窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】   作:朽葉周

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11 二度目の入学

 

「織斑一夏をIS学園に入学させる?」

某日某所。既に俺の年齢も19歳。火星の研究所において新型光子力推進機関の小型発展型を開発していたところ、不意に同じく火星においてアーコロジーを建設していた束さんに呼び出された。

既に地球上にはTPCによる防衛網が建設されて久しい現在、俺がアークプリズムを纏って地上で戦うと言う機会は殆ど無い。

有ったとしても、それこそ邪神召喚やら宇宙人侵略、あるいは怪獣汚染による最終段階……つまり、手遅れになった場合、その一切合財を綺麗さっぱり浄火する、なんていう場合くらいにしか出番は無い。

幸い現在のところそんな事態に陥ったのは、宇宙から飛来したエボリュウ細胞によって生まれた『怪獣島』を消し飛ばしたその一度だけだ。あれはあまり思い出したくは無い。

まぁ、そんなわけで既に実働部隊を引退したに等しい現状の俺。そんな俺に束さんから声が掛かる機会といえば、共同研究の内容であったり、火星開発における相談であったりと、『人類の平和』なんて金看板よりはもう少し趣味的な方向が多い。

駄菓子菓子(だがしかし)。俺の予想とは違い、火星のアーコロジー『トネリコ』において俺と顔を合わせた束さんの依頼とは、前述の内容、つまりは織斑一夏をIS学園に送り込みたい、と言うものであった。

「なんでまた?」

「んーとね、最近、っていうほど最近の事でも無いんだけど、イッくんのまわり、色々キナ臭いでしょ?」

「キナ臭いどころか、何時大火事になるかもわからない焼け木杭だよね」

嘗ての第一回モンドグロッソ。TPC主催で行なわれたこの大会は、地上を守る為のISを用い、技術交流や競い合いによる切磋琢磨。一種のオリンピックのようなノリで、国と国の威信を掛けて開催された大会だ。

これには束さんの親友である織斑千冬も参戦したのだが、これが見事に優勝。総合部門においての優勝により、ブリュンヒルデの称号を受ける事と成った。

まぁそれはいい。問題はそのモンドグロッソにおいて、彼女が残した、残してしまった成績に関するものだ。

織斑千冬。束さんとつるむだけあって、彼女という人物も中々ぶっ飛んだ人物である。外見はキリッとした刃物のような女性、内面は脳筋ブラコン。ぱっと見一般人にしか見えないものだから、束さんとは違った方向で性質が悪い。

カタナ一本でモンドグロッソを制した彼女は、世界各国から注目を浴びた。そりゃそうだろう。各国がこぞってIS用装備を開発している中で、彼女一人「ンなモノ知るか」と言わんばかりに、ブレードでその悉くを斬り払ったのだ。

結果として織斑千冬は狙われ、その手段として彼女の弟、織斑一夏は常にその存在を狙われる事と成ってしまう。

幸い俺個人が持つ政府へのコネを利用する事で、織斑一夏に更識から護衛を廻してもらう事に成功した。

……のだが、これもある時点で失敗してしまう。というのも、第二回モンドグロッソ。この大会において、彼はついに何者かに誘拐されてしまったのだ。

幸い偶々その場に俺が居合わせた為、即座に織斑一夏を回収することには成功し、更に亡国機業の手に渡っていたISのコアを一つ回収することに成功した。

ある意味良い結果ではあるのだが、然し織斑一夏が誘拐されてしまったと言う事実は残る。外国で日本政府の手が回りきらなかったとか、影ながらの護衛が禍したとか、色々原因はあるのだが、事実は事実。

「うん、それでね、何か無いかなーと思っていっくんのIS適性を調べてみたら、これがなんと適性B! 十分ISを動かせるレベルだったんだよ! 流石はいっくん! ちーちゃんの弟は伊達じゃないね!」

「それで織斑一夏をIS学園に入れてしまおう、と。あそこはTPCの管理下にあるし、関係者以外はそう簡単に出入りできない。なるほど確かに身を守る為にあそこに入り込む、っていうのは良い考えか」

IS学園。TPC総本部監修の元設立された、IS操縦におけるエリートを育てる為の機関だ。

最先端の技術、高レベルのパイロット、その他多岐に渡る教育などと、各国の教育レベルから見てもかなり高い水準の教育機関であると言われている。

まぁあくまで『教育機関』である為、各国の軍人からの感想は今一つ。『アスリート』としてのレベルは高いのだが、『ソルジャー』としてのレベルは程ほど、即戦力としては辛うじて使えるが、無駄にプライドが高い連中も居て、軍人としては今一つ扱い辛いとか。

因みに出資の大半は真っ先にTPCに賛同した日本が大半を占めている。まぁ日本の出資金の内訳の大半は俺の裏金なんだけど。

「それで、束さんは俺に何をさせる心算で?」

「させるってもぅ、別に束さんは無理を言うつもりは無いよ、ただまーくんにIS学園に入学してほしいだけだよ」

「……いやぁ、そりゃ十分に無理って奴でしょうに」

俺の現在の年齢は18歳。高校を卒業後、大学に通いながら両親の協力の下設立した『柊電子工房』で研究開発したり、火星のテラフォーミングに手を出したり、色々と忙しい毎日を送っている。

特に現在、柊電子工房では次世代型光子推進機関搭載型の小型輸送機を開発している。燃料電池式のコレが完成した暁には、多分世界の航空事情が一変するのではないか、というような代物だ。これに注力している現在、俺のリソースはかなり削られている。

削るとすれば先ず真っ先に削る事ができるのは……火星開発か、逆に大学か。

「やるとするなら大学を休学に、って方向なんだろうか」

「うんうん。ねーねー、頼むよまーくん。勿論ちーちゃんもほーきちゃんも居るから大丈夫だとは思うんだけどね、それでも万が一って事もあるから……」

まーくんが行ってくれれば万全、という束さん。まぁ確かにそりゃ万全と言えば万全かもしれない。

でもなぁ。折角大学に入学して友達もそこそこ出来たのに。休学してボッチ大学生とか悲しすぎるぞ。束さんはその過去から経歴とかは余り気にしてないのだろうが、俺としては庶民的な感覚から大学を出てくらいはやっておくべきだと判断している。

いや、能力的には束さんに匹敵すると彼女自ら保障された俺だ。理性的に考えれば『大卒資格?なにそれ美味しいの』なのだが……うぅむ。

……あぁいや、そうか。通信制のところに移れば良いのか。今の時代ネットワークを介して講義を受ける、なんてのはざらに有るし、大学にも結構なコネがあるから何とか成るかもしれないし、それなら結構な時間を得る事ができるだろう。まぁ、俺の負担は跳ね上がるのだが。

「まぁ、いいか。OK束さん。IS学園、行ってやろうじゃないか」

「ぃやっほー!! ありがとまーくん!! よーしそうと成れば早速まーくんの戸籍偽造するぞ!!」

「え゛」

そんな事を行って飛び上がる束さん。現在の火星の重力環境は、俺達によって手を加えられた結果1.0006G。ほぼ地球の重力に等しい。そんな環境の中で一メートル以上ジャンプする束さん。やっぱり身体能力は高いんだなー、なんて何処か現実逃避をしつつ。

どうやらまた履歴書に書けない経歴が増えるらしい事に、首を落として小さく溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

そこから始めたのは、先ず最初に大学の受講学科の変更。現在の俺は工学部の機械工学科に所属している。そこで現状から、同大学内に設置されている通信制の方への移動を申請したのだ。

多少ゴチャゴチャとはしたものの、此方は大学に結構な出資をしている人間だ。更に大学自体も市立であるため、結構色々と優遇してもらう事ができた。流石に単位云々は無理だったが。

これで少なくとも二回生以降の単位は通信制で賄う事ができる。織斑一夏がIS学園に入るまでの一年間はまぁ、気合でなんとかするしかない。

取り敢えず俺に関する処置はこんな所で、次はIS学園に入るに際して。

まず俺が名乗る事になった偽名に関する情報。名前は『木原真幸』と名乗る事になった。俺はてっきり『マサキ・ケイゴ』になるのかと思ってたのだけれども、其方は姓名が引っくり返っているので、と言うことだそうだ。

この木原真幸という人物の細かいプロフィールは、すでに廃校になったド田舎の学校出身という事にしてある。経歴をあさっても何も出てこない、出て来なさ過ぎて逆に不審な設定にしてある。

というのもこれは他の織斑を狙う組織に対する牽制であって、IS学園の上位組織であるTPCや最大出資者である日本政府に対しては、俺は『篠ノ之一派から送り込まれた存在である』という事事態は通達されているのだ。

俺が隠したいのはあくまでも『柊真幸』という俺の本名およびそれを特定可能な情報であって、怪しい人間であるという事事態は別にばれても何の問題も無い。

で木原真幸のプロフィールを頭に叩き込んだ次は、木原真幸の容姿の設定だ。

特殊メイクとかではなく、現在ほぼ人間を辞めている俺と言う存在は、割と自由に容姿を擬装することが出来る。あくまで基本は現在の姿なのだが。

と言うわけで設定した姿が、外見年齢15~16歳程度。外見は年齢以外にも髪と目を薄茶色にして、更にアホ毛を一本生やしておいた。俺本来の姿が黒目黒髪伊達眼鏡と、超超平凡な日本人である点を鑑みれば、この逆に平凡且つ特徴を持った俺の姿は悪くない。

少なくとも本来の地味な俺とこの微妙にイロモノくさい俺がイコールで結ばれる事は無い。筈。……流石に骨格系を弄るのはやめておく。動きに支障が出るのは恐い。

これに更に顔を隠すバイザーを視覚障害のためとでも理由をつけて装備しておけば、例えば何かのきっかけでソレを外したときに顔を見られても、まさか二重に顔を隠しているとは思われないだろう。

「うーん、やっぱりまーくんのオルタはチート杉ワロス」

とは変身後の俺を見た後の束さんのコメントだ。まぁ確かに変装も自由自在とか、結構とんでもない能力では有る。……ただ、科学知識と魔術知識をミックスさせた魔導科学なんてものを生み出した人には言われたくないが。

で、とりあえず『木原真幸』というキャラクターを作り上げた後、次にやるべき事はIS学園に関する諸設定だ。

裏口入学というのも不可能ではないのだが、正直それをやる利点が無い。

IS学園は必要最低限の成績があり、尚且つ実戦模擬においてある程度の実力を示す事が出来れば。あるいは、国家なり企業なりのコネがあれば入学する事自体はなんとでも出来るのだそうだ。

俺が持つコネといえば、俺個人が政府研究機関に持つコネ、束さん、柊電子工房からのコネの三つが存在している。

が、偽名を名乗る以上多少なりとも柊真幸と木原真幸を繋ぐものは目立たせたくない。政府研究機関のコネも、あまりおおっぴらに出来るようなものではない。

となると使うのは束さんのコネなのだが、此方は束さん経由でTPCに情報を送る程度しか出来ない。何せ色々裏から出資しているとはいえ、基本的にTPCは国連に相当する組織だ。なんでもかんでも、と言うわけには行かない。

まぁ知識分野は問題ないし、実技に関してもそれこそ俺以上の累計IS登場時間を持つ人間(?)なんてそうは居ない。最悪は試験でなんとか出来るだろうと判断しておこう。

で、織斑一夏の護衛に関する戦力だが、流石にアークプリズムを使う事はできない。あれはいろいろな意味で目立ちすぎた機体だ。そもそも既にISではないし。

IS学園に入学した後、何らかの方法で公に柊電子工房と接触、後にIS学園での活動用のISを用意してもらう、もしくは『用意してもらった』と言う流れか、もしくはISを持たないことで俺を囮にするか――面倒だが、仕事としてみるなら此方の方が良いな。面倒だけど。

 

 

 

そうして更に時間は流れていく。俺が大学の手続きや何やらを済ませている間に、織斑一夏は見事束さんの誘導に引っかかり、IS学園と藍越学園を間違えると言う人生史上に残る大ポカをかまし、結果『世界で初めて公に確認された男性IS操縦者』としてIS学園に送り込まれる事と成った。

ただ此処で、此方の想定外の事態が発生する。織斑一夏という男性IS操縦者発見の報告から一時間も経たないうちに、次々と男性IS操縦者発見の報告が上げられたのだ。

男性IS操縦者が発見されたのは、『イスラエル』と『オーストラリア』。

イスラエルの男性IS操縦者『ギル・モーゼス』。両親がISの研究者であるとかで、研究所に遊びに来ていたところでISと接触。以後秘密裏にIS操縦者として訓練を続けていたのだそうだ。なんというテンプレェ……。

オーストラリアのIS操縦者『デイビット・コナー』。此方は余り情報が無く、現在政府直属の部隊で訓練中だとか。ただ此方の情報網には、テストパイロットが試験中に亡国機業と接触。これに落とされたところをデイビットくんと接触したのだとか。魔法少女かよ……。

この世界は原典であるIS世界とは根本の時点で大きく違っている為、織斑一夏以外の男性搭乗者が登場したところで可笑しな事は無い。

更に言えばこの世界のISコアは女性だけではなく、男性にも適合する可能性は若干ながら存在している。ありえないというわけではない。……のだが、妙に引っかかる。

特にこのイスラエルのギル・モーゼス。経歴を見ても何処のテンプレオリ主だというような見事なまでの経歴で。

……テンプレオリ主?

まてよ、俺みたいな転生者が現に此処に居るんだ。神様とかに会った覚えは無いが、俺意外にも俺みたいな転生者が居る可能性は皆無ではない。

いやいや、このタイミングで登場したからといって、其処まで疑う必要はあるのか? 考えすぎではないだろうか。

だが然し、万が一という事もある。この世界は根本から原典と大きく違う世界だ。怪獣の事は世界に知れ渡っているし、仮にオリ主さんであったとしてもこの世界が原典と大幅に違うことは一目でわかる。半端な知識で行動を起こす事は無いと思いたいが、万が一と言う可能性が無いわけではない。

下手に趣味的な奴だったり、英雄願望があったりして、それに織斑一夏が煽られたりしたら。モpp……篠ノ之箒曰く織斑一夏はヒーローなのだそうだ。煽られてそのまま特攻からの直葬なんてコンボは御免願いたい。

原典の流れとかは別に如何でも良いのだが、仮に転生者がテンプレオリ主思考な人間で、それに毒されたりする、何て可能性は無いほうがいい。

「……仕事が増えるな、これ」

只でさえ身一つには過剰な仕事を背負っているというのに、この上更に面倒くさそうな仕事が増えるのかと、思わず額に手を当てて。

せめてこの二人が常識的な人間である事を祈りつつ、日にちは更に進んでいく。

 

IS学園の入試。織斑一夏から続く第四の男性IS操縦者として表舞台に姿を現すことと成った俺柊真幸こと『木原真幸』。

一応日本出身のIS操縦者という事に成っている為、事の取り成しは日本政府主導で行なわれ、織斑一夏と並びIS学園に入学する事となる。

因みに日本政府は「柊真幸=木原真幸」とは知らないが、木原真幸が篠ノ之束博士の関係者であり、織斑一夏の護衛のために送り込まれた存在である事は知っている。そのため幾つかの目撃証言から男性である事がわかっているアークプリズムの操縦者『オルタ』の正体が俺なのではないか、と言う疑いは浮上しているらしい。

まぁ俺の日常生活こそ脅かされなければ、別に事がどうなろうと知った事ではない。日本政府から幾度かアプローチが来たが、護衛以上の仕事をする積もりも無いので適当にあしらっておく。

 

そんなわけで入学試験。座学ではそこそこ本気を出す。本来の俺なら目立つ事を避けるためにそこそこの点数にしておくのだが、今回、というか『木原真幸』ならば手加減をする必要は何処にも無い。

で、続いて受けたのが実技試験。此処で思わず引いた。

というのが、俺の実技試験の相手として割り当てられたのが、黒い髪に鋭い眼差しの女性――織斑千冬その人だったのだ。

「貴様が四人目の男性IS操縦者、木原真幸か。私が貴様の試験監督を担当することになった、織斑千冬だ」

「はい、宜しくお願いします」

さて、どうしよう。本気で困ったぞ、これ。

「貴様にはこれから、IS学園で用いられている量産型第二世代ISの『打鉄』、あるいは『ラファールリヴァイブ』を使い、私と模擬戦に挑んでもらう」

「一つ質問しても良いでしょうか」

「なんだ」

「織斑さん――いえ、先生の名は私でも知っているほどに有名です。然し、何故そんな有名人が私の試験監督を? 普通試験監督って、もう少し下っ端と言うか、若手というか、そういうのに任されませんか?」

というか、今からでも誰か別人に代わってほしい。と言うのも、俺と織斑千冬が戦った場合、下手に手加減する事が出来ないという問題点が浮上してしまう。

先ず手加減した場合彼女に勘付かれるのは確実で、だからといって全力を出してしまうと先ず間違いなく此方が勝ってしまう。……ブリュンヒルデに勝利する素人男性IS操縦者? 幾らなんでも無理がありすぎる。

ブリュンヒルデを舐めすぎているように見られるかもしれないが、『人類最強』では人知を超えた存在と戦い続け、果てに人を辞めた俺と戦う事は先ず不可能だ。いや、人のレベルに力を制限すれば良い勝負に成るか? そもそも良い勝負をするのも駄目なんだけどさ。

「ああ、本来ならこの試験は山田先生……私の後輩が受け持つ筈だったのだがな、お前に先んじて試験を受けた三人の男性IS操縦者の所為で事情が変わった」

「先に受けた三人……? 学園側の事情ではなくて?」

「ああ。というのも、貴様に先んじて受けた三人の男性操縦者――織斑一夏、ギル・モーゼス、デイビット・コナーの三人なのだが、これが全員試験監督を撃破していてな」

「ぜ、全員がですか?」

「ああ。……まぁ、内一人は教諭側の自爆みたいな物なのだが……」

あー、あれか。織斑一夏の試験監督を担当した麻耶ちゃんが織斑一夏相手にテンパって、フィールドバリアに突っ込んで自滅した、って話。嘗ての日本代表候補生がまさか、何かのジョークかと思ってたんだけど、ホントウダッタノカ。

「問題はモーゼスとコナーでな。奴等未だ素人という事に成っているにも拘らず、織斑の場合とは違って熟練の教師相手に圧倒的な戦闘能力を見せ付けてしまったんだ」

「それは……でもそれで何で織斑先生と俺が戦う事に?」

「うむ。教諭の中から、もしかして男性操縦者は全員強いのでは? と言う意見が出てな。おかげでプライドの高い連中がしり込みしてしまったわけだ」

「ははぁ……『男性IS操縦者に負ける筈が無い』『でももし負けたら……』となったわけか。強い女性の沽券に掛けて、って?」

「そういうことだな。そこで女性主権を好む一部の連中が私を祭り上げた、と言うわけだ。私なら万が一にも敗北は無い、と言ってな」

幾ら私でも、歴戦の戦士を相手に無茶を言ってくれる、と呟く織斑千冬に、思わず頬が小さく引き攣った。

「ん? あぁ、束と政府側の両方から聞いている。数年ぶりだな、『オルタ』」

「……束さんェ」

ボソッと呟いた織斑千冬。どうやら束さんからは既に情報が回っていたらしく、俺がアークプリズムの搭乗者――『白騎士事件』の際に共同戦線を張った相手だと、既に知っているらしかった。

「然しまさかあの時の奴が男で、しかも一夏と同世代とは……」

「あ、いえ。俺の実年齢は織斑一夏から数えて四つ程上です」

「何? ではその容姿は……まぁ、束なら何とかできるか」

「………」

自前って言ったらこの人どんな顔するんだろうか。変身能力も自前っちゃ自前だし、そもそも人間やめてる所為で老化も遅いみたいで、容姿は色以外そんなに弄ってないのに四つ年下に混ざっても違和感無い容姿というのも……。

「で、木原。この試験、貴様はどうする心算だったんだ?」

「えー、本来なら相手の試験官の技量に合わせて、適当に此方が実力者である、という事を学園関係者に知らせつつも、適当なところで負けておく、という心算でした」

一息空けて問い掛けてくる織斑千冬にそう返す。俺のIS学園での目的は、IS学園の守護ではなく、織斑一夏と、ついでに篠ノ之箒の護衛だ。

ならば下手に目立つのは宜しくない。よろしくは無いが、かといって全く目立たないというのも後々問題に成る。このあたりの匙加減がまた難しい。

「ふむ……では私とソレで行くか?」

「織斑先生と、ですか? ……五分くらい拮抗させられれば面目は立つ、かな?」

というかそれ以上やるのは目立ちすぎる。何処にでもいるような操縦者との拮抗、ならまぁ目立ちはしても其処まで記憶に残る事は無い。が、織斑千冬と五分以上拮抗していた、となるだけで、かなりインパクトが違ってくる。

本当なら是非とも別の人に担当を代わってもらいたいのだが、ソレはそれで別の問題を呼び込みそうな気がする。

「ふっ、まぁいい。ならば初めの五分で精々お前の実力を引き出すとしよう」

「うへぇ……」

「そろそろ時間だ。ではまた後でな」

そういって、フィールド反対側の待機室へと移動していった。ソレを確認して、俺もそろそろ準備に移ることにする。

俺の待機室に用意されていたのは、フランス製のIS『ラファールリヴァイブ』。第二世代型でバススロットの広さと様々な武装に対応できる汎用性が売りの第二世代傑作機と名高い機体だ。

まぁそもそもこれが公になったのが第三世代型の開発が始まる直前と言うことも有って、現在では既に型遅れ気味の機体ではある。が、教導機としては十分以上に有用な機体となる。

今日この実技試験を受けるに当って予め使用機体を選ばされていたのだが、日本製量産第二世代型IS『打鉄』とどちらを選ぶか、という選択肢で、その汎用性から此方の機体を選んだのだ。打鉄でも良かったのだが、あちらは銃火器の扱いに今一つ向いていないのだとか。

本来はこの機体を使って、相手の教導官を戦略的に絡め取って無難に茶を濁そう、と考えていたのだが……。くそぅ、織斑千冬相手なら打鉄を選んだというのにっ!! ラファールは弱点は無いが特徴も無い、損な機体なのだ。人類最強に挑むには灰汁が足りない。

「……まぁ、出来るだけやってみるか」

言いながら用意されていたラファールに近付き、システム画面が表示されたパネルに向かい合う。IS用の武装やセッティングなどを調節する為のメンテナンスモニター。本来なら織斑千冬がこの辺りにも助言をするはずなのだろうが、俺が相手と見てサボったな、あの女……。

「武装はレッドパレット二丁とボクサー、近接信管グレネードランチャーに弾薬……後は近接ブレードと近接ナイフでいいかな?」

武装のセッティングを整えて、更に機体そのもののコンディションを設定する。相手が織斑千冬である事を鑑みるならば、相手は確実に近接特化型。寄らば斬るを有限実行する相手に、同じ距離で戦うのは色々不味い。

ならばどうするか。基本的には距離をとっての中距離砲火。但し間違いなく瞬時加速で追いかけてくるだろうから――エネルギーの配分を推力重視に。どうせ長期戦は想定していないのだ、シールドエネルギーは少なめでいく。

そうやってセッティングを行い、とりあえずの試運転のためにカタパルトからフィールド内へと飛び出す。

観客席には少人数の関係者と思しき人影以外は存在していないらしい事を横目に確認しつつ、色々と動きを試していく事に。

純正のISに触れたのはかなり久々で、どの程度の動きまで追随してくれるのか解らない。現在のアークプリズムは最早ISの様相を呈していない、対侵略者兵器になってしまっているため、一般的なISというモノの感覚がわからないのだ。

試しに基本的なマニューバを繰り返し、武器の呼び出し、ターゲティング、実弾装備のリロードなど。オートリロード機能が無いとかちょっとビックリである。

一通りの挙動を試して、大体の感触を掴んだところでそろそろ時間になるらしい。管制室からの連絡を受けて、即座にピットへ。エネルギーチャージャー、ぶっちゃけ急速充電器を使ってコア・エネルギーの消耗分を回復させる。

俺のオルタとコアを共振させれば一瞬でエネルギーは回復させられるのだが、さすがにこんな場所でそんな不自然な記録は残したくない。

そもそも戦闘行動を行なったわけでも無いので、コア・エネルギーの消耗分は機動時のものだけ。即座に再充電を終えたことを確認して、再びフィールドの上空へ。

『それではコレより、貴方には織斑先生との模擬戦闘試験を受けていただきます。制限時間は30分。その間貴方は出来る事を可能な限りやって見せてください』

「了解しました」

管制室から入った通信にそう答えて、両腕にレッドバレットを展開する。アメリカ製の量産型51口径アサルトライフルであり、其の汎用性と信用性からベストセラーとなっている一品だそうだ。まぁ世間一般では未だエネルギー兵器の小型量産化は未だだしな。出来ていてもガッツウィングのレーザーくらいか。

ついでに言っておくと、試合前に装備を展開しておくことは違反でもなんでもないらしい。

『――さて、それでは試合なんだが、貴様その顔の物は外さなくても良いのか?』

「あぁ、コレですか? ええ、大丈夫です。コレって地味に高性能で、HMDとしての機能も有るんですよ」

言いつつ、織斑千冬に指摘されたソレ――俺の目元を覆うバイザーを撫でる。

木原真幸の持病に視覚過敏性の病気というのを追記しておいたので、このバイザーは視覚補助の為の器具として持込が認められている。

……本当は顔を隠す為の装置で、ついでに趣味でネットも見れる超高性能! 俺のメガネ型HMDの代用品だったりするのだが、まぁその辺りは一々話さなくとも良いだろう。

『よし、ではそろそろだな――準備は良いな?』

「ええ」

向こう側のピットから飛び出してきた影。鉛色の分厚い鎧のような姿のソレ。第一世代型IS暮桜の量産化を目指して開発された日本の国産量産型IS、『打鉄』。そしてそれに身を包むのは、世界最強の名を得た偉丈婦、織斑千冬。

……然し、こうして武装して正面から相対すると尚解る。彼女の内側から放たれる、言葉に言い表せない凄み――ッッ!!

人を辞めている俺にさえこうして警戒心を抱かされるほどの気迫。相対しているだけで身体を斬られたのではないかと感じるような剣気!!

『それではこれより、織斑千冬と木原真幸、両名による入試模擬戦闘を開始したいと思います』

互いに向き合い、あちらはカタナを、此方は銃を。其々が其々に構えたところで、二機のISが佇むアリーナに、機械音による戦闘開始の合図が鳴り響いたのだった。

 

 

 

先ず最初に動きを見せたのは、定石を破って織斑千冬の打鉄からだった。

試合開始の合図と同時に、何の前触れもなく即座に瞬時加速。一瞬で間合いをつめると、即座にそのまま一刀を振り下ろしてきたのだ。

こういう場合教師は試験対象の動きを見定める為に後手を選ぶのが普通だと思ってたんだけども……織斑千冬は端から本気で此方を潰しに来る心算らしい。

即座に両足を前に突き出し、真後ろに向って加速、と同時に右手を外側に振りかぶり、袈裟に振り下ろされたブレードの軌道を逸らす。

ISは背にスラスターを背負うという構造上、真後ろに瞬時加速するという事ができない。そのため真正面から開幕いきなりの瞬時加速と言うのはどうしても不意を突かれてしまうものなのだが、然しそれ故にコレに対する対処法は定石として幾つかが存在している。

因みに俺も過去円盤とドッグファイトを繰広げた際、アークプリズムでこの構造上の欠点に気付き、更に自由度の高い無軌道スラスタを加えることでその欠点を力技で補ったりしている。

然しここにある二機のISはそうした無秩序な改造が成された機体ではなく、スポーツ用に有る程度の規格で統一された物だ。アークプリズムのような無茶は出来ず、自ずと幾つかの定石の内側で、その中で如何に上手く戦うかと言うことが求められるのだ。

距離を話した所で即座に両手に持つレッドバレットを乱射する。これは麻耶ちゃんも愛用する米製IS用アサルトライフルで、その高い信頼性故に第二世代型の武装の中ではかなり広いシェアを誇っている。その精度はさすがの物で、織斑千冬の一撃を逸らしたというのにしっかりと照準通りに弾丸を飛ばしている。

「ふっ」

「くっ!!」

が、そうして放たれた弾丸を、まるで壁を蹴って跳ねたかのように宙を舞う織斑千冬。ソレを追って弾丸をばら撒くのだが、到底第二世代機とは思えない無茶苦茶な軌道を描いて飛翔する打鉄に弾丸が届く事はなかった。

――幾らなんでも無茶苦茶だろう、あれ本当に人類か?

ISのIFFを振り切るとか、そんな挙動に耐えられる人体を持ってるなんて、如何考えても人類じゃねー、なんて事を考えつつ、当らないなら削るべしと装備を換装。即座にボクサー散弾砲を取り出し照準を合わせる。

が、途端向うも此方が散弾銃を装備した事を察したか、ソレまでとは一転し積極的に近付こうとはしなくなった。

腹立たしい物を感じつつ、右手ボクサー、左手にレッドバレットを展開して更に銃撃を続ける。

途端に接近を開始する打鉄。ボクサーは信頼性の高い散弾砲ではあるが、その欠点としてリロードに時間が掛かる。本来ならレッドバレットで十分補えるのだが、彼女にとってはそれも十分なねらい目なのだろう。

即座に接近してきた彼女。カウンター気味に放たれた一発目の散弾砲を、最低限の被弾で抑えほぼノーダメージ。そのまま振りかぶられた一撃に再び受け流しをあわせようとしたのだが、今度はソレを察知した織斑千冬がフェイクをいてくる。

慌ててその虚動を回避したものの、本命の突きに咄嗟に隙間に差し込んだレッドバレットが大破してしまった。

「おのれ……人外め」

「貴様に言われたくは無いっ!!」

至近距離で再びリロードしたボクサーを発射。然しコレを織斑千冬は至近距離からの真横への瞬時加速で回避してしまう。

その場で棒立ちは不味いと即座に前へ。そのまま前転し、天地を入れ替えたまま真後ろに捉えた打鉄に、再び右手に展開したボクサー二丁で弾幕を張る。

まるで空に浮かぶ星のように放たれる鉛のカーテン。これはシールドエネルギーを削れる、そう確信した此方の心のうちを他所に、然し織斑千冬はその弾幕の一番薄い場所に突っ込むと、ブレードを一閃して散弾を振り払ってしまったのだ。

「効かんッッ!!」

即座に瞬時加速。打鉄の馬鹿げた動きに最早ラファールRのハイパーキャンセラーが追いついていない。

「ぬぐっ――!!」

ラファールのIFFをカット。自前の偏差予測と直感で打鉄の動きを予想。近付く気配に向けて、右手に新たに近接ブレードを展開する。

ガキンッ! という衝撃。やっぱりコイツ純粋な人間じゃなくて、強化人間か超人の類だと確信させる衝撃を右腕に感じつつ、即座に左腕のボクサーを発砲。

それを近接瞬時加速で回避した織斑千冬はそのまま此方の背後へ。発砲の反動で下がる左腕を背に指し込み、辛うじて直撃を回避するが、今度はボクサーが一丁オシャカになってしまう。

背後から叩かれた事で前方へ吹き飛びながら、スラスターを駆使して身体を回転。そのまま背後に向けて再び展開したレッドバレット(残りの一丁)を打ちまくる。が、やっぱり化物染みた機動で既に其処には居ない織斑千冬。

案外宇宙人由来のEOTで束さんに強化された強化人間だったりして、なんて事を考えつつ、直感にしたがって真下に瞬時加速。途端ソレまで居た空間を背後から薙ぐ近接ブレードと打鉄の影。あいつ吹き飛ぶ俺を瞬時加速で追い抜きやがった!!

出来るか出来ないかでいえば俺も出来るが、少なくともまともな身体の人間があんな挙動を取れば、間違いなくPICの許容限界を超えて内蔵にダメージを喰らう。絶対まともな人間じゃねー。

増したに瞬時加速した直後、地面を思い切り蹴り飛ばして再び上空へ。ラファールの脚部が損壊したが、ISの脚なんて飾りです!!

マニューバで言えばハイ・ヨーヨーを天地逆にしたような機動で織斑千冬の背後へ付く事に成功。けれども織斑千冬は瞬時加速で此方を振り払おうと急加速……したかと思うと即座に反転。此方に真正面から突っ込んできた。いやいやいや!! 可笑しいから! まともな人間の出来るマニューバじゃねーよそれ!!

「おおおおおっ!!!」

「くぅっ!!」

左手のレッドバレットを格納し、右手のブレードに手を添えて、織斑千冬の一撃を正面から受け止める。ゴバッ、という何か違う音が響き、凄まじい衝撃が身体を襲う。

――わかった。コレはIS同士の試合じゃない。対怪獣戦闘だ。

「貴様何か失礼な事を考えているな」

「アンタ本気で人間かよ!?」

鍔迫り合いからバランスを崩され、二撃目をロールして回避。そのまま迫る追撃にブレードをあわせるが、今度はそのまま押し込まれ、フィールドを覆うフィールドバリアに押し付けられてしまう。

「私と接近戦をするかっ!!」

「お、おおおおおお!!!???」

フィールドとシールド、二種類のバリアがバリバリと干渉し、此方のシールドエネルギーがガリガリと削られていく。

――コレは不味い、このままでは落とされる!! いや、落ち着け俺、寧ろそろそろ五分くらいは経ってるんじゃないか? なら落ちてもいい筈っ!!

時計を確認して一瞬血の気が引く。まだ試合が開始してから三分。後二分も持ちこたえろと。

「んなくそぉっ!!」

力尽くでブレードを振り払い、此方をバリアに押し付けていた打鉄を振り払う。俺の筋力による無茶な負荷を受けた所為だろう、ラファールのモーションアシストが逝ったみたいだ。普通の人間だとこの状態のISを動かす事は先ず不可能だろう。

……が、俺に関しては別だ。いや、あの織斑千冬でも出来そうだけど。アシストが無いなら力技で。それまでつけていた制限を一部緩め、一般人並に落としていた“力”を一部目算で算出した織斑千冬のレベルにまで引き上げる。

「今度はこっちから行く!!」

「――来いっ!!」

背部スラスタを使った瞬時加速。振り下ろす一撃にあわせて後の先を取ろうとする織斑千冬。けれども今の俺は先ほどまでの俺とは少し違う。その事に気付いたのだろう織斑千冬は、即座にブレードの軌道を修正。此方のブレードに刃を合わせてきた。

ゴッ、という音と共に吹き飛ぶ二機のIS。俺の力、この程度に制限してもラファールのPICでは受け止め切れなかったか。

即座に姿勢を整えた織斑千冬は、再び此方に向けて斬りかかって来る。それを確認しつつ此方もソレにあわせて瞬時加速。すれ違い様にぶつけ合わせた近接部レートが、然しその中腹部分から轟音を立てて粉々に砕け散ってしまった。

……おいおい、近接ブレードが粉砕って。

「貴様本当に人間かっ!!」

「そっくりそのままアンタに反す!」

「アンタではなく織斑先生と呼べッッ!!」

向う打鉄、その手には再展開された予備らしき近接ブレードが。生憎此方には予備のブレードは無く、有るのはナイフだけ。

仕方無しに近接用ナイフを展開し、それをレッドバレットに装着。簡易式のバヨネットとする。……でもこれだと、織斑千冬の斬撃は受け止められて二~三発って所か。

「さて――そろそろ五分になるわけだが……この試合、私が勝って終わらせてもらう」

「……くくく、何でだろうか。俺、久々に燃えてるよ……ただで負ける心算は、無いなぁ!!」

宣言する織斑千冬に、気付けばそう反していた俺。そう、ここまで燃えているのは久しぶり、いや嘗て無かったかもしれない。

俺にとってのISとは、対侵略者・怪獣用の兵器であって、こうしたスポーツ染みた対戦というのを経験したことは無い。あっても命を賭けた殺し合いでしかなかったのだ。

ところが、だ。その命がけで磨いてきた技術を以っても、この試合ではここまで追い詰められている。この事実のなんと口惜しくも甘美な事か。矢張り人類は、ニンゲンは素晴らしい!

とはいえ最早此方は死に体。両脚部は損壊し、背部メインスラスタにもダメージを受けている。シールドエネルギーには多少余裕があるが、然し織斑千冬のイグニッション・ブーストからの斬撃を受けてしまえば一発で蒸発する程度のエネルギーしかない。

子の状況で何か、何か勝つ手段は……ある。あるぞ、唯一残された勝機ッッ!!

「おおおおおおお!!!」

「せあっ!」

咆哮と気合が、剣とナイフがぶつかり合う。案の定バヨネットは衝撃を受け止めきれず、一発受けただけで既に銃とナイフの接続部分にガタが来ている。

――けれども最早それほどの回数打ち合う心算も最早無い!!

すれ違い再び開いた間合い。即座に反転し、銃に付いたナイフの接合を解除。そのままナイフを振りかぶり、此方に真直ぐ近付いてきた織斑千冬の打鉄へと投げ付けた。

「チッ!」

ガチンッ、という音と共に撃ち払われるナイフ。けれどもその一瞬こそがほしかったッッ!!

織斑千冬の巫山戯た一撃を受けて尚バリバリと銃弾を放つレッドバレット。織斑千冬はそれを神繋った得るロンロールで回避し、そのまま一気に此方に接近し――そして俺と正面からぶつかり合った。

余りの衝撃にPICも慣性を殺しきれなかったのだろう、ボロボロのラファールRが悲鳴をあげる。それを気合でねじ伏せて、即座に距離を開こうとする織斑千冬を右手でガッチリと掴んだ。

「なっ?!」

「墜ちろおおおおお!!!!」

近接ブレードを掴む右手をガッチリホールドしつつ、新たに右手に呼び出したグレネードランチャー。それを打鉄、それに登場する織斑千冬本人に向けて連射した。

ズドドドッドドドオオオオオ!!!!!

轟音と共に、連射して放たれたグレネードが生み出した爆風で吹き飛ばされる。

本来のIS用榴弾には安全装置として発射地点から一定距離は爆発しない、と言う仕掛けが施されているのだが、俺は普段から爆破兵器の安全装置は外していた。そのため、今回は至近距離での自爆気味にグレネードの直撃を決める事ができたのだが。

――ビーーーーーーーッ!!!!

『其処まで! 両者シールドエネルギー値ゼロを確認! この試合は引き分けとなります!!』

「……なんとかなったか」

精神的な疲労を感じつつ、改めて自分の状態をチェックする。ラファールRは爆風に吹き飛ばされたまま地面に突っ込んだらしく、長々とグラウンドを抉りながら半ばまで地面に埋まってしまっていた。

試しに機体を起してみたものの、機体の下半身への信号が完全に途絶してしまっているらしく、下半身がうんともすんとも言わない。

こりゃ駄目だと判断し、一言ラファールRに感謝の言葉を述べてから、ラファールとのリンクを解除して降機した。

「あー、疲れた」

「それは此方の台詞だ。貴様、五分で負けるとか言っていたのはなんだったんだ」

「……さて。矢鱈と挑発的な戦い方をしてきたのは其方でしょう? つられちゃったんですよ、多分」

見れば其処には、同じく打鉄を脱ぎ捨てて仁王立ちする織斑千冬の姿があった。

「然し、相打ちとは……狙ってやったのか?」

「ええまぁ。此方は機体損傷が激しかった物の、シールドエネルギーに余裕はありましたし、逆に其方のシールドエネルギーはもう余り無かったでしょう?」

「見抜かれていたか」

ISにおけるシールドエネルギーとは、実のところシールドのみに使われているというわけではない。

コアが生成するエネルギー、シールド以外にもPIC、エネルギー兵装、スラスター噴射など、ISにおける様々なシステムに利用されているのだ。

で、織斑千冬の場合、その必殺の一撃を放つ際にイグニッション・ブーストとの組み合わせと成るわけなのだが、このイグニッション・ブーストにも結構なシールドエネルギーを消費するのだ。

確かにあの超高速機動には凄まじい物がある。搭乗者の肉体が到底耐え切れないはずの、けれども出来るならばISのハイパーセンサーでさえも振り切るほどの代物。けれどもそんな無茶をやるには、当然相応の対価……この場合は莫大なシールドエネルギーが必要と成ったわけだ。

結果、織斑千冬の打鉄は、打撃は僅かな散弾だけだというのに、最後の至近距離からの榴弾連射を受けた際にはシールドエネルギーもギリギリしか残っていなかった、というわけだ。

まぁ他にも打鉄の搭乗者を狙った事でシールドエネルギーの損耗率を大きくしたとか、そういう小技も有るのだが、最早これは余談だろう。

……然し良く気付いた、俺。普段オルタとアークの共鳴でエネルギーなんて殆ど気にした事は無かったけど、有限と成るとここまで枷に成るとは。いや、このシールドエネルギーの制限が有るからこそ、ISがスポーツになるんだが……。

「ちっ、まぁ今日のところは引き分けだ。何れこの決着はつけるがな」

「勘弁してくださいよ……」

そんな事を言いながら、差し出された手を握り、握手したのだった。

 

 

 

「……然しコレで貴様も、相当目立ってしまったな」

「……」

考えないようにしていたのに。あーあ、どうしよう。

 

 

 





■惑星改造アーコロジー艦『トネリコ』
量子変換によって運び込まれた資材や無人機によって建造された、コロニー型宇宙船。但し基本的に無補給で活動が可能な為、アーコロジーと呼称。
現在は火星においてナノマシンで大気組成を改造したり、地殻に刺激を与えて磁場を形成したりのお手伝いの最中。
■怪獣島
太平洋に存在する小さな島国。其処で密かに行われたエボリュウ細胞による進化実験。最終的には実験が暴走し、真幸によって島ごと消し飛ばされた。
……と、いうフラグを残しておく。
■TPC(Terrestrial Peaceable Consortium/地球平和連合)
各国政府の上位機関みたいな位置づけの組織。
束や真幸がガンガン技術・資金支援しているため、馬鹿みたいに強い発言力を持つ。が、真幸や束は公式に属しているわけではないので、この組織に対して強い権限を持つわけではない。
地球の平和と人類存続を第一に掲げた『地球政府』。
■柊真幸の年齢
織斑一夏が中学三年生(14歳)当時18歳、且つ束の年齢をプラス4くらいに考え……うわっ、なにをす、やめ
■柊電子工房
真幸がでっち上げた中小企業。主に研究開発・設計などを行なう。
■木原真幸
元ネタは木原マサキ。「泣け、喚け、そして……死ぬが良い!」の人。
茶髪にアホ毛を生やして顔面はバイザーで隠れているというかなり怪しい風体で、更に目の色を紅く染めるという厨二びょ……手の込んだ変装をしている。
変装と言うか変身なので、まずバレない。
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