窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】 作:朽葉周
「はぁ、はぁ……」
太陽の光の差さない、深い深い森の中。そんな森の中を、一人の少女が走り抜けていた。
服の上から青いパーカーを被った、黒い長髪の少女。彼女はまるで何かを恐れるかのように、山の中を真直ぐ走っていく。
そうして、そんな彼女の後ろから、彼女を追う存在が一つ。……いや、それを『一つ』と形容するのが本当に正しいのか。
それは霧だった。いや、それが本当に霧であるのか、それから逃げる少女には判別が付かなかった。なぜならその霧は、まるで意志があるかのようにして少女を付けねらっていたのだから。
「はぁっ、っはぁ、誰か、助けて……っ!!」
そうして少女が必死に逃げる最中、森の中と言う地形が禍し、地面から露出した木の根に躓き、ごろんと地面へ転がり倒れてしまう。
「きゃっ!?」
――ビュッ!!
そうして地面に転がり倒れた少女の上を、何かの影が飛び去っていく。もし地面に倒れていなければ、ソレは間違いなく少女の頭に直撃していたであろう。
不幸中の幸い。けれども少女にしてみれば不幸は不幸でしかなく、再び立ち上がって逃げ出そうとして。
「――ひっ!?」
そうして、少女はソレを目撃してしまう。霧の中から現れた、奇妙な物体。
肉色に泡立つ奇妙な物体。泡立つ肉の隙間からは多数の触手を伸ばした、粘液質の奇妙な存在。
少女はその名伏し難き存在が何であるのかわからなかった。見るもおぞましいソレが、生物であるのかさえ、少女には理解する事すらできなかった。
「あ、ああ……っ!?」
思わず、後ずさりする少女。その視線は、恐怖からかその名伏し難き存在から外す事もできず。
そして、深い森の中で後ずさりをしてしまった少女は、当然のように地に脚を取られ、そのまま地面へと転がり倒れてしまう。
しかも運の悪いことに、今度倒れたのは先程のような平地ではなく、急な斜面の続く崖であった。
「きゃあああああああああああ!!!!!!」
ゴロゴロと転がる少女。その少女が最後に感じたのは、ドボンという音と、肌に張り付く冷たい感触だった。
Side Other End
アークプリズムが完成してからも、更に開発は次々と進む。
地球圏惑星防衛網『コスモネット』
特殊粒子生成永久機関『太陽炉』
光推進エンジン『マキシマドライブ』
正式版地球防衛装備『インフィニット・ストラトス』
量子演算型コンピュータ『ラプラス』
色々な技術やモノが開発・生産されていく中で、同時に俺はどんどんと力を溜めていく。
初期の頃には、アークを使って増幅しなければ使い物にもならなかった『オルタ』の輝き。けれども今やその輝きは、アークの補助なしにも十分な力を得ている。
嘗て束さんが言っていた、俺が光の影響を受けて変質し行く最中である、と言う言葉は真実であったらしく、今となっては嘗てと比較しても明確に力の容量が変化していることを感じ取れていた。
そうして俺が変化して行く最中、束さんは束さんでなにやら独自に行動を開始しているらしい。どうやらISに関する論文を纏めなおして、その内学会にでも発表する心算らしい。
まぁここまで準備が出来てしまえば、情報の秘匿は一極化――技術の進歩を阻む有害化してしまうかもしれない。そろそろ頃合なのだろう。そう判断して、けれどもただそのままそれを提出されるのは面白くない。女尊男卑的な意味で。
そこで俺は束さんに先行してマキシマドライブに関する論文を書上げ、ついでに実機を作り上げながらその論文を表に出す準備を進めたり、試作品で出来たマキシマドライブを、束さんの新型移動秘密基地に搭載してみたりと、そんな事をやっていた。そんなある日のことだ。
「……コスモネットに反応?」
『そうなんだよ。この時期国際宇宙ステーションとの往来があるなんて話も聞いてないし、しかも妙に大きな生命反応を検出したんだ』
コスモネット。それは俺と束さんの共同開発により、密かに地球を覆うようにして展開された光の網。実体の伴わないバリアであり、情報探査網だ。
直接的な防衛火力の配備は、現状の俺と束さんの二人だけでは絶対的に不可能。けれども、せめて情報収集のためのネットワークくらいは構築しておきたい。そんな考えから密かに構築されたのがコスモネットだ。機能としては……ネットを通過した存在に対する情報収集。
そんなコスモネットに、妙な反応が有ったという。
「生命反応、ってことは、宇宙人か……」
『あるいは怪獣か。……はぁ、束さんがまさかこんな台詞を言うはめになるとはね……』
苦笑しながら呟く束さん。まぁ、科学者なんていうのは夢見るリアリストなのだ。怪獣、なんて特撮の専門用語をまさか本気で使うなんていうのは、ある意味常識を根底からひっくり返すのと同じなのだ。
「とりあえず、調査に行ってみましょうか。場所は分るんですよね?」
『モチのロン! それじゃソッチのメガネに送るからねー』
そんな言葉と共に送られてくる地図データ。そこに記されていたのは、意外にも日本国内の地図であった。
とはいっても、此処からだと多少距離がある。鉄道機関を使って四時間くらい、かな? まぁ、研究開発とかに資金の大半をつぎ込んでいる貧乏人な俺に、新幹線やらを使う資金はないのだけれども。
「というわけで、何処か良さそうなポイントを」
『りょ~か~い。ふむふむ、此処なんか良さそうだね』
そういってめがねに表示される地図データ。それは、件の隕石が落ちたといわれる山の、その隣の山の麓。その道中に設置されたコンビニの駐車場が、人目から付きにくそうでいいコンディションであった。
「……というか、何でこんな山の麓の、それも人口が少ないような場所の道路が整備されてるんだ?」
『あー、それはね、この辺りに天文台が有るんだよ』
束さん曰く、この近くにある天文台は、国立ながら他の天文台に比べて頻繁に内部公開をしており、よくよく小中高生が見学に訪れているのだという。
そんな場所だ。地元の県知事のプッシュもあって、其処へ続く道は中々綺麗に整備されていたのだとか。
「なるほど。それじゃ場合によっては一般人がいるかも、と。そりゃ急いだほうがいいかも」
いいながら、データをまとめていたPCにロックを掛け、衣服を整えて玄関へと歩き出す。
「あら、真幸何処行くの?」
「ちょっと友達のところに。遅くなるかもしれないけど大丈夫だから」
母さんに軽く声を掛けつつ、玄関の外に駐輪してある自転車の鍵を外す。
実はこの自転車も、束さんと手を組んでから色々魔改造してあるのだ。見た目はただの自転車。然しその実は、超高効率人力発電機と低コスト伝導バイクを組み合わせた便利アイテムになっていたりする。
一分確りとこぎ続ければ、30分は走り続けられる優れもの。しかも走っている最中にゆっくり漕いでいれば更にバッテリーが充電できるのだからもう。話が逸れた。
自転車に跨り、人目の無い場所でサラッと転移する。金色の光に包まれた俺は、そのまま自転車ごと目的地の座標へと転移していた。
『……相変らず、まーくんの転移はチートだよね』
「束さんならロケットで数十分じゃないですか……」
しかも俺の超能力じみた転移は見られたらアウトだが、束さんのロケットは光学迷彩標準装備。一応俺も光学迷彩を展開する装備は貰っているのだが、あれ物凄く暑いのだ。
束さんのキャロットロケットって、冷暖房完備、テレビもあればドリンクサーバーなんかも搭載していて、物凄く居住性が高いのだ。寧ろアレが欲しいくらいなんだけど。
「さて、それじゃちゃっちゃと調べますかね」
いいながら、メガネを操作してレンズを不可視化。つまりサングラスにして、その内側にナビを表示しながら、自転車を漕いで目標地点へ向けてと移動を開始したのだった。
そんなこんなで、魔改造自転車に乗って目的地へ向かって向かう最中、周辺を探査装置でスキャニングしながら移動して、暫く行ったところでふと休憩がてら自転車を止めた。
「そうだ、昼にしよう」
此方に転移してきたとき、コンビニで購入したおにぎり。川沿いの橋の傍に自転車を止めて、石段に腰を下ろしながらおにぎりをぱくつく。
因みに俺はカリカリ梅お握りとかも好きだが、炒飯お握りも好きだ。
「しっかし、見つからんなぁ」
メガネ――今はサングラスにしているのだが、其処に表示された地図。その地図は、所々緑色で塗りつぶされている。
このメガネや、束さんから預かっている調査端末。それで調べクリアリングを行なった地点を緑(グリーン)で表示しているのだ。だが、だというのに、ある筈の隕石が一向に見つからない。
「……まさか隕石が移動してるわけでもあるまいに……ないよな?」
油断できないんだよなー、プルトンみたいな隕石怪獣……まぁ、流石にウルトラマンが放映されているこの世界で、プルトンそのものが登場する可能性は……超ウルトラ8兄妹。寧ろ俺がウルトラ発狂しそうだい。……ごほん。
他にも宇宙人の円盤が墜落した可能性だって否定できない。束さん曰く生命反応が強すぎる云々言ってたけど、『地球人類』基準での話である以上、例外なんて幾らでも考えられるのだ。俺だって一般的な人類の生命力に比較すれば飛びぬけているわけだし。
「次は自転車置いて、山の中にでも入ってみるかな……ん?」
橋の手すりにもたれ掛りながら森の風景を見ていると、ふと視界に何か妙なものが映った気がした。
視界に映るのは、青々と茂る木々、それを茂らせた山と、その谷間を流れる川、その川に敷き詰められた砂利、そしてそんな砂利川原に転がるどざえもん……どざえもん!?
「え、ええっ!?」
川原に転がる青い人影。おにぎりをコンビニの袋に仕舞って、慌ててそのどざえもん、もとい、打ち上げられている人影に走りよる。
もしかしたら死んでるかも、なんて考えつつ、駆け寄ると、それはどうやらほんの10にも満たない子供のようで。多分だけれども、束さんとこの箒ちゃんと同年代くらいだろう女の子であった。
うつぶせの状態を仰向けにして、首に手を当てて脈を図る。体温はかなり低いが、幸いまだ脈は有るみたいだ。呼吸も浅いがちゃんととある。
「い、生きてる! ええと、ええと……如何しよう!」
とりあえず、……119番……ダメだ、電波が入らないっ!! 山奥かっ!!
「たたた束さん!」
『…………もしもし束さんだよっ! まーくんから連絡なんて珍しい。目的の物は見つかったの?』
「目的の物前に、死掛けの女の子(幼女)一人拾っちまった!! HELP!!」
『……わーぉ』
パニックを起す俺。そんな俺をとりあえず言葉で宥めた束さんは、先ず少女の体温を取り戻す必要があるとか何とか。
方法としては、先ず少女の濡れた服を脱がせて身体を拭く、後は火を起すなり人肌なりで身体を温めてやる、とか。
流石にこんな幼女の裸で戸惑いはしない。手からビームを出して薪木の形にして、『高熱』を与える事で水分を一気に飛ばす。
そうしていい具合に乾いた薪木に再びビームで着火。ソレを見ながら少女の身体をテキパキと拭いて、最後に俺の着ていた上着に少女を包み込む。
と、そこでふと思いついた。そういえばウルトラマンって、生命力を分け与える、みたいなスキルを持ってなかったっけか。試しに自分の光の力を意識して、それを少しだけ少女に送り込むようなイメージをしてみる。
途端に少女を抱えていた両腕、いや俺の全身から金色の輝きが立ち上る。それに包まれた少女は、徐々に、けれども確かにその青白い顔色に赤みが差しはじめて。
「よっし! ……でも、あれ?」
光で回復させられるなら、火をおこしたりした意味って……。あんまり考えるのは止めて置こう。
『どうだいまーくん、ちゃんと助けられた?』
「あ、束さん。はい、っていうか、よく考えたら生命エネルギーの移譲で助けられました」
『……う、ウルトラマンってのはホントにチートだね……』
そういって頬を引き攣らせる束さん。でも、ウルトラマンの力でも出来ない事は出来ないのだし、寧ろ機械依存とはいえ誰にでも凄い事が出来るようにする束さんのほうが余程チートだと思うのだ、俺は。
……天才的な頭脳、なんて自分の事を自称した事もあるけれども、結局俺の発明ってピーキーすぎて万人が扱うには難しすぎた。束さんの研究していたシステムと組み合わせて、漸く使い物になるか、と言うレベルだったし。
束さんのチートっぷりを見せ付けられて以来、自分の頭が天才的とか言うのは自粛しました。ちょっと頭がいい程度です、はい。
『で、まーくんその子如何するの?』
「如何する、って言われても……警察に通報する?」
こんな所でどざえもんになりかけていたのだ。考えてみれば、何等かの事件に巻き込まれたと考えるのが妥当だろう。だとすれば、もしかすると警察に捜索依頼が届けられているかもしれない。
『一応まーくんは隠密行動しなきゃいけないんだけど』
「あっ……まぁ、匿名の通報ってことで」
『それにねまーくん。私達が調査に来たところで、都合よく事件が起こってる。これ、もしかしたら関連性あるかもだよ?』
「いやいや、そう都合よく結びつくかな?」
まさか、と軽く否定してみる。偶々休憩していた川原に流れ着いた女の子が、偶々俺の追っている謎の存在に関連してる?
『その子は流されてたんだよね? 川上から』
「……あ゛っ」
川上、つまり上流。山奥の方向。これから俺が調査に向かおうと考えていた方向じゃないか、完全に。
もし万が一、この少女が川に流されてしまった原因が、侵略者なり怪獣なりが原因であったとするならば。通報して警官を呼び込むのは、先ず間違いなく無駄に犠牲者を増やすだけで終わってしまう。
ならばいっそのこと、少女は何処かの病院の前にでも置き去りにして、此方は此方で調査を進めてしまったほうがいいだろうか。
如何したものかと頭を悩ませていると、不意に何かの感覚が過ぎって、寝ているはずの少女に視線を向ける。どうやら目が覚めたらしく、ゆっくりとその瞼を開いていくのが見えた。
「や、目が覚めた?」
「……ここ、どこ?」
「此処? 何処って言うか……何処かの川原、としか」
この川ちゃんとした名前とかあるのだろうか。メガネの地図機能で現在地を出してみたのだが、どれがこの川の名前なのか今一つ分らない。いや、今はそんな話は如何でもいい。
「えっと、君は川で溺れてたんだけど、名前は?」
「わたし……さゆか」
「そっか、それじゃ、さゆかちゃん。俺はマサキって言うんだ。
「まさき……おにーちゃん?」
「そそ。それでねさゆかちゃん、その、なんでああなったのか、覚えてる?」
どういったものか、少し悩んでそんな言い方に落ち着く。なんで自分が溺れてたのか覚えているか、なんて、下手したらトラウマ突っつきかねない暴挙であったのだが。俺も気が回らない。
「――あ、ああっ!?」
「ど、どうし「お、おばけ!! お化けが出たのっ!!??」お、オバケ?」
突如何かを思い出したのだろう、ガクガクと震えだして真っ青になるさゆかちゃん。こりゃもしかすると本当に何か見たのかもしれない。
そう考えて、とりあえずさゆかちゃんを落ち着かせる。本当はもう何も聞かずに病院なり交番なりに叩き込んだほうがいいのだろう。が、申し訳ないがもう少しだけ情報収集に付き合ってもらう。
「あのね、わたしね、がっこうのみんなとお星様見に来てたの。そしたらね、このぐらいの、ピンク色の、ぶくぶくしたのが飛んできて……」
そう言って、両手で少女の頭ほどの大きさを作ってみせるさゆかちゃん。ソレくらいの大きさで、ピンク色のぶくぶくで、空を飛ぶ??
「それが、霧の中から飛び出してきて、みんなそいつにくっ付かれちゃって、そしたらみんなヴォーヴォーいいながら変な顔になっちゃって……」
左手で口元を押さえながら考え込む。霧の中から? で、くっ付かれたらヴォーヴォーって……寄生された、ってことなんだろうか?
……あれぇ? それって少なくとも宇宙人じゃないよな? 人間に寄生するタイプの怪獣……。あれぇ? なんだか聞き覚えがあるんだけど。
「それでね、恐くなって逃げたんだけど、そしたら霧が追っかけてきて、それで、転んじゃって……」
「そのまま川に落ちた、と」
「うん、多分そうだとおもうの。あんまり覚えてないけど」
これは……もしかして、マグニアか? あの孔雀王に出てきそうなデザインの、寄生怪獣。
だとすればこの子は凄まじく運が良かったという事に成る。もし仮にあの怪獣であるのだとすれば、確かあの怪獣は水を嫌っていた筈なのだ。……まぁ、怪獣に襲われた時点でアンラッキー確定ではあるのだが。
で、もし敵があのイボイボ怪獣だったとすると、隕石は……隠した、という事なのだろうか。
……ふと思ったんだけど。まさか天文台が宇宙観測センターってことなのか? これティガかよっ!! げふん。
「なるほどね。ありがとさゆかちゃん。……と、なると、とりあえずさゆかちゃんを病院か警察に連れてかなきゃなんだけど」
「やだっ!」
「やだって……」
「望遠鏡のところに戻る! それでみんな助ける!!」
「いやいやあのね、戻ったところで如何やって助ける気よ」
そう言うと、さゆかちゃんは川原に落ちていた流木……丁度さゆかちゃんの太ももくらいまでの長さのソレを持って、此方に向いてドヤ顔。
「ん!」
「……………………………えっと、それで如何やって天文台に戻る心算?」
「ん!」
眉間を指でほぐしながら改めて問うと、そう元気良く此方に向けて両腕を開いてみせるさゆかちゃん。……まさか、抱っこして行けと? 俺に?
子供のバイタリティは凄いというけれども、これはどちらかと言うとあつかましいと言うべきなのではないだろうか。
「……どうしよう、束さん」
『束さんとしては、その子を此処に放置して、さっさと事件だかを解決しちゃうのを推奨するかな』
「まぁ、それは正しい解答なんだろうけど、余りにも情が無い」
『そうだね。でも、なら如何する? その子を連れて天文台まで行ってみる? 話を聞いてた限りなら、先ず間違いなく戦闘になると思うんだけど』
如何したものか。少なくともこの川原においておけば安全だとは思うのだが、確たる証拠があるわけでも無いし。
というか、こういうホラーっぽい展開の場合、単独行動を取るのは間違いなく死亡フラグにつながる。しかも、この場合死亡フラグが立つのは俺のほうだと思うし。
「……さゆかちゃん、連れてってあげてもいいけど、幾つか約束して欲しい」
「ん?」
「一つ目が、俺のいう事をちゃんと守ること」
「うん!」
『連れて行くの?』
「まぁ、この近隣に居る以上、何処に居ても同じだと思うし……二つ目。これから見るものを内緒にして欲しい。出来る?」
「出来るよ!」
そういって手を上げてみせるさゆかちゃん。まぁ、別に何が何でも隠しておきたい、と言うわけでもない。
左手首を胸元に持ち上げてイメージ。途端に赤と白のツートンカラーの腕輪は光の粒子になり、次いでそれは俺の身体の回りでその姿を形作る。
「へ、変身したー!」
「ウルトラオルタ、参上!」
はしゃいでくれるさゆかちゃんに機嫌よく、ちょっと名乗を入れてみたり。因みにオルタの名称は束さん命名だ。コードネームみたいなものだから覚えておけ、とのこと。
つまり現在の俺は、アークプリズムの搭乗者、コードネーム『オルタ』という扱いになる。……って、さっきさゆかちゃんに本名名乗っちゃったような……。ま、いいか。
「ウルトラマン?」
「のんのん、ウルトラ・オルタ。ウルトラマンみたいに変身はしないからね」
出来るけど。いや、正確にはアークプリズムと力を共鳴・増幅させて発生させたエネルギーで巨人の姿を形成、それを操って戦う、とかいうのなら可能なのだ。
まぁ、そんな事する前に、増幅したエネルギーをビームなりなんなりで叩きつけたほうが余程効果的なんだけど。
「でも変身したよ?」
「これはISって言ってね。天才科学者のおねーさんが開発した、まーロボットみたいなもんだね」
「わかった、仮面ライダーだ!」
「……まぁ、比較的近いのはソッチかな?」
まだこの時代、機械系ライダーって存在してない筈なんだけど。555とかG3とか。ただ、答えとしては一番近いかも。
「さて、それじゃ話を戻して、目的地は……先ずは天文台かな」
まぁ、天文台に行ったところで成果を得られるかは怪しい。もし本当にあのイボイボ怪獣が相手だとすれば、最優先すべきは隕石の破壊なのだから。
「さて……束さん、一つお願いが」
『うん? 何かな』
「………(ごにょごにょ」
『何だそんな事か、お安い御用だよん♪』
「それじゃお願いします。……さて、それじゃ行こうか」
束さんにこっそりと通信を入れつつ、今度は片腕でさゆかちゃんを抱き上げる。ふわり、という感覚と共に浮かび上がる身体。
「わっ、空飛んでるよ!?」
「そうだ、コレがISの力だ!」
「凄い! IS凄い!」
そんなふうにはしゃぐさゆかちゃんを抱えながら、かなりの『低高度』を飛行して天文台へ向けて移動を開始した。
……これが仮に、もし本当にあのイボイボ怪獣、もといマグニアであるのなら。確かあの怪獣、強烈な電磁波でガッツウィングを落としたりもしていた記憶があるのだ。
ティガにおけるガッツウィングって、元来超常現象を捜査することを目的とした非武装集団のライドメカなのだ。つまり、当然ながら耐電磁防御なんかはこれでもかと施されているのだ。そんなメカを落とすほどの電磁波。
無論俺の使っているアークプリズムもかなり気を使ったメンテナンスをやってはいるが、それでも機械製品。万が一が絶対にありえないとはいいきれない。
ならば発見されにくい地上を、発見されてもすぐに着陸できる程度の距離で。本来なら戦闘機並の速度を出せるものの、あえてそこを自動車程度の速度で。
「わー!!」
まぁ、さゆかちゃんは喜んでくれているみたいなので、コレも十分アリかもしれない。
■魔改造自転車
自転車の姿をした電動バイク。超高効率の小型発電機を搭載しており、1rpm辺りの発電量が凄まじい。
■さゆかちゃん
姓名不詳の5~6歳くらいの幼女。幼稚園だか小学校だかの遠足で天文台に来ていたらしい。その年齢で課外学習が天文台って如何よ、と思わなくも無いが、どうやら秀才向けの学校だという事で一つ。
聡い人なら既に察しているかもしれないけど、あえて御口に封をば。