矢澤にことのキャンパスライフ!   作:ゆいろう

24 / 51
第24話

 

 

 ラブライブの幕開けを告げるブザーがアキバドームに鳴り響く。

 観客達は拍手と共に歓声を上げ、ドーム内が沸き立った。

 

 

『ただいまより、第三回ラブライブ。そのキャンパスアイドル部門を開催致します』

 

 

 司会のアナウンスが流れ、拍手と歓声が更に大きくなる。

 

 

『最初の出演者は、あの伝説のスクールアイドル――μ’sの元メンバーの一人、矢澤にこさんです!』

 

 

 アナウンスを合図ににこが現れ、ステージの中央に立つ。

 にこの登場に、ドーム内はこれまでで一番の盛り上がりを見せた。

 

 

 大きなステージに、その小さな身体でにこは立っている。

 

 

 何だか、今はその姿がいつも以上に大きく見えた。

 

 

「みんなー! にっこにっこにー!」

『にっこにっこにー!』

 

 

 コールアンドレスポンス。

 にこの呼びかけに今ここにいる観客達が応える。

 

 

 チラッと横を見ると、ことり達アイドル研究部も大声で、とても楽しそうな顔をしてにこの呼びかけに応えていた。

 

 

 俺だけが応えていなくて恥ずかしくなってくるが、応えたら応えたでそれ以上に恥ずかしくなるだろう。

 

 

 前説を続けるにこ。

 観客達はにこの言葉に耳を傾けていて、ドーム内ににこの声が響き渡る。

 

 

「今日は楽しんでいってほしいにこっ!」

 

 

 最後にそういって、にこは位置に着いた。

 

 

 会場が静寂に包まれる。

 

 

 俺はステージに一人で立つにこを、息を呑んで見守る。

 

 

 そして――

 

 

 音楽が流れ出すと同時に、にこが踊り出した。

 

 

 大歓声が沸き起こると同時に、それまで暗かったドーム内が輝き出した。

 

 

 一瞬だけにこから目を離して後ろを振り向くと、無数のサイリウムが様々な色で光っている。

 

 

 隣のことり達も、それぞれサイリウムを楽しげに振っていて、にこを応援しているように見えた。

 

 

「あれ? 譜也さん、サイリウム持ってないんですか?」

「あ、あぁ、買うの忘れてた」

 

 

 俺の視線に気付いたのか、ことりは俺を見ると手にサイリウムが無い事を不思議そうに尋ねた。

 

 

 ライブ前、にこに呼ばれていた事に気を取られすぎて、サイリウムの存在をすっかり忘れていた。

 

 

「じゃあ、ことりのを貸してあげます!」

 

 

 そう言ってことりは、両手に一本ずつ持っていたサイリウムを、一本差し出してきた。

 受け取るのを少し躊躇ったが、ここはことりの好意を素直に受け取る事にした。

 

 

「ありがとう」

「いえいえ、譜也さんも楽しみましょう!」

 

 

 ことりはそう言うと再びステージに視線を戻し、楽しそうにサイリウムを振り出した。

 

 

 にこも“楽しんで”と言っていた。

 

 

 俺もステージに視線を向け、ことりからもらったサイリウムを音楽に合わせて振っていく。

 

 

 ことりの作った可愛らしい衣装に身を包み、俺の作った曲を踊るにこ。

 その表情はとても楽しそうだ。

 

 

 前奏が終わり、にこが歌い出す。

 ドームはより一層大きな歓声に包まれた。

 

 

 俺の作った曲を、にこが歌い踊る。

 

 

 それに観客達が盛り上がる。

 

 

 今この瞬間、俺はにこの力になれていたのだと改めて実感した。

 

 

 ステージ上で華麗に舞い、観客達を楽しませようと歌うにこ。

 

 

 

 

 その姿は、まさに見る者を魅了する存在――アイドルだった。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 ライブもいよいよ最終盤。

 

 

 にこのライブを皮切りに、他のキャンパスアイドル達も次々とライブを披露していった。

 

 

 ドーム内の盛り上がりは最高潮。

 

 

 そして次が、今日最後のライブ。

 

 

 ラブライブ。

 キャンパスアイドル達の祭典を締めくくるべく現れたのは――

 

 

『最後の出演者は、東條希さんと絢瀬絵里さん――のぞえりのお二人です!』

 

 

 希と絵里。

 二人がステージ上に姿を見せ、ドーム内は今日一番の盛り上がりを見せた。

 

 

「皆さん、こんにちはー!」

 

 

 絵里の問いかけに、観客達は大きな歓声で応える。

 

 

 今日のこれまでのライブで一番の盛り上がりを見せていたのはにこだったが、彼女達の登場にはにこと同じ程盛り上がりっていた。

 

 

「ウチらで最後やけど、みんな楽しんでいってねー!」

 

 

 いよいよ、今日最後のステージ。

 

 

 にこで始まり、希と絵里が締めくくるラブライブ。

 

 

 偶然にしては出来過ぎた演出だ。

 

 

「今日披露する曲は、μ’sで共に過ごした仲間が作ってくれた曲です!」

 

 

 絵里の口から出た“μ’s”という言葉に、ドーム内が熱気に包まれた。

 

 

「それでは、聴いて下さい――」

 

 

 

 

 

「「――硝子の花園」」

 

 

 

 

 

 希と絵里が同時に言う。

 

 

 曲が流れ出し、観客達の盛り上がりは最高潮を迎えた。

 

 

 ステージで踊りながら、二人の歌声は絶妙なハーモニーを奏でている。

 

 

 踊りでも、希と絵里は見事な掛け合いを見せていた。

 

 

 挑発的で煽情的な二人の掛け合いに、俺の視線はステージに釘付けとなっていた。

 

 

 

 そして悔しいけど、曲が素晴らしく良い。

 

 

 

 歌詞とメロディーが、二人のパフォーマンスをより際立たせている。

 

 

 チラッと横を見る。

 ことりの向こう側、そこにいる二人の少女。

 

 

 

 園田海未、西木野真姫。

 

 二人とも楽しそうに、両手に持つサイリウムを振っている。

 

 

 

 この二人の少女が、この曲――“硝子の花園”を作り上げた。

 

 

 悔しいが、俺には作れない曲だ。

 

 

 そんな曲を作った二人を見ていると、尊敬と羨望が複雑に入り混じったような感情になる。

 

 

 

「「ありがとうございましたー!」」

 

 

 

 曲が終わった。

 

 

 希と絵里のライブが終わり、キャンパスアイドル達のラブライブが幕を閉じる。

 

 

 

 

 ステージ上に立つ希と絵里に、客席からは大きな拍手が送られていた。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 ラブライブから数日後。

 

 

 あと数日で夏休みが終わり、もうすぐ大学が始まろうかという時期になった。

 

 

 今日は生憎の雨。おかげで蒸し暑い。

 

 

 夏休みの昼間ではあるが、雨が降っているので俺はどこにも出かけずにいた。

 

 

 今はベランダに出て煙草を一服している。

 

 

「はぁ……」

 

 

 雨模様の空にため息を吐きながら、肺に溜まった紫煙を吐き出した。

 

 

 メンソールの清涼感が、蒸し暑さを少しだけ和らげてくれる。

 

 

 一本吸い終えると部屋の中に戻り、ベランダへと繋がる窓をしっかりと閉める。

 

 

「……結果、今日発表だったな」

 

 

 煙草を吸ってスッキリしたのか、そんな事をふと思い出した。

 

 

 デスクトップパソコンを立ち上げ、目当てのサイトを検索する。

 

 

 探し当てたサイトを開き、目的のページへと進む。

 

 

「……」

 

 

 そこに書かれていた文字に、マウスを動かす手が止まった。

 

 

 俺はしばらくの間、言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラブライブ!

 

 

 キャンパスアイドル部門

 

 

 優勝

 

 

 

 

 のぞえり(絢瀬絵里・東條希)

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。