とあるボーダー隊員の日記   作:小林 陽

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日記ものあんまり見ないなぁと思って書いた息抜き作品です。不定期だと思います。
気軽に楽しんでいただければ幸いです。
スタートは原作の1年ちょい前くらいです。


ボーダーに入隊した頃の日記

  霜月の頃その1 くもり

 

  大学生になって半年ほど立ったある日、唐突に母親がこんなことを言ってきた。

 

「YOUボーダー入っちゃいなYO」と。

 

  もちろん俺の母親はJから始まる事務所の社長でもないしボーダーの関係者ではない。

  何故かと俺が問えばどうやら妹がボーダーに入りたいと言い出したらしい。

  確かにまだ15の妹を民間の軍事企業に一人で入れるわけにもいかず俺も仕方なく入隊することになった。

  明日は土曜日なのでまずは面接に行こうと思う。

 

 

 

 

  霜月の頃 その2 晴れ

 

 

  今日ボーダーへ面接に行ってきた。

  俺は痛いのとか嫌なので妹と同じオペレーターかそうでなければエンジニアとかでのんびり暮らしていたかったんだが面接官に

 

「君のトリオン能力はすばらしい。是非戦闘員になってくれ」

「いやいや、無理です無理です」

「いやいや、君なら出来る」

「いやいや」

 

  みたいな会話を30分くらい続けた末俺が渋々折れてめでたく戦闘員となった。

  その日の内に書類を書いて渡し、訓練用トリガーをもらった。

  妹はどうやら俺よりもだいぶ早く終わっていたようで休憩室で同級生らしき女の子と仲良くお茶をしていた。

  あんまり邪魔するのもアレなので俺は先に帰る旨をメールで送ってクールに去ることにした。ラジカセを持っていないのが悔やまれるくらいクール。

 

 

 

 

  霜月の頃 その3 晴れ

 

 

  面倒な入隊式をテキトーに聞き流し、早速もらったトリガーを使ってみようと本部のランク戦ブースなるものへ行ってみた。

  確かここに入るとトリガーを使って死なない殺し合いが出来るんだそうだ。これを使えば兵器の開発とか捗りそうだよな。ま、どうでもいいけど。

  確か部屋にある端末に表示された番号を押せば出来ると聞いたので実践。

  おー、すげー。手から弾が出たよ。すげー。

  しかもこれ自分の意思で曲げられるんだぜ。超すげー。

  とりあえず俺の目の前にいる少年に実験台になってもらった。

  細かいのいっぱい飛ばしてメラしたり中くらいの3つ飛ばしてメラミしたりでっかいの飛ばしてメラゾーマしたりしてた。

  魔法ってあったんだな。

  この前までオペレーターがいいとか言ってたけど撤回します。やる気がムラムラ湧いてきました。

  魔法はロマン。

 

 

  霜月の頃 その4 雨

 

 

  妹の研修の終わりを待ちがてらランク戦ブースでぼんやりと試合を見ているとぴっちり中分けデコだし少女が無双してるのが見えた。

  うわぁ、すげぇなぁ。なんか早さからして違うもんな。通常の3倍早い、みたいな。

  てかあれが噂になってた子か。なんでも最初のネイバー戦闘訓練で9秒とか叩き出してたのは。

  確か俺が45秒くらいだったから俺より5倍強いことになるな。

  うん、当たりたくないです。

  だってブースから出てきたやつがすごい顔してるんだもの。あれ絶対感覚とか破壊されてるぜ。

 

 

  霜月の頃 その5 晴

 

 

  あんだけ当たりたくないと言っていたデコっぱちとついに当たってしまった。

  すごくドキドキしながら戦ったのだがやはり1:9とボコボコだった。

  昨日試合見てたからか早さは分かっているつもりだったんだが体感速度ってやっぱ違うわ。

  最後の一本でようやく対応できたわ。

  いやぁ、しかし強かったなぁ。とか思いながらベッドから起き上がった瞬間また勝負を申し込まれた。

  しかし俺はこれから買い物をして帰らなければいけないのだ。行かねば今日の夕飯が卵かけご飯だけになりかねん。というわけで拒否ボタンをぽちり。

  そしてブースを出ると俺の目の前には先ほどまで戦っていたおデコちゃんが立っていた。

  しかも唇を噛み締めた般若みたいな顔をして。

  いやぁ、美人ほど怒ると怖いっていうけどマジだなこれ。

  てかなんでそんな顔してるんだこの子は。と思えばどうやら俺に一本の取られたのが悔しかったらしい。

  なんでも自分は今まで一本も取られてない? これは何かの間違い?

  うん、たぶんそうだと思う。普通に考えて俺が君に勝てるわけないじゃん。

  そう言ったらおデコちゃんは勝ち逃げするつもりですか!と大声で罵ってきた。

  勝ち逃げって言ってもなぁ……デコちゃん、君、俺に勝ってるんだぜ? しかも9:1。

  あれ、これ立場逆じゃね?

 

 

 

  霜月の頃 その6 雨

 

  今日はリベンジに来たデコちゃんと戦った。

  10本やって2本とれた。

 

 

  霜月の頃 その7 くもり

 

  デコちゃんと戦った。

  20本やって4本取れた。

 

 

  霜月の頃 その8 晴れ

 

  あのデコ助と戦った。

  30本やって6本取れた。

 

 

  霜月の頃 その9 晴れ

 

  俺に対する尊敬の欠片もないデコ助と戦った。

  30本やって8本取れた。

 

  ん、あれ、もしかして俺最近デコ助としかやってない!?

  くそ、道理で全然ポイント貯まらねぇと思ったらそういうことか。

  デコ許すまじ。今度あったらボコってポイント勝ち逃げしてやる。

 

 

  霜月の頃 その10 晴れ

 

 

  例のごとくデコ助に捕まり、ランク戦。

  この流れはいつも通りだったのだが今回は戦績がまったく違った。

  なんと0:10で完敗だった。

  内容的にも圧倒的。なんかこいつ盾みたいなの張ってガンガン俺の弾ガードするんだけど。全然弾通らないんだけどそれ。

  どういうことだと問い詰めればどうやらB級隊員へと昇格したんだとドヤ顔された。

  へぇすごいな、よしよし。こんにゃろう。と強めに頭をがしがしと撫でてやったら嫌そうな顔をしながら安達先輩も早く上がってきてください。そうじゃないと……とかぶつぶつ言ってた。

  なんだ、ハキハキしゃべれハキハキ。お前は夜中チャリ漕いでて警察に本人確認された俺かよ。

  と、とにかく、先輩も早くB級に上がってください!

  みたいなやり取りの後デコ助はなぜか俺にランク戦をしようと誘ってきた。

  おい、ちょっと待て、お前俺のB級昇格応援してんじゃないのかよ。なんで俺から搾り取ろうとしてんの?

  え、正隊員との模擬戦はポイントは動かない? それでも色々問題あるだろ。

  俺の異論は全く聞き入られることなく俺はブースに放り込まれそのままいつもの30本コース。

  意地でなんとかラスト1本とったが厳しい戦いだった……。

  別れ際、今日の借りは今度絶対返しますからね、と睨まれたのが忘れられない。

  またあの蹂躙劇をするのは嫌じゃぁぁぁ。

  ということで早いとこB級に上がろうと決意した今日この頃。

 

 

 ***

 

 

 

  side木虎

 

 

  「お、デコ助、今日も眩しいな」

 

  恐らくテキトーに整えられた髪に強面の長身の男、安達圭一は大袈裟に目をすがめながらそう言った。

 

「センパイこそ相変わらずの不審者顔ですね、ちゃんとここまで来られました?」

「ばっかお前俺くらいになるともうお巡りさんと顔馴染みだからね? にこやかに挨拶して周りの人にざわつかれるくらいで済んだわ」

「どこに自慢できる要素があるんですか……」

 

  そんないつものように軽口を叩きながらランク戦ブースへ向かう。

  まだ出会ってから1ヶ月もたっていないというのに「いつものように」というのは少しおかしいのかもしれない。少しおかしくなって小さく笑う。

 

「なに、どした、なんか辛いことでもあったん?」

「うわっ! な、なんで見てるんですか、セクハラですよ!?」

「そういうことを大きな声で言うと犯罪になっちゃうからな? 笑えないからな?」

 

  そんなセンパイの言葉を無視してズンズンと歩いた。歩調が早くなったのが自分でもわかる。全く、なんでこの人はこういうところばっかり見てるんだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

  模擬戦を終えるとこの休憩室で飲み物を飲むのが最近の習慣だ。

  私はココア、センパイはコーヒー。なんだか悔しいがセンパイが砂糖とミルクをしっかり入れているところを見るとなんだかその気持ちも薄れてくる。年上としての体裁とかは考えないんだろうか。まぁそこがこのゆったりとした雰囲気の理由なのだろうとは思うが。

  そしてその件のセンパイはコーヒーを片手に文句を垂れていた。

 

「シールドハンパないって! もぉ〜あいつ俺の弾バンバン防ぐんやもん! そんなん出来ひんやん普通 シールドハンパないって!」

「なんで関西弁なんですか……」

「あ、分からんか……」

 

  センパイは少しシュンとしてコーヒーを煽る。そして私の方を見た。

 

「そんで、あれなに? ちょっと見ない間にパワーアップしすぎだろ」

「ふっふっふ、聞きたいですか?」

「おー、聞きたい聞きたーい」

「……まぁいいでしょう」

 

  私はたっぷりと間をとる。

 

「私、ついにB級に昇級したんですよ!」

 

  ……あれ、おかしい。ここで軽口のひとつやふたつ飛んでくると思っていたから少したじろいだ。

 

「せ、センパイ……?」

 

  声をかけた直後センパイはガバッと立ち上がってすげぇじゃんか。とまるで自分のことのように嬉しそうな声をあげた。

  そしてガシガシと私の頭を撫でた。

  痛いし、頭は揺れるし、髪もボサボサになるから嫌なはずなのになんだか悪くないとも思う自分もいる。

  それが恥ずかしくて思わず口を開いた。

 

「と、とにかくセンパイも早くB級に上がってきてください!」

 

  じゃないと少し退屈だ。いや、ホントに少しだから別にどっちだっていいのだけれど。いればいい訓練になるというだけで。

 

「ん? どした?」

「な、なんでもないです! そ、それより模擬戦しましょう模擬戦」

「さっきしただろ……」

「まだB級に上がれないセンパイのためにやるんですよ」

 

  なんだかこの人の前だと調子が狂う。

  だから私は努めてふふん、と笑う。

  いつもの私と同じように、誰にも気付かれないように。

 

 

 

 




本人はあんまり気づいてないけどそこそこ優秀、しかし木虎やら村上くんのせいで霞んでます。
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