矢澤にことのキャンパスライフ!   作:ゆいろう

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第40話

 

 

 新年を迎えて一週間近くの時間が経った。

 

 

 新しい年が始まり、期待に胸を膨らませている人も多い事だろう。

 

 

 そんな中俺は、去年の一年間を振り返っていた。

 

 

 一浪の末に今の大学に合格。

 その入学式で行われた一人のキャンパスアイドルのライブに、俺は魅了された。

 

 

 ステージで華麗に舞い楽しそうに笑顔で歌い上げる彼女の姿に、俺はこの時すでに恋に落ちたのかもしれない。

 

 

 そんな彼女が悩んでいる事を偶然知ってしまった俺は、彼女に曲を作る事になった。

 

 

 彼女の曲を作り、彼女と一緒に過ごす時間は楽しかった。

 

 

 途中、疎遠になってしまった事があったけど、何とか乗り越えて元の関係に戻った。いや、俺達は以前より強い絆で結ばれたと言っていいかもしれない。

 

 

 そして、ついこの間。

 

 

 彼女――矢澤にこと行った初詣の時。

 

 

 俺はにこが好きだと自覚した。

 

 

 

 

 そして今日。

 

 

 

 

 にこが出場する大舞台。

 

 

 

 

 ラブライブ本選が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 東京の名所の一つとも言える場所、アキバドーム。今日ここに、多くの人が足を運んでいる。

 

 

 いよいよ今日はラブライブ本選。アイドル達のライブを楽しもうと、ドーム内は既に満員の観客で埋め尽くされていた。

 

 

 そんな中俺は、前回のラブライブの時と同じように招待券をにこから貰っているので、ステージに近い座席を確保している。

 

 

 ライブは後ろから眺めているのが好きだけど、今日はそれを忘れて全力で楽しむとしよう。

 

 

「あ、譜也さん!」

 

 

 後ろから声がする。

 

 

 振り向くと、ことり達音ノ木坂のメンバーが勢揃いだった。

 

 

「こんにちは! ドームの中暖かいですね〜」

「こんにちは、ことり。多分空調が効いてるんだと思う。それに、ライブが始まったらもっと暑くなると思うぞ」

「そうですね〜。あっそうだ譜也さん、今回はサイリウム忘れてないですか?」

「大丈夫、バッチリ買ってきたよ」

 

 

 前回はサイリウムを買い忘れてことりに借りたからな。今回は忘れずに買っておいた。

 買ってきたサイリウムを見せると、ことりは満足そうに微笑んだ。

 

 

 その後ろから、別の人物に声をかけられる。

 

 

「こんにちは、譜也さん。久しぶりですね」

「あれからもう一曲作ったんでしょ? 私と海未の力が役に立ったようね」

 

 

 海未と真姫。

 曲作りが難航きていた俺に、色々と協力してくれた二人だ。

 

 

「ああ、海未と真姫のおかげだ。ありがとう」

「にこちゃんがどんな曲を歌うのか、楽しみにしてるわ」

「二人は今回も、希と絵里の曲を作ったのか?」

「はい、私達の曲も楽しみにしていてください」

「ああ、もちろん」

 

 

 やはりこの二人は今回も希と絵里の曲を作っていた。

 前回のラブライブで俺とにこは、海未と真姫が手がけた曲を歌った希と絵里に負けた。今回も同じような状況。違うのは、俺とにこが成長したという事。

 

 

「そういえば譜也、プログラムは見た?」

「ああ、見たぞ」

 

 

 真姫の問いに俺は答える。

 今回のラブライブのプログラム――キャンパスアイドル達の出演する順番。

 

 

 

「驚きました。前回に続き希と絵里が最後、そして今回はその前ににこですから」

 

 

 それは、海未が説明してくれた通りの順番となっていた。

 

 

 のぞえりが一番最後、そのひとつ前ににこがライブをする。

 前回はにこが一番最初でのぞえりが最後だったが、今回はにことのぞえりが並ぶ順番となっている。

 

 

 μ’sの元メンバーが最後に二組。偶然にしては出来すぎているように感じる。

 

 

「あっ、そろそろ始まるよ!」

 

 

 ことりのその言葉で俺達はステージに目を向け、それぞれ座席に腰掛ける。

 

 

 

 

 ラブライブ――キャンパスアイドル達の祭典が、いよいよ開幕する。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 ラブライブが幕を開けて早くも数時間。

 数々のキャンパスアイドルによるライブにより、ドーム内はかなりの盛り上がりを見せていた。

 

 

 ラブライブも終盤を迎えようとしている。

 

 

 次はいよいよ、にこのライブだった。

 

 

 会場は既に暖まっている。

 

 

 ドーム内にワッと歓声が沸き起こった。

 

 

 ステージ上に、にこが現れたのだ。

 

 

「みんなー! にっこにっこにー!」

 

 

 にこがお決まりのポーズとともに、観席に向かって呼びかける。

 観客達がそれに応えるのも、お決まりの流れであった。

 

 

 

「今日のライブでは、にこの頼れる友人がとっても可愛い曲とこの衣装を作ってくれたわ!」

 

 

 

 ことりの作った衣装――ピンクが主体となったそのドレスは、にこによく似合っていた。

 

 

 

 

「今日のにこは世界で一番可愛いアイドルだから、みんな楽しんでいってねー!」

 

 

 

 

 そして、俺が作った曲をにこは今から歌い踊る。

 

 

 

 

「それじゃあ行くわよー!

 

 

 

 ――『にこぷり女子道』!!」

 

 

 

 

 曲が始まると同時ににこは歌い、そして踊る。

 

 

 ステージ上のにこは笑顔で歌いながら、華麗に踊っていた。

 

 

 観客達から一斉に歓声が沸き起こる。

 

 

 ライブは今日一番の盛り上がり。

 

 

 それは、にこがμ’sの元メンバーだからなのかもしれない。

 

 

 だけど、俺はそれでいいと思う。

 

 

 矢澤にこというアイドルを観客達は知っているのだから。

 

 

 今のにこは、μ’sの矢澤にことしてではなく、一人のアイドル矢澤にことしてステージで歌い踊っている。

 

 

 観客達は盛り上がり、にこのライブを楽しんでいる。

 

 

 μ’sの矢澤にこのライブではなく、キャンパスアイドル矢澤にこのライブを。

 

 

 大きなスクリーンに映し出されるにこは、とびきりの笑顔を見せていた。

 

 

 ライブ中、客席はずっと今日一番の盛り上がりだった。

 

 

 その状況を作り出したのは、間違いなくにこ自身によるものだった。

 

 

 

 

「――にこっ!」

 

 

 

 

 曲が終わる。

 

 

 観客達は、にこに惜しみない声援と拍手を送っていた。

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

 

 

 俺もにこに拍手を送る。

 

 

 

 

 ――誇っていいぞ、にこ。

 

 

 もう誰も、お前の事をμ’sの矢澤にこだなんて思っていない。

 

 

 今は一人の立派なアイドル、矢澤にこだ。

 

 

 

 

 

 

 大きな拍手を送られながら、にこはステージから観客に手を振って去っていった。そして入れ替わるようにして、希と絵里がステージに姿を現した。

 

 

 希と絵里の登場に、客席からはにこの時と同じ――いや、それ以上の歓声が沸き起こる。

 

 

 それもそのはず。

 希と絵里の二人――のぞえりは、前回大会の優勝グループなのだから。

 

 

「みなさん! 今日はラブライブを観に来てくれてありがとうございます!」

「前回と同じでウチらが最後やけど、最後まで楽しんでいってなー!」

 

 

 絵里と希の呼びかけに、観客達は歓声で応える。

 

 

「今日披露する曲も、μ’sで過ごしたメンバーに作ってもらいました!」

「それじゃあ、最後まで盛り上がっていくでー!」

 

 

 

 

「「――『Anemone heart』!!」

 

 

 

 

 曲のイントロが流れると同時に、希と絵里がステージ上を舞っていく。

 

 

 歌い出し、二人の歌声がハーモニーを奏でる。

 

 

 二人は息の合ったダンスを踊りながら、まずは絵里が歌う。次にが歌い、そして二人同時に歌う。

 見事なコンビネーションに、観客達は盛り上がっていた。

 

 

 俺は息を呑みながら、その光景をただじっと見つめていた。

 

 

 洗練された二人の掛け合いに見とれそうになった俺は、大きくかぶりを振った。

 

 

 大丈夫、にこだって負けていない。

 

 

 決して身内贔屓ではない。

 客観的に観客の反応を見ても、にことのぞえりの盛り上がりはほぼ互角だ。

 

 

 

「「ありがとうございましたー!」」

 

 

 

 のぞえりのライブが終わる。客席からは惜しみない声援と拍手が二人に送られていた。

 

 

 希と絵里は観客達に手を振りながら、ステージを去っていく。

 

 

 二人が完全にステージ上から退場した後も、ドーム内は拍手と歓声に包まれていた。

 

 

 

 

 これにてラブライブの全演目が終了した。

 

 

 

 

 

 勝利の女神は誰に微笑むのか。

 

 

 

 

 

 

 それがにこである事を俺は信じている。

 

 

 

 

 

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