学戦都市アスタリスク 『道化/切り札』と呼ばれた男   作:北斗七星

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危機! じゃないかも

ー力が欲しい?ー

 

 その言葉は問いかけというより、誘惑に近かった。聞く者の心を蕩かせ、思考を麻痺させる魔性の声。心に直接聞こえてくるかのような声に凜堂は時間をかけ、静かに頷いた。

 

(力なら欲しいな)

 

 だが、と一拍置いて凜堂はもう一度口を開く。

 

(その力は要らねぇ)

 

 護りたいものを護るために絶大な力が欲しい。己自身の根底にある渇望を無理矢理抑えつけながら凜堂は答えた。渇望を押しのけ、本能が凜堂に訴えていた。今、自分に差し出されようとしている力は一人の人間が扱えるようなものではないと。

 

 この力は猛毒だ。いたずらに手を出せば、凜堂の心身を侵して行くだろう。『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』に乗っ取られてしまったイレーネのようになってしまうのは火を見るよりも明らかだ。いや、それよりももっと酷いことになる。

 

 自分が自分でなくなる、そして大切な人を傷つけてしまう。そうなってしまうと、妙な確信が凜堂にはあった。原因の分からない恐怖を感じながら凜堂は誘いを振り払った。

 

(俺が欲しいのは護るための力……傷つけるための力なんて必要ない)

 

ークスクスクス……ー

 

 蠱惑的な笑い声が聞こえてくる。それも徐々に小さくなっていった。

 

ーまた来るよ……ー

 

 笑い声が完全に途切れる寸前、凜堂ははっきりとその声を聞いた。

 

 

 

 

「……夢、だよなぁ」

 

 見慣れつつある寮の部屋の天井を見上げながら凜堂は呟く。ベットから上半身を起こし、自分の状態を確認する。バーストモードを無理に維持したツケは高くついたようで、試合から一晩経った今でも体の節々が痛い。動けないほどではないので普通に戦う分には問題ない。しかし、『無限の瞳(ウロボロス・アイ)』や『黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)』を使っての戦闘は無理だろう。仮に使えたとしても、それはほんの一瞬だけだ。

 

「ったく、後先考えずに無茶するもんじゃねぇわな……う~ん」

 

 組んだ両手を逆さにしながら大きく伸びをする。ぴきぴき、と体中が痛むが、ストレッチを終わる頃には和らいでいた。

 

「さって、今日も頑張っていきますかい」

 

 ベットから下りようとしていた凜堂の動きが止まる。ゆっくりと片手を持ち上げ、純星煌式武装(オーガルクス)が入り込んだ右目を撫でた。

 

「お前なのか?」

 

 凜堂の問いに明確な答えは返ってこない。ただ、仄かに右目が熱くなっただけだ。少しの間、凜堂は右目を覆っていたが、考えても仕方ないと気持ちを切り替えて着替えを始めた。

 

 

 

 

「よくもまぁ、たったの一日でこうも広まったものだ」

 

 鳳凰星武祭(フェニックス)十一日目。シリウスドーム控え室に入った凜堂を向かえたのは仏頂面を浮かべたユリスだった。その周囲には複数の空間ウィンドウが浮かんでいる。どれも、昨日の凜堂達の試合に関するものだった。

 

「お早うさん、ユーリ」

 

「お早う、凜堂。自分の弱点が世界中に広められた気分はどうだ?」

 

 開口一番きっついわねぇ~、と苦笑いを浮べながら凜堂はユリスの向い側にソファーに腰を下ろす。いい気分ではないのは確かだ。

 

「現状はご覧の通りだ。報道のほうはまだ漠然とした憶測だけだが、各学園はそれぞれの諜報機関を使ってより正確な情報を掴んでいるだろう」

 

「本当、お疲れ様です。どこまでバレとるかねぇ」

 

 口を動かしながら凜堂は空間ウィンドウを数枚引き寄せる。どれも鳳凰星武祭について書かれているが、そのほとんどに凜堂のことがでかでかと書かれていた。

 

「『星導館の切り札に重大な弱点!?』、『優勝候補の能力は制限時間つき?』ね……ほっとけ」

 

 報道の方では辛うじて断定されてないが、各学園の諜報機関はきっちりと仕事をしているはずだ。

 

「どの学園もクローディアと同じくらいのことは知っていると考えた方がいいだろう」

 

『無限の瞳』と『黒炉の魔剣』を同時に使用できる時間は限られている。このことを知っているのはユリス、紗夜、綺凜、レスターだけだ。昨日の試合後、見舞いに来てくれたクローディアに反動のことを話したのだが、前からある程度知っていたようだ。

 

『申し訳ありません。ですが、これも私の仕事ですので』

 

 そう言ってクローディアは頭を下げていた。もっとも、このことに関して凜堂にとやかく言うつもりは無かった。強いて言うならどうやって知ったのかを教えて欲しかったが、クローディアはそれ以上何も口にしなかったので分からない。ある程度のことは推察できるが。

 

「確か……『影星(かげぼし)』だっけか、星導館の諜報機関って? そこが情報集めてたんかね」

 

 以前のサイラスの一件にも噛んでいたようだし、そこが動いていると見て間違いない。どの学園の諜報機関が優れているのか凜堂には分からないが、他と比べて著しく劣っているところは無いと思っていいはずだ。だとすればユリスの言うとおり、クローディアと同じくらいのことを知っていると考えるのが妥当だろう。

 

「正確にではないが、制限時間に関してはばれてると考えたほうがいい。ウルサイスの試合を基準にすれば、それくらいは考察できる」

 

 ですよねー、と凜堂は諦めのため息を吐く。試合後、あれだけの観衆の前でぶっ倒れたのだ。ばれてないと思うほうがおかしい。

 

「おまけに制限時間を超えると体を動かすのもままならなくなることがばれている始末……」

 

「まぁ、お前の助けがなきゃ歩けない上に、『無限の瞳』がある右目から血涙流してたからな。この状態で元気に体を動かせるとは思わんだろ」

 

 記事の一つに関係者談というものがあり、そこには凜堂の反動についてが載っていた。具体的な時間は示されてないが、『無限の瞳』を使うとダメージが蓄積して動けなくなる。その上、もう一度、発動させるためにはそれなりのインターバルが必要だということも、あくまで伝聞で知ったという風に書かれていた。

 

「その噂の出所はレヴォルフのようだぞ」

 

「そうなのか?」

 

「クローディアの言葉だ。間違いはあるまい」

 

 イレーネも言っていたが、レヴォルフの生徒会長は以前にも『無限の瞳』の使用者を見ているようだ。ならば、反動のことを知っていてもおかしくはない。

 

「『悪辣の王(タイラント)』め。わざわざ広まるように噂をリークするとは……二つ名は伊達ではない、か」

 

「そりゃあ、そんなことばっかやってるからおっかねぇ名前で呼ばれてんだろ」

 

 皮肉っぽく口元を歪めるユリスに凜堂は米人のように両手を上げて見せた。アスタリスク中に広まっている噂、イレーネ自身の口から語られた人物像からレヴォルフの生徒会長が善性の人間でないことは容易に想像できた。

 

「アドヴァンテージがあるとすれば、反動が発生するのは『無限の瞳』と『黒炉の魔剣』を併用した時だけであって、別に『無限の瞳』を単体で使う分には問題ないというのがばれてないことだな。で、実際のところどうなのだ? どこまでやれる?」

 

 空間ウィンドウを消し、ユリスは凜堂に訊ねた。

 

「普通に戦う分にゃ問題ないかね」

 

 今朝方、起きた時に感じていた体中の痛みもほとんど沈静化している。試合前までには問題ないくらいには回復できるはずだ。

 

「ただ、こいつらを使うってなると無理だな」

 

「片方だけというのも厳しいか?」

 

「出来ないこたぁねぇけど、死ぬほど頑張って十何秒ってくらいだな」

 

 昨日の試合で無理をしすぎた。やっぱ、後先考えなさすぎたと肩を落とす凜堂を今更後悔するな、とユリスは小突いた。

 

「そういえば、『覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)』の能力をコピーしたあの力。あれは何なんだ? お前、どうやってあんな芸当を?」

 

 凜堂の制限時間や反動などが大きく取り上げられていたが、凜堂が覇潰の血鎌の能力を使ったこと。これも大きな話題を呼んでいた。もう一度、ユリスは再度空間ウィンドウを開いて別の報道サイトを映す。こちらは凜堂の制限時間と反動ではなく、凜堂が覇潰の血鎌の能力を使ったことが見出しとして出されていた。

 

「実はお前は能力を奪う事の出来る魔術師(ダンテ)だとか、『無限の瞳』か『黒炉の魔剣』のどちらかが関わっているだとか、他にも掲示板などに様々な意見が書き込まれているが、結局のところどうなんだ?」

 

 不特定多数の人間が多種多様な推察をしているが、どれが真実なのかは定かではない。それも当然のことで、本人自身がよく分かってないのだ。肩を竦めて見せる。

 

「俺の方が聞きてぇよ。気付いたら出来た、とかそんなレベルだ。分かってんのはこいつ等が手を貸してくれたってことだけだ」

 

『無限の瞳』と『黒炉の魔剣』が力を貸してくれた。何とも凜堂らしい表現だった。そうか、と顎に手を当てながらユリスは考え込む。

 

「念のために聞いておくが、『覇潰の血鎌』の力は試合で使えそうか?」

 

「百パー無理」

 

 はっきりと凜堂は断言する。

 

「万全の状態でどうにか使えるって感じだぜ。反動のダメージが残ってる状態じゃ絶対に無理だ」

 

「やはり、そうか。使えれば戦術に大きく幅が出来たのだが、贅沢を言っていられる状況ではないな。現状で打てる最善の策を立てるとしよう」

 

「それが健全だぁね」

 

 ユリスが空間ウィンドウに別のものを映し出す。凜堂も彼女の隣に移動して空間ウィンドウを覗き込んだ。今度は報道関係のものではなく、二人の対戦相手の情報が表示されている。浮かび上がったのは精悍な顔をした二人の青年。校章は黄龍。即ち界龍(ジェロン)第七学院の生徒だ。

 

「私達の次の相手はこの界龍の二人だ。それぞれの序列は二十位と二十三位。三回戦でも界龍の者とは戦っているが、今回は別格と考えていいだろう。何せ、かの『万有天羅(ばんゆうてんら)』の直弟子だからな」

 

「界龍の生徒会長だよな。まだ九歳かそこらっていう」

 

 俄かには信じ難い事だが、界龍で一番強いのはその少女なのだそうだ。彼女について参考になるような試合映像はほとんど存在しない。理由は二つ。そもそもの映像が少ない上に、仮にあったとしても全てが一瞬で終わってしまっているため彼女がどれ程のものなのか測れないのだ。

 

「『万有天羅』について詳しいことは分からん。界龍は生徒数が多いこともあって情報が漏れ易いのだが、『万有天羅』に関しての情報は不気味なほどない。精々、界龍において伝説的な偉業を成した者が冠した二つ名だということくらいだ」

 

「つまり、分かってるのは『ぅゎ ょぅι゛ょ っょぃ』ってことだけか」

 

「……何を言ってるんだお前は?」

 

「ごめんなさい、何でもありません」

 

 ユリスにゴミを見るような目で見られ、すぐに心折れる凜堂だった。

 

「次、何かアホなことを言ったら引っ叩くぞ……とにかく、次の相手は油断ならぬ相手ということだ。と言っても、お前が本来の調子であればそこまで恐れる敵でもないのだがな。少なくとも、イレーネ・ウルサイス程でないしな」

 

「でしょうね」

 

 というか、イレーネクラスの使い手がゴロゴロいたら怖い。

 

「だからといって、今の我々が勝てるかと言われればそれはまた別の話だ」

 

「そいつはそうだ……ん?」

 

 ユリスの言葉に頷きかけたところで凜堂はあることに思い当たる。凜堂は顎に手を当て考え込むが、隣で空間ウィンドウを真剣に見るユリスはその事に気付かなかった。

 

「一対一なら私も遅れを取るつもりは無いが、二人同時に相手取るとなると話は別だ。この二人は接近戦に特化しているからな。お前達との特訓で私も多少近接戦闘の腕が上がっているはずだが、所詮は付け焼刃。この二人に比べれば遥かに劣っているだろう。格下ならともかく、これだけの手練に接近されると厳しいな……って、おい、聞いてるのか?」

 

 話を聞かずに思考に没頭している凜堂にユリスは表情を険しくさせた。そんな事お構いなしで考え事を続けること数秒、凜堂は何ともいえない表情をしながら顔を上げる。

 

「……そういやそうだった。何だって俺、こんなこと忘れてたんだ? 自分のことだいでででっ!!??」

 

「ひ、と、の、は、な、し、を、き、け!!」

 

 一言一句区切りながらユリスは凜堂の耳を引っ張った。これ以上やったら耳千切れるんじゃ、というところでユリスは凜堂を解放する。目を白黒させながら耳を擦る凜堂の目の前にユリスは仁王立ちした。がっしりと腕を組み、鬼も泣き出しそうな顔をしている。

 

「凜堂。貴様、人が真剣に話してる時に考え事とはいい度胸だな。それとも、私の話よりも大事なことでも考えていたのか?」

 

「ユーリの話よりも大事って言うつもりはねぇけど、多分、同じくらいに重要なことだと思うわ」

 

 何だと、とユリスは眉を持ち上げた。

 

「ユーリ。俺ってさ、アスタリスク(ここ)に来てから『無限の瞳』と『黒炉の魔剣』を使い始めたんだよ」

 

「……それはそうだろう。それがどうした?」

 

「うん、だからさ。俺、アスタリスクに来てからほとんど純星煌式武装(オーガルクス)だけ使って戦ってきたんだよ。少なくとも、出回ってる映像の大部分は俺が純星煌式武装を使って戦ってるやつだ。こいつで戦ってるのなんて、リンとの一戦くらいなもんだ」

 

 凜堂は愛用している棍を組み上げ、ユリスに見せた。だからそれがどうした、と言いかけた所でユリスは凜堂の言わんとしていることに気付いたようで、得心したように頷く。

 

「確かにそうだな。それに綺凜との一戦もお前は『無限の瞳』を使っていた。魔眼と魔剣、どちらも使わない素の状態で戦ったのなんて、アスタリスクに来た初日の私との決闘くらいだ」

 

 星導館の序列一位、『双魔の切り札(ディアボロス・ジョーカー)』としての凜堂は名実ともにアスタリスク中に知れ渡っている。だが、双魔を抜いた彼、即ちただの『高良凜堂』の実力を知る者はアスタリスクにほとんどいないのだ。

 

「二つ名に双魔とあるだけに、誰もがお前の持つ『無限の瞳』と『黒炉の魔剣』に目を向ける。確かに二つの純星煌式武装というのは目を引くが、あくまでただの武器に過ぎない。真価はこの二つを扱うお前自身にある。こんな単純なことを失念していたとは……というか、お前も何でこんな大切な事を忘れていたんだ?」

 

「いやぁ、アスタリスクに来てからお前と出会ったり、リンと決闘したり、鳳凰星武祭に出場したりとイベント目白押しだったからさ(※ただの作者の描写不足です)」

 

 あはは、と頭を掻く凜堂にため息を吐くも、厳しいものになるであろう今日の試合に希望を見出せたユリスの表情は明るかった。

 

「よし。では、作戦を立てるぞ。凜堂、今のお前に出来ることを全て教えてくれ」

 

「あいよ~。勝ちに行きましょうや」

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁーて、皆様お待ちかねの注目カード、五回戦最終試合! 昨日の四回戦でレヴォルフ黒学院の序列三位の『吸血暴姫(ラミレクシア)』、イレーネ・ウルサイス選手との激戦を征した星導館学園の序列一位高良凜堂選手と同じく序列五位ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト選手の入場です!』

 

 ステージに上がった二人を、今となっては聞き慣れた実況の声と観客の大歓声が出迎える。観客たちのテンションは半端ではなく、歓声は今までにないほど大きかった。決勝が近いからという理由もあるのだろうが、彼らは別のことが気になっているのだろう。

 

 高良凜堂に関する情報が真実なのか否か。観客の興味はこれに尽きた。

 

『そしてもう一方のゲートから入場しますは界龍第七学院の(ソン)選手と(ルオ)選手! この二人はチャムさんの後輩にあたるわけですが、今回の試合をどう見てます?』

 

『そうっすねー。ぶっちゃけ、今アスタリスク中に報道されてることが事実なのだとしたら、宋選手たちのペアが有利だと思うっす』

 

『その辺りは観客の皆様も気になっているところでしょうね。それにウルサイス選手との試合で高良選手が見せたあの力。あれは何だったんでしょうか?』

 

『そこも気になるとこっすね~。何分、情報が少なすぎて憶測の域を出ないんすよ』

 

 実況と解説のやり取りを聞き流しながら凜堂は体に問題ないかを確認し、小さく頷く。反動のダメージで試合中、動けなくなるという事はなさそうだ。

 

「高良くん」

 

 不意に声がかかる。見れば、対戦相手の一人が歩み寄ってきた。界龍ペアの宋とかいうほうだ。凜堂とユリスに比べて年上で、服の上からでも容易に分かるほど引き締まった体をしている。

 

「何か用か?」

 

 若干の警戒を込めた視線を向けるが、さして気にする様子も無く辮髪の青年は手を差し出す。

 

「噂は聞いている。その諸々の真実がどうあれ、私も羅も全力で君達の相手をするつもりだ。本音を言うなら、全力の君と一対一で拳を交えたかったのだが……これはタッグ戦の『鳳凰星武祭』だ。悪く思わないでくれ」

 

「お、おう。こちらこそよろしく」

 

 予想外の言葉にきょとんとしながら凜堂は自身も手を出し、宋の手を握る。がっしりと握られた手は熱く、宋の誠実さと強さを伝えてくるようだった。

 

 凜堂の手を離し、宋は踵を返して相方の羅の下に戻っていく。羅も宋と同じくらいの年齢に見えた。体つきや背丈は宋に似ているが、短く刈り込まれた黒髪と手に握られた棍が印象的で、その顔つきは宋同様に実直そのものだ。棍は(流石に六本の鉄棒を繋げてる訳ではないが)凜堂の使っているもの同様に金属で出来ている。煌式武装(ルークス)ではないようだ。

 

「成る程。まさに武人といった佇まいだな」

 

「そうね~。わざわざあんなこと言ってくるなんて律儀なこって」

 

 二人は感心したように囁きながら相手ペアを見た。

 

「ガラードワースや界龍の手合いはあぁいったタイプが多いようだ。何にせよ、あの二人はお前が純星煌式武装を使えないかどうか試してくるだろう。そしてすぐに見抜く」

 

「ですよねー」

 

 握った手から伝わってきた力強さは本物だった。それに星辰力(プラーナ)の練り込みも並ではない。才能ではなく、長い年月をかけて培った努力の末に会得したものだろう。場数も凜堂達以上に踏んでいるようだし、彼らの目を欺くのは余程の策士でなければ無理だ。

 

「もっとも、お前自身を見極めてはいないようだが」

 

 で、あるが、高良凜堂という人間は初対面で見極めるには飄々としすぎている。

 

「お前が本気で戦っている時の映像も見ているはずだが、スクリーン越しで分かるほどお前という人間は浅くない。それにアスタリスクにいる殆どの者はお前に対して二つの純星煌式武装を使うという先入観がある上に普段の言動が序列一位とは思えんほど軽すぎる。余程、深く関わってない限り、お前自身の力を見抜ける者はいないだろう。ちゃらんぽらんな生き方も時として武器になるのだな」

 

「なぁ、ユーリ。それ褒めてんの、貶してんの? どっち?」

 

 うんうん、と頷くユリスに問いかけるも返事はなかった。もうちょっと生活態度改めようかなぁ、と落ち込み気味の凜堂を尻目に試合開始の時は刻一刻と迫ってくる。

 

「しゃきっとしろ。本当に変な所で打たれ弱い奴だな、お前は……今更確認するのもどうかと思うが、本当にこの作戦でいいのか? 相手の実力を考えると、お前にかかる負担は相当なものになるぞ」

 

「ま、やるしかないっしょ。それに別の策を使うにしたってもう遅いだろ」

 

 鉄棒を棍に組み上げ、凜堂は意識を切り替える。余裕を持って勝てるほど甘い敵ではない。ユリスもそれ以上は何も言わず、アスペラ・スピーナを起動させた。

 

『いよいよ試合開始の時間です! この五回戦を突破して、準々決勝へと駒を進めるのは星導館か、それとも界龍か!?』

 

 テンションMAXの実況の声に少し遅れ、それぞれの校章が試合開始を告げる。

 

「『『鳳凰星武祭』五回戦第八試合、試合開始(バトルスタート)!』」




 改めましてこんばんわです。遅くなってし訳ないです。今後の展開をどうしようか考えたり、無双7エンパイアーズが面白かったり、オメガルビーでタツベイとかの厳選をやってて書く時間がありませんでした。

 今回の話をお読みになって、何言ってんだこいつと思われた読者様。要するにこういうことです。

 凄く強い武器を使って勝ってる奴がその武器を使えなくなった。だったら楽勝じゃんひゃっほーい。と思ってたけど、実はそいつも強かった……って感じです。俺の駄文で伝えられてるだろうか……。


 次はなるだけ早く書けるように頑張ります。書き直す必要が出てきたらそん時に対処すりゃいいや。では、また次で。























さって、次はヒトカゲの厳選やらなきゃ……それ以前に手に入れなきゃ。

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