学戦都市アスタリスク 『道化/切り札』と呼ばれた男   作:北斗七星

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案内

 抜けるような空の蒼さが眩しい日曜日。凜堂はユリスの案内で市街地を案内してもらっていた。

 

「アスタリスクの市街地は主に外縁居住区と中央区に分けられる」

 

 ユリスの説明に頷きながら興味津々で周囲を見回す凜堂の視界にモノレールの姿が映る。外縁居住区にはモノレールの環状線が走っており、港湾ブロックや居住区、そして六つの学園を繋いでいた。

 

「外縁居住区だとあのモノレールで移動するのか?」

 

「あぁ、そうだ。一方で中央区の主な移動手段は地下鉄だな」

 

 学生同士の戦闘が交通機関に影響しないよう配慮した結果だそうだ。さらに中央区は商業エリアと行政エリアに分かれており、その中にステージが点在する形になっている。二人はその中央区にある星武祭総合メインステージにやって来ていた。

 

「これがアスタリスク最大規模のメインステージだ。星武祭の決勝戦などはここで行われる」

 

「ほぇ~、でっけぇな」

 

 無駄にな、とユリスはくすくす笑う。収容人数は十万人程。星武祭開催期間中はここがギャラリーに埋め尽くされるというのだから恐ろしい。星武祭がエンターテイメントとして世界に受け入れられているかが窺える。

 

「観光名所としても有名だな」

 

 辺りを見てみると、ユリスの言葉を裏付けるように観光客達が記念写真を撮っている姿があった。

 

「ローマのコロッセオをモチーフにしているらしいが、ここまでくると別物だな」

 

 他にも大規模ステージが三つ、中規模のものが七つあり、小さなものだと数え切れないほどあるらしい。

 

「へぇ、んじゃ学生とかの決闘だとその小さいステージを使うのか?」

 

「市街地での決闘は原則、そうなってはいるが……余り守られてはいないな」

 

 つまり、礼儀正しくステージで決闘する生徒よりも、街中でドンパチおっ始める連中の方が遥かに多いのだ。

 

「ここに住んでる人たちが巻き込まれたりすることはないのか?」

 

「ここの住人は覚悟の上だ。観光客もそうだが、そういう誓約書にサインしない限りアスタリスクに入ることは出来ん。それに店や家が壊れた時にはある程度補償されるしな」

 

「んな危険冒してまでここに来たがるんだからどいつもこいつも救いようがねぇな」

 

「同感だ。まぁ、企業にすればアスタリスクに出店することがステータスや宣伝になるんだから仕方ない。それに中央区そのものが舞台にもなるからな」

 

「住みたくねー、んなとこ」

 

「全くだな」

 

 顔を見合わせ、小さく苦笑する二人。

 

「それでどうする? もう少し一帯を歩いてみるか?」

 

「んにゃ、ここはもういいな」

 

「では、次は行政区にある治療院に行くか。あそこには治癒能力を持った魔女(ストレガ)魔術師(ダンテ)がいるから、星武祭で重傷を負った時などに世話になるぞ」

 

「出来れば世話にはなりたくねぇな」

 

 もっとも、治療院で治療を受けられるのは命に関わったり、後遺症が残ったりするような重大な傷を負った者だけだが。骨折程度であれば、普通の治療に回されるのだそうだ。

 

「実際、治療院で治療を受けなきゃならないほどの怪我をする奴っているのか?」

 

「数は多くは無い。が、いるのは確かだな」

 

 流石アスタリスク、と凜堂は軽く慄く。

 

「そうだな、あとは……再開発エリアも見ておいたほうがいいだろう。あの辺りは一部スラム化しているからな。知らずに迷い込めば酷い目にあうぞ」

 

 スラムには様々な事情で学園に身を置けなくなった生徒や、外から逃げ込んできた星脈世代(ジェネステラ)の犯罪者などが巣食っているそうだ。有体に言ってしまえば、アスタリスクの掃溜めだ。

 

「そういやサーヤの奴。買い物に行った時にそんな感じのとこに迷い込んだことがあるって言ってたな。今にもぶっ壊れそうなビルとか、潰れた店ばっかが並んでるとこだって」

 

「……間違いなく再開発エリアだな。何故、買い物に行ってそんなとこに迷い込むんだ? 普通、買い物をするなら商業エリアだろうに」

 

「あいつの方向音痴は筋金入りだからなぁ……いや、俺もあいつのことをとやかく言えないか」

 

 アスタリスクに来た初日に女子寮の敷地内に入ってしまったことを思い出し、凜堂は小さく嘆息する。一応、凜堂の名誉のために言っておくが、彼は方向音痴なのではない。ただ、変なところに迷い込んでしまうだけなのだ。

 

「人はそれを方向音痴というのだがな」

 

「何か言ったか、リースフェルト?」

 

 何でも、とユリスは携帯端末を取り出し、空間ウィンドウで地図を開く。

 

「さて、次はどこを案内したものか」

 

「リースフェルト」

 

「ん? 何だ」

 

「腹減ったし昼飯にしねぇか?」

 

 凜堂の提案にユリスは携帯端末で時間を確認する。時刻は十二時ちょっと前。十分に昼飯時と言える時間帯だ。

 

「あ、あぁ、うん。確かにそんな時刻だな……」

 

 ここまで快活に凜堂を案内していたユリスの表情が曇った。言動も彼女にしては珍しくどこかはっきりとしていない。

 

「どした? もしかしてまだ腹減ってないとか?」

 

「いや、そう言う訳じゃないんだ。ただ、何というか店がな」

 

「店? んなもん、商業エリアならいくらでもあるんじゃないのか? それとも、滅茶苦茶高い店ばっかなのか?」

 

 観光地ということもあり、アスタリスクにある店の大体は価格をかなり高めに設定している。だが、仮にも学園都市なのだから、学生が気軽に利用できる親切価格の店もあるはずだ。

 

「そういうことではなくてだな、その……すまん!!」

 

 ユリスはいきなり頭を下げ、凜堂の目を白黒させる。

 

「その、私はあまり、と言うか、ほとんど商業エリアに行ったことが無いんだ。だから、こういった時、どの店に案内すれば良いのか分からなくて」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ、情けない話だがな……だ、だがな、一応ネットで調べてきたのだぞ!」

 

 言いながらユリスは携帯端末を操作していくつかのウィンドウを表示させた。俗に口コミと呼ばれるサイトのページだ。

 

「何だ、調べてるならそこでいいんじゃないか……」

 

 凜堂の声が尻すぼみに小さくなっていき、最終的にはあれま、と目を皿のように丸くする。というのも、ユリスがチェックした店というのがアスタリスクの中でもトップレベルの高級店だったからだ。観光地価格なんて生易しいものではなく、一般的に学生が昼ご飯に使う予算と桁が二つほど違う。そもそも、予約無しで入れるとは思えない。

 

「……リースフェルト。ここに案内してもらっても、俺が頼めるのは水くらいだぞ」

 

 何ともいえない表情の凜堂にユリスは慌てた様子で弁解した。

 

「こ、これが一般的な価格でないことくらい私だって分かっているぞ! で、でも、知っている名前で検索して出てきたのがこれくらいしか無かったんだ! いくら評判が良くても、行ったことも見たことも無いところに連れて行くのは不安だったし……」

 

 言われてみて、凜堂は改めて空間ウィンドウと睨めっこする。確かにどの店も一度はテレビなどで紹介されたことのある有名な高級店の支店だった。

 

「ま、分かんねぇなら仕方ねぇか。じゃ、適当に見つけてそこで食べようや」

 

「そ、それでいいのか?」

 

「お前はどうなんだ?」

 

「勿論、構わないが……怒ってないのか?」

 

 不安そうに訊ねるユリスに凜堂ははぁ? と首を傾げる。

 

「何で俺が怒らなきゃいけないんだよ?」

 

「だって、これは私の不手際だろう? だから……」

 

 もごもごと口を動かすユリスを凜堂はまじまじと見つめた。そして真面目だねぇ、としみじみとした様子で腕組みをする。

 

「真面目っつぅか頑固っていうか……真っ直ぐすぎるな、お前は。肩が凝らねぇのか、その生き方?」

 

「……これが私の普通なんだ」

 

 むくれた表情をしながらユリスはそっぽを向いた。それに構わず凜堂は言葉を続ける。

 

「何でもかんでも背負いこんで、疲れないのか? いつか、ばっきり折れるぜ、お前」

 

「私はそうした重さを感じながら生きていたいんだ。それが私だからな。仮にお前の言うとおりになったとしたら、私がその程度の人間だったということだ……言わせてもらうが、お前の方がよっぽど心配だぞ、私は」

 

 いきなり話の矛先を向けられ、凜堂はきょとんとした。

 

「飄々としてて掴み所がない。風船、いや、まるで雲だな。風に吹かれてどこまでも気ままに飛んでいく雲だ」

 

「そうなぁ。今まで自分のやりたいことばっかやってて、風任せに生きてきたからなぁ」

 

 けらけら笑う凜堂にユリスは深々とため息を吐く。

 

「もう少し地に足をつけたらどうだ? そうすれば、そのだらしない顔も引き締まるというものだ」

 

「そうしなきゃいけない時がくればそうするさ。ここで喋っててもしょうがないし、商業エリアに行こうぜ」

 

 ユリスはまだ何か言いたげだったが、それ以上は何も言わなかった。そのまま二人は商業エリアの中でもっとも賑わっているメインストリートへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「休日ってだけあって、一杯いるな」

 

 綺麗に整備された石畳風の道は学生達であふれ返っていた。皆、凜堂やユリスと同様に私服だが、それでも学生だと分かったのは彼らが校章を身につけていたからだ。

 

「学生は休日でも校章をつけることを義務付けられているからな」

 

 道の両脇には様々な店が並んでいる。その中にはいくつか飲食店があり、値段の方も先ほどユリスが提示した店に比べれば遥かに良心的だ。

 

「ここらに飯屋が集まってるのか……適当に決めるか? あ、リースフェルト?」

 

 振り返ってみるが、隣を歩いていたはずのユリスの姿が無い。凜堂がユリスの名を呼びながら周囲を見回すと、少し戻ったところに薔薇色の髪を靡かせる生徒が一人。

 

「どした? 何か気になる物でもあるのか?」

 

 歩み寄りながら声をかけると、ユリスは目をキラキラさせながら凜堂を見た。

 

「高良、昼食はここでいいか?」

 

「ここ?」

 

 首を傾げながらユリスが見ていた看板に視線を向ける。所謂、ハンバーガーチェーン店という奴だ。世界的に有名という点においてはユリスがチェックしていたものと変わらないが、値段に関しては雲泥の差があった。もう一度、凜堂はここ? と訊ねる。返ってきたのは首肯だった。

 

「お前がいいんなら俺はそれでいいんだが」

 

「なら、ここで食べよう!」

 

(まぁ、お姫様だしこういう店に一度も入ったことないのかもな)

 

 と、凜堂は思っていたのだが、それにしてはユリスの注文や支払いは堂に入ったものだった。凜堂自身もセットメニューを頼み、二人はテラスにあるテーブルに座った。

 

「……お前って本当にお姫様なのか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

 どういう意味って、と凜堂は苦笑する。慣れた手つきでハンバーガーの包装紙を剥がし、何の躊躇いも無くかぶりつく。それは凜堂のイメージするお姫様というものから余りにもかけ離れた光景だった。

 

「お姫様がそんなうまそうにハンバーガーを食べるとは思えんのだが」

 

「それは偏見だ。実際、お前の目の前に実例がいるんだ。納得しろ」

 

 納得したら、それはそれで全世界のお姫様から非難を浴びそうだ。凜堂は何も言わず、ハンバーガーを食べ始める。子供のから何も変わらない、グローバルな味だ。

 

「友人達に教えてもらったのだ」

 

 ハンバーガーを半分ほど食べ終えてから、ユリスはどこか郷愁を漂わせながら呟いた。友達? と首を傾げる凜堂。

 

「友達いたのかお前?」

 

「……果てしなく失礼な男だなお前は。確かにここにはいないが、自分の国にいる」

 

 憮然とするユリスに凜堂は頷く。そしてピンと来た。

 

「あぁ、あの手紙か」

 

「むごぉっ!!」

 

 喉を詰まらせ、見る間にユリスは顔を青くさせる。すぐに一緒に注文していたコーラを口に含み、どうにか危機を脱した。

 

「あ、危なかった……そ、それより何でお前が」

 

「その友達以外、お前に手紙を出す奴がいるのか?」

 

 凜堂の問いにユリスは言葉に詰まりながら顔を真っ赤にする。信号機のようにはっきりしてて、実に分かりやすい。それ以上突っ込んだ事は言わず、凜堂はハンバーガーを食べ終えた。

 

「ま、何だっていいさ。ところで、耳寄りな情報がある、って言ったら聞くか?」

 

「耳寄りな情報? 何だそれは?」

 

「お前が襲われたことに関しての話だ」

 

 凜堂の言葉にユリスは表情を引き締める。凜堂も居住まいを正してユリスと向かい合い、先日クローディアから聞かされたことをほぼそのまま伝えた。ただ、クローディアからの頼み事に関しては言わなかった。教えればユリスがどんな反応をするか、想像に難くなかったからだ。

 

「なるほど、他学園の手引きか。よくある話だな」

 

 それほど驚くわけでもなく、ユリスはコーラを飲みながら頷いた。

 

「多分、私が最後のターゲットなのだろうな。だから姿を晒してまで仕留めに来た」

 

「まぁ、そういうこった。暫くは一人での外出や決闘は止めておいたほうがいいぜ」

 

 襲撃者にとっちゃ絶好のタイミングだからな、と言いながら凜堂は目の前の少女がどう答えるか想像できていた。

 

「断る。何故、私がそんな卑怯者のために自分の行動を曲げねばならん」

 

「DE・SU・YO・NE」

 

 予想通り過ぎる返答に凜堂は薄く笑う。

 

「好きにすればいいさ。お前の人生はお前のもんだ。思ったとおりに生きて、自由にくたばればいい」

 

「言われるまでもないな。私の道は私が決める。意思も行動もな」

 

「……ほぉ、相変わらず勇ましいじゃねぇか」

 

 ここでユリスの後ろから巨大な人影が現れた。

 

「立ち聞きとはいい趣味だな、レスター」

 

 振り返りもせず、ユリスはばっさりと切って捨てる。あれま、と凜堂も少し驚いた表情でレスターを見上げていた。休日にこんな場所で鉢合わせとは余程縁があるらしい。もしくはレスターがユリスをストーキングしているか。

 

「好きで聞いてたわけじゃねぇよ、偶々だ」

 

 偶々ねぇ、と口の中で呟きながら凜堂はレスターの後ろを見る。やはりと言うべきか、そこには取り巻き二人の姿があった。

 

「話は聞かせてもらったぜ。謎の襲撃者とやらに襲われたらしいな。流石に恨みを買いすぎてるんじゃねぇか」

 

「私は人に恨まれるようなことはしてないぞ」

 

 これにはレスターも呆れた表情を浮かべ、凜堂は小さく苦笑しながら肩を竦める。

 

「そういう態度が周りの人間を敵にするって分からねぇのか?」

 

「分からんし分かるつもりもない。私は自分の正しいと思ったことをやっているだけだ。それで敵が出来るのなら、相手になるまでだ」

 

「大層な自信じゃねぇか……だったら、今ここで戦ってもらおうじゃねぇか」

 

 結局それが目的か、とユリスは大きなため息を吐く。

 

「何度言えばお前は私の言葉を理解できるんだ? 貴様の相手をする気はない、と言っている」

 

「いいから俺と戦えって言ってんだよ!!」

 

 怒鳴りながらレスターは手をテーブルに叩きつける。非常に大きな音がしたため、利用客は勿論、道行く人たちも何事かと見ていた。

 

「レスターさん! 幾らなんでもこんなところで、それも同意なしの決闘はまずいですよ!!」

 

「サイラスの言うとおりだよレスター! 下手に騒ぎを起こしたら警備隊が……!」

 

 サイラスとランディが必死で宥めているが、レスターに聞く様子は欠片も無い。

 

「おいおい、こっちは食事中だぜ? 決闘をやるにしたって時と場所を考えろよ」

 

「手前には話してねぇ、黙ってろ……」

 

 凜堂と頑なに目を合わそうとせず、レスターは唸るように言った。そうかい、と凜堂はレスターから視線を外してポテトを摘み始める。

 

「ならご自由に。それでお前の評判がどん底に落ちようが俺には知ったこっちゃねぇからな」

 

「……何だと?」

 

「今ここでリースフェルトに喧嘩を売ったら、リースフェルトに不意打ちを喰らわせようとした連中と同類に見られるって言ってんだよ。んなことも分かんねぇのか単細胞の塊」

 

 一瞬、レスターの動きが止まる。そして凜堂の方へ振り返ると、握り締めた拳を凜堂の頬に叩き込んでいた。派手な音と共に凜堂は椅子ごと倒れ、後ろにあるテーブルへと背中から突っ込んた。

 

「高良!? レスター、貴様!」

 

 ユリスが眦を吊り上げて立ち上がるが、既にレスターはユリスを見ていなかった。

 

「小僧……言うに事欠いて、俺様が鼠みたいにこそこそ隠れ回ってる連中と一緒だと? ふざけるな!!」

 

 ボキボキと拳を鳴らしながらレスターは凜堂へと歩み寄っていく。一方、凜堂は軽く呻き声を上げながら立ち上がったところだった。

 

「いいぜ。舐めた口を叩くなら、まず手前から叩き潰してやる!!」

 

 怒声と共に拳を繰り出す。対して凜堂は身動ぎ一つしない。岩のように固められた拳が直撃する寸前、凜堂は右手を上げてレスターの一撃を受け止めた。

 

「何っ!?」

 

「戦士としての誇りがあるなら……」

 

 目を見開いて驚愕するレスターに構わず凜堂は言葉を続ける。

 

「まずは戦士らしく振る舞ったらどうだ、マクフェイル?」

 

 メキメキ、とレスターの拳から剣呑な音が響き始める。レスターは凜堂を振り解こうとするが、押しても引いてもびくともしない。凜堂はレスターの目を真っ直ぐ見据え、万力の如き握力でレスターの拳を捉えていた。

 

「どう頑張っても今のお前は戦士には見えないぜ、マクフェイル。自分の思い通りにならないからって、怒鳴り散らして物に当たる。まるで餓鬼だ」

 

 一瞬だけ視線をユリスへと移し、レスターを解放する。

 

「一回、自分の行動を振り返ってみるんだな。そして考えろ。今の自分がリースフェルトに挑むに足りうる戦士なのかどうか、な」

 

「手前……」

 

 凄まじい形相で凜堂を睨みつけるレスターを背後から取り巻き二人が必死で押し留めていた。

 

「落ち着いてレスター! レスターの強さは皆が分かってるから! レスターはいつだって、どんな相手でも正面から正々堂々と叩き潰してたじゃないか! こんな奴の言うことなんか気にする必要ないって!」

 

「そ、そうですよ! 決闘の隙や話している最中を狙って攻撃するなんて卑怯な真似、レスターさんがするはずないってみんな分かってますから!!」

 

 ランディとサイラスの必死の説得でもレスターは未だに怒りが収まらない様子だったが、やがて踵を返して大股に去っていった。ランディは慌ててレスターを追いかけ、サイラスは凜堂とユリスに一礼してから二人の後に続く。

 

「ったく」

 

「大丈夫か?」

 

 ぶつかった衝撃で倒れたテーブルと椅子を元に戻している凜堂にユリスが声をかける。問題ない、と凜堂は血の混じった唾を吐き出しながら答えた。

 

「そうか……しかし、戦士としての誇りがあるなら戦士らしく振る舞え、か。中々言うじゃないか、お前も」

 

「そんな大層な事じゃないさ。大きな力を持つ者として当然のことだろ」

 

 何でもないことのように凜堂は言う。くくく、とユリスは小さく笑った。

 

「底の知れない奴だ、そして食えない」

 

「お褒めに預かり光栄です、プリンセス」

 

 そう言って、凜堂は道化のように大袈裟にお辞儀して見せた。




お久しぶりの北斗七星でっす。

投稿、遅れて申し訳ないです。楽しみにしていた方(奇跡的にいたらだけど)すみません。理由はありません。強いて言うならモチベーションの低下? ま、んなこたぁどうでもいいです。

こんな感じですが、これからもお付き合いしていただけると嬉しいです。


そう言えば、最近艦隊これくしょんなるゲームを始めました。最近のマイブームは艦これのBGMを消して、代わりにパシフィック・リムのメインテーマを流す事です。一度、試してみてください。凄く勇ましくなるからw

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