けど今回多いね。」

 

 「また巣があるパターンかな?そっちはエレちゃん達を信じよう。」

 

 「うん、となるとそろそろ・・・。」

 

 

 ドカーン!と大きな音と地響きを伴って、道路を割って巨大な姿が出てきた。

 

 

 「もはや様式美だね。アギちゃん、ちっちゃいやつらヨロシク。」

 

 「ゴモたん、一人で大丈夫?」

 

 「へーきへーき!」

 

 

 「シンちゃんにゴモたんが活躍するところ、見せてあげたいからね!」

 

 

 (`・ω・)bグッと親指を立てて見せるゴモラを、アギラは軽く笑みで見送る。

 

 

 (ボクは、ボクに出来ることをする・・・。)

 

 

 左手で近くにいたシャドウを吹き飛ばす。

 

 

 (今自分に出来ることに、命を懸けて。)

 

 

 ツノで正面のシャドウをなぎ倒す。

 

 

 (だから信じてる、『ボクと同じ』、シンジさんを。)

 

 

 両手で掴んだシャドウを振り回し、周りの奴らを巻き込んで投げ飛ばす。

 

 

 飛んで行ったシャドウは、巨大な流れ弾を喰らって消滅した。シャドウビーストだ!

 

 

 「かったいねー、おたく。」

 

 

 『グォオオオオオオオオオオオオオン!』

 

 

 「私の尻尾もダメ、ツメもダメってなると、あとはアレしか・・・。」

 

 

 古代怪獣ゴモラの、隠された能力。本来は地中を削掘するための能力を、攻撃手段へと転化させた技。まさに、奥の手なのだ。

 

 

 その技を放つ隙を伺う。敵は強靭な手足と、太い尻尾を武器にする、ゴモラと同じスタンダードな『怪獣』のタイプだ。

 

 

 (そうだね、キックのあとは尻尾使いたくなるよね!!)

 

 

 だからこそ、どう動いてくるかをゴモラにも察知できる。

 

 

 「どん、どん、どーんの、はい、今!」

 

 

 尻尾でうまくバランスをとりながら、空中で一回転して着地、そして横に滑りながら向きを合わせつつ、ツノに力を溜める。

 

 

 タイミングよし!角度よし!狙いよし!パワー充填完了!

 

 

 「『超振動波』!」

 

 

 そう叫んだ瞬間!ゴモラの三本のツノから稲妻のような熱線が放たれた!

 

 

 『グワォウウウウウウウウウ・・・』

 

 

 「やった・・・!」

 

 

 最後のシャドウを倒したアギラがそう確信する。今まで幾度となくゴモラの勝利を間近で見てきたが、その中でも超振動波は撃破率100%を誇る。

 

 

 『グルルルルルル・・・・・』

 

 

 「なに・・・!?」

 

 

 超振動波を浴びるシャドウビーストの胸は赤熱化し、ヒビ割れていた。しかし、徐々にそのヒビが収まっていき、逆に超振動波を吸収し始めているようだった。

 

 

 『ゴォオオオオオオオオオオ!!』

 

 

 「ゴモたーん!」

 

 

 とうとう超振動波のすべてを吸収し終えたシャドウビーストは、嘲笑うように吠えると、纏めてお返しとばかりに猛烈な火炎を吐いてきた。体力を使い果たしたゴモラは、成すすべなく炎に飲み込まれてしまった!

 

 

 「・・・ぐっ・・・あ・・・。」

 

 「ゴモたん!」

 

 

 体から煙を漂わせながら、ゴモラは力なく倒れた。援護に入ろうと、アギラは手近なところにあった車を投げて、シャドウビーストの気を引いた。

 

 

 (応援が来るまで、ボクが頑張らないと・・・!)

 

 

 『ガァアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

 寝ぼけ眼に闘志を滾らせ、アギラは構える。次はお前の番だと言わんばかりに、シャドウビーストは吠え、轟く叫びが無人のビル街に木霊する。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 遠くに雄叫びが聞こえる。すぐ間近で起こっていることが、ずっとずっと遠い世界のように思えた。

 

 

 (ボクは・・・やられちゃったのか・・・。)

 

 

 体が鉛のように重いのは、ダメージのせいだけではない。今まで無敵を誇った超振動波を破られたショックもある。けれどそれ以上に辛かったのが、他ならぬ幼馴染のことであった。

 

 

 (また・・・嫌われちゃったかな・・・。)

 

 

 シンジとの関係が再び始まったあの日あの時、ゴモラはとても嬉しかった。幼馴染の友達として、もう一度やり直せると思ったから。自分の手で壊してしまった、あの思い出の日々を。

 

 

 もしも自分が怪獣娘じゃない、普通の女の子だったら、怪獣とかそんなのが無い世界だったらとか、そんなことを思う時はある。

 

 

 (けどそんなこと考えるのは、今じゃないね。)

 

 

 痛む体を起こすため、目を開けて力を入れる。アギラが戦っているのが見える。そうだ、今の自分は大怪獣ファイトの期待のルーキーで、あの子たちの頼れる先輩なんだから。

 

 

 「しっかりしなよ・・・ゴモラ・・・!」

 

 『ミカァアアアアア!!!しっかりしろぉおおおおおお!!!!!』

 

 「ほぇ?」

 

 

 自分を叱咤する言葉に続いて、自分を叱咤する言葉が聞こえてきた。上から。

 

 

 「シンちゃん・・・?」

 

 「ピグモンもいますよぉ?」

 

 「しんどい・・・。」

 

 

 ふよふよとピンクの風船にぶら下がって、2人の人影が降りてきた。心配そうな顔をしているピグモンに対して、シンジは具合の悪そうな顔をしている。

 

 

 「シンちゃん、ピグモンちゃん・・・ここ、危ないよ?」

 

 「わかってます!だからピグモンたちも応援に来たんですよ!」

 

 「ミカ、立てる?」

 

 「へ、平気だよ、ぜんぜん・・・。」

 

 「無理するな・・・って言っても、無理やっちゃうんだろうな。」

 

 「わかってるじゃん、シンちゃん。」

 

 「ううん、ミカがどんな思いで怪獣娘をやってるのか、全然わかってなかった。」 

 

 

 へへへっと笑ちゃうミカの顔を見て、シンジは少し安心した。そして、落ち着いた口調で切り出した。

 

 

 「大体のことは、ピグモンさんや、ベムラーさんに聞いたんだ。」

 

 「ベムラーさん?」

 

 

 空を見上げれば、青い流星がシャドウビーストの気を引いている。乱雑に放たれる火炎を華麗に避け、時折青い熱線が放たれる。ピグモンも、風船を飛ばしてかく乱している。

 

 

 「ミカが、怪獣娘が世間に受け入れられるように努力しているのは、なにより『ゴモラ』のことを好きになって欲しいから。怪獣娘としてのゴモたんでも、その正体であるミカのことでもなく、『怪獣』のゴモラを、みんなに受け入れて欲しいからがんばってるんだって。」

 

 「・・・。」

 

 「怪獣がみんな、恐ろしいものだけじゃない、共に生きていける仲間だっていうことを、ミカはみんなに伝えたかったから・・・。」

 

 「・・・うん、おかしい、かな?」

 

 「そんなことない!そんなことない!!ミカはずっとずっと未来を見てたんだ。人間も怪獣も、手を取り合って生きていけるような、そんな暖かい未来を・・・。」

 

 

 何が言いたいんだろう、いや、色んな事を言いたい。今はただ、ミカと向かい合っていたかった。

 

 

 「そんな、ミカのことを知って、やっぱり思った。自分に何ができるかとか、自分がなんのためにいるのかとかよりも、」

 

 

 どんな風に受け止められるか、知ったこっちゃない。これが、今僕が一番やりたいことだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「僕は、ミカと一緒にいたい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミカともう一回友達になりたい!幼馴染としてじゃなくて、仲間として!」

 

 

 

 

 

 

 

 振出しに戻ってしまったのなら、もっと強く足を踏み出す。そうしたいという強い願い、仲間と自分自身と向き合った末に導き出した答え。

 

 

 「!」

 

 「それは・・・?!」

 

 

 光と共に現れた、一枚のカード。前方に湾曲した特徴的な首、三日月のようなツノ、太くて長い尻尾。これが今の、僕たちの切り札。

 

 

 たとえ拭ええぬ闇から生まれた¥力だとしても、精一杯向き合い、光に染めていこう。その為に、行使することをいとわない。

 

 

 「行こう、ミカ。まだ行けるだろ?」

 

 「その前に、ひとついいかな?」

 

 「なに?」 

 

 「名前、まだ呼んでもらってない。」 

 

 「名前?」

 

 「そう、『私』と『ボク』の名前!知らないわけないでしょ?なんせ、みんなに愛されるアイドルで、大怪獣ファイトの期待のルーキーなんだから!」 

 

 「・・・そっか!」

 

 

 『グワァアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

 シンジが納得したその時、シャドウビーストの放った紫色の光線が、背後のビルを破壊した。その瓦礫の大きな塊が、シンジたちのところへ降ってきた。

 

 

 「ゴモたん!シンジさん!」

 

 「あぶないですぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目と目合わせ叫び、そして生まれ変わる。怪獣娘とそのパートナー、そして怪獣と人間が手と手繋げる、新しいステップへ!

 

 

 「バディライド!」

 

 

 一瞬の閃光の後、カラを破るように、振り上げた拳で瓦礫を粉砕してゴモラが現れた!

 

 

 「「はぁああああああああああああっハァッ!!」」

 

 

 炎のようなオーラが、粉塵を吹き飛ばす。アギラもピグモンも、そしてベムラ-も、思わず言葉を失った。ゴモラの姿が、普段以上に大きく見えた。

 

 

 「うっオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!イケる!!!!」

 

 

 「前の時よりも、強い『叫び』を感じる・・・!」

 

 

 燃える、燃える、心も体も炎のように!!『隣にいる』シンジも、その姿に圧倒される。 バディライザーを持つ手がビリビリしているが、それが心地よくもある。バディライドできたということもあるが、それ以上に、こうして隣にいれることの喜びに震え、熱い鼓動をかき鳴らす。

 

 

 「本当に、本当にすごいよミカ・・・!」

 

 

 っと、のんびり眺めてもいられない。気にくわないものを見つけたのはシャドウビーストだ。やっつけてやったちっこい奴が、なにやらパワーアップして立ち上がってきたのだから。もう一度踏みつぶしてやる!と吠える!

 

 

 『ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』

 

 

 アスファルトの地面が割れる、コンクリートのビルが揺れる。巨大な壁のような威圧感が迫ってくるが、2人は動じない。大きく息を吸って、真っ直ぐ見る。

 

 

 「行けぇ、ゴモラぁあああああああ!!!!」

 

 「いっくぞー!!!!」

 

 

 その声を皮切りに、大決戦が始まった!自分の数十倍の体格はあろうシャドウビーストに向かって、ゴモラは突進する。

 

 

 「だぁっ!」

 

 

 『ガァアアアアアアアアア!!!』

 

 

 繰り出された拳を、ゴモラはその身一つで受け止める。しばらくギリギリとかちあった後、大きく一歩を踏み出して、その勢いで持ち上げた!

 

 

 「すごい・・・!」

 

 

 アギラたちはその様をただひたすら見ていた。いや、見ているしか出来なかった。怪獣娘の戦闘力を明らかに超えた、『怪獣同士の戦い』。まるで、神話の光景を見ているような感覚だった。

 

 

 「『押しつぶし』だぁ!」

 

 「でりゃぁっ!」 

 

 

 倒れた相手への追撃も忘れない。尻尾で大地を蹴って空へと舞いあがり、重力加速に任せたボディプレスをかます。このまま黙ってやられるシャドウビーストでもなく、反撃をしかけるが、これはシンジの指示で危なげなくかわせた。

 

 

 (意識のシンクロもしている・・・?)

 

 「がんばれ♡がんばれ♡」

 

 

 「まだまだぁ!」

 

 

 ゴモラが飛び退いた隙に慌てて立ち上がったシャドウビーストは、今度は尻尾を振り回してきた。

 

 

 「『大回転打』だぁ!」

 

 「おっしゃー!!」

 

 

 強大な力がぶつかり合う衝撃で、空気がキンっと鳴る!打ち合いに勝ったのはゴモラだ。尻尾勝負でゴモラに敵う者はいない!

 

 

 「足をもってけぇえ!」

 

 「っそぉい!!」

 

 

 『ゴォオオオオオオオオ・・・!』

 

 

 そのままの勢いを維持して、シャドウビーストの足を掬う。

 

 

 「レッドちゃん、技借りるよぉ!」

 

 

 倒れた足を掴んで、グルグルと振りまわす!ビルやら街路樹やらにぶつかった、被害が増えたような気がするが、気細けえことはいいんだよ。

 

 

 『グシュゥウウウウウウウウウ・・・』

 

 

 「そろそろ・・・フィニッシュかな?」

 

 「ああ、大技決めてやろうぜ!」

 

 

 持ちうる中で最高の技の、最高のフィニッシュのイメージ。それが勝利のイマジネーションになる。

 

 

 「「はァああああああああああ!!!!!!」」

 

 

 再びゴモラは、燃えるようなオーラを纏う。そして大地を揺るがし、抉りながら一歩一歩駆けだす。

 

 

 そして、ダウンしているシャドウビーストの胸倉に、ゴモラは己のツノを突き立てて、叫んだ!

 

 

 「「『超振動波・ゼロシュート』!!!!!!」」

 

 

 声と声が、胸の高鳴りが重なる!最強の技を、本来の形で、直で喰らわせてやる!

 

 

 「「うォおおおおおおおおおおお!!!!せりゃぁあああああああ!!!」」

 

 

 シメは、ツノでかちあげる!!!

 

 

 『グルルルルルルルル・・・・』

 

 

 かちあげられ、墜落したシャドウビーストの巨体は、少し唸ると動かなくなり、しまいには爆発を起こした。

 

 

 勝った。

 

 

 「やった・・・。」

 

 「おっ、シンちゃん大丈夫?病み上がりなのに。」

 

 「大・・・丈夫・・・じゃないかも。ちょっとハシャぎすぎた。」

 

 

 一気に貧血となって倒れ込んで、気を失った。

 

 

 「空が・・・青いな・・・。」

 

 「大丈夫?顔色青いよ?」

 

 

 いつの間にか、遠くから人の声が聞こえてきたので、応援が来たんだろう。安心感と充実感に満たされて、目を瞑った。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「ん・・・。」

 

 「おっはよ、シンちゃん。」

 

 「もう、夕方か・・・。」

 

 

 赤い光が眩しい。シンジはゴモラの膝枕で目を覚ました。

 

 

 「もう大丈夫?」

 

 「うん、ありがとう。」

 

 「どういたしまして。」

 

 

 ゆっくりと体を起こして、周囲を見回す。少し離れたところのビルが壊れているのが見えた。

 

 

 「・・・夢じゃなかったんだ。」

 

 「何が?」

 

 「いや、夢みたいな体験だったから。」

 

 「もう二回目なんでしょ?」

 

 「何回やっても感動するもんだ。ミカもそうじゃない?」

 

 「・・・そうだね、毎日色んな発見があるよ。」

 

 

 「でも・・・初めての時は、怖かった。」

 

 「・・・そっか。」

 

 

 「ミカ、昔は自分のことを『ボク』って呼んでたよね。」

 

 「うん、でも今は私の中に『もう一人』いるから。」

 

 「『ゴモラ』か。」

 

 「うん、もう一人の自分。」

 

 「そのゴモラのことも好きになって欲しい、って意味だったんだな。」

 

 「えへへ、そのとーり。」

 

 

 「あの日・・・。」

 

 「ん?」

 

 「いや、僕の中にあった疑問がひとつ解けたかなって。誰かの力になれたらって、願いの理由だ。」

 

 「それは?」

 

 「あの日、『泣いてる』ミカのこと、ずっと助けたかったからだった。」

 

 「シンちゃん・・・。」

 

 「僕、今ミカの助けになれてるかな?」

 

 「そんなの、いわなくてもわかってるでしょ?」

 

 「そっか、これでいいんだ。」

 

 

 「あっそうそう、もうひとつ正すべきところがある。」

 

 「それは、なに?」

 

 「僕が前、ミカは後ろだ。」

 

 「は?」

 

 「子供の頃は、僕が前でミカを引っ張って、ミカが僕の後ろをついてきてたじゃないか。認めないぞ、ミカが前なんて!」

 

 「・・・ぷっ、なにそれ?」

 

 「これからは、ミカの隣にいたいってこと。言わせんなハズカシイ。」

 

 「いいよ、シンちゃんは特別だからね。」

 

 

 

 

 

 

 他愛無い話をずっと続けていた。こうしていられる幸せを感じていた。

 

 

 

 「ゴモたんさん、シンジさん、そろそろ行きますよー!」

 

 「早くしないと日が暮れちゃうよー!」

 

 「2人とも疲れてるだろうから、無理しなくていいのに・・・。」

 

 「大丈夫だよー!今行くー!」

 

 「ちょっと待って、いてて体の節々が・・・。」

 

 

 もう日が暮れる。そろそろみんなのところへ帰ろう。仲間たちのところへ・・・。

 

 

 「いよーし!本部までランニングしよー!」

 

 「無理だよ、足並み合わせるなんて。」

 

 「そうですよミクさん、私だってもうクタクタですし・・・。」

 

 「お腹もすいちゃったし。」

 

 「おっ、じゃあ帰る前にご飯たべてこーかー!」

 

 「先に方向に帰りましょうよ・・・。」

 

 

 ミクさんは相変わらず元気だし、ウィンさんは真面目だし、アギさんは寝ぼけ眼だし、なんだか、初めて会った日のことを思い出す。ただ違うのは、空がとっても綺麗だってこと。

 

 

 「あっ、一番星。」

 

 「えっどこどこ?」

 

 「一番星は西の空、明けの明星は東の空だけど。」

 

 「あれかな、一番大きい星。」

 

 「ステキですね・・・。」

 

 「へー、シンちゃん、幸せなんだね。」

 

 「どうして?」

 

 「一番星は、幸せな人間にしか見えないんだって!」

 

 「・・・幸せだよ、とっても。」

 

 

 

 「それとね、見つけたよ、僕のやりたいこと。」

 

 「どんなのどんなの?」

 

 「怪獣娘さんみんなと仲良くなりたい。ミカだけじゃなくて、アギさんたちも、まだまだ会ったことのない人とも、これから出会う人とも、全員と。」

 

 「じゃあ、私はその最初の一人なんだ。」

 

 「うん、これからもよろしくね、ゴモラ!」

 

 「うん!」

 

 

 

 手と手繋ぎ、進んでいく。優しくて暖かい未来を掴むために...。

 

 

 




 くぅ疲。これにて最終回となります。次回、エピローグを入れてこのお話は終わりとなります。お付き合いありがとうございました・・・!


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