窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】   作:朽葉周

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12 IS学園の前準備

 

 

「こんな事にまで貴女が来るとは」

「ああ、事務連絡のついでに、事の流れを伝えておこうと思ってな」

織斑千冬との模擬戦から一日。早々に学園内の新一学年用の学生寮。早速始業までの間その一室を借り受けることと成り、宛がわれた部屋を適当に弄っていた所に訪ねて来たのは、渦中の片割れである織斑千冬であった。

「やっぱり目立ち過ぎていましたか?」

「いや、不幸中の幸いと言うべきか、女権主義の連中が此方に都合よく動いてくれた」

「というと?」

「試合自体は相打ちだが、実質的には私の勝ちだ、というのを連中が触れ回ってな」

まず、織斑千冬は教員としての参加であり、全力を出したわけではない。また自機も専用機である暮桜ではなく、量産型である打鉄を使っていたため、機動にかなりの制限がかけられていたのだという主張。

その点に関しては此方も量産機であり、一種対等な戦場であったという事なのだが、彼女等にとってはそんな些細な事は如何でも良いことらしい。

次に、木原真幸の卑怯な戦術について。これは聞いていて失笑物なのだが、なんでも俺の戦い方、自爆技は泥臭く低俗な男らしい卑怯な戦い方で、あんな戦い方はありえないのだとか。

俺、実戦では何度か自爆染みた戦い語って経験してるんだけどな? 手段を選べない戦場が多かったから、こういう戦い方も手段の一つって認識なんだけど……。

で、最後。確かにシールドエネルギーは同時にゼロになったが、そもそも機体の損耗率から見れば大破したラファールRと小破の打鉄で、その勝敗は明らか、とか。

まぁ実際機体の損耗率で言えば確実に打鉄の勝利になるだろう。まぁ、ソレを言ってしまえば、シールドエネルギーがゼロに成るまで、という一種のゲームその前提からひっくり返す必要が出てきてしまう。ま、これがリーグ戦の一試合だとかなら、引き分けだろうが次は無理だったろうけれども。

「女権主義者の連中、私と引き分けた貴様の実力を余程認めたくないらしくてな。条件付きで実質の勝者は私である、というのを強調した上での引分け、という前提で話が広まってしまった」

「ふむ。まぁ此方にとっては好都合なんですがね。というか未だ居たんだ、女権主義者」

「束の宣言以降は過激派は減ったらしいがな。現在でもISをまとって怪獣・宇宙人との戦線に立つ女性こそが素晴らしく、優遇されるべき、何て思想の連中は存在しているらしい。というか、ISに触れる機会の多く、尚且つスポーツ向けの教育をしているIS学園だと尚更な」

「あぁ、なるほど」

束さんの宣言以来、ISにおける女尊男卑の風潮と言うのは一気に廃れた。いや、廃れたと言うよりも方向性が変わり、IS操縦者に対する敬意、と言うようなものになっていった。

そもそもの話、ISに乗れる人間に女性が多いからといって、なら女性は全て素晴らしい、なんてどれだけ極端な話だというのだ。確かにISは地球防衛の主軸の一本では有るが、他にもガッツウィングシリーズや各国のスペース・マザー・シップ(SMS)級など、人類の剣は幾らでも存在しているのだから。

確かにIS搭乗者は世界的なエリートとして羨望を集めはするが、それがイコール女性の権利向上に繋がるとされたのは、IS以外の防衛兵器が登場する以前の話だった。

「で、貴様はこれ以降新学期が始まるまではこの学生寮で暮らしてもらう事になるのだが……」

「当然護衛の類が付く、と? まぁ此方に無許可でやってる事なんだから、まかれても文句は受け付けませんよ?」

「ふむ。まぁ日本政府側も貴様の事は優遇するように通達が回っているらしいし、ISに登場できるという事もあって、貴様に対する制限は殆ど無いらしい。――が、それには当然条件がある。貴様が自衛手段を持っているのか、と言う点だ」

「……あー、つまり専用機を持ち込んでいるのか、って?」

日本政府に現在束さんルートで漏らした情報と言うのが、『木原真幸』=『アークプリズムの搭乗者』=『技術支援者』=『織斑一夏の護衛』という情報だ。日本政府側にしてみれば、俺は束さん並の技術を、然し束さんに比べてほぼ波風立てずに供与している、お得意さんのような相手なのだ。

これでもし万が一俺が不利益を被った場合、もしかすると俺が機嫌を損ねて日本政府に対する秘密裏の支援を打ち切ってしまうかもしれない。日本政府はソレを恐れているのではないだろうか。

「貴様が自衛手段を持つというのであれば問題は無い。最低限、それこそ女権主義者の駆るISに対抗できる程度の自衛力を持っているのであれば」

「無ければ政府側が用意してくれるって? 一応俺は一般公募から選ばれた事になっている、四人目の男性操縦者なんだけどな。持ってるなんて言えるわけ無いだろ?」

そう、幾ら話が通っているからといって、俺がISないし、それに抗する兵器を保有しているなどという事を公に宣言する事は出来ない。あくまでもここに居るのは、一般人として選出された『四人目の男性IS操縦者』なのだから。

知られ話が通っているとはいえ、物事を通す上で建前というのは重要なのだ。

「……ふむ、ソレはつまり特に問題は無い、と?」

「そうそう。だから専用機とかは要りません。……そうだな、例えば男性操縦者に関する量産機のデータ収集とか言って、情報収集用の装備を搭載したの打鉄でも専用に借りられるようにしておいてもらえれば」

「なるほど。貴様には『あれ』が有る以上専用機は要らんし、その建前が有れば専用機を押し付けられる事も無いか。……然し良いのか? それだと専用機を持たない貴様は真っ先に狙われる事になると思うが……」

「面倒なのは嫌いですけど、護衛って観点から見れば、其方のほうが楽でしょう?」

そう、織斑一夏の護衛が束さんから頼まれた任務ではあるが、だからといって俺が防衛戦が得意かといえばそうでもない。寧ろ俺は攻める戦いのほうが得意、というか気が楽だ。

ならば織斑一夏を守る戦いよりも、俺を狙ってきた連中と正面からぶつかり合うほうが気持ち的にも戦術的にも楽だろう。

……逆を言えば、確実に問題が近付いてくるともいえるのだが。

「そうか。では何か有ったら言え。出来る限りは対応する」

「そうですか。あ、なら一つ。この部屋、適当に弄っても良いですかね?」

「……一般常識の範囲内でなら、な」

「俺は束さん程じゃないですって」

苦笑しつつ、立ち去っていく織斑千冬を見送る。

まぁこれで、IS学園内に俺と言う存在を最低限見せ付ける事ができ、尚且つ外部に対しては最低限以上の情報が漏れる事は無い。成果で言えば上々だろう。

 

「後やるべき事は……っと」

先ず一つ、この部屋、IS学園における拠点の整備だ。

IS学園は日本列島太平洋側に建設された人口島に存在しており、其の施設は俺や束さんから提供された先進的過ぎる技術を多々試験的に実装した施設となっている。

海洋の流れ、移ろいやすい気象から島を守る為に設置された、島を覆う外宇宙航行艦用エネルギーバリア、海洋輸送に革命を齎した電磁流体制御システム。その他様々な機構を採用しているのがこのIS学園という土地だ。

で、その土地に設置された俺の部屋なのだが、これもまた宇宙技術を利用した連結式コア建造方式を擬似的に採用した物だ。

これは例えばスペースコロニーなどを小規模に運用する場合、『家』を『コロニーの骨格』に接続する事で、最低限の資材で『集落(コロニー)』を形成するというシステムを前提に開発されたものだ。

さすがに地上で機動性能を持つ自室なんていうモノは用意できないが、この思想からブロック式の個室を繋いで家を作るという技術が開発され、其の試験目的に運用されているのがこのIS学園における学生寮だった。

そのためこのIS学園の学生寮と言うのは増設が容易く、例えば居住ユニットが品切れ、とにでもならない限りは『部屋が足りずに男女が同室』なんて事には成らないのだ。……成らないよな? 束さんが手を回したりしないよな?

げふん。話を戻すが、俺に宛がわれたこの一室は、そうしたブロック構想から建築された男性用の一室だった。本来ならば二人一部屋になったのだろうが、このあたりも政府側の配慮と見るべきか。

そうして用意されたこの部屋。元々が宇宙空間でのブロック構想を骨格にしているだけあって、結構な拡張性が存在している。改造しきれば、宇宙は無理でも海底での居住が可能なくらいには上等な代物なのだ。

で、さすがに海底用の居住空間を作る心算は無いが、IS学園における最低限の、独自の防衛網くらいは創っておきたい。

試しに用意されていた端末に接続してみたところ、IS学園の表向きのネットワークに入る事はできた。さすがに機密サーバーなどには物理的に接続されていないのだろう。そのあたりは追々滞空回線でも仕込んでやれば良い。

防衛網に関しては、IS学園に存在しているレーダー網や、TPCの惑星監視衛星網で十分補える。後は此方で適当にオートマトンでも用意して、IS学園周辺に配置してやればいい。IS学園最大の弱点、『太平洋に孤立しているが故の情弱』はそれで補える。

では自室の改造プランは、それら情報を統合する司令室、ないしそれら情報を処理する為のシステム化を計る、と言う辺りだろう。

資材の持ち込みが制限されている以上、入手手段は島内部の購買部なりでの購入となるのだが……まぁ、いざとなれば海底基地から物資を転移輸送すればいいのだし。

 

そして二つ目。

俺と織斑一夏以外の、二人の男性IS操縦者、ギル・モーゼスとデイビッド・コナーに関して。

彼ら二人は、現在ネット上で情報を漁った限りでは、『転生者』であるか、と言う区別は付けられない。まぁ当然情報規制が敷かれている現状だ。得られる情報も限定されているのだから至極当然。

が、仮に転生者であると仮定した場合、彼らの行動次第では此方の仕事に影響が出る場合も考えられる。

貴重なディラクの遺骸を用いて生み出されたISコアを、無駄に損失されてしまうのは此方としても問題に成る。今現在アーク……光の巨人の遺骸の構成物、その人工精製が急ぎ火星の秘密基地にて実行されているが、それでも現有するコアが貴重品である事に変わりは無い。

この世界を『生きている』転生者であるのならば問題は無い。というか、今こうして生きている以上、現実と空想の区別は嫌が応にも受け入れざるを得ない。

然し、もし、もし『原作知識』を生かしてハーレムを目指す、なんていうテンプレオリ主なんてものが登場してしまったら。

その場合は早々に彼らに現実というモノを教える必要があるだろう。現実として来る脅威についてを。

因みに彼らは其々国産の新型ISを受領しているみたいではあるが、ぶっちゃけ彼ら自身に関しては脅威を感じてはいない。というか感じ様が無い。俺にISで脅威を感じさせたければせめて一個師団もってこい。

 

そして、最後の三つ目。

「飯を食いに行きたいんだけど……」

このIS学園が存在する島、基本的にはTPCの運営している土地ではあるのだが、日本の影響が強く、また同時にIS学園の性質上女性の割合がとても大きい。

男女で2:8ほどの比率と言うのだからどれ程男女が偏っているかは理解できるだろう。そんな中で、この土地に来てまだ浅い俺が一人で食事に出る?

この世界におけるIS学園は、『原作』におけるIS学園とは大幅に規模が違っている。学園とは言いつつも、同時に研究機関であり、選手育成機関であり、軍関係施設でもある。それほどの施設があってなお、男女比率は2:8なのだ。

もし不用意に外を出歩いてしまった場合、まず間違いなく目立つ。それはもう目立つ。

何せこのIS学園には入出に制限がかけられており、尚且つ島で行動する際には基本的に身分を明示するものを身につける必要がある。俺の場合であれば、身分を明示するものとはIS学園の制服になる。

そう、この世に4人しか存在し無い筈の、男性用IS操縦者であることを主張するかのような、男性用の制服を着なければならないのだ。

目立つ。確実に目立つ。

自慢ではないが俺はコミュニケーションは一般人程度のレベルでしかない。初対面の人間と面と向って話すくらいは普通に出来ても、不特定多数に注目されれば普通にプレッシャーも感じる。

そんな俺に、先ず間違いなく集まるであろう注目の視線に耐えて食事なんて出来るだろうか。まぁまず不可能だろう。

せめて擬装用に関連企業の身分証明証でもあれば、数少ない関連企業の関係者として紛れる事もできるというのに。

もしくはソレがあれば、学生寮の食堂ではなく、企業側なりTPC側なりの区画に存在しているお食事どころなりを利用できたかもしれないというのに。

「……自炊、するか……?」

どうにか成らないかと備え付けの冷蔵庫の中を見て、中に設置された水と某カロリーなメイトを発見する。これは喰ってもいいのだろうか?

いや仮にこれで今を凌いだとしても、何れはこの問題に立ち向かわなければ成らない日が来る。

「ええいままよっ!!」

胸の内で決意を決めて、制服の袖に腕を通し、一歩自室から足を踏み出す。

――と言うかこんな事に気合を必要とするなんてまるでヒッキーかコミュ障じゃねえか!!

内心のそんな憤りを奮起にかえて、食堂へ向けてIS学園の寮内を歩き出したのだった。

 

 

 

それから辛うじて利用者の少ない時間を見つけて訪れた食堂で食事を済ませ、早々にその場を立ち去った。

目的は単純で、出来る限り目立つ事を避ける――少なくとも織斑一夏が来るまで――為、それまでの約五日間、この部屋の台所を使い自炊で過ごそうというのだ。

そこで学園区画から出て、一番近いマーケットに足を運び、適当に肉と野菜と米調味料を買い込み、それらを纏めて鞄に詰めて背中に背負う。

道中周囲からジロジロと視線を向けられ、ついには巡回兵(ここは日本ではなくTPCの土地である為)に職質をされたりしてしまった。

幸い生徒手帳を見せれば即座に開放されたのだが……。

よくよく考えてみれば、未だ居ないはずの、IS学園の制服を着た男子、しかも顔面には顔を隠すバイザー、背には巨大なリュックサック。

……こんな物俺が兵士でも職質する。

 

そんな事を考えつつ、自室の扉を開いて、その瞬間思わず思考が停止した。

「お帰りなさいアナタ。ごはんにする? お風呂にする? それとも、ワ・タ・シ?」

――はっ、いかんいかんいかん。

目の前に居る人物をチェック。青髪短髪、筋肉のつき具合、骨格から見て戦闘力は甲、間違いなく一般的な人類の範疇では上位に値するだろう。

幾ら量産品のブロックシステムであるとはいえ、俺が手を加えた鍵を簡単に破った所を見るに間違いなく頭脳のほうも優秀なのだろう。もしくはバックアップスタッフが居るのかもしれない。

相手の現在の装備は――裸エプロン? は?

「……おーい、お姉さん反応されないのはちょっと寂しいんだけど?」

「――更識の人か?」

「あれ、知ってるの?」

言いつつ少し視線を尖らすその女性。年齢的にいえば16~17くらいだろうか、その特徴的な青髪は、このファンシーな頭髪色溢れる世界でもそこそこ珍しい。

そしてこのIS学園の中でその頭髪を持ち、尚且つ有る程度以上の実力を持つ人間と言うと……。

「IS学園の生徒会長、更識楯無、であってるんでしょうか?」

「え、ええ。そうよ。私がこのIS学園の生徒会長をやってる、更識楯無よ。親愛を籠めて楯無さんって呼んで頂戴。よろしくね、真幸くん」

「ええ、こちらこそよろしくお願いします、更識生徒会長」

言いつつ手を差し出して握手する。一応差し出す手にも色々気を使って。

「それで、更識生徒会長は何故俺の部屋に?」

「んー、ほらお姉さん生徒会長でしょ? だからとりあえずこれからの学園生活で、困った事があれば何でも頼ってくれても良いわよって顔見せにね」

「はぁ、なるほど。……で、ならその格好は?」

思春期(という事に成っている)の男子の部屋に、そんな過激な格好をした少女が一人。襲ってくれと言ってるようなものではないか。

いやまぁ、日本の暗部を担う更識の、それも楯無の名を襲名している少女だ。大抵の危機など容易く乗り越えられるだけの実力は有しているのだろうが……。

「んふふ、どう、興奮した?」

「ええ、まぁ。魅惑的な格好だと思いますよ?」

「魅惑的だなんて。なら折角だしサービスしてあげましょう! 二の腕で楯無さんにバストタッチくらい……」

「やめい」

言いつつ如何した物かとクビをかしげる。

要っておくと今現在の俺の立ち位置は、開けっ放しの玄関を廊下から覗き込んでいるというものだ。さすがにこんな格好の女性が入り込んでいる部屋に足を踏み入れるのは不味い。風紀的な意味で。

いや他にも立ち位置的に逃げ場の無い空間に入ってしまうのは不味い。下手な攻撃など俺には意味を成さないが、だからといって相手を無傷にしていられるかと言うとそこまではほぼ無理だ。

「それじゃ、俺の部屋への不法侵入と、其の格好の意味は?」

「あれ? 何か怒っちゃってる? えっと、この格好でお出迎えしたらインパクトあるかなー、って……」

「まぁ、確かにインパクトはありましたけど。醜聞沙汰ですよ?」

IS学園生徒会長、裸エプロンにて男性IS操縦者と!! なんて報道部に知られたらいったいどうなる事か。

例え更識の力や生徒会長権限で圧力を掛けたとして、情報っていうのは必ず何時か洩れる。情報の完全な封印と言うのはとても大変で、それこそ情報源を一切合財掃除してしまう、位しなければならないのだから。

「第一そんな格好で男の部屋に来るなんて、挑発してると受け取られても知りませんよ?」

「あら、興奮してる? お姉さん押し倒したくなっちゃった?」

「ヤメロ」

んふふー、と笑う更識楯無だが、その瞳にはなにやら強い感情のようなものが見え隠れしている。はて、何か恨まれるような事ってした覚えは無いのだけれども。というか、俺がやったという証拠を残す事はまず無い。

「えっと、なんだっけ?」

「なんでそんな格好で、俺の部屋に?」

「あー、それそれ。えっと、表向きはアナタの腕がどの程度の物なのかを調べに。建前として私の独断専行って事に成ってるわね。で、本音としては一つ聞きたい事があって」

「それ、裏表逆じゃないですか?」

まぁ、そりゃ日本政府の暗部を担う更識だ。当然俺と言う存在の情報は把握しているのだろう。が、出回っている情報を盲目的に受け止める心算も無く、その裏を取りに来た、と。

「なるほど。で、本音の聞きたい事っていうのは?」

「……アナタ、本当にあのアークプリズムの搭乗者?」

問う更識の言葉。けれども俺が驚いたのは、想像以上に強い意志が籠められたその瞳だ。

然し、何故そんな事を態々? 彼女にとって必要な情報と言うのは、俺が束さん関連の人間であり、織斑一夏護衛の任を帯びている、そして戦闘能力をある程度保有している、と言うことくらいのはず。間違っても俺がアークプリズムの搭乗者であるとか、そういう事は動でも良い情報の筈だ。

「何の話か良く解りませんが、それはもしかしてISの名称でしょうか? もしそうならば、俺は他の男性IS操縦者と違って、専用機は持っていませんし、任される予定もありませんよ?」

「……そう」

俺に専用機は必要ない。だって、前提としてISをも上回る兵器となっているアークプリズムが手元にあるのだ。今さら専用機を持ったとして、俺の能力に追従できるとも思えない。ならば無駄にコアを使うよりも、その分を地球の戦力にしたほうが余程建設的だろう。

そんな俺の思考を察したのか、それとも言葉を文字通りに受け止めたのか。その強い光を秘めた瞳は、けれども途端何を考えているのかわからない笑顔の仮面に覆い隠されてしまう。

「おっけーおっけー、今日のところはお姉さん、これで退散させてもらうわ」

「何か良く解りませんでしたが、もう良いんですか?」

「ええ。必要な事は知れたし、今日はこれで十分。とりあえず今日はもう引き上げる事にするわ」

そういうと更識盾無しは何処からとも無くIS学園の制服を取り出すと、それを一瞬で装着。どうやらエプロンのしたは水着だったらしく、その上から服を着ていた。何処に仕舞ってたんだあれ、というか何、昔のアイドルみたいな早着替え。

「んー、何、お姉さん裸エプロンだと思った?」

「視覚的にはそれに近い物にも見えてましたから」

「……もー、もうちょっと反応してくれても良いと思うんだけどなー」

言いつつビシッと制服を着こなす更識楯無。うん、下手に露出するよりもこっちのほうが魅力的なんじゃないだろうか。カリスマ的な意味で。

「それじゃ、またね」

「ええ。不法侵入は出来ればやめてください」

「考えとくわ」

ニコニコ笑みを振りまきながら立ち去っていく更識楯無を見送って、改めて自室に足を踏み入れ、部屋の戸を閉める。

更に静かにオルタを使い、超感覚まで使って部屋の中をチェック。

新品のブロックルームとはいえ他人に手を付けられてしまった以上、特に更識の手が入った以上盗聴器が設置されている可能性は否定できない。

ものの動いた形跡、体温、その他諸々ありとあらゆる形跡を、人間の範疇を越えた超感覚でチェック。

一通り見て回ったところ、どうやら玄関から奥には足を踏み入れていないらしい。本気であの水着エプロンで挨拶に着ただけだったのだろう。

何となく愕然としながら、改めてブロックルームの認証鍵を弄り回し、少なくとも外部からの開錠を不可に設定したところで漸く小さく息をついた。

まさか学園が始まっても居ないのにいきなり接触してくるとか、予想外にも程がある。此方の予想としてはIS学園の中で自然な感じでの接触を図って来るだろうと思っていたのだが。……いや、俺は一般人と言うわけでもないのだし、多少粗くてもいいのか。

二度と同じことが無い様に、個室の制御システムをOSごと書き換えてしまう必要があるかもしれない。

背負いっぱなしの食料を床におろし、気分的に肩を回しながらそんな事を考えて。

「まぁ、何にしても」

実は俺が木原真幸を名乗るに当って装着しているこのHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)、カメラ機能も勿論の如く搭載している。

……手札ゲトー。

 

 




■ブロック式コロニー建造方式
メインの骨格となる『セントラル』と、公共施設の骨格『ターミナル』、そして各々の居住や工業ブロックである『パーソナル』などが組み合わされて建造される、拡張や引越しなどが簡単なコロニーの建造方式。但しバランスを考えると完全に自由自在に拡張する事ができるというわけでもない。
IS学園の寮はコレの地上適応型簡易版。言ってみれば『超高級なプレハブ』。
■ギル・モーゼス&デイビッド・コナー
第二、第三の男性IS操縦者。転生者であるかは現段階で不明。
ただしモーゼスの公開情報は完全にテンプレオリ主。
■IS学園島
IS学園を要する人口島。所属はTPC、出資はTPCと日本政府。
IS操縦者を育成する高等教育機関であるIS学園の他、スクランブル施設やTPCの最新技術の研究などが行なわれている。またIS学園の情報は一定期間の後、TPC経由で全国に公開される。
■更識楯無
密かに真幸に写真撮影されている。フラグ。
真幸の前世の原作知識は七巻辺りまであるが、あとがきを読んでないので……。
皆に(ネタ的な意味で)愛される、学園最強(笑)少女(……少女?)。

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