矢澤にことのキャンパスライフ!   作:ゆいろう

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第42話

 

 

 希の告白を断ってから数日が経った。

 

 

 俺はにこの事が好き。

 その事をハッキリと希に告げると、最後にこう言われた。

 

 

『にこっちはウチの大事な親友やから、絶対に幸せにしてあげてな』

 

 

 告白を断った俺に対して希に言われた言葉。

 

 

 どこまでも優しくて他人を思う希から言われたその一言を、俺は重く受け止めなければならない。

 

 

 にこを幸せとは何なのかを考える。

 

 

 まず第一に思い浮かぶのは、にこが自身の理想とするアイドルになる事。それがにこの夢であり、にこにとっての幸せだろう。

 

 

 その為に俺は、曲を作ればいい。

 

 

 今までもそうやって、にこに協力してきたのだから。

 

 

 そんな決意を胸に秘めながら、俺は部屋のパソコンの前に緊張しながら座っていた。

 緊張している理由は他でもない、ラブライブの結果発表があと少しで行われるから。

 

 

 優勝はおそらく、にこかのぞえりのどちらかだろう。それ程までに二組のライブはかつてない盛り上がりを見せていた。

 

 

 時刻は昼過ぎ。

 結果発表の時間が、刻一刻と迫っている。

 

 

 緊張から喉が渇く。何か飲み物を取ってこようかと考えたが、結果発表はあと少しなのでその場に留まった。

 

 

 そして。

 

 

「きた!」

 

 

 結果発表がされる予定の時間を迎えた。

 

 

 あらかじめ開いておいたウェブサイトを更新して、結果を待ち構える。

 

 

 アクセスが多いのか更新には時間がかかり、なかなか更新されない事に焦りが募っていく。

 

 

 そして、ウェブサイトが更新された。

 

 

 ラブライブ結果発表と書かれたリンクをクリックして、また別のページに飛ぶ。

 

 

 そのページをスクロールしていく。

 

 

 早く見たいという気持ちと、もしにこが優勝できていなかったらという怖さから、スクロールをゆっくりと進めていく。

 

 

 ここで足踏みしていても仕方ない。そう思って一気にページを下へスクロールさせた。

 

 

 そこには――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラブライブ!

 

 

 キャンパスアイドル部門

 

 

 優勝

 

 

 

 

 矢澤にこ

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 何度も瞬きをする。

 

 ページをもう一度更新してみる。

 

 スクロールさせて再び見る。

 

 

 

 そこに映っていたのは、矢澤にこの四文字。

 

 

 

 頬を(つね)る。

 

 頬が痛い。

 

 夢じゃない――

 

 

 

「夢じゃ、ない……?」

 

 

 目の前に映し出されるそれは、紛れもない現実だった。

 

 

「――っしゃあああああああああ!!」

 

 

 気が付けば俺は、柄にもなく部屋の中で一人叫んでいた。

 

 

 優勝したのだ。

 

 

 にこが、矢澤にこが、ラブライブで。

 

 

「そうだ、電話!」

 

 

 俺は慌ててスマホを手にとり、にこに電話をかける。

 

 

 いち早くおめでとうと伝えたい。そしてにこと喜びを分かち合いたい、その一心で。

 

 

 しかし、耳に届くのはツーツーという機械音。

 

 

「通話中か……」

 

 

 他の誰か、おそらく元μ’sの誰かに先を越されたのだろう。にこにおめでとうと言うのは一番最初にしたかったので、少し残念だ。

 

 

「また後でかければいいか」

 

 

 そう思い再びパソコンの画面を見つめる。

 

 

 優勝、矢澤にこ。

 

 

 その文字列を見るだけで嬉しくなる。

 

 

「そうだ」

 

 

 記念に写真を撮っておこうと思い、スマホのカメラを起動させる。

 

 

 パシャリとシャッターを切る音がして、撮れた写真を確認する。写真は綺麗に撮れていて、今度はスマホに映るそれをジッと見つめた。

 

 

 すると、スマホから着信音が響いた。

 

 

 急な事にスマホを落としそうになったが、何とかキャッチする。

 

 

 画面には、にこの二文字。

 

 

 通話ボタンを押し、電話に出る。

 

 

「もしもし?」

『あ、譜也? 今電話大丈夫?』

 

 

 電話越しに聞こえるにこの声。

 わざわざ大丈夫か確認するあたりが彼女らしい。

 

 

「大丈夫じゃなかったら電話に出てないって。それより、ラブライブの結果見たか?」

『ええ、見たわ』

 

 

 どこか淡々としているにこの声。正直、優勝したのだからもっと喜んでいるのかと思っていたが、意外とドライなところがあるようだ。

 

 

「そうか。にこ、優勝おめでとう」

『ありがとう』

 

 

 やはり、にこの声は淡々としている。というよりも、どこか元気がないように思えた。

 

 

「どうした? なんか元気なくないか?」

『そう? いつもこんな感じじゃない?』

「いや、絶対元気ないって。何かあったか?」

『別に……何もないわ』

 

 

 何もないとにこは言うが、本当に何もないとは思えなかった。

 

 

「何もないって本当かよ」

『ねえ譜也』

 

 

 俺の言葉を無視して、にこは俺の名前を呼んだ。

 

 

『今から会えない? 会って直接話したいの』

 

 

 突然の誘い。

 

 あまりにも突然すぎて驚いたし、何よりにこの口からそんな言葉が出てくる事に驚いた。

 

 

「ああ、分かった。俺がそっちに行けばいいか?」

『そうね……いや、私がアンタの家に行くわ』

「分かった、待ってる」

 

 

 そんな約束をして、電話は切られた。

 

 

 にこの口調から察すると、ただ世間話をしたいという訳ではなさそうだ。

 

 

 きっと何か、大事な話があるのだろう。

 

 

 もしかすると、前回のラブライブ直後のように、曲を作らなくていいと言われるのかもしれない。

 

 

 もちろん、俺の考えすぎかもしれない。

 

 

 どちらにせよ、大事な話があるのは間違いないだろう。

 

 

 何を言われても大丈夫なように心構えだけはきちんとして、俺は部屋でにこを待った。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 一時間ほどにこを待っていると、インターホンが鳴った。玄関に向かいドアを開けると、そこにいたのはやはりにこだった。

 

 

「ごめんね、急に会いたいなんて……」

「いいって。それより寒いだろ、早く中に入れって」

「そうね。お邪魔します」

 

 

 にこを家の中へと招き入れる。

 

 

 やはり今日のにこはいつものような元気がない。ラブライブに優勝したのだから、俺みたいにもっと浮かれていてもおかしくないのに。

 

 

「何か飲むか?」

「そうね……ホットココア」

「了解」

 

 

 炬燵に入ったにこにそう尋ねる。

 

 

 クリスマスイブにもにこは俺の家に来たので、何が置いてあるのかは大体知っている。

 

 

 台所でリクエストのココアを二人分作り、炬燵のある部屋へと持っていく。

 

 

「ほい、ホットココア」

「ありがと」

 

 

 俺からココアを入れたマグカップを受け取ると、にこはそれに一口だけ口をつけた。

 

 

「それで、話って何なんだ?」

 

 

 俺も炬燵に入り、にこに尋ねる。

 

 

 にこは持っていたマグカップを置いて下を向く。

 

 

 そして、顔を上げた。

 

 

 

「譜也。にこね――」

 

 

 

 一拍置く。

 

 

 そして――

 

 

 

 

 

「――プロに誘われたわ」

 

 

 

 

 

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