窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】   作:朽葉周

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05 インフィニット・ストラトス

 

 

 

 

 

 

「ISを発表する?」

 

それはある日の昼下がり。いつものように学校に行った後、いつものように地下研究所に足を運んでいた俺に、不意に束さんがそんな事を言い出したのだ。

「そだよ。怪獣が出始めた以上、もう時間に一刻の猶予も残されてないみたいだし」

そういって少し落ち込んだような表情を浮かべる束さん。束さんは俺と違い彼――ディラクから戦う為の『知識』を与えられている。そんな束さんが言うのだ。『宇宙人や怪獣が頻発する時期が訪れるのだ』と。

俺の知識で言えば怪獣頻出期と呼ばれるものに相当するのだろうか。何等かの黒幕が暗躍している、とはあまり考えたくないのだが、大まかに言えばそうした脅威が頻発する『時期』に入ってしまったのだとか。

「こうなっちゃった以上、ISの発表を渋っても、百害有って一理無し、だからね!」

「まぁ、それはそうかも知れないけれども……」

だけれども、本当に今コレを公開してしまっていいのだろうか。俺はこのISを見て、この世界がおれの知るISという世界にとても近い世界だという事を理解している。

まぁ、根本的な部分でウルトラマンだとかクトゥルフ神話の邪神だとかが関わってきてる臭いが、それでもこの先の未来はある程度までは『原作』に近い物となる可能性は高い。

「例えばだけど、束さん」

「うん?」

「例えば、ISが世界に受け入れられなかったら。宇宙人の侵略、って言うのが受け入れられなかったら如何する?」

「そのときは仕方ないね。私達だけで出来る限り頑張って、信用が得られるまで頑張るしかないよ」

まーくんには申し訳ないけど、という束さん。いや、それは問題ないんだ。確かに地球防衛軍なり地球平和機構なりが成立すれば、俺の仕事は減って楽に成るだろう。

けれども問題は、白騎士事件のような出来事……束さんの暴走が起こらないか、という事で。

「例えば、ISを危険視した世界が、束さんを確保しようとしたら如何する?」

「そのときは、悪いけど逃げさせてもらうよ。束さんはまだまだやらなきゃならないことがたくさんあるからね」

そう言う束さんに少し安心する。うん、あの『篠ノ之束』とこの『束さん』は別人だ。そう、今改めて納得した。

……なら、大丈夫かな。

「如何かしたの?」

「ううん、なんでも」

そういって言葉を切る。

原作の白騎士事件……インフィニット・ストラトスが学会で受け入れられず、その直後起こった世界各国から放たれたミサイル。それを単騎迎撃して見せた『白騎士』。

そしてその性能に興味を持った各国の軍がこれを捕縛しようとしたが、そのすべてがたった一機のISにより全滅させられた。これが原作における『白騎士事件』だ。

ただこの白騎士事件、ネットなんかの考察では、当然のように黒幕が篠ノ之束であり、ISを実戦照明する為、世界各国の軍事基地に不正アクセスを行い、そのミサイルを発射、それを迎撃する事でISの有用性を世界に見せ付けたのだ、といわれている。

だが然し、この世界においてのISは、認められる云々ではなく、必要性に応じて開発されたものだ。

しかもこの束さんはかなり理性的な……所謂『きれいな束さん』だ。流石に原作と同じ、白騎士事件なんて出来事が起こるとは思えないのだけれども。

「それで、ISの発表は何時に?」

「それ何だけどね……」

そうしてそんな不安を振り払って、束さんと話を進める。きっと、多分大丈夫だなんて考えて。

後々考えれば、もしかしたらコレが一種のフラグだったのかもしれない、何て思い返すことになるのだが、このときの俺はそんな事を知る由もなかった。

 

 

 

 

 

「ダメでした」

「ありゃりゃ」

そうして後日。学会から帰って来た束さんは、唐突にそんな事を言い出した。

学会で発表されたインフィニット・ストラトスに関する束さんのお話。それは、見事なまでに全体から場かにされて終わってしまった。

如何考えてもSFなイメージインターフェイスや、完成制御機構――パッシヴイナーシャルコントロール(PIC)。

戦闘機や戦車、戦艦なんかが戦争の主力を担うこの時代、いきなり『人がパワードスーツで空を飛ぶ』、なんてSFじみた物が登場する、なんていわれれば、そりゃ信用も出来まい。

ましてそれが、どこぞの研究者なり企業なりの研究グループが発表していたならまだしも、何処から潜り込んだのかもわからないような小娘によって発表されたのだ。

「まっ、予想通りって所だねー」

更に、だ。ISの存在だけでも胡散臭がられているというのに、この束さん、何を思ったかISの開発経緯、開発思想についてまで学会で語って見せたのだ。

つまりは、『地球防衛装備』として開発されたISの経緯を。

ただでさえ胡散臭いISだというのに、此処に『宇宙人』だとか『怪獣』だとか、そんな胡散臭いを飛び越えて電波を感じる単語がずらずらと羅列されたのだ。此処までいくと多分平時の俺でも信じない。

――と言うか、寧ろ救急車を呼ぶ。黄色い奴。

「つまり目的は、ISを認めさせることではなくて、ISと言う存在に関するあれこれを世界に認識させる物であった、と?」

「そゆことー♪」

要するに、「侵略者に備えてISなんて超兵器を開発した、なんて嘯くトンデモ小娘が存在していた」という事実さえ認識されてしまえば十分だ、と。

なんというか、回りくどい事してるなぁ。

「あ、一応ホントのことだってアピールする為にこの間の怪獣の戦闘データも提出しておいたんだよ?」

「……提出って、アレを?」

思い返すのはこの前のアレ、イボイボ怪獣、じゃなくて、寄生怪獣マグニア。但し原作のソレよりもクトゥルフっぽくグロい肉になってる奴。

「映像見て発狂しだす奴とかいなかったろうな?」

「グロ動画見て顔色悪くしてた人はいっぱい居たよ。でも映像越しだし、プライド高い人も一杯だったから、皆気丈に振舞ってたよ」

それはまた。俺や束さんはディラクの光、『力』と『知識』を持っている上、いきなり神格クラスを目撃したりしている所為か、かなり高い狂気耐性を持っている。

けれども、学会に居るのは普通の人間。幾らビデオに写された映像であるとはいえ、その正気を削る姿を見てしまえば、多少なりとも精神にダメージを受けるのは間違いない。

……っていうか、寧ろ狂気に犯されて錯乱していたから、束さんも滅茶苦茶に虚仮にされたのではないだろうか?

「案外自業自得だったりして」

「たはー」

たはーっておい。

この人、頭は良いくせに、人の事を考えるのが苦手らしい。頭が良いくせに抜けている。その程度では萌えキャラには成れんぞ。じゃなくて。

「それよりも束さん、束さんが留守の間にコスモネットに反応があったんだけど」

「何? どれどれ」

いいつつ、キーボードを叩いて端末の情報を参照する。コスモネット……地球を覆う特殊な光のセンサーだ。

主に宇宙人の地球圏侵入を察知したりする為のものではあるが、このセンサー別に外側にのみ向いているわけではない。当然というか、内側を探査する事もできるのだ。

で、そんな地球側を探査していたセンサーが、この数日の間に何等かの反応をキャッチしていたのだとか。

「場所は……うわ、また日本だよ」

そうして表示された地図をみて、思わずそんな声を漏らしてしまう。

なんでこう、日本にばっかり怪獣やら宇宙人が上陸してくるのだろうか。いや、微弱では有るものの、アメリカとかロシアからも妙な信号は出てるらしいけど。

こうもはっきりと地球外生命体の存在を感知できるのは、何故か日本が多い。矢張り怪獣大国なんだろうか、日本は。

「とりあえず行ってみようか」

「場所は……日本最先端技術研究所? 国営の技術研究施設みたいだね」

「国営……役に立つ技術とか開発してるのかな?」

「ううん、研究してるだけみたいだよ。発表された技術を研究して、それをわかりやすくまとめてる、って解釈でいいのかなこれ?」

言う束さん。その視線の先に目を向けると、どうやら国の公式ホームページを見ているらしい。お役所独特の難解な言い回しで書かれたその紹介文は、束さんの頭脳を以ってしても理解し難い文章だったらしい。

日本のお役所って、本当如何でもいいところばっかり力入れるよなぁ……。

「フンフン、場所の座標データはアークプリズム経由でメガネに送っておくよ」

「了解……って、へぇ、郊外の山奥。これなら近所まで転移しても大丈夫そうだな」

いいつつ、ディスプレイのデータを弄り回して地形を確認する。此処も前回の天文台と同じく、ひと気の無い場所にゾン際しているらしい。とはいえ、前の天文台に比べれば、市街地からかなり近い場所なのだけれども。

「それじゃ、パパッといってきます」

「うん……っとちょーっとまったー!」

と、アークプリズムを使い、力を増幅させながら転移しようとしたところで、不意に束さんから待ったが掛かった。

突然掛けられた声に少しビックリしつつ、如何したのかと束さんに向き直る。

「ほら、前回まーくん怪獣を見つけるまで手間取ったでしょ」

「あぁ、まぁ。このメガネ、情報端末としては優秀だけど、操作端末としてはそこそこだからなぁ」

いいつつめがねを指でコンコンと突く。このメガネ型HMDの主な機能は情報端末。探査機能なんかはあくまでオマケ機能でしかないのだ。まぁ、そもそもこの時代メガネ型HMDが存在しているというだけでもとんでもない話ではあるのだけれども。

「其処で束さんは急遽新アイテムを開発したのだよ! じゃじゃーん!!」

言いつつ束さんが取り出したのは、なんだろうか、拳銃のグリップのような物。ただしそのグリップの先に拳銃の銃身らしき物は無く、その代わりに小さなモニターのような物が接続されていた。

……これって、もしかして、アレか?

「じゃじゃーん! これが束さんが学会との移動中に吶喊で作っておいた、最新式の情報探査端末、ラウンドグリップだよっ!!」

そういって束さんが持ち出すそれ。……アレか。またコスモスネタか。ってかなんで束さんがそんなネタを……これも世界の意志かっ!! ……じゃなくて。

ありがたくそのラウンダー……じゃなくて、ラウンドグリップを受け取り、軽くソレを触ってみる。

「あ、一応ソレメガネとの連携もできるようにしておいたから、活用してね?」

「了解。と、それじゃそろそろ行って来ます」

「うん、大丈夫だとは思うけど、気をつけてね」

そんな束さんの言葉を耳朶に、今度こそ待機状態の赤と白の腕輪――アークプリズムに意識を移す。

俺のオルタと、アークプリズムのコア。その二つが共鳴し、大きくなった金色の光。それは俺の躯を瞬時に覆うと、次の瞬間光の玉になって、此処ではない何処かへと転移したのだった。

 

 

 

 

 

「で、到着したわけ何だけど……何だ此処?」

そう呟いて、思わず首を傾げる。視線の先に存在する建物。ソレは何と言うか、まるで遊園地のような前衛的なデザインの建物。

緑深い山の中に、ポツンと一件だけ存在するその建物は、静かで自然豊かな情景の中にあって一際イロモノ感を際立たせていた。

「何処のゴミ処理場だ……」

余りの違和感に一種のおぞましさのような物を感じつつ、改めて周囲を警戒する。話の通りであるのなら、この辺りに何等かの怪獣なり宇宙人なりが存在している筈なのだが。

そう考えてメガネに手を掛けようとして、直前に渡されたグリップの事を思い出す。

乱雑にポケットに突っ込んだソレ。試しに手にとってスイッチを入れると、途端その小さなディスプレイに色鮮やかな色彩が浮かび上がる。

そうしてそれと同時に、メガネに『端末認識』の文字が浮かび上がる。自動で同期するのか。さすがは束さん製品、何て思いつつ、改めてグリップを四方に振り向ける。

「……やっぱり建物から何かの反応が有る」

ラウンドグリップから表示される情報。ソレが正しいのであれば、あの極彩色の建物の方向から、微弱では有るが重力偏重や一種の磁場のような物が感知されていた。

とりあえず近付いてみるかと、歩きで少しずつ極彩色の建物へと近付いていく。

建物は山の中に有るという事も有り、他にこんな場所に住んでいる人間も、用事のある人間も居ないのだろう。道路に自分以外の人影は見当たらない。

そんな光景に、何かでそうな雰囲気を感じつつ、漸く到着した建物の正門。其処に記されているのは、『日本最先端技術研究所』の名前で。

目的地に到着した事を確認しながら、改めてラウンドグリップで周囲を探査する。と、その途端ラウンドグリップが警報音を響かせた。何事かとチェックを入れると、周囲に強烈なエネルギー反応があるという結果が示されていて。

「……ん?」

『Ibn-Ghaziの粉末の使用を推奨』

不意にメガネHMDに表示されたその一文。何のことかは理解できなかったが、とりあえずラウンドグリップに搭載されている機能の一種らしい。

試しにその使用を承認し、真正面に向かってグリップの引金を引いてみる。

カチッという音と共に引かれた引金。途端グリップの一部が変形し、その部分から何かの粉末のような物が真正面へと吹き付けられた。

――バチッ!!

その途端。ラウンドグリップから噴出された何かは、真直ぐ正面方向へと飛んでいくと、途端何かにぶつかったか激しく電光を迸らせた。

突然の事に驚きながら、改めて正面に向けて向いなおす。と、目の前には何時の間にそんなものが出来上がったのか、極彩色の建物を覆うように、薄青色で半透明のドームのような構造体が出来上がっていた。

「……もしもし束さん」

『もすもすひねもす! さっそく連絡来たね! どうしたのかなまーくん?』

「えっと、ラウンドグリップの機能を使ったら目の前に何かでてきたんだけど……日本って、バリアなんてまだ実用化で来てなかったよね?」

『はい?』

言葉足らずな俺の言葉に、束さんも思わず首を傾げてしまう。少し首を振って意識を改め、改めて束さんに俺の行動履歴と、目の前の薄青色で半透明の構造体の映像データを送信して助言を求める。

『はぁはぁ、「イブン=グハジの粉」を使ったんだね~』

「イブン……イブン=ガズイ!?」

『他にもイブン=ガジなんても呼ばれるね。効果は不可視の存在を目視可能な状態に引き摺り下ろす事ができる物だね』

その名称は聞いた事がある。それはクトゥルフ神話におけるマジックアイテム。なんだったか、素材は結構おどろおどろしい物を使った代物だったような……。

『勿論そんなオカルト染みたものじゃなくて、ウルトラ科学的に合成した物が、ソレと同じ効果を持ってるってだけだから安心していいよ』

「ほっ……いや、ウルトラ科学ってなんだ……」

そんな事を話しながら、改めて視線を目の前の半透明の構造体へと向けなおす。

『うん、まーくんの言う通り、コレは地球人の建造した物じゃないね。今ちょっとログを漁ってみたけど、此処の研究所、最近はバクテリアの研究してたみたいだし』

「なるほど。……いや待て、ログを漁った? 何処にそんなログが……」

『テヒッ☆』

この人本当に如何した物か、なんて考えつつ、気を取り直して三度正面へと向き直る。つまり、このバリアっぽい半透明の構造物は、少なくとも地球人の技術ではない、と言うこと。

ひいては、この日本最先端技術研究所とかいう建物は、間違いなく宇宙人なりに制圧されてしまっている、と言うことだろうか。

となれば今回の作戦目標は、この研究所所属の研究員の救出と、この研究所を制圧した異星人だか何かの撃退、といったところか。

『めんどくさいなー。いっその事研究所ごと束さんの衛星重力砲で蒸発させちゃう?』

「ダメだって。いや、最終手段としてはアリかもしれないけど、それは最後の手段にしておかないと」

流石に、ISのような個人装備ならまだしも、衛星砲なんてものの存在を公にしてしまうのは拙い。国際宇宙条約云々やら、色々拙すぎる。

それに人命救助だってそうだ。俺だって自分の命最優先なのは確かだが、拾える命は拾っておいたほうが良い。後々の事を考えておくと。

『理由が倫理的な偽善からじゃなくて、利害で考えてる辺りが流石まーくんだよねー』

「束さんはもう少し『先の利益』に関する事を考えようよ……」

単発的な「目先の感情」に突っ走りやすい束さんにそう言葉を返しつつ、目の前のバリア、これを如何やって突破するかを考える。

とりあえずの現状としては、『イブン=ガズイの粉』によりバリアが可視化しているだけなのだとか。

例えばこの状況でバリアを破るとする。その場合、先ず高確率で内部の存在に此方の存在を気取られてしまう。

人質を取られるのも面倒だし、出来れば強襲よりも潜入の方が良いと思うのだが。

「とりあえずこのバリアを外周回りに調べてみるよ」

『バリアの大きさは大体敷地をギリギリ納め切れてない、くらいみたいだね』

束さんの助言を受けつつ、早速ラウンドグリップ片手に周囲を散策しだす。森の中と言うことも有って、敷地の外側を歩くだけでもそこそこ大変なのだが、基礎身体能力が既にバケモノクラスに達している俺としては、予想外にスラスラと動く事ができた。

オルタ様様というやつだ。

「……っと、此処はバリアが薄そうだな」

そんな事を考えながら周囲を探索していると、一箇所バリアの厚みが他に比べて薄くなっている場所を発見した。

此処ならいけるだろうと考えて、オルタを顕現させる。オルタの輝きを見に纏ったままバリアに接触すると、バリアは激しく電光を迸らせる。けれどもその電光は俺の未を貫くほどの物ではない。

そんな事を考えている間にも、薄いバリアはあっという間に通り抜け終わってしまう。この短時間、あの程度の負荷であれば、バレはしないだろう。そう考えつつ、そそくさと敷地内の建物の中へと足を踏み入れる。

「束さん、敷地内への侵入に成功。通信は繋がってる?」

『……ちら、皆大好き束さんだよーん! ちょっ……ながり難いみたいだよ、試しにコア・ネット……』

定期的に入るノイズ。束さん謹製のHMDの通信が阻害される事に若干驚きつつ、めがねを外してアークプリズムを部分展開させる。

今回展開させるのは、ISとしての機能ではなく、戦闘服としての機能と、ISのハイパーセンサーシステムの部分だ。

見た目としては、全身に赤と白の鎧を着込み、頭部にフルフェイス型のバイザーを展開した、と言うような感じだろうか。

脚部は装甲こそ纏っているが、本来の膝から下を完全に覆い隠す長靴のようなスラスターを履いた形ではなく、ちゃんと二足歩行で移動する為に、脚を靴の上から装甲で覆ったような形となっている。

目元のV字バイザーがクリアグリーンに輝いて、今度はコア・ネットワークを用いた通信を束さんに接続させる。

「もしもし束さん?」

『もすもすまーくん、やー、やっぱコアネットワークの量子通信は違うね! こうもはっきりまーくんの声が聞こえるんだもん!!』

「宇宙人同士の共通言語にも使われるような原始的信号通信ですからね……で、束さん、改めて、通信状態をチェックします」

『はいはーいっと! 通信状態は良好。光学望遠での確認に若干の問題があるけど、それは補正でなんとでも成るレベルだよっ』

「軍事衛星のハッキン……げふん、それじゃ束さん、まずこの施設の内部地図を」

『はいはーい!』

送られてきたMAPデータがバイザーの内側に表示される。ふむ、前回の国立天文台に比べれば古めの建物なのか。

主に地下と一階が実験室、上階が事務室だったり各研究員の個室だったり、という感じの配置になっているらしい。

「それじゃ、とりあえず地下から見て回ります」

言いながら、素早く地下室への階段を駆け下りる。地下室は薄暗く、妙にジメジメしている部屋や、逆にさっぱりカラカラに乾燥した部屋があったり。

環境実験室と言う奴だろうか、などと考えながら、特に地下にめぼしい物が無かった事を確認して階段を上る。

一回の実験室は、主に機械部品なんかを置いているのであろう。粒子観測装置まで設置してある事に、そこそこ良いものを使っているんだな、なんて妙な関心をして。

そうして今度は階段を使って二階へとのぼる最中、不意に何等かの気配を感じ、咄嗟に階段脇の防火扉、その影へと飛び込んだ。

………ジジジジ……。

放射線反応? ISが感知したその反応。放射線は『俺』という個体には特に効果を及ぼす事はないが、それでも人類にはどんな影響があるかもわからない危険な存在だ。

幾ら此処が国営の研究所であるからとはいえ、放射性物質まで扱っているのだろうか。そんな事を考えつつも、会談の向こうの廊下から感じる気配に意識を向ける。

ハイパーセンサーが感知したその廊下の先。明りの消え、薄暗く不気味なその廊下の先。其処に見えたのは、奇妙な白と黒、その二色の斑模様を纏った、奇妙なヒト型の姿だった。

「なんだあれ……」

『所謂一つの『宇宙人』って奴じゃないかな!! まーくん、GO!』

なんだか嬉しそうな束さんの声を聞きつつ、溜息をひとつ吐いて、こっそりとその宇宙人の後を追うことにしたのだった。

 

 

 

 





■インフィニット・ストラトス
原作においてマルチフォームパワードスーツとして開発され、本作において地球防衛用の特殊装備として開発されたパワードスーツ。
コアに光の巨人『ティラク』の遺骸を加工した『コア』を使用する事で、適合者の強い精神と共鳴する事により莫大なエネルギーを生み出す事ができる。
また本作におけるISは、『女性にしか乗れない』のではなく、『辛うじて女性の適合率を高める事ができている』というもの。


■ラウンドグリップ
束さん謹製の探査装置。かなり大雑把な仕掛けでアバウトなシステムと成っており、然しそれ故に複雑な妨害装置などに引っかかりにくい。
更に束さんの受け継いだ知識から疑似魔術的なシステムも組み込まれており、これによって対応力は高い。
元ネタはウルトラマンコスモスの旧式ラウンダーグリップ。

■今回の宇宙人
今回ヒントは多いので、知ってる人なら既に気付いたと思う。

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