プリンセス・プリンシパル Blood Loyalty   作:悪役

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case7:独断と偏見

 

斜め下から振り上げるような抜刀をアドルフは右足で蹴り払うように弾く。

靴には鉄板が仕込まれているからそれだけで鉄と鉄がぶつかり合った音が響き、足と剣がお互いの威力に弾かれる。

 

「ちぃ………!」

 

「くっ…………!」

 

お互いに失敗による無駄な呼気を漏らしながら、弾かれた上体、弾かれた右足を踏みとどまらせ

 

「ぜぇあぁ!!」

 

「──────」

 

意気と呼気による薙ぎ払いによる剣閃をアドルフは無言で一歩前に詰め、膝を曲げる。

相手の懐に迫ると同時に頭上に刃が通り過ぎていくが問題ない。

今、重要なのは目の前に無防備な腹があり、こちらにはナックルガードのような手袋を付けた拳がある事で、つまりボディを破壊できる。

躊躇いも無く、そのまま粉砕しようとした時、目端に映った。

敵の黒髪の少年が握った刀とは別にナイフ…………というのは少し短いが、それでもこちらの常識に比べれば長い刃を相手左手で引き抜こうとしているのを。

右の大雑把な振りはこちらを隠すフェイクか、と内心で舌打ちを打つ。

このままだと丁度顔面を切り裂かれる形で振り抜かれる。

そうなると鼻から上辺りが吹き飛びかねないので、つまり、どうにかしなければいけないのは当然だ。

両腕両足、どちらも攻撃姿勢を取っている為に躱すのに使うのは不適当。

 

 

 

故に別の物で代用した。

 

 

 

プリンセスは二人の動きを全く目で追えなかった。

自分も一応、護身術は習っているのがアルフと相手の私達とそう年が変わらないように見える少年の動きは己は当然として稽古を教えてくれた教師ですら比べるのが恥ずかしいと言わんばかりの速度であったからだ。

思わず、その内の一人がアルフと知っていても──────怖いと思っていた。

彼らが振るっている物はスポーツなどで使う安全な物ではない。無論、スポーツに使う代物でも殺せると言われたらお終いだけど、それ以上に人を殺すのだと主張する武器だ。

武器を本気で振るえば向けられた相手は死ぬのだ。

それを平然と扱う二人………………否、アルフを見て、やはり思う事がある事は避けられないが、少年がそれを振るう理由が私を守る為なのだと分かっている為、綺麗事を言うのも思うのも止そうと思う。

自分が願う夢が綺麗事である事は知っても、それを実現するには綺麗事ではない方法を行わなければいけないなんて事は理解しているからだ。

だが、それとは別に二人の戦闘速度にはついていけなかったが、今、向こうの……………いずなとかいう少年の短刀がアルフの顔を切り裂こうとしている事だけは偶然見切れたので思わず悲鳴を上げようとしたのだが──────途中で鈍い音が響いてえ? と思って見ると

 

 

「ず、頭突き?」

 

 

アルフが抜き放とうとしている刀の柄に当たる部分に思いっきり頭突きをしたのを見て、流石に呆れのような感情が生まれるが、確かに殺し合いの最中に卑怯とかそういうのは無視されるって言うわよね、ととりあえず現実を受け止める。

とりあえず第三の手で短刀を受け止めたアルフはそのまま右腕をいずなという少年の顔面に叩き込もうとして、即座に左の短刀を諦めたいずなが左の手でアルフの手を受け止めるのを見る。

 

「っ…………!」

 

どちらも放つのは舌打ち。

殺せなかったという憎悪から発生したのだ、と気付くと体が冷えたように震える。

上流階級における綺麗な所ばかりを見たわけではないつもりだが、それでもここまで至近での殺し合いを見た事は無い。

だから、何時も傍にいた少年が初めて遠い、と思ってしまい、本能的に少年の背に手を伸ばしたくなる。

否、手を伸ばすなんてものじゃない。

直ぐに走り寄ってその背中に抱きついて、行かないで、と叫びたくなる。

何よりもあんな風に凶器が少年に振り払われている事が途轍もなく怖い。

 

 

 

少年が過てば死ぬ

 

 

殺し合いにおいて余りにも当然な結果が起きうる現場に少年がいる事が余りにも怖い。

そう思っている間に鍔迫り合いのような状況に陥っていた二人に対して、お互いの背後から周りで戦っていた人達の殺意が向く。

 

「アルフ! 後ろ!!」

 

思わず叫んでしまった私の声に応えるかのように二人は同時に互いを弾き飛ばすように振り返り、それぞれの武器を振るって、周りを黙らす。

その瞬間、戦場に生まれた空白。

 

 

 

必然的に振り返る少年が間違いなく、こちらを見た。

 

 

 

見ただけだ。

何かを言う暇も無ければ、口を動かす事すら出来ない。

その代わりと言わんばかりに少年は視線に感情を宿した。

 

 

 

大丈夫です、と。

 

待っていてください、と。

 

 

「……………」

 

ぎゅっ、と胸の前で手で手を握る。

振り返った少年は直ぐに相手に振り返り蹴りを放っていたが、だからこそ信じる事を己に課した。

何故なら自分の傍付がそう言ったのだ。

大丈夫、また私の下に帰りますって。

なら、信じて待つのが自分の役目だ。

今もギリギリの戦いを繰り広げている少年は最後は勝つのだ、と信じる。

例え、それが相手の殺害による帰還であったとしても、何一つ構わない。

ベアトにも以前言ったでは無いか。

 

 

自分は悪い女なのだと。

 

 

でも……………

 

だからと言って少年一人に任せるわけにはいかない。

このまま列車同士がロープで繋がっていれば……………確か暫く先に合流地点があったはずだ。

そうなるとどうなるかなんて言うまでもない。

今は乱戦となって自分が動く隙間が無いが、頃合いを見て何とかあの繋がっているロープを何とかしないといけない。

もしくは

 

 

アンジェ…………

 

 

爆発があった接合部の後ろにいたはずの親友の姿を思い浮かべる。

本当に浅ましく、悪い女だ。

自分の手で何かをしようと考えながら、直ぐに誰かの手を頼ろうとする。

世間の空気姫という単語はやはり正しい評価だ。

いてもないくても同じくらい無能というのは今の私の現状を実によく表しているのだから。

 

 

 

 

 

アルフは敵側の列車の方が何やら騒がしくなったのを音だけで聞いた。

 

「何だ! こいつらはどこから…………!!?」

 

「ちせ殿…………裏切ったのか!?」

 

「女と見くびるな皆の衆! 速いぞ!」

 

などと声が響くのを首の皮一枚で躱しながら聞く。

どうやら味方…………アンジェ様とちせが救援に来たみたいだ。

恐らくあのCボールという物で飛んできたのだろうけど無茶をする。

体験はさせて貰ったが、重力が無くなったかのようなあの感覚を使いこなすのはやはり至難なのだろう。

アンジェ様がどれ程の鍛錬をしてきたのかと思うと歯を砕きたくなりそうになりながら、左から来る刃を拳で弾く。

今は後悔も懺悔も不要な感情だ。

後悔や未練なんて真っ先に死んでいく人間の特徴だ。

己の命に価値なんて物を見た覚えは無いが、自分が死ねば姫様の危険性が上がるのだから、盾くらいにならなければ地球の酸素………はどうでもいいが、それこそアンジェ様に申し訳が無い。

姫様の為に死ね、と言われて、己もそれが全てだと思うのだ。

 

 

死ぬのならば、全ての危険を排除した後だ。

 

 

故に今の現状はあまり良くない。

今、自分は機関車側の方に押し込まれ、姫様達とは逆の方に押し込まれた。

単に敵の上手さからだ。

敵は長物の利点であるリーチに拘らずに時にぶつかったり、殴ったりもしながら立ち回り、自分が守るべき者を敵の背に置いてしまった。

余りの自分の未熟さに殺したくなるが、それも捨てて置く。

言い訳にしかならないが、この手の武器を持った相手と死合うのは流石に経験がない。

ナイフや銃ならともかくこの長さの刃と殺し合う事はアルビオン王国では稀所か皆無だ。

敢えて言うならフェンシングがそれなのだろうけど、フェンシングの刀法と一緒にするには余りにも自在で且つ殺し合う事しか考えていない。

 

 

日本、凄まじい。

 

 

いや、それは置いといて。

だが、どうやら相手も自分みたいに拳をメインにして戦う相手はそう多くは無いみたいである。

時々、懐に潜り込んでみた時、対処をするというより逃げる事が多かった。

パターンが一定になっているのを見ると、そんな至近距離に踏み込まれる事の方が稀なのだろう。

それは襲撃者の装備がこの日本刀という物が戦いの主流なのだとしたら当然だろう。

ナイフのように短い獲物ならともかくこれだけ長い物だと懐で扱うには長過ぎる。

故にお互い不利と不利が噛みあっていたが、これからもずっととはいくまい。

 

 

相手もそうだが俺も慣れて来た。

 

 

互いに未知を既知へと置き換えつつある現状。

だが、これは試合では無く殺し合い。

決着は絶対に着けなくてはいけない。

無論、それは己の手で着けないといけないという縛りは無い。

時間やそれこそ他人の手でもいい。

幸い、襲撃者達の列車はアンジェ様とちせの手でどうにかなっているらしい。

無論、向こうには藤堂十兵衛というどれくらいの手練れかは知らないが殺しのプロがいる以上、楽にとはいかないだろうが、それ以外は悲鳴を聞く限りそう強いのはいないらしい。

例外は藤堂十兵衛とこの敵のみ、と見做していいだろう。

時間をかければ二人が援軍に来てくれるかもしれないと思うが、時間をかけたらかけたで列車同士の衝突が起きるかもしれない。

向こうは最悪死んで上等かもしれないし、俺もそうだが、姫様がいる以上、その選択肢は大却下だ。

最悪、死を覚悟の特攻も有りだが、それでは一人敵が消えるだけで意味がない。

どうにかこの状況からこの敵を殺すしかない、と体を動かしながら脳を働かせていると最早自動で動いている動体視力が敵の次の動きを捉えた。

 

 

 

傍にある誰かの血で足を滑らせたのだ。

 

 

 

コンマ一秒以下で思い浮かぶは敵のミス、罠、偶然の三つが思い浮かぶ。

瞳が思考の補助の為に敵の肉体を細かく、且つ広く見るが決定的な確証を得るには余りにも敵の事を知らず、また時間が足りない。

故に真っ当な思考において踏み切ったのは罠だろうが偶然だろうがミスだろうが、展開を動かさなければいけない自分には選択肢は一つしかない。

罠であっても直ぐに対処出来るよう軽めのジャブで顔面を打つ。

仮に本当に運が悪かったのならばジャブで顔面が打たれている間に続けてツーとフィニッシュを打てばいい。

そう思って、右の拳を振りかざし放とうとした瞬間に

 

 

「アルフ!?」

 

 

姫様の悲鳴が上がる。

殴り殺すのを咎められたかと思われたが、そうではない。

姫様はお優しい方ではあるが、全てが綺麗事で済むと思うような理想しか見ていない御方でもない。

それに今の叫びにはこちらの批難では無く─────危機が迫っている、という意味での叫びであった。

 

 

最初に思ったのはやはり周りで戦っていた雑兵達だ。

 

 

しかし、既に周りには死骸しかない。

敵も味方も含めて生きて戦っているのは自分とこの敵のみになったのを戦いながら確認していた。

だからこそ、この相手にのみ集中していたのだが…………そうなると

 

新手か!?

 

何の気配も感じ無いのに、と思っていると前方に向かいながら後方を見れる手段がそこにあった。

敵の刀だ。

その刀に完全な偶然だろうけど、反射で映る姿があった。

この相手と同じ服装と武装を持った40代から50代程と思われる男性が既に刃を上段からこちらに振り下ろそうとする光景が

 

 

「…………!!」

 

 

今の光景を見た後でも一切気配を感じない。

つまりはそういうレベルの手練れが一人更に襲撃しに来たのだ、と思うと同時に馬鹿か、と己を詰りたくなる。

これ程の手練れとなると藤堂十兵衛とかいう男でしか無いのは一目瞭然であり、むしろそれこそが本命であったはずなのに可能性から忘却させるというなんて馬鹿でしかない。

だが、それならば尚更に死ねない。

即座に後悔も自己嫌悪も捨てて生きる手段を思考する。

既に体は前に流れている。

拳を打つのを止める事は事前に考えてはいたから何とかなるが前に出るのを止めるのは不可能だ。

そのまま真っすぐ向かって避けようにもそこを今まで相対していた少年が塞がっている。

迂闊に飛び込めばこの少年が立ち塞がり、何も出来ずにただ背後から斬られるで終了だ。

横であってもそれは変わらない。

だから必要なのは前でも横でもない選択肢。

 

 

それを見つけたので、アドルフは即座にそれを実行した。

 

 

 

 

ベアトリスはアドルフ様が絶体絶命から脱する為の行く先を見た。

 

前………!?

 

否、前では無い。

結果的に向かう方向としては前かもしれないが、アドルフ様が向かったのは前ではあっても真っすぐでは無い。

 

 

 

彼は列車に未だ残っている壁に向かって飛んだのだ。

 

 

右斜めに向かって飛ぶ。

その行先は壁だった為、敵の少年は防ごうにもアドルフ様の左足が邪魔をすると思ったのか立ち塞がれず、また背後に立った男性も予想外だった為か、深く突き進む事は出来なかった。

そのままアドルフ様は窓枠の縁に引っ掛ける様に右足だけを乗せて、そのまま再度ジャンプ。

前を塞いでいた少年の頭上を飛び越え、一度回転し、そのままこちらの壁になる様に着地し────目の前で赤い色が飛び散った。

 

「…………え?」

 

勢い良く飛び散った液体が頬に当たるのを感じながらも、思わず、アドルフ様の方を見るとアドルフ様は左の脇腹を軽く押さえていた。

しかし、こちらに背を向けるように立っていたからよく分かった。

負傷は背中から左の脇から背中にかけての傷。

深いのかどうかは手で隠しているのもあるが、分からない。

ただ、体の中にまでは届いていないかもしれない、と冷静にそこまでは思考を勧めれたが

 

「アルフ!!」

 

悲鳴のような声を上げながら一歩前に踏み出そうとした姫様を見て、思考を捨ててベアトリスは姫様を留める様に、半ばタックルのように押し止めた。

 

「だ、駄目です!! 姫様! 危険です!!」

 

「でも………!!」

 

サファイヤのような瞳が揺らぎながらこちらを見るのが分かる。

姫様とて理解しているのだ。

自分が前に出ても邪魔になる以上の意味は無いという事を。

しかし、それでも、と思う気持ちが姫様を突き動かしているのが分かる。

でも、やっぱり駄目だ。

そうしない為にアドルフ様が今、命を賭けて姫様を守り─────アンジェさんも動いているのだ。

今、一番姫様の近くにいる自分が姫様の命を守らないわけにはいかない。

だから、前に出ようとする姫様に駄目、と意思表示するようにベアトは姫様の腰に抱きつきながら、しかし祈った。

 

 

 

お願いします…………アドルフ様…………!

 

 

生きてください。

何故なら姫様は貴方がいる事をこんなにも望んでいるのだから。

 

 

 

 

 

 

アドルフは脇を押さえていた手を吐息一つで振りほどいた。

皮と肉辺りまではやられたが、中身まではやられていないのが幸いだ。

まさか、あんな軽業師みたいな逃げ方に驚きながらしっかりと合わせられるとは思ってもいなかった。

 

「……………日本の侍は正々堂々で卑怯な事を行わないと聞いた事があったんだが……………背後から斬りかかるとは。随分な過大評価だったんだな」

 

口から出す言葉には意味は無い。

単なる時間稼ぎだ。

乗ってくれるなら有難いが、そこから得れるこいつらの意思や感情は別にどうでも良い。

その程度の適当な言葉に、しかし藤堂十兵衛と思わしき相手が乗ってくれた。

 

「士道からは踏み外した身。今は大義に身を捧げた一振りの刀に過ぎない故」

 

「成程。正しい自己評価だ─────薄汚い暗殺者には殺人鬼がお似合いだ」

 

瞬間、若い方から結構な殺意が沸き上がって、一歩踏み込んだが

 

 

 

「挑発だ、いずな。軽々しく一歩踏み込めばしっぺ返しを受けるぞ」

 

 

 

鉄のような声が諫めたせいで止められてしまった。

冷静さを失った攻撃ならば上手い事切り崩せれるかと思ったから策が失敗した事に舌打ちをしたくなるが、元より敵対者と会話をする事なんて経験不足故に仕方が無いかとは思う。

 

「しかし義父上…………!」

 

いずな、と呼ばれた少年がそんな風に叫ぶから、ああそういえばいずなっていう名前だったっけと今更思いながらもその叫びに息子なのかと思いつつ

 

「…………しかし、大義とは笑わせる。人を殺す事でしか何かを為せない分際で語る大義なんて笑い話にもならない酔っ払いの戯言だな」

 

「貴様…………!!」

 

今度こそ、踏み止まった足を勧めようとするのいずなだが、今度は肩に手を乗せて物理的に制止させられるのを見ながら、十兵衛が

 

「全て押しなべて綺麗事で片付けろというのなら─────」

 

「綺麗事を青いだの理想論で下らなく、言うまでもない。そんな風にしか考えられないから俺も(・・)お前らもここまでなんだよ(・・・・・・・・)

 

 

 

──────命を圧縮して出来た宝石のような美しい生き方をする少女を知っている。

 

 

 

余りにも脆く、辛く、繊細な少女はそれでも世界に光あれ、と祈る様に願った。

スタートは本来、その願いを持っていた少女の代理であったかもしれない。

他人からの借り物。

罪悪感から生まれた代替行為。

でも、偽物から生まれたモノが本物にならないなんて道理はない。

彼女の言葉は誰かの言葉では無く、自分の言葉になっていくのを俺は見て来た。

自分のような下らない人間でも分かる正しくて美しい人の願いは、肯定する立場の自分でも綺麗事であるとしか言えないものではあった。

 

 

 

でも、その綺麗事を果たすのにどれほどの恐怖と悔しさと命を賭けてきたのかも知っていた。

 

 

 

綺麗事を通す為に少女がどれ程の苦痛と恐怖を飲み込んできたと思う。

それでも夢見がちな少女の戯言と切って捨てるのか。

子供特有の青さ、世の中の甘い部分しか見ていないと言うのか。

ふざけるな。

 

 

 

 

現実しか見ていない俺(・・・・・・・・・・)達の結果がこれだ(・・・・・・・・)

 

 

 

 

「大義? 青い? 笑わせる。お前らの言う大義によって導かれるのがこれか? こんな敵も味方も死んで死んで死んで死ぬだけのこれが大義? ──────こんなのはな、ただの殺人現場って言うんだよ」

 

 

ただ人を殺すだけの奴の語る言葉なぞ生ごみが喋っているのと何が違う。

殺すのならばせめて人の命を守るくらいしてみろ。

その大義が何かを守る為の物なのだからこれも広義では人を守って殺しているのだ、なんて言い訳は通じない。

 

 

こんな後ろ暗い暗殺なんかしている時点で一切の綺麗事が混ざっていない証拠だ。

 

 

故にこれは大義でもましてや正義でもない──────ただの暴力だ。

無論、それは別に相手にだけ言える言葉じゃなくて自分も含めて、だが。

そんな時間稼ぎついでの嫌がらせの言葉に少年の方はひっきりなしに殺意が盛り上がっているが、十兵衛の方は小さくだが、確かに頷き

 

 

「─────成程、確かに一理ある。そも士道からは背いている時点で我等は畜生であろう。畜生道に堕ちた我等の言葉では確かに説法を唱えようとも鬼が平和を語るようなもの──────が、しかし放たれた矢故に。如何に理解を得ても止まる事はもう出来ず」

 

 

ふん、と鼻を鳴らして、ファイティングポーズを取る。

そんなのは別に全く期待していない。

テロリストや暗殺者に神の教えを説いても無駄な時間を費やすだけなのはとっくの昔に知っている。

ただ、一分以下かもしれないが、多少の時間を稼げた。

それだけが重要だ。

向こうの列車からの叫び声の数はかなり少なくなっている。

なら、後は援軍を待つまで今度は言葉では無く声で時間を稼ぐのみ。

敵もそれを承知だろう。

抜き放っている刃を今こそ構え

 

 

 

「──────参る」

 

 

その一言で二人が同時に突撃するのをアドルフは迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 




ふぅ、目がしょぼしょぶしたり、何やったりで時間がかかりましたが投稿です。

中々ちせ回が手強い……後、二話……いや、もしかしたら3話以上かかったりするかもしれません…………文字数を削減して投稿しやすくなったが故の陥穽が……!!

今回である意味で姫様とアドルフの微妙な思考というか己の価値観の差異とかも出ましたかも。

読者の皆さん、後半を見て貰ったら分かりますが、アドルフはタイトル通りに独断と偏見の差別主義者です。
これを悪いと見做すか良いと見做すかは読者の皆さんにお任せしますが作者からしたら、これはアドルフの価値観でしかないですな。

善良というには余りにも勝手で且つ自分本位、悪というには他者に影響は及ぼさない感じ。
どこぞの世界で言うなら求道型ですな。

だから、成程、とは思わない事があるかもしれませんが、アドルフの思考回路はこんなのだと思ってくれればと思います。

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