学戦都市アスタリスク 『道化/切り札』と呼ばれた男   作:北斗七星

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 日間ランキングに上がったのが嬉しくて書いていたら何時の間にか書きあがっていました。


 我ながら何と浅ましい……。


謁見

「フローラの嬢ちゃんが?」

 

 凜堂の確認に空間ウィンドウ内のユリスは一つ頷いた。顔を洗い、寝起き最悪の状態からどうにか脱した凜堂を待っていたのはユリスからの着信だった。

 

「そら、別に構わないけどよ。フローラの嬢ちゃんは何だって俺なんかを昼食に誘うんだ?」

 

 まだ眠っている英士郎を起こさないよう声を小さくしてユリスに訊ねる。

 

『うむ。どうしてもお前に聞きたいことがあるそうだ』

 

 小さく調節された音量で携帯端末から発せられるユリスの声。聞きたいことって何よ? という凜堂の問いにユリスは首を振る。ユリス自身、詳しいことは聞かされていないようだ。

 

「俺に聞きたいことねぇ……分かった。で、俺はどこに行けばいいんだ?」

 

『すまんな。では、商業エリアまで出てきてくれるか? ただ、メインストリートの方は混雑が酷いからな。どこか、落ち着いた場所のほうがいいのだろうが……生憎と私はそのあたりに疎くてな』

 

 知ってるから安心しろ、という凜堂の返答にユリスは不満そうに頬を膨れさせる。これでも学ぼうとはしているんだぞ、と何やら方向性を間違えた努力をするユリスに苦笑しながら凜堂は携帯端末を操作してどこか良さげな場所はないかと探した。

 

「俺もそこまで詳しくはないしな……基本、出歩くこともないし、今はステージと学園を往復してるだけだし」

 

 アスタリスクに訪れてから今まで、凜堂は市街に遊びに出たことはほとんど無かった。いくら『鳳凰星武祭(フェニックス)』のための特訓に時間を費やしていたとはいえ、青春の一ページに娯楽のごの字も無いのはどうなんだと凜堂は少し考え込む。

 

「ふぁ~ぁ、よく寝たっと……どした、凜堂?」

 

 凜堂が顎に手を当て考えていると、英士郎が寝ぼけ眼を擦りながらベットから起き上がってきた。

 

「丁度いいタイミングで起きたな、お前。実はカクカクシカジカって訳で」

 

「成程、ダイハツムーブってことか。そういうことならいい店教えてやるよ。お姫様とのデートに変な場所選ぶわけにゃいかねぇしな」

 

『ななな、何がデートか! 貴様、変な誤解をするな!』

 

 顔を真っ赤にさせて否定するユリスに適当な返事をしながら英士郎は枕元に置いておいた携帯端末を手に取る。数秒もしない内に英士郎はそのいい店とやらの情報をウィンドウにして開いた。

 

「へぇ、外縁居住区の境目か」

 

「おぉよ。地下鉄からも距離があるから観光客も余りいない。それに味も雰囲気も悪くない中々の穴場だ。普段は場所柄の関係でクインヴェールの学生が使ってるんだが、今は夏季休暇中だからそれ程人はいないはずだぜ」

 

 所謂、女の子受けの良さそうな雰囲気のカフェだ。どうするよ、と凜堂の問いにユリスは数秒ほど唸っていたが、やがて小さく両手を上げて了解の意を示した。

 

『悪くはなさそうだ。夜吹の紹介というのが気に入らんが、他に候補も無いようだしそこでいいだろう』

 

「んじゃ、そういうことで。時間は……」

 

 その後、今から二時間後にそこで落ち合うということで話は纏まり、ユリスとの通話は終わった。

 

「しっかし、ジョー。よくあんな店のこと知ってたな」

 

「なぁに、情報ならどんな物でも手広く扱うってのがうちの部のモットーってだけの話よ」

 

 感心する凜堂に英士郎は自慢げに笑って見せる。その笑みが何やら含みのあるものに変わったのはそれから数秒後のことだった。

 

「貸し、一つだぜ?」

 

「……はっはぁ。しっかりしてるねぇ、お前さんは」

 

 

 

 

「おろ、あれは」

 

 十分後、身支度を整えた凜堂が寮から出ると、正門に向かう道の途中で二人の顔見知りと遭遇した。クローディアと綺凛だ。綺凛の方はロードワークの最中だったらしく、トレーニングウェア姿だった。

 

「こんにちは、凜堂先輩。これからお出かけですか?」

 

 まぁねぃ、と眩しい笑顔を見せる綺凛に凜堂は片手を上げて応える。やや遅れて綺凛の隣にやってきたクローディアにも挨拶をしつつ、凜堂は並ぶ二人の顔を見比べた。

 

「何か、あんまり見ない組み合わせだな」

 

「あら、そうですか?」

 

 凜堂の感想にクローディアは片手を頬に当てて首を傾げる。彼女同様に疑問の顔を作る綺凛。凜堂の知る限り、この二人だけが話しているというのは記憶になかった。

 

「散歩をしていたらそこでバッタリと刀藤さんと出会ったものですから。少しご相談を」

 

「相談?」

 

「はいです。純星煌式武装についてちょっと」

 

 綺凛の口から出た予想外の単語に凜堂はへぇ、と片眉を持ち上げてみせる。

 

「以前の刀藤さんは刀藤鋼一郎氏の意向で純星煌式武装から距離を置いていたようなのですが、凜堂も知ってのとおり今の彼女は自由の身。ですので、もしお望みであれば試してみるのもよいかと思いまして」

 

「へぇ、リンが純星煌式武装をねぇ……これ以上強くなってどうすんのよ、お前さん」

 

 あぅ、と綺凛は顔を赤らめた。その隣ではクローディアが貴方がそれを言いますか、と呆れのため息を吐いていた。実際、綺凛が純星煌式武装を手にしたらどうなるのか、凜堂は想像もしたくなかった。何せ、綺凛は凜堂に負けるまで、刀一本だけで序列一位の座を守り続けていたのだ。彼女の剣技と疾さに純星煌式武装までもが加わったらどうなるか。

 

「やっべ。もしかして俺、序列一位の座を取り戻されるかも」

 

「な、何を言ってるんですか凜堂先輩!?」

 

「可能性は大いにあるでしょうね」

 

「会長まで……」

 

 顔を真っ赤にさせる綺凛に二人が抱いた感想は一つ。

 

((可愛い))

 

 その一言に尽きた。

 

「もっとも、刀藤さん本人は乗り気ではないようですが」

 

「はい。会長の提案はとてもありがたいのですけど、私、日本刀以外は本当に使えないんです」

 

 それ自体は別に悪いことではないのだが、綺凛は酷く申し訳なさそうにしていた。

 

「以前から使ってるこの千羽切にも愛着はありますし、何より連鶴は日本刀以外の武器では出来ませんので……」

 

「確かに。刀藤流は日本刀を使うのが前提の流派だからな」

 

 どれだけ強力な純星煌式武装が使えるようになったとしても、使い手が十全の実力を発揮できねばそれは無用の長物でしかない。まして、綺凛程の実力者が使い慣れた武器を態々手放してまで得られるメリットなど0に等しい。

 

「俺自身、こいつのでかさには難儀してるからな」

 

「ふふ、そう言ってますが凜堂。それは貴方が黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)を扱いきれてないからですよ」

 

 へ? と黒炉の魔剣の発動体を取り出した凜堂は驚きの顔をクローディアに向ける。

 

「元来、その子に定まった大きさはありません。その子が使い手を認めていれば、自然とその使い手に合った大きさに形を変えます」

 

「ってこたぁ、俺はこいつにまだまだ認められてないってことか。生意気なやっちゃ。こいつめ、こいつめってあっちぃ!!」

 

 ビスビス、と凜堂が赤色のコアを指で小突いていると、抗議するかのように黒炉の魔剣が熱を持った。思わず発動体を落としそうになるが、ジャグリングのようにキャッチして事なきを得る。

 

「どうやら、認めてもらえるのはもう少し先のようですね」

 

「ただ使えてるってだけじゃダメってことかぃ」

 

 嘆息しながら発動体を腰のホルダーに戻す。

 

「話は戻るけど、ロディア。リンに使えるような純星煌式武装ってないのか?」

 

「はい。日本刀型の純星煌式武装は今の星導館にはありません」

 

 残念なことですが、とクローディアは首を振り、視線を凜堂の腰にある黒炉の魔剣へと向けた。

 

「一番日本刀に近い形状をしているのはその子なのですが」

 

 確かに黒炉の魔剣は片刃だ。形状も太刀に近い。大きさの一点を除けば日本刀型の純星煌式武装と言えるだろう。その問題点も黒炉の魔剣自体に主と認められさえすれば解決出来る。

 

「そ、そんな。それは凜堂先輩のですし、私なんかが扱えるとはとても……」

 

 しかし残念なことに今の黒炉の魔剣の所有者は凜堂だ。流石に使う? と気軽に差し出すわけにもいかない。

 

「日本刀型の純星煌式武装って黒炉の魔剣以外にあんのか?」

 

「そもそも、純星煌式武装の能力や形状はコアに使用されたウルム=マナダイトの個性が密接に関わっています。こういう能力、こういう形の純星煌式武装を作りたいからといって、そのように作れるわけではないんです」

 

 それはまた何とも面倒くさそうだ。素直に感想を零す凜堂にクローディアは苦笑で応えた。

 

「その分、強力な力を持っているのですから贅沢は言ってられません……ただ、近々新しいウルム=マナダイトが銀河の研究所から開発部に払い下げになるというようなことを小耳に挟みました。もしかしたら」

 

「そいつが日本刀型に出来るかもしれねぇのか?」

 

 まだ可能性の段階ですが、とクローディアは明言はしなかった。

 

「実際のところどうなるのか、純星煌式武装として形になるのは何時なのか分かりませんが、もしその時が来たら是非試してください」

 

「は、はい!」

 

 微笑みかけるクローディアに綺凛は気合いの入ったお辞儀をする。

 

「しっかし、随分と熱心なのな、ロディア。それ、生徒会長が直々にやるようなことでもないだろうよ」

 

「そうでもありませんよ。星導館の学生皆様のために尽力し、『星武祭(フェスタ)』でより良い成績を残してもらうことが私の仕事ですから」

 

「大変なのね、生徒会長って」

 

 自身も『冒頭の十二人(ページ・ワン)』だというのに他の生徒を強くするために骨身を削る。余程の根性と意志がなければ出来ることでない。

 

「……そういや、お前ら二人って戦ったことってあんのか?」

 

 不意に湧きあがった疑問をぶつける。凜堂の言葉に二人は顔を見合わせた。片や星導館の序列二位。片や元が付くとはいえ序列一位。過去に一度くらい剣を交えたとしても何ら不思議はない。

 

「い、いえ、無いですよそんな!」

 

 だが、大慌てで両手を振る綺凛がそれを否定する。想像以上の反応に凜堂は目を白黒させた。

 

「鋼一郎氏は私を警戒していましたから。仕方ありません」

 

「それ以前に会長はここ一年、試合も決闘もされていないですよね」

 

 言われてみれば確かに、と綺凛と凜堂が呆れるほどさらりとクローディアは言ってのける。

 

「試合も決闘も随分とご無沙汰してます。腕が鈍ってないといいのですが」

 

(その心配は必要ないんじゃないか)

 

 コロコロと笑うクローディアに凜堂は心の中で囁く。イレーネとの試合前にクローディアの部屋にお邪魔した時のあの動き。意識の無い状態であれだけ動けるのだから、覚醒している時であれば更に洗練されたものになるだろう。

 

 ふと、凜堂はユリスが以前に綺凛と似たようなことを言っていたことを思い出した。しかし、そうなると益々以て尋常なことではない。

 

 決闘はともかく、星導館(ここ)であれば公式序列戦の時、自分よりも下位の者からの挑戦を拒否することは出来ない。そういうルールだからだ。クローディアの序列は二位。つまり、序列入りさえしてれば生徒は誰でも彼女を指名することが可能なのだ。だというのにクローディアは一年もの間、誰からも指名されることは無かった。それが意味するのは。

 

「ユーリから聞いちゃいたけど、お前さんそんなに強いのか、ロディア?」

 

「はい。会長はとてもお強いです」

 

 クローディアが否定するよりも先に綺凛が答える。その顔は真剣その物だった。

 

「凜堂先輩は会長の試合映像をご覧になったことがありますか?」

 

「いや、無いな」

 

「でしたら、一度でも見れば皆が会長に挑まない理由が分かると思います。会長はそれだけお強いんです」

 

「どちらかというと私が強いのではなく、この子の能力が凄いのですが」

 

 腰に下げた二つの起動体を撫でるクローディア。それはパン=ドラ。過酷な代償を条件に所有者に未来視という破格の能力をもたらす純星煌式武装だ。確かに未来を視ることの出来る者に態々戦おうとする者はいないだろう。だとしても挑む者が皆無というのは異常だ。

 

「私も会長と戦った時のことを想定したことはあります。でも……」

 

「勝てるヴィジョンが見えなかったか?」

 

 頷く綺凛。あら、ご謙遜を、とクローディアが苦笑するも、綺凛は真剣な顔を崩さなかった。

 

「本当です。それに『詩の蜜酒(オドレリール)』でも会長の方が私よりも上位ですし……」

 

「あれは当事者以外の方々が勝手に騒いでいるだけです。当てにはなりません」

 

 英士郎の言う通り、クローディアは非公式ランキングに対して肯定的ではないようだ。それでも譲らない綺凛にクローディアは小さくため息を吐く。

 

「つってもよ、リン。お前さん、その想定でロディアに負けた訳じゃないんだろ?」

 

「それは……」

 

 口ごもる綺凛の横でクローディアもでしょうね、と頷く。実際、綺凛の動きは未来を視れるだけで対応できるようなものではない。速さと剣術だけで言えば綺凛はクローディアを越えている。戦えばどうなるかなど、本当にやらなければ誰も分からないだろう。

 

「……あぁ、もうこんな時間ですか。すみません、少しお喋りに夢中になりすぎたようです」

 

 クローディアは携帯端末で時間を確認すると、凜堂と綺凛に優雅に一礼した。

 

「では、私はこの辺で。お二人とも、明日の試合はパートナー共々頑張ってください。応援していますので」

 

「あいよ。ま、期待しててくれて良いぜ」

 

 それは頼もしい、と微笑みを残して去っていくクローディアに凜堂は手を振る。小さくなっていくクローディアの後ろ姿を見送りながら綺凛はゆっくりと口を開いた。

 

「確かに想定での戦いで私は会長に負けませんでした」

 

 一人の剣士としての矜持にかけてそう断言出来た。

 

「でも、それは試合データなどから推定した会長のイメージでしかありません。会長は前回の『獅鷲星武祭(グリプス)』で敗れていますが、それはあくまでチームでです。会長ご本人にはまだまだ余力があったと私は思います。多分、誰も会長が本気で戦っているのを見たことがある人は……」

 

「本気のロディアね……やり合いたくねぇなぁ」

 

 高良凜堂、心からの言葉だ。

 

「そういえば凜堂先輩。これからお出かけだったんじゃないですか?」

 

「あぁ、そういやそうだった」

 

 綺凛の指摘に凜堂は慌てて時間を確認する。余り悠長にしていられる余裕はなさそうだ。

 

「悪い、リン。もう行かないと。明日の試合、お互い頑張ろうな」

 

「はい、お気をつけて」

 

 一礼する綺凛に手を振り、凜堂は急いで正門へと走って行った。

 

 

 

「ご馳走様でした。凄く美味しかったです!」

 

「あぁこら、フローラ。口の周りにケチャップが付いているぞ。全く……」

 

 オムライスを綺麗に平らげたフローラの口元を隣に座っているユリスが拭う。本当の姉妹のような二人の姿に凜堂は思わず顔を綻ばせた。微かな痛みが胸元で訴えているが、そんなものは気にならなくなるほどに胸が温かくなる気持ちだ。

 

 英士郎の紹介してくれた店は彼の言う通り、中々の穴場だった。黒塗りの落ち着いた外観とは裏腹にどこか人を惹きつける雰囲気を醸し出している。明るく、小さくクラシックの音楽が流れる店内も良い感じだ。二十席ほどあるカウンター席とテーブル席には凜堂、ユリス、フローラ以外にも客がいるが、余り気にすることなく昼食を楽しむことが出来た。

 

「確かに味も雰囲気も悪くない。認めたくはないが、夜吹の情報は正確だな」

 

「もうちょい素直にお礼の気持ちを表現できんのかね、お前さんは」

 

 食後に出されたコーヒーを手に取りながら凜堂は言う。対してユリスもコーヒーを一口飲んだ。

 

「それは無理だな。私が何回あいつのお蔭で面倒なことに巻き込まれたか。この程度で相殺など出来るものか」

 

 何やったんだあいつ、と凜堂は内心で肩を竦める。基本的に『貸し借り』で対人関係を構築しているユリスにここまで言われるとそこが気になって仕様がなかった。それは今は関係ないと思考を切り替え、凜堂はカフェオレを飲んでいるフローラを見た。

 

「んで、俺に聞きたいことって何じゃい、フローラの嬢ちゃん?」

 

「あいです! ちょっと待って下さい……」

 

 フローラが可愛らしいポシェットの中から手帳を取り出す。彼女の趣味なのか、こちらもまた愛らしいものだった。そのデザインはメイド服姿のフローラによく映えた。

 

「これです! では、高良様……」

 

 質問内容の書かれたページを探していたフローラの手がピタリと止まる。彼女の視線は手帳から隣の席へと移っていた。

 

「「ん?」」

 

 凜堂とユリスもフローラに倣って視線をそちらに向けると、ウェイターがクインヴェールの生徒と思われる女子数人が座っているテーブルに巨大なパフェを置いていた。フローラの目はそのパフェに釘付けになっている。

 

「随分とカラフルだな。何種類の果物使ってんだ?」

 

 凜堂は何ともずれたことを気にしていた。

 

「フローラ、食べたいのか?」

 

「……あい、です」

 

 女の子だねぇ、と率直な凜堂の感想にフローラは恥ずかしそうに顔を赤くした。

 

「凜堂、茶々を入れるな。構わんぞ。好きにしろ」

 

「! あいりがとうございまーす!」

 

 一転してフローラは喜色満面の笑みを浮かべる。ユリスがウェイターを呼び止め、注文してから数分後。隣のテーブルに置かれたものと同じパフェが三人の前に運ばれる。漂う濃厚な甘い匂いだけで凜堂は胸焼けがする気持ちだったが、フローラくらいの年の女の子にしてみれば宝石箱のように見えるのだろう。面白いくらいに目を輝かせていた。

 

「フローラの嬢ちゃん、好きなんだな。甘いの」

 

「仕方あるまい。孤児院にいてはこの手の甘味を味わえる機会は余りないからな。我儘を言ってシスター達を困らせる訳にもいかんし、それにフローラくらいの年になると年下の子達の面倒を見るのが普通になってくる」

 

「だからユーリが甘えさせるって訳かい。優しい姉ちゃんだこと」

 

 からかうような凜堂の言葉に反応したのはユリスではなくフローラだった。口の周りにクリームを付けたまま勢いよく頷く。

 

「あい! だからフローラも孤児院の皆も姫様のことが大好きです!」

 

「ふ、フローラ! そんなことを大声で言わずとも……」

 

 凜堂のにやけた笑みやウェイターや他の客達が送ってくる生暖かい視線に居た堪れなくなったのか、ユリスは耳まで赤くなりながら俯いてしまう。

 

「仲良きことは美しき、ってな。結構結構」

 

 飄々と笑う凜堂だったが、不意に昔を思い出した。思い返せば彼自身、姉の凛音にはかなり甘えていた。

 

「……くそ」

 

 感傷的な想いを振り払うように頭を軽く叩く。目の前のフローラにアーンされているユリスという格好の弄り対象も目に入らなかった。

 

「高良様。もしよければ高良様もどうぞ!」

 

「んぁ? あ、あぁ。ありがとよ、フローラの嬢ちゃん。でも、悪い。今、そういう甘いの食べる気分じゃ無いんだ。俺のことは気にしないでユーリと一緒に食べちゃってくれ。で、そろそろ本題に入って欲しいんだが」

 

「……本題?」

 

「フローラ。お前、ここに来た目的はそのパフェを食べることではないだろう」

 

 スプーンを口に銜えたまま首を傾げるフローラを呆れ顔のユリスが小突く。数秒の時間をかけて本来の自分の使命を思い出したフローラはポンと手を打った。

 

「そうでした! フローラ、すっかり忘れてました。えっと……」

 

 スプーンを口から出すことも忘れ、フローラは手帳のページを捲り始める。王宮で働いてるとは言っても、少し行儀の悪い部分を見せる辺りやはり小さな女の子だ。

 

「慌てるな、フローラ。別に手帳も凜堂も逃げたりはせん」

 

「あい……あった、これです!」

 

 目的のページを見つけたようで、フローラはスプーンを口から出した。

 

「では高良様、質問です」

 

「はいはい」

 

「えっと、『姫様との関係はどこまで進んでいるのですか? キスくらいは済ませましたか?』」

 

「ぼっふぉ!!」

 

 コーヒーを飲もうとしていたユリスが凄い勢いで噴き出す。わぁ、コーヒー噴水と凜堂は目を丸くしていた。

 

「げっほ、えっほ……ななななな、何だその質問はぁ!?」

 

「ユーリ、落ち着け。他の客に迷惑だ」

 

 けたたましい音を立てて立ち上がったユリスを凜堂が諌める。周囲から視線を集めていることに気づき、ユリスはすぐに腰を下ろしてフローラに詰め寄った。

 

「その質問、お前が考えた訳ではあるまい、フローラ?」

 

「あい。陛下が『僕の将来の義弟について調べて欲しい』と仰ってましたので」

 

 己、兄上、と怒りを滾らせるユリス。

 

「ユーリ。兄貴に対してヘイト溜めるのは構わないけどよ。一体全体、お前さん。俺のことをどう兄貴に伝えたんだよ?」

 

 凜堂の疑問ももっともだ。僕の将来の義弟なんてフレーズ、普通の友人として紹介されていたらまず思いつかないだろう。フローラから手帳を取り上げようとしていたユリスだったが、凜堂の問いに顔を茹蛸のようにして黙り込んでしまった。まぁいいや、と凜堂は腕を組み、天井を見上げて考え込む。

 

「俺とユーリの関係ねぇ……」

 

「あい! 是非ともお聞かせください!」

 

 フローラが意気込みながら、そしてユリスがドキドキしながら返答を待つ中、凜堂はゆっくりと口を開く。

 

「……姉貴、かな」

 

「お前は何時までそれを引っ張れば気が済むんだ!?」

 

 何時ぞや、ウルサイス姉妹との夕食時のようなやり取りにユリスは思わず凜堂にテーブル越しのアイアンクローを決める。あだだだだ!! と本気で痛がる凜堂を尻目にフローラは大真面目な顔で報告用と表紙に書かれたメモ帳を手に取った。

 

「えっと。『夫婦漫才をするくらいには良好な関係』と」

 

「お前も変なことを書くな!」

 

 メモにペンを走らせていたフローラにユリスは軽く拳骨を落とす。

 

「全く! お前も兄上もおふざけが過ぎるぞ、全く……」

 

 憮然とした顔でユリスがコーヒーの最後を飲み干そうとすると、

 

「あ、あの~」

 

「あぁ、すんません。騒がしくしちゃって、って誰?」

 

 遠慮がちな声にてっきりウェイターが注意しに来たのかと思いきや、そこに立っていたのはレヴォルフの制服を纏った女子だった。

 

「えっと、高良凜堂さんですよね?」

 

「そうだけど、あんたは……って、もしかして使いの人か?」

 

 はいです、と凜堂の言葉に頷く女子。何事かとユリスとフローラが様子を見る中、女子はぎこちない動きで凜堂に頭を下げる。

 

「私は生徒会長秘書の樫丸ころなです。その、会長がお待ちです」

 

 

 

「会長がお待ち、だと……?」

 

 ユリスの目に警戒の光が灯る。レヴォルフ黒学院の生徒会長。即ち『悪辣の王(タイラント)』。

 

「『悪辣の王』が私のパートナーに何の話があるというんだ……!」

 

「ひいぃっ!!」

 

 ユリスのドスの利いた声と剣呑な視線にころなは軽く泣きながら後ずさった。

 

「止めろ、ユーリ。こいつは『悪辣の王』本人じゃねぇ。っつか、俺の客を泣かすな」

 

「俺の客? どういうことだ」

 

 凜堂は昨日、イレーネに頼んだことを掻い摘んで話す。

 

「まさか、頼んだ翌日に会えるとは欠片も思っちゃいなかったが」

 

「そうか……しかし、大丈夫なのか? いくら『無限の瞳(ウロボロス・アイ)』について知るためとは言え、『悪辣の王』と接触するなど。そいつはイレーネ・ウルサイスにお前を潰すよう命じた張本人だぞ?」

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ずって奴さね。心配しなさんな」

 

「確かにそうだが、しかし……」

 

 このまま凜堂を一人で送り出していいものか悩むユリス。数秒後、いい訳がないという結論が出た。

 

「よかろう。ならば、私も同行させてもらうぞ」

 

「え? で、でも、会長は高良様を」

 

「……問題があるとは言わせんぞ?」

 

「ぴいぃっ!?」

 

 直視すれば鬼もショック死しそうなほどおっかない顔をするユリスにころなは腰を抜かしてしまう。だから泣かすな、と凜堂は嘆息しながら軽くユリスを叩く。ユリスが凜堂に抗議しようとしたその時。

 

『構わねぇよ。一緒に連れてこい、ころな』

 

 突如、ころなの前に空間ウィンドウが現れる。通話相手は空間ウィンドウが暗転しているため、見ることは出来なかったが誰なのかは察しがついた。

 

『ついでだ。『華焔の魔女(グリューエンローゼ)』の面も見ておこうじゃねぇか』

 

 何ともまぁ刺々しい、聞く者を思わず身構えさせるような低い声。この威圧的な声の主がディルクなのだろう。

 

「は、はひぃ! 分かりました、会長」

 

 どうにか立ち上がり、ころなは空間ウィンドウに一礼する。そしてネズミよりもびくびくした様子で凜堂とユリスの方へと向き直る。

 

「では、ご案内しますのでこちらに……」

 

「あぁ~、安心しろ樫丸……だっけ? 別にこのおっかないのはお前さんを取って食ったりはしねぇよ」

 

「おい、凜堂。私はお前の安全を考えてだな」

 

 つかよぉ、と凜堂は組んだ両手を後頭部に当てながらユリスを横目で見る。

 

「『悪辣の王』に対していい感情が湧かないのは分かるがよ、フローラの嬢ちゃんがいる前でんな顔すんなよ」

 

「っ! ……確かにそうだな」

 

 胸に手を当てながら深呼吸を繰り返し、ユリスは湧き上がっていた警戒心と怒りを落ち着かせた。

 

「フローラ。私と凜堂はちょっと人に会ってくる。そういう訳だから、一人でホテルまで帰れるな?」

 

「あい、勿論です!」

 

 いい子だ、とさっきとは打って変わり優しい笑みを浮かべ、ユリスはフローラの頭を撫でる。彼女に続き、凜堂もフローラの髪をくしゃくしゃにした。

 

「悪いな、フローラの嬢ちゃん。ちょっと、ユーリのこと借りるぜ」

 

「あい、姫様をよろしくお願いします。高良様」

 

 フローラと別れ、二人は先導するころなの後についていった。しばらく歩きいて商業エリアを抜け、外縁居住区の大通りに出る。そこにそれはあった。

 

「でっかいリムジンだこと。どこぞのVIPかっての」

 

 黒塗りのリムジンに凜堂はそう零した。比較的に窓は大きいが、外から中を窺い知ることは出来ないようだ。

 

「こちらです」

 

 ころなが扉を開けると、とても車内とは思えないような空間が二人を出迎える。一般的な車のシートはなく、代わりに革張りのソファーに重厚な机という、まるで応接間のようだ。

 

 その奥に一人のくすんだ赤髪の青年が座っていた。小太りの矮躯に不相応な禍々しい、苛立ちを孕んだオーラを全身から放っている。青年はぎろりとした目で凜堂をねめつけた。

 

「手前が『双魔の切り札(ディアボロス・ジョーカー)』、高良凜堂か」

 

「そういうお宅は『悪辣の王(タイラント)』、ディルク・エーベルヴァイン」

 

「入れ」

 

 じゃ、遠慮なくと凜堂は車内に足を踏み入れる。続けてユリス、そしてころなが車へと入った。ユリスが警戒した様子で車内の様子を探るが、ディルクところな以外に人の気配は感じられなかった。テーブルを挟む形でソファーに腰を下ろした凜堂を見て、ディルクは忌々しそうに鼻を鳴らす。

 

「はっ、雲みたいな野郎だな。星導館も随分と頼りない奴を序列一位にしたもんだ」

 

「……その頼りない序列一位を潰すよう陰で指示を出していたのはどこの誰だろうな?」

 

 動き出した車に警戒心を剥き出しにしながらユリスはディルクを睨む。強者でも思わず怯んでしまいそうなほど鋭い視線を受け、ディルクは苛立しげな態度を崩さなかった。

 

「さて、何のことだ?」

 

「っ、恍けるな貴様!! 先日、イレーネ・ウルサイスがその口で確かに言っていたぞ! 貴様もがぁ」

 

「はぁい、ちょっと落ち着いてちょうだいね、ユーリさん」

 

 立ち上がりかけたユリスの口を塞ぐように片手で彼女の動きを制する。抗議の視線を向けてくるユリスを見ず、凜堂は抜き放たれた刃のように鋭利な顔をディルクに向けたまま口を動かす。

 

「悪いが、今回話があるのは俺だ。もし、邪魔をするってんならここで下りてくれ」

 

 そこまで言われてしまうと黙るしかない。渋々といった様子でユリスは腕を組んで、ざわつかせていた星辰力(プラーナ)を治める。ディルクの横で戦々恐々としていたころなが安堵の息を吐く。

 

「随分と従順だな。躾は行き届いて」

 

「『悪辣の王』さんよぉ。お互い、暇って訳じゃないだろ。それに面を突き合わせて仲良く世間話をするような間柄でもない」

 

 ディルクが全てを言い切る前に凜堂は身を乗り出した。

 

「回りくどいことは抜きにしてさっさと話そうや。俺はお宅に聞きたいことを。そしてお宅が俺に聞きたいことを」

 

「……いいだろう。手前の言う通り、俺も暇を持て余せる立場じゃねぇ」 

 

 と言いつつ、ディルクはふんぞり返った姿勢を崩さなかった。

 

「それで、俺に何が聞きたい?」

 

「こいつのことだ」

 

 自身の右目を親指で指し示す凜堂。

 

「こいつについてお宅が知ってることを教えてくれ」

 

 『無限の瞳』か、と前置いてディルクは口を開いた。

 

「俺も詳しいことを知ってる訳じゃねぇ。ただ、そいつの適合者が戦っているところを一回だけ見たことがあるだけだ」

 

「どこで?」

 

「『蝕武祭(エクリプス)』」

 

「何、だと……!」

 

 聞き覚えのない単語に疑問符を浮かべる凜堂に代わってユリスが驚きの顔を作る。そこに含まれた嫌悪感から察するに相当碌でもないもののようだ。

 

「ユーリ、何ぞそれ?」

 

「……私自身、伝聞でしか知らないのだが、『星武祭』では満足できない阿呆共がより過激なバトルを望んで作られたルール無用、非合法のバトルゲームだ」

 

 やはり碌でもなかった。

 

「ギブアップは当然なし。試合の勝敗は選手が意識を失う、もしくは命を落とすことで決していたようだ。アンダーグラウンドで開催されていた故、規模は『星武祭』に比べて小さかったが、それでも熱狂的なファンが多々いたようだ。実際、かなり盛況していたらしい。しかし、あれは今」

 

「『華焔の魔女』の言う通りだ。『蝕武祭』はとっくの昔に潰された。警備隊長殿が目の敵にしてたからな」

 

 ディルクが『無限の瞳』の適合者を見たのは出場選手の一人として、ということだろう。

 

「お宅も『蝕武祭』に?」

 

「客として、だがな」

 

「ふ~ん。で、その適合者はどうなったんだ?」

 

「殺されたって話だ」

 

 ユリスが大きく息を呑む音が聞こえる。凜堂自身、驚きで寸の間息が止まっていた。思わず、右目を片手で覆う。

 

「そ、それは確かなのか!?」

 

「さぁな。あくまでそう聞いたってだけの話だ……まぁ、殺されるよりも悲惨な結末を迎えたって可能性も否定出来ねぇがな」

 

「さいでっか」

 

 どうにか心の動揺を落ち着けながら凜堂はディルクを見据える。嘘をついているという体では無かった。

 

「次は俺の質問に答えてもらうぜ。手前、マディアス・メサとはどういう関係だ?」

 

 マディアス・メサ? と凜堂は目を丸くする。なぜここで運営委員会会長の名前が出てくるのか理解出来なかった。数瞬考え、凜堂はゆっくりと喋り出す。

 

「……悪いが、お宅の望むような答えを出すことは出来ないぜ。俺とあのおっさんには何の接点も無いからな」

 

「……そうか。ならいい」

 

 ディルクが指を鳴らす。緩やかに車が止まり、ドアが開いた。

 

「話は終わりだ。とっとと失せろ」

 

「この度は貴重なお時間を割いていただきどうもっと。行くぞ、ユーリ」

 

「待て、凜堂。こいつには聞きたいことが」

 

 止めとけ、とディルクを睨むユリスの肩に手を置く。

 

「お前さんが何を聞きたいのか察しがついてるけど、それに答える義理は『悪辣の王』殿には無い。精々、その為の手段があるくらいで納得しとけ」

 

 なぜ、あの店に自分達がいることを知っていたのか? 予約をした訳でも、まして誰かに話した訳でもない。なのにどうやって自分達の居場所を特定したのか。ユリスはその疑問をディルクにぶつけようとしたが、凜堂の言う通りだと結局何も言わずに車から下りた。続けて凜堂も車から出る。

 

 車が止まっていたのは星導館学園近くの埠頭だった。ここから歩いていけば学園までそう時間はかからない。

 

 レヴォルフの二人を乗せた車が走り去っていく。ちらっとだけ小さくなっていく車を一瞥し、凜堂は腰に手を当てて伸びをしながら夕焼けに染まった空を仰いだ。長いストレッチを終え、大きく大きく息を吐く。

 

「凜堂、大丈夫か?」

 

「……心配しなさんなっての。俺の心配なんかより、お前はフローラの嬢ちゃんの心配をしとけよ」

 

 何だと? ユリスは眉根を寄せる。

 

「もし、あの秘書から『悪辣の王』にフローラの嬢ちゃんのことが伝わったらどんなことに利用されるか分かったもんじゃないぞ」

 

 凜堂の言葉にユリスの顔から血の気が引いていった。慌てて携帯端末を取り出し、フローラへと連絡する。

 

「フローラ、今どこにいる!?」

 

 数秒後、開いた空間ウィンドウにユリスは噛り付いた。ユリスの尋常じゃない様子にフローラは目を白黒させる。

 

『姫様、どうしたんですか? フローラはさっき丁度ホテルに着いたところです』

 

「そうか。良かった……フローラ。すぐにそちらに行く。私が着くまで扉を開けてはならんぞ」

 

『? 分かりました』

 

 可愛らしく小首を傾げたフローラを映していた空間ウィンドウが消える。すぐに走り出そうとするユリスだったが、後ろ髪を引かれるように凜堂を振り返った。今すぐにでも妹分の元に駆け付けたいが、心中穏やかであるはずがない相棒を置いていく訳にもいかない。二つの気持ちに板挟みになるユリスの背を凜堂が押す。

 

「さっきも言ったけど、俺の心配は必要ない。早くフローラの嬢ちゃんのとこに行ってやれよ」

 

「……すまん、凜堂!」

 

 飛矢のように駆け出していくユリス。星脈世代(ジェネステラ)の全力疾走だけあり、数秒と経たずにユリスの姿が見えなくなった。ユリスが走って行った方を見ながら凜堂は息を吐く。そしてゆっくりと振り返った。

 

「で、俺に何か用か。名前も顔も知らない誰かさん?」

 

「……すまない。こんなストーカー紛いのことをして。ただ、どうしても君と二人だけで話がしたくてね」

 

 誰もいなかったはずのそこに一人の女性が立っていた。均整の取れた肉体に警備隊の制服を纏った、凛とした顔立ちの美人。

 

「ヘルガ・リンドヴァルだ。少し時間を貰えるだろうか、高良凜堂君」

 

 『時律の魔女(クロノテミス)』。かつて『王竜星武祭(リンドブルス)』を二連覇し、アスタリスク史上最強を謳われる『魔女(ストレガ)』が凜堂の前に立っていた。




 書きあがってみればまさかの一万字超え。もうね、どんだけ現金なんだよって話ですよ。流石に平日は無理だけど、この調子で書けたらいいなと思いました。




 Brand-new WorldのCDがはよ欲しいです。

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