窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】 作:朽葉周
そうしてアークプリズムで飛行すること数十分。本来なら車で蛇行して一時間ほど掛かる道程を、一直線に来たほどで驚くほどの短時間で移動した。
道中で、なにやら妙に磁場の強そうなトチを感知しているので、多分その辺りに隕石が隠されているのだろう。ある程度の目星は立てておいた。
とりあえずさゆかちゃんの学校の友達とやらを探しにこうして天文台へ訪れたのだが……。
「まぁ、ある意味で予想通りではあるんだけど」
訪れた天文台観測所。其処には人っ子一人居らず、けれども所々に散乱した子供用リュックサックや、黒い何かがレンズにこびりついたメガネが無造作に転がっていて。
これで辺りが血塗れだったり、謎の爪痕でも残っていれば間違いなく正気を削られたのかもしれないが、幸い「まだ」この辺りの空気は「不気味なだけ」でしかない。
妙な……それこそあの『邪神』と相対した時のような、背骨を握り締められるような悪寒。それがないのだ。
ただ一月になることがある。それは、少し離れた場所から『欲望』のような、大きな感覚が近付いてきているのだ。
……これって、敵だよな?
「さゆかちゃん、此処に敵が来てるみたいだからそろそろ……って、さゆかちゃん!?」
「みんなー! どこー!?」
声を上げて走り出すさゆかちゃん。事情を予測出来ている俺からすれば、先ず間違いなく無駄な行為。けれどもそんな事を知らないさゆかちゃんにしてみれば、自分の友達を助ける為の重要な行為なのだろう。
ただ、こんな状況で大声を上げるのは間違いなく死亡フラグ! 声を聞き届けるのは味方だけとは限らないのだから。
慌ててさゆかちゃんを追いかけるが、こういう室内での子供の機動力と言うのは中々侮れない。体力の上限は低いが、俊敏性は凄いのだ。
……って、そういや今の俺も子供だっけ?
「こら、勝手に行動しちゃだめだって」
「ごめんなさい……」
慌てて少女を追いかけて、漸く捕まえたときには既に、天文台のかなり奥深い場所まで脚を踏み入れてしまっていた。
スタッフルームっぽいところ。やはり此処にまで人が居ないというのは完全な異常事態だ。分ってた事だけどさ。
ションボリと誤るさゆかちゃんの頭を撫でながら、ふと視線をその室内に飛ばす。と、比較的整理されているその室内の一角、ホワイトボードに貼り付けられた紙と、何か地図のようなものが目に付いた。
何故かソレが気になって、近付いて手にとって見る。と、それは一枚のメモと、赤いバツの書かれた地図で。メモを読んでみると、この赤い印の付けられた地点に、隕石が落ちたのを確認した、というスタッフの走り書きのようなものが残されていた。
……うーん、なんだろうか。天文台のスタッフだけあって、隕石に興味がわいてそれを見に行ってみたところ、イボイボに襲撃された、とかそんなところかな?
とりあえず地図の映像をメガネで取り込み、それを束さんに送信。ついでにその位置をメガネのナビに組み込んで、と。
「うーん、此処、かな。よし、さゆかちゃん、次は此処に行くよ」
「みんなは?」
「皆は多分其処に居ると思う。でも、もしかしたらみんなオバケに操られてるかもしれないから、ちゃんと注意すること。いいね?」
「はい!」
よし、と頷いて、さゆかちゃんの手を引いて再び天文台から出るべく、廊下へと足を向ける。そんな最中、ふと何かの感覚を感じて、視線を窓の外に向けて。そして、思わず口元が引き攣った。
「あ、でた! でたよお化け霧!!」
さゆかちゃんがそう声を上げる。窓の外には、生い茂る木々を完全に覆いつくす真っ白な霧が、まどの景色を真っ白に染め上げていた。
「……まずい、入ってきた!!」
学校なんかの建造物にもよくある構造で、窓のすぐ上に小さな換気口が設置されている。その白い霧は、換気口から室内へと逆流して入ってきているのだ。
「……っ、アークプリズム!」
声を掛けると共に光が溢れ、次の瞬間俺の姿は再びアークプリズムを纏った紅白ツートンカラーの装甲を纏った姿となる。
若干慌てながら左腕でさゆかちゃんを抱え上げ、右手から霧に対して牽制のビームを放つ。それがただの霧であればビームは霧を晴らす筈。ところが右腕から放たれたビームは、霧に直撃すると、まるで雲が雷鳴するかのようにその力を拡散させてしまった。
「ちっ、力も使わざるを得ないか」
左腕でさゆかちゃんを抱きかかえ、床をホバーで滑る様に飛びながら、慌てて建造物の中を出口に向かって飛行する。
先程のビーム。あれは俺の能力としてのビームではなく、このISアークプリズムに装備されているビーム兵装、共振粒子砲(リフェーザー砲)だ。
対侵略者迎撃装備として開発されたこのアークプリズム。その兵器の威力がどれほど馬鹿げているのか。こんなもん実用化した束さんスゲーと感動したのも事実だが、この白い霧はそのビーム砲を散らして見せたのだ。
……いや、室内でリフェーザー砲撃つとか、どんな狂気だといわれてしまえば確かにそうなのだが。
で、そんなリフェーザー砲だが、実は更にその威力を強化する方法がある。ソレがつまり、ウルトラの光……オルタの力で強化するというモノだ。
元々俺がISに求めていたのはオルタの強化。正直装備として求めたのは、『武器』ではなく『オルタ増幅器』。しかし結果として完成したこのアークプリズムは、兵器としても完成しており、オルタと合わせることでプラスアルファを得られるほどの完成度の高い仕上がりとなっていた。
今回その強化リフェーザー砲を放たなかったのは、それが室内であったから。オルタの力を注ぎ込んだリフェーザー砲? 計算上の結果が正しければ、山が2~3個消し飛びます。
いや、調整すれば協力な兵器になるはずだ。調整すれば! ……そう気軽に実射できるはずも無いんで、今一つ力加減が分らないので、ああしてフェザー砲単体を低威力に調整して発射したのだ。
「きゃー! きたよおにーちゃん!!」
「ぬおっ、出たなイボイボ!!」
そうしてハイパーセンサーが捉えるその存在の姿。それは見ただけで正気を抉るような、沸騰した肉のような奇妙な存在。感じられるのは敵意ではなく欲望。そう、それはまるで空腹にあえぐ餓鬼のような。
ある意味で純粋なその感情に怖気を感じつつ、右手のリフェーザー砲で迎撃する。建物が消し飛んでは拙いと、やはりオルタの力を使わないままの射撃であったのだが、霧を狙ったときとは違い、その奇妙な空飛ぶコブを撃つと、それはビームに焼かれて消し飛んでしまう。
どうやら霧の状態では無理でも、ある程度形を持った空飛ぶコブの状態なら攻撃が通用するらしい。なるほど、防御時は無敵だけど、攻撃するときは無敵状態が解除されると。
お約束だなんて考えつつ、後にばかり注意していた所為か、真正面を白い霧に覆われてしまっていることに気付く。此処から逃げ出すにしても、取り敢えずはこの真正面……玄関の吹き抜けロビーに出たかったのだが。
「うわわ、きちゃったよおにいちゃん!」
「むぅ」
拙い、完全に両側を囲まれた。前後をふさがれて、両手には壁。壁貫き? 馬鹿言っちゃいけない、この状況での壁とは障害物ではなく防御の為の障壁。穴なんか開けたら外から敵の増援が沸いて、即座にアウトだろう。
何か、何かないか。ふと考える。そういえばこいつら、弱点が有った筈、と。
……そう、水だ。コイツは水を嫌う筈。
周囲を見回す。幸い此処は国の建築物だ。建築基準法なんかはちゃんとしているはず。そう考えて周囲を見回せば、確かにあるスプリンクラー。この型は火災報知機との連動型っ!!
即座に周囲を確認。赤いランプをつけた火災報知機。そのスイッチをアークプリズムで殴りつける。途端陥没しながらも甲高い警報音をかき鳴らす警報機を確認しつつ、即座にスプリンクラーの『傍』に向かって最低出力のリフェーザー砲を放つ。
最低出力のリフェーザー砲はヘビーボクサーのパンチ程度の威力はある。天井に穴を開けながら、最低限の威力に絞られたビームはその余波で天井周辺に高熱を撒き散らす。威力・速度を絞ったが故に、熱量が拡散したが故の現象だ。
そうしてその熱量に反応したらしい消火栓。警報が鳴り響く中、突如その消火栓から雨のように水を撒き散らし始めた。
――ピギャアアアアアアアアアアア!!!!――
空飛ぶコブたちは、そんな奇妙な、悲鳴、といっていいのか解らないが、そんな音を立てながら地面へ墜落。そのままぶくぶくとあわだって、地面の上で跡形も無く解けてしまう。
「うっぷ。よし、それじゃこのまま地図の場所に行くよ。さゆかちゃん、確り捕まる事!」
「うん!」
正面玄関の吹き抜けロビー。そこはこの建物の入り口と言うだけ有って、屋上まで突き抜けた吹き抜けとなっている。
現在一階部分は殆ど囲まれ、出入り口の外側は白い靄に覆いつくされてしまっている。
本来なら此処でアウト。中で水を降らせても、貯水槽の水が切れた時点で襲われて……というのが筋なのだろう。然し今、此処にいるのは俺だ。ISを装備し、空を飛ぶことの出来る俺だ!
「舌噛むなよ!」
「ん!」
いいながら真上へ向かって加速する。幸い此処は「吹き抜け」なのだ。最上階まで一気に飛び上がると、その近隣の窓を叩き割って外へと飛び出す。……緊急避難が適応されるよな? されてくれ。
そうしてそのまま勢い良く外に飛び出ると、その瞬間アークプリズムのシステムデータに乱れが発生する。即座にシステムが強力な電磁波の干渉を訴えかけてきた。
「ワンオフ、『グリッター』発動っ!!」
そうして、即座にアークプリズムのワンオフアビリティーを発動させる。アークプリズムのワンオフアビリティ『グリッター』。
外見的には機体が黄金に輝くだけなのだが、その効果はありとあらゆる現象の否定。強化版のご都合主義幻想殺しのようなものだろうか。
コレを発動中のアークプリズムは、常に俺と高効率の共振状態にある。そのため常にウルトラの力を放出……いや、どちらかと言うとあふれ出てしまっているような状態なのが。
本来はこの増幅した力で基礎ステータス向上、というのがグリッターの機能なのだろう。が、こうしてあふれ出たエネルギーの余波が、内外あらゆる攻撃・魔術・現象の一切を否定するというとんでもない能力になってしまったのだ。
まぁ、流石に核弾頭とかコロニーレーザーの直撃を食らえば耐え切れない……筈……だと思う……うん。あれ? なんだろう、既に人間やめてる俺だし、なんとなく大丈夫のような気も……まぁ、そんな事が無い様に気をつけよう。
思考を切り替える。一気に加速したアークプリズムは、そのまま一気に地図に記された印の場所まで飛行する。最早遠慮はせず、一気に空を飛びながらたどり着いたその場所。
大型の隕石の落着の所為か、大きく地面が抉られたその場所。そこに一つ、谷間にめり込むように隠れた隕石を見つけた。
「……うへぁ、酷い電磁場障害」
「ああっ、みんな居たっ!!」
と、不意に腕の中の少女が声を上げた。少女の指差す方向を見れば、なるほど確かに其処には何人もの人間の人影が存在していた。
即座にハイパーセンサーで光学映像を拡大。其処に映し出されていたのは、首筋に大きなコブを乗せた、顔色の悪い大人子供の姿。
そしてその老若男女の首に取り付いたコブの先から、青白い光が飛び出しては、奇妙な形の隕石の中へと吸い込まれていく様子だった。
『何アレ何アレ!? 魔力? エクトプラズム!? プラーナ!? 生命力が抜かれてる、っていうのは解るんだけど、そもそも生命力ってなんなんだろうね、カロリーでも引っこ抜かれてるのかなっ!!』
「束さんブレイクブレイク」
そのおぞましい光景。しかしメガネのカメラを中継してその様子を覗いていた束さんからすれば、ソレは彼女の好奇心をあおる光景以上の存在では無い様子だ。
ええと、先ず最初に水を何処かから運んできて、あの寄生獣を始末するか? でも仮にあの場の全員を助け出したとして、それを確保保護しておくほどの戦力は無い。
寧ろあの隕石をさっさと砕いてしまったほうがいいだろう。そう考えて、即座に右腕を隕石に向ける。
「さゆかちゃん、多分あの隕石が元凶だから、でっかいビームで吹っ飛ばすよ。ちょっと我慢してね」
「うん!」
そんなさゆかちゃんを確りと左腕で抱きかかえ、右腕のリフェーザー砲を向ける。今現在の、グリッターを発動した状態――強制的にオルタを引き出している状態であれば、あの隕石も吹き飛ばせる筈。
そう考えて、ケリをつけようとした俺だったのだが、不意に横から飛んできた悪意に身を翻す。と、つい先程まで居た場所に帯電する霧のようなものが吹き付けられていた。
「ちっ、出やがったか」
そうして其処に現れたもの。白い霧がまるで飲み込まれるようにして一箇所に集まり、そしてそれは次第に有無の有耶無耶な白い霧から、確かな実体を持った肌色のコブを寄せ集めて出来たような、名伏し難き怪獣へと姿を変えた。
――寄生怪獣マグニア。無から湧き上がるようにして姿をあらわしたその怪物。俺の記憶に照らし合わせるのであれば、たしかそんな名前の怪獣であったはずだ。……ただ、想像していた以上に正気を削るグロい姿をしているが。
「わわわわわっ!? オバケじゃなくて怪獣!? 気持ち悪い!」
「みたいだ。さゆかちゃん、口閉じてっ!!」
いいながら急旋回。即座に直前まで俺達が居た場所に向かって凄まじい勢いで稲光を纏った霧が吹きつけられる。
それを回避しながら、今度は意識的にオルタの力を増幅させて、それを調節しながらリフェーザー砲へと力を流し込む。
本来両腕で構えて反動を堪えるところを、左腕が塞がっているという理由から片手で構える。とたん凄まじいまでの振動が腕を襲うが、それを力尽くで押さえ込みながら、その砲身をマグニアに向ける。
「邪魔だ消し飛べ!!」
瞬間、ゴウッ、という轟音と共に視界が金色に染まる。右腕の先から放たれた共振粒子砲の一撃はオルタの力を乗せて、空を切裂きながらマグニアに向かっていく。
「―――キュゴギュゴギュ!!??」
「……げっ」
オルタリフェーザー砲の直撃を正面から食らったマグニア。さすがの怪獣も、その空間毎ねじ切るほどの超高圧エネルギー砲を喰らっては一溜りもなかったのだろう。その上半身、全体の三割ほどの肉を綺麗にごそっり抉るように消し飛ばしていた。
普通のイキモノなら、身体の3割も失えば死に至る確率は高い。まして今回消し飛んだのは怪獣の上半身の三割だ。だというのに、何故か俺の超感覚は、真正面のあわ立つ肉の塊から感じる脅威を薄れさせては居なくて。
そうしてその気色の悪い肉塊を睨みつける視線の先。不気味に泡立つ抉れたマグニアに向けて、隕石から無数の青白い輝きが飛来し、マグニアの背中からその内側へと溶け込むように消えていく。
途端マグニアの抉れた身体の部分に、内側から湧き上がるようにしてボコボコと新しい肉が現れだす。
き、キモッ。じゃなくて。幾らエネルギーの外部供給を受けられるからといって、あそこまで非常識な怪獣だったかアレ!?
『なるほど、どうやらあの隕石からエネルギーを供給されてるみたいだね。まさかリフェーザー砲を凌ぐでなくて、受けた後に回復するとは』
「束さん、頼んでたアレの用意は出来てます?」
『モチのロン! 後は攻撃目標にレーザーを当てれば其処に向かって誘導するよっ! でも、如何やって誘導する心算? 流石にアレを使うには、現地からのアシストが居るんだけど』
怪獣と戦いながら、此方のアシストをするのは流石に不可能だろう。言外にそう言う束さんの言葉に、思わず口をつぐんでしまう。
如何した物か。俺の案を実行するには、あの隕石に対してレーダー誘導を行なう必要がある。が、レーザー誘導と言うのはある程度安定した場所から連続して対象にレーザーを当て続ける必要がある。
然し現在の俺はあのマグニアとの戦闘中。あれが出てきてしまった以上、あれの相手をしたり、寄生体に寄生されている人間が巻き込まれないように、あれの注意をひきつけたりする必要がある。
で、そうなれば当然戦闘機動を取っている俺では、連続して隕石にレーザー照準を当てるなどと言う作業は不可能。しかしかといってこのままマグニアの相手をし続けるのは……。
エネルギーは無限に近いが、消耗はする俺と、消耗すら隕石で帳消しに成るマグニア。ジリ貧なのは目に見えている。
「おにいちゃん、大丈夫?」
「大丈夫、おにいさんに任せなさい!」
……一度この子を何処か安全な場所まで運んで、その後俺が単独でこの場所に戻り、マグニアのスキを突いて隕石を破壊……。
殊は一刻を争う可能性がある。原作『ティガ』では、このマグニアに関して死傷者が出たというような表現は無い。が、ソレはあくまで架空の話の場合の事だ。
実際、俺が特撮ドラマとしてみた『ウルトラマンティガ』に登場したマグニアは、此処までグロテスクかつ名伏し難い感じの怪物ではなかった。場合によっては生命力だかエネルギーだかを吸い尽くされて……なんて可能性も十分に有るのだ。
「……うん、わかった!」
「……え? 如何かしたか?」
「ううん、なんでもないよ!」
不意に声を上げた少女。そんな少女に少し疑問が浮かぶが、ソレよりも今はやるべきことがある。
そう考えて、少女を連れて少しだけ離れた、現在マグニアが存在する場所からは一つ山を越えた場所の裾に機体を隠す。
「さゆかちゃん、暫く此処に隠れててくれるか?」
「此処に、一人で?」
少し不安そうな少女の姿に、周囲を見回して少し逡巡する。確かに隠れる為とはいえ、此処は深い森の中だ。森の中を散々あの白い霧に追い回された少女を隠すには、少し気がつかなかったか。
『まーくん、なら束さんが相手してあげるよ』
「束さんが?」
『メガネを貸してあげれば束さんが相手できるし、まーくんとの連絡はコアネットワークですればいいでしょ?』
なるほど、確かにそれはそうだ。普段日常からメガネHMDを使って連絡している所為で、どうしてもメガネを使いがちに成っているが、別にメガネの機能はISで代用すればいい。というか後発機であるISの回線のほうが高性能だろうし。
そう考えて、ISに格納していたメガネを取り出し、それをさゆかちゃんに手渡す。
「なにこれ?」
「これは凄いメガネで、これを掛ければ友達と通信が出来たりするんだ」
「けーたいでんわ?」
「見たいな物かな」
いいつつ、メガネを少女の顔に掛けてやる。因みに無駄に高性能なこのメガネ型HMD、ISのオートフィッティング機能がフィードバックされていて、常に装着者の顔に合わせてその形を最適な状態に保ってくれる優れものだ。
『やほー、はじめまして少女、私は束さんだよー!』
「さ、さゆかです!!」
と、どうやら早速束さんがさゆかちゃんの相手をしだしてくれているらしい。俺はこの間にさっさとあの怪獣を何とかしに掛かりますか。
「それじゃ、此処に隠れててね?」
いいながら、アークプリズムを空に向けて上昇させる。目的地は、再びあのグロいコブの怪獣マグニアの元。
マグニアと隕石、その双方をどうやって叩き潰すか。その事を頭に考えながらその場を飛び立った俺は、背後でさゆかちゃんが何か妙にメガネHMDの相手と話し込んでいるその様子に気付かなかったのだった。
「さて、これで両手が開いたわけだが……」
いいつつ、右腕のリフェーザー砲に並び、左腕のビームガトリングを展開する。
このビームガトリング、威力は現行兵器の30ミリガトリング砲を遼に上回る威力を持ちながら、実弾ではなくエネルギー弾であるためコストは基本に俺の体力のみ。
一応方針の加熱でメンテナンスが重要な装備ではあるが、戦闘機くらいは軽く叩き落せるほどの威力を持つ。対怪獣戦においては牽制打程度西かならないだろうが、それでも使えないのと使えるのでは大きく違う。
「―――キュゴギュゴギュ!!」
「ええい、くたばれ神話生物モドキ!!」
ビームガトリングで牽制しつつ、リフェーザー砲で隕石を狙う。が、孤を描くように旋回する俺に対して、じりじりと動いて隕石への射線上に陣取るマグニア。くそぅ、いいディフェンスじゃないか。怪獣なんかやめてバスケでもやってれば良いんだっ!!
「消し飛べっ!」
「―――キュゴギュゴギュ!!」
一か八か、最大出力の一点突破を狙い、リフェーザー砲を高圧縮貫通砲撃で発射する。コレならばマグニアを貫通する事ができるかもしれないし、もし貫通したのであれば隕石に届くかもしれない。
まぁ、隕石まで貫通してしまう可能性もあるのだが、ノーダメージよりはいいだろう。そう考えて。
――フシュゥゥゥゥウゥウウウウ!!!!
けれども俺のそんな思惑とは別に、目の前のイボイボ怪獣はその奇妙なイソギンチャクのような口から、件の帯電した霧を吐出した。
それはビームに直撃すると、そのエネルギーを四方に拡散させ、なんと直撃を凌いでしまったのだ。
「んなっ!? ちょ、全力射撃だぞ!?」
理論値上、計算上なら惑星を真っ二つにすることすら出来るほどの一撃。地球上で使うのは凶器の沙汰とまで表現された一撃が、容易く防がれた……。
――もう、なんなのこの世界。
余りの事態に圧倒されながら、けれどもそんな最中でも怪獣が此方を襲うのを止めてくれる訳ではない。
続けてマグニアの吐出した霧を回避しつつ、再びガトリングで牽制を掛け、その最中にふと気付く。どうやら先程の最大出力リフェーザー砲は完全に防がれたわけでは無い様で、マグニアの身体は所々焦げ付き、その所為か隕石からは青白いエネルギーが次々とマグニアに送られている。
……これはもう、泥沼試合に持ち込むしかないか?
隕石が蓄えているエネルギーとて、膨大でこそあれ無尽蔵と言うわけでは無い筈。リフェーザー砲でチマチマ隕石のストックを消費させる、くらいしか案が思い浮かばない。
「束さん、何かいい案ないかな?」
『具体的には如何したいの?』
「あの怪獣を倒す。でも、あの怪獣はあっちの隕石からエネルギーを供給されてて、先ず隕石を砕かなきゃ怪獣を倒せない」
『つまり、なんとかして隕石を砕いてしまいたい、ってことでいいのかな?』
頷く。隕石さえ砕いてしまえば、アイツは別にたいした敵ではない。確かに凶悪な性質の怪獣かもしれないが、エネルギーのコストパフォーマンスが悪すぎる。
『なら、もう終わるよ』
「えっ?」
不意に頭に何かが近付いてくるイメージが写り、ふと真上を見上げる。
それは星だ。いや、ただの星は昼間には輝かない。それは天、直上から一直線に、大地に向かって加速してきている。
「まさか、あれが!?」
『そう、まーくんのオーダー、遠隔攻撃支援システム、誘導ミサイル『トータスOR』だよっ!』
そう、俺が束さんに依頼していたもの。それは、戦場における数の絶対的不利を補う為の、戦術的支援装備。その中でも今回は、一番攻撃力のあるミサイルをオーダーしていた。
ミサイルといってもただのミサイルではない。それは光をまとうことで亜光速で飛行する、本来は宇宙戦においての運用を想定していたミサイル。
――その名を、光子魚雷と言う。
「―――キュゴギュゴギュ!!??」
天から降り注いだ光の柱は、そのまま地面へ直撃。直後爆音が広がるが、次いで爆音は飲み込まれるようにして一瞬で静まり返る。いや、音だけではない空間まるごと根こそぎ。
まるでアイスをすくうディッシャーで抉ったかのように、それまで其処にあったはずの隕石、その周囲の空間が、まるごと綺麗に抉り取られてしまっていた。
これが宇宙戦闘用に開発された秘密兵器、光子魚雷。亜光速で敵までぶっ飛び、着弾後その場でマイクロブラックホールを発生させる事で敵を消滅させる。
人類同士の戦争に使われてしまえば洒落にならないレベルで拙いので公開する予定は皆無だが、それでもいざという時の備えの一つとして秘密裏に開発されていた秘密兵器の一つ。
今回はソレを半自立誘導型に調整し、地上からの遠隔レーザー誘導で誘導できるように調整してもらっていたのだが。
「でも、なら一体如何やって誘導を……まさか!?」
『んふふ、後でほめてあげなよっ♪』
ハイパーセンサーに映る視界。其処には、此方に向けて手を振る、めがねを掛けた長髪の少女の姿が映っていた。
「……束さんは後でオシオキ」
『えーっ!?』
ガビーン、とコミカルに驚いて見せる束さん。確かにありがたいのはありがたいが、どうせそそのかしたのも束さんだろうに。
「……まぁ、いい。そういう話は全部後で。とりあえず、あれを片付ける」
『もう障害物はないし、一対一のガチバトル! コレで負けたら恥ずかしいよっ!』
「勝つ! 一歩目から躓いて溜まるかっ!!」
いいつつ、怪獣――マグニアに向けて急加速する。隕石が破壊されてうろたえていたマグニアは、けれども即座に俺が近付いてきている事に反応した。
即座に帯電ミストを噴出してくるが、それを回避しクルクル宙を回りながら、少しずつマグニアに接近していく。
「喰らえっ!!」
チュィィィィィィィッィィッィィィィィ!!!!
幾筋もの光が左腕から飛び出し、次々とマグニアに直撃していく。
既に隕石を失い、回復手段の存在しないマグニアは、それを危機と感じたか帯電ミストを吐出す事でそのビームガトリングを無効化していく。
けれども個体のスペックなら此方が上! ビームガトリングは帯電ミストに散らされてしまうが、しかし徐々に数を増やす光弾は、徐々に帯電ミストの壁を押し返していく。
そうしていつしか堪えきれなくなったマグニアの帯電ミストは、ビームガトリングの弾幕に耐えかね、はじけるようにして拡散。そのままマグニアに何発もの光弾が直撃した。
「―――キュゴギュゴギュゲゲエゲゲゲゲゲゲ!!??」
その奇妙な顔の無い口にも光弾は直撃する。それはマグニアの顔の無い口で爆発し、結果マグニアは顔を抱えて悲鳴を上げる。
「今っ!」
即座にイグニッション・ブーストで最大速度に加速し、瞬間的にマグニアの身の内にもぐりこみ、その軟な腹部に向けて右手を大きく振りかぶる。
――ドゴンッ!!
「―――キュゴギュゴギュオゴギョゴギョゴ!!??」
速度そのままに殴られたマグニアは、地面に足を引きずりながら後へと後ずさり――いや違う。そのまま後へと押しやられていく。
「―――キュゴギュゴギュオゴギョゴゴゴゴゴ!!??」
「そのまま、くたばれえっ!!」
右腕に光が集う。全力のオルタを右腕、リフェーザー砲へと流し込み――光がはじけた。
ゼロ距離、接触状態から放たれたリフェーザー砲は、ミストの防御幕だとかそういうモノを一切無視してマグニアに直撃。そのままマグニアの全身に超高熱を巡らせていく。
「――スラァァッシュ!!」
そんな状態で、更に右手を振り上げる。エネルギー砲を放ったまま振り上げた右腕。それに釣られて天へと向きを変える金色の砲撃は、一文字にマグニアを切り払って。
即座に背後へ向けてイグニッションブースト。その途端マグニアの残骸は、白い閃光を撒き散らし、轟音を立てて爆散したのだった。
「はい!」
「ん。……これもだけど、助けてくれてありがとうさゆかちゃん」
「どういたしまして!」
危ないことしたらだめだろう!云々で少し怒っておいたほうがいいか、なんてことも考えたのだが、もう既に終わった事。後は理性ある大人に対応を任せたい。
返されたメガネ型HMDを格納領域に仕舞いこみ、改めて周囲の光景に目を向ける。
怪獣によって踏み荒らされた山間と、マイクロブラックホールによってクリッと抉られた場所、そして隕石に生命力を吸われてぐったりとしている何人もの大人子供。
……正直、後始末を投げ捨てて今すぐ逃げ出したい。
ただ、このままさゆかちゃんたちを放置して帰ってしまうのも、それはそれで後味が悪いような。
如何した物かとうんうんと唸っていると、何処からとも無く警察と消防のサイレンのような物が聞こえてきた。
『そりゃ、怪獣と兵器があれだけドンパチしてれば、地元の誰かが通報するだろうねー』
そりゃそうだ。特に光子魚雷の直撃とか、拡散リフェーザー砲が大気を割る音とか、かなり凄まじかったし。
因みに光子魚雷は飛行自体で発生する音波は大したことが無い。なぜなら飛行時点での光子魚雷はあくまでも『亜光速』で飛ぶ半分光みたいな状態なのだから。
『寧ろまーくんのリフェーザー砲がメインじゃないかな』
リフェーザー砲は共振粒子砲。要するに物凄く小さな粒を加熱して一方向に射出しているわけだ。それは当然熱で大気をかき乱すわ、質量で空気をかき混ぜるわ。
……俺の所為かっ!?
そんな事を話しているうちに、徐々にピーポーピーポという音は近付いてきている。
「……さゆかちゃん」
「うん? 如何したのおにいちゃん?」
「俺はそろそろ帰るよ」
「えっ!?」
俺の言葉に驚いたようなさゆかちゃんは、何故かぎゅっと俺の服の裾を握り締めて。……うーん、困った。
「ほら、ヒーローは正体不明にしとかなきゃならないから」
「……うぅ」
『ぷ………うぷぷ………ヒーローは……正体不明…………うぷぷぷぷ…………』
――束にゃんうるさい。
げふん、と小さく咳をして、改めてさゆかちゃんと向き合う。
「ほら、もう恐い怪獣はおにーさんがやっつけたよ。後はもう警察の人たちが助けてくれるから」
「ほんとう?」
「本当本当。指きりしたっていいさ。やる?」
「やる」
さゆかちゃんと小指を結んで、指きりげんまん。ワザと大げさに指切りを歌ってやると、少しだけさゆかちゃんは元気になったみたいで。
……うん、大丈夫そうだな。
「それじゃ、俺は帰るよ。ばいばいさゆかちゃん!」
「うん、またねおにーさん!!」
そういって手を振るさゆかちゃんに背を向けて、一気に上空へと飛び去る。
『またね、だって。いいの?』
「いいの。どうせちびっ子の記憶なんてすぐに忘れちゃうさ」
またね、とさゆかちゃんは言った。けれども、俺と彼女が再び出会うことは先ずありえない。世界は広い。全体でも70億近く。日本の人口だけでも1億2千万人以上の人間が生きているのだ。
そんな中で、偶々この事件を呼び水に此処に訪れた俺と、天文観測に訪れていたさゆかちゃんが再び出会う確率。果たしてソレはどれ程の物か。
第一、あんな怪物に襲われた悪夢みたいな出来事、暫くすれば彼女も『夢だったのだろう』と自分を納得させて、その内綺麗さっぱり忘れるというモノだ。
『ははぁ、まーくんは解ってるようで解ってないなぁ』
「何がだよ束さん」
『んふふ、女の子は男の子よりもフクザツなんだよっ♪』
ワケが解らん。
その後も、束さんと喋りながら、ゆっくりと移動を続けるのだった。
「……っと、また自転車忘れるところだった……」
■寄生怪獣マグニア
原典:ウルトラマンティガ
怪隕石と共に地球に飛来した宇宙生物。通常は霧になって存在し、無数の小型マグニアをその霧の中に忍ばせながら獲物を探す。隕石が墜落した近隣の天文観測所の所員や、その見学者を襲い、のど元に食いついて自らの支配下に置くと共に、その生命エネルギーを怪隕石にリザーブさせていた。
戦闘時には隕石に蓄積したエネルギーを供給する事で驚異的な回復力を得ることができる。口から帯電ミストを吐いて攻撃する。水を浴びると体が溶けてしまうため、川などを嫌って近寄ろうとしない。
本作においては神話生物モドキのグロ肉。
■グリッター
アークプリズムのワンオフアビリティー。
その効果はありとあらゆる現象の否定。強化版のご都合主義幻想殺しのようなもの。
ほぼ暴走に近い莫大なエネルギーを以って、本体に干渉する、時間や因果を含めた全ての干渉を否定する。また溢れるエネルギーで当然本体も強化されている。
当然ながらコレはコアとダイレクトに共鳴できる真幸のみに出来る荒業。
■トータスOR
篠ノ之束謹製の高射ミサイル。カタパルトにより高速で軌道上にまで打ち上げられたミサイルは、その後天空から標的に向かって一直線にたたきつけられる。
今回はこのトータスに光子魚雷(亜光速で飛来する小型ブラックホールミサイル)が搭載されていた為、球形に空間が消滅した。
■スラァァッシュ!!
硬い砲身にはこんな使い方も有るんだ! からの スラァァッシュ!!
もしリフェーザー砲が両刀であった場合、地球が『アーッ!』していたかも。