窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】   作:朽葉周

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06 三つの面

 

 

 

日本最先端技術研究所の二階。其処を訪れた俺は、不穏な気配を察知して、咄嗟に防火扉の影に飛び込んだ。

そうしている内に、ひと気の無い薄暗い廊下の奥を通る奇妙な白と黒、その二色で描かれた、幾何学模様を纏う奇妙なヒト型をハイパーセンサーの視界で捕らえた。

人類ではない。高い可能性で、地球外生命体であろう。

そう判断して、忍び足でコソコソとその宇宙人らしき存在の背後を追って行く。と、その白と黒のヒト型は、二階の奥、資材室という表札の出ている部屋へと姿を消した。

即座にISのハイパーセンサーを調節する。ISのハイパーセンサーと言うのは凄まじく高性能で、ちょっと調節してやれば、薄壁一枚くらい簡単に透視してしまう。

「……っておいおい」

そうして覗き見た室内の光景。ソレを見て、思わずそんな呆れた声が口から零れ落ちる。

黒と白のツートンカラー。幾何学模様の描かれた身体を持ち、白い顔に黒いオカッパのような頭を持った宇宙人。

『宇宙生物ダダ』、と言う奴ではないだろうか、コレ。

……アルェー? なんでダダが登場してるわけ? 昭和シリーズってこの世界でも放映されてるんだけど、え、マジで!?

俺てっきりこのノリなら『コスモス』の『ギギ』辺りが登場すると思ってたんだけど……元ネタの方かっ!!

『まーくんまーくん!! ダダだ!! ダダだよダダ!!』

「束さん何言ってるか解んなくなりそうだからちょっとまって」

だだだだだだだと何を言ってるんだかわからない束さんを宥めつつ、室内に居るモノクロの宇宙人……ええい面倒だ、「ダダ」の様子を観察する。

ダダは室内に設置された何かの機械にスイッチを入れると、その前でピシリと背筋を伸ばした。

『《……ダダ1207号、任務を忠実に遂行せよ》』

「《は、当研究所所員全所員をテスト、内5体が標本として適切で有った為採取しました》」

『《指示した標本は六体だ。我々の星では標本を急いでいる。ダダ時間623までに標本六体を完成せよ》』

うっわー、マジでダダだよ。人間標本とかまた懐かしい。

『《幸い貴様の訪れた世界にはウルトラマンは存在しない。1207号の任務が妨害される可能性は極めて低いだろう》』

「《いえ、それが急遽問題が発生しました》」

『《何だと? 如何いうことか説明せよ、ダダ1207号》』

そうしている内に、ダダは地球製のコンピュータらしき物をカチカチと弄りだした。PCを操作する宇宙人……シュールだ。

そんな事を考えながらダダの様子を観察していると、ダダは某有名動画投降サイトの一ページを表示して見せた。

「《先日地球へとある隕石が飛来し、それと同時に一体の怪獣が地球へ飛来しました。》」

『《これは……寄生怪獣マグニア!?》』

「《は、我が星でも有害怪獣に指定されている、極めて危険度の高い宇宙怪獣です。が、このマグニアは、出現から数日内に、地球の戦力によって殲滅されてしまいました》

『《なんだと!?》』

通信機らしき装置が凄まじいノイズを響かせる。むこうの司令官……ダダ指令が通信機に大きな衝撃でも与えたのだろう。

『《馬鹿な、ウルトラマンも存在せず、宇宙文明レベルD程度の地球人に、あのマグニアが撃退できるワケが無い!》』

「《然し事実としてマグニアは殲滅されてしまいました。そして、もう一つ、これは新たに本日手に入れた情報です》」

そういって再びダダはキーボードをカチカチと操作しだした。そうして表示されたのは……あれ? なんだか見覚えがあるぞ?

「束さん、アレって……」

『あ、あれー? あれって今日あった学会のホームページ?』

バイザーの内側、視界に投影される束さんの顔は、何処か引き攣ったような物で。

「《地球人が開発したISという兵器です。このデータが事実であれば、そしてこの開発者の思想が事実であるならば、地球は侵略者に対する強力な武器を手に入れようとしています》」

『《なんという事だ、漸く見つけた我々の安全な採取場所が……!!》』

何か若干ムカつく発言だが、今理解できる部分だけを纏めれば、このダダは次元を超えてこの世界に人間標本を採取しにやって来た、という事なんだろうか。

しかもウルトラマンを知っている辺り、ウルトラマンにヤられた連中が、ならばとウルトラマンの居ないこの世界で標本採取を続けていた、と。まぁ『パワード』のヤツはどちらかと言うとデータ生命体だったし。

……光の国のウルトラ戦士、ダダの本星を滅ぼしてくれないかな……。こう、ウルトラキーでドカンと。

「《然し幸いな事に、未だ我々の脅威となるこの技術は人類に広く拡散していません。既に処置の準備は終えています》」

『《ほぅ、それは?》』

「《は、我等の演算装置を使い、人類のネットワークに介入。人類の兵器を乗っ取り、コレを以って件の脅威が潜在している地域を、技術が拡散する前に周囲まるごと殲滅します》」

……っておい!? 周囲まるごと殲滅!?

『《なるほど、我等の存在を隠しつつ、人類同士の抗争に見せかける、と言うわけだな。良い作戦だ》』

「《ハッ、有難うございます》」

『《然し同時に標本の期日が迫っている事も事実。急ぎ標本を採取し完成させよ!!》』

そうしてダダ指令の通信機がゆっくりとブラックアウトする。

ダダ指令の言葉を受けたダダ1207号は、近くに置かれていた注射器のような奇妙な銃器らしきものを手に取ると、そのまま部屋の外に向かって……って、拙い!

慌て、けれども静かにその場を離れ、資材室のすぐ傍、資材管理室という表札の出ている部屋へと駆け込んだ。

「DA・DA……」

あの特徴的な声を上げるダダ1207号は、そのまま銃器のようなものを手に持ったまま、ゆっくりと何処かへと歩き去っていった。

「……束さん」

『あ、あは、なんだろう。学会で認められなかったのに、敵の侵略者に認められちゃったよ』

「言ってる場合じゃねー」

なんだったか、ダダの演算装置を使って人類の兵器を奪い、ソレを持って該当地域をまるごと殲滅……?

演算装置、つまりコンピューターを使って兵器の奪取……この場合の兵器っていうのは、電子制御されたもの……つまり戦闘機とか戦車ではなく、ミサイルみたいな無人兵器のことだろう。

ソレを奪って、該当地域……俺達の住んでいる地域……いや、人類の兵器ってことは、世界各国のミサイル……まさかとは思うが、殲滅地域は日本全域……?

これってまさか“白騎士事件”かっ!? この世界では束さんが起すんじゃなくて、束さんのISに脅威を抱いた宇宙人が起すってか!?

「束さん、とりあえず俺はダダが留守の間に捕獲された人たちを救助、次いでダダの装置の破壊をやっていきます」

『おっけー、なら束さんは、現在進行形で行なわれてるであろう世界各国の軍事基地に対するハッキングを阻害してくるよ』

「おねがいします。……あと、もしもの時に備えて――」

『……束さんとしては、嫌だ、って言いたいんだけど、この場合放置した方が問題になるんだろうなぁ……』

「すいません」

画面の向こうの束さんに、そう頭を下げる。

俺としてはそんな展開に持ち込むつもりは一切ないのだが、けれども世界の修正力というか、ご都合主義に進める力というか、そんなものを実感として感じ取ってしまった俺としては、もし“そう”成るのであれば、できるだけ被害を少なく“そう”済ませてしまいたい。

「出来るだけ手早く済ませて、この手は使わずに済む様にします」

『うん、お願いね』

それじゃ、と言葉を切って、此方の作業に集中する事にする。束さんにはこれから、地球全土を襲う電脳上の魔の手を蹴散らしてもらわなければならないのだ。雑談で意識を逸らしても拙い。

そうと決めれば即座に行動を開始する。

外の気配を探り、其処に誰も居ない事を確認して、次いで廊下を通り抜けて資材室へと足を運ぶ。

最近常に最低限の力を維持できるようになってきたオルタを戦闘出力まで引き上げ、更にハイパーセンサーで周囲を探りながらゆっくりと室内へ入室。

そうして室内を探り、視線の先に一つソレらしき物を見つけることが出来た。

其処にあったのは、研究資材の乗せられるはずの机の上にドンと置かれた、奇妙なシリンダーの繋がれた一つの装置。

シリンダーには其々数字らしき物が刻印され、中には白衣を来た子の研究所の職員らしき人物等が、まるで人形のように固まったまま小さなシリンダーの中に納められていた。

「うわ、マジであったよ……」

人間標本。一体何の目的で集めているのかは知らないが、昔みたウルトラマンのビデオに登場した、縮小した人間を標本として補完しておく装置。

一応ざっと装置を確認して、この補完装置が独立稼動している物である、と言うのを大雑把に確認する。もし何かの装置と連動していて、これを止めた途端警報が鳴り響いた、なんて展開は勘弁願いたいし。

「よし、それじゃ……在るべき姿に還れ」

言いながら、手の平の上に集めた光をその装置へと……その装置に繋がれている人間達に向かって浴びせてやる。

途端光を浴びた五本のシリンダーが弾けとび、中から一般人程度のサイズに膨れ上がった五人の人間が姿を現した。

その五人は俺のオルタを浴びた影響か、辛そうに顔をしかめてはいるものの、膝を付いて何とか立ち上がろうともがいていた。

「おい、大丈夫か?」

「あ、ああ、私は大丈夫です」

とりあえず変声機を通して、その後人のうちの一人、比較的元気そうなスーツ姿の男性に声を掛けると、男性はそう言って、驚いた事に辛そうながらも見事両足で立ち上がって見せたのだ。

「あなたは……警察の方では無さそうですが……」

言いながら不審そうな表情で此方を見てくる男性。そりゃ警察がこんな鎧みたいな物をまとっていたら引くだろう。

「残念ながら警察じゃない。まぁ、通りすがりのウルトラマン、だとでも考えておいてくれ」

「と、通りすがりのウルトラマン……?」

咄嗟に放った俺の言葉に絶句するその男性。……あれ、ダメかな?やっぱりこの台詞は仮面ライダーにしか合わないんだろうか。

「信じられません? ですよねぇ……」

「い、いや、事実としてダダ……なんだろうね、あんな宇宙人が存在しているんだ、ウルトラマンだって……存在していても……」

「無理に信じなくても良い。とりあえず、篠ノ之博士率いる組織の人間、って覚えておいてくれれば良い」

「篠ノ之博士……何処かで聞いたような。それに、貴方は人間なんですか?」

なんだか失礼な事を聞かれているような気もするけれど、確かに殆ど人間を辞めてしまっている俺だ。怒らずに一応頷いておく。

「あっ、思い出した!!」

とそんな事を考えていると、背後でぐったりとしている研究者の一人が声を上げた。

「如何したのかね」

「轡木さん、ISですよ! 篠ノ之束、先日の学会でインフィニット・ストラトスを発表した!」

「……あぁ、なるほど。あの宇宙人の侵略だとか、怪獣だとか……まさか、キミは」

「彼女の協力者の一人で、名前は内緒です。で、コレはアークプリズム」

言いつつ右手に薄らとリフェーザー砲を展開し、即座にソレを格納する。

そんな様子を見てか、色々葛藤があるのだろう。研究者の五人はなんともいえない歪んだ表情で此方を見つめていた。

「とりあえず、あの宇宙人……本人も言ってたし、ストレートにダダって呼ぶが、あのダダが留守にしている間に幾つかやってしまいたいことがあるんだが……」

「そ、そうだ! 他の皆を、他の皆を助けてください!!」

そう言って男性は言葉を続ける。この研究所には、この場に居る五人のほかに、あと四人ほどの人間が常駐しているらしい。

此処に居る五人はサンプルとして標本装置に捉えられたが、残りの四人はサンプル対象外として別室に捉えられているのだとか。

案外既に何等かの実験に使われていたりして、なんて不謹慎なことを考えつつ、その男性の指示に従って残りの研究員の救出に向かう事にする。

「それじゃ、とりあえず此処の四人は先に車なりを用意して脱出準備を。俺は他の四人とやらを助けに行きます」

「私も行きましょう。偶々私は最初の瞬間にその場を離れていたので、奴等が他の連中を何処に閉じ込めているかも確認しています」

「すいません轡木さん、それと、ウルトラマンの人……」

「ウルトラマンの人……あー、アークプリズムってのは面倒かな、コードネームのオルタって呼んでくれれば良いですよ」

「ええ、わかりました。ではオルタさん、轡木さん、他の連中を宜しくお願いします」

頭を下げて、急ぎ車をとりに行った四人を見送る。

「それでは、我々も行きましょうか」

「道案内、宜しくお願いします」

言いつつ、轡木さんの先導の下、俺達は残りの人員が監禁されているという場所へ向かって移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

轡木さんに導かれてたどり着いたのは、この研究所の本館の奥に建てられていた、研究員達の生活スペースとなる別館、その一階にあるロビーであった。

集団生活を送る際の、レクリエーションの為の場所なのだろうそのロビー。綺麗なソファーやテレビの置かれたその空間は、けれども同時に異様な空気を醸し出している。

というのは、その綺麗なロビーの中央。四人の男女が、まるでゴルゴンに睨まれ石にされたかのように、日常の一風景をそのまま固めたかのように、その場の時間が凍り付いてしまっていた。

オルタの感覚、ISのハイパーセンサー、それら全てを用いて調査すると、どうやらこの四人は其々の空間をガッチリと固定されてしまっているらしい。

即座に先程標本装置を解除したときと同じく、手の平の上に力を集め、それを彼ら四人に向けて放つ。

途端空間固定を解かれた四人は、まるで崩れ落ちるかのようにしてその場に倒れこんでしまった。

「うう……」

「こ、此処は」

「私達、確か、あの白黒の……」

「………ぅ……」

「みんな、無事か!?」

動き出した四人に、轡木さんがそう声を掛ける。途端轡木さんの姿を確認した四人が笑顔を浮かべ……その隣に立つ俺の姿を見て、その笑顔を引き攣らせた。

……いや、うん。俺の姿が怪しいって言うのは自分でも理解してるけどね。助けに来た人間をそう邪険にしなくてもいいじゃないか。

「轡木さん、彼は……?」

「あぁ、彼は……その、なんだ、我々を助けてくれたらしい」

何で其処で引っかかるんだ。怪しいのは自覚しているけどさ。

「これで全員ですね?」

「あ、ああ。これでこの研究所の人間は全員確認した」

よし、それじゃ後はこの轡木さん含めた五人を、先に逃がした四人と合流させて逃がすだけだ。

問題はこの研究所の敷地を覆うバリアを解除しなくてはいけない、という事なのだが。相手がダダなら判りやすい。連中、何処かに小型ジェネレーターを持ち込んでいるはずだ。

一番高い可能性としては、この研究所の発電施設なりに外付けして、回線を利用していると考えるのが簡単なのだが。

「轡木さん、この研究所に発電施設とか、エネルギーを扱う場所はありますか?」

「発電施設? あぁ、研究用の電力施設ならこの別館と本館を挟んだ向こう側の電力室にあるが……」

言われて、束さんに貰った地図を確認してみる。見れば確かに其処に何等かの建造物が存在している事を確認できた。

やはり、連中の発電機は此処にあるのだろう。

「では轡木さん、貴方はその四人を連れて脱出を」

「君はどうするんだい?」

「俺は連中の発電装置を探します。それを止めない限り、この施設を覆うバリアは解除されません」

――故に、バリアが消えるまでは動かず、消えたことを確認してから逃げ出してほしい。

そう轡木さんに伝えると、彼は少し戸惑ったようで。

「君は、如何するんだい?」

「忘れましたか? 俺は通りすがりのウルトラマンです」

そんな俺の言葉を如何解釈したのか。轡木さんは一つ頷くと、四人を先導して先の四人が向かったであろう駐車場へ向けて移動を開始した。

「くれぐれも、バリアが消えるまでは移動しないでください。あれは下手に触れると消し炭になりますよ」

「ああ解った。そういう君も、くれぐれも無事で!」

そういって歩き去っていく轡木さんを見送りつつ、示された地図の電力室に向けて移動を開始した。

急ぐ現在、ISを完全展開して電力室に急行しても良いのだが、ダダに此方の存在を勘付かれるのは出来るだけ最後がいい。

そう考えて、建物の外ではなく中を一直線に爆走する。扉を蹴破り窓を叩き割り、壁すらも打ち砕いて文字通り一直線に。

そうしてたどり着いた電力室。外見はなんともない普通の建造物だが、なるほど確かに。至近距離に近付けば、その建造物が異常なほどのエネルギーを発生させている事が感知できた。

周囲を警戒しつつその電力室に足を踏み入れる。入り口入って右手の電灯のスイッチをカチリと入れると、その薄暗い室内が一気に明るく照らし出された。

「……これか」

其処に設置されている奇妙な装置。小さな機械が元々あった発電装置に繋がれ、その元々あった発電機を圧倒する莫大な電力を施設内へと送電しているのが確認できた。

そしてその横。発電機とは少し離れた場所に、ポツンと置かれた巨大な四角い箱。たまにチラチラと走る光は、何処か電子的な輝きを放っていて。

……もしかして、コレがダダの演算装置、って奴だろうか。

とりあえず、この発電機か演算装置、そのどちらかを壊してしまえば、ダダの任務継続は完全に不可能になる。そう考えて、右手にリフェーザー砲を顕現させる。

試しに低出力収束砲で発射してみるが、放たれたビームは演算装置に直撃するその瞬間、突如として現れた光の壁に遮られ、力なくその場で霧散してしまう。

同じくダダの発電装置にもリフェーザー砲を放ってみるが、やはり同様のシールドによって保護されており、リフェーザー砲による直接破壊は難しそうだ。

ならばどこかにこの演算装置、もしくは発電装置の制御装置が存在しているのではないか。周囲を見回すと、予想通りと言うべきか、あからさまなブレイカーが一つ。

他に良さそうな物も見当たらないので、仕方なくソレを上に上げ、電源をカットした。

――ヴゥンッ!

と、その時不意にそんな音が聞こえた気がして、即座に意識を切り替え。臨戦態勢で周囲に意識を向ける。

そんなふうにして周囲に気を配っている俺の前で、静かに発電装置が稼動を停止し――そして再び稼動を再開し始めた。

「なっ!?」

慌て、再び電源を停止させようとするが、今度は何の反応も示さない。

仕方無しに、一度外に出て、建物ごと綺麗に消滅させてしまおうと考えたのだが、今度は出入り口に強固かつ分厚いシールドが展開されており、この場から逃げ出すことは難しそうであった。

「これは……しまった、罠か!?」

慌てコア・ネットワークを使って周囲一体を走査する。と、どうやら施設全域を覆うバリアは既に解除されているらしく、施設から逃げていく大型バンの姿を捉える事ができた。

なるほど、施設全域を覆っていたバリアをこの建物に限定させる事で、圧倒的な強度を誇るシールドを形成したのか。

完全にハメられた。これは如何考えても襲撃を想定して設定された捕獲トラップだ。俺でなければ此処で詰んでいたほどに見事な。

だが、俺でも今すぐ如何こうできるというわけではない。

俺の全力攻撃をもってすれば、このシールドバリアを破壊することは十分に可能だ。収束リフェーザー砲の最大出力にオルタを載せれば間違いなく破壊は可能。

但しそれは一定以上の環境条件を満たしていればの話。こんな密閉空間で、超高出力であるリフェーザー砲を放ってしまえば、間違いなく大爆発が起こり、俺も巻き込まれ大ダメージを受けてしまうだろう。

最終手段としてはやらざるを得ないだろうが、できることならばそんな自爆行為は控えたい。

如何した物か。考え込んている俺の脳裏に、不意にコア・ネットワークを通したプライベートチャネルからの連絡を感知した。

「束さん、如何した」

『如何したじゃないよ、まーくん今何処にいる!?』

「それがダダのトラップにハマッて閉じ込められた」

『んなっ!? 拙い、まずいよ~!!』

「如何した、って聞くまでも無いか」

チラリと視線を背後に向ける。其処には、先程まで薄らと光を走らせ幾何学模様に発行していた四角い物体が存在している。けれども今それは、トラップが起動した直後から、激しくも奇妙に明滅を繰り返していた。

もしコレが仮に俺の想定したとおり、ダダの持ち込んだ演算装置であったとするのであれば。ダダの発言から、その演算装置が激しく活動するようなもので想定される事柄は一つ。

『世界各国のミサイル基地から、日本に向けてミサイルが発射されちゃったよ!!』

半ば想定していたとはいえ……。

「拙い、束さん、ミサイルの初弾が日本に来るまで後どのくらい時間が……」

『とりあえずアジア圏のハッキングは阻害したから、第一波のユーラシア圏、第二派のアメリカ大陸、第三派がヨーロッパ圏からってかんじで、最初のユーラシア圏のが残り5分!!』

「全然余裕が無いな」

とりあえず最初に、テレポーテーションでこの場から離脱できないかを試してみる。オルタを溢れさせ、外側への転移を……。

……ダメだ。この密閉された室内、念入りにバリアを仕込んでいるのだろう、外部との11次元的な連続性まで遮断されてしまっている。

束さんとの連絡が繋がっている状況から、ある程度の穴はあるのだろうが、それも本来は外部から遠隔で内部の演算装置に対して情報入力を行なう為の物だろう。

「束さん、ゴメン。あと10分以内の脱出は無理かもしれない」

『……そっか。仕方ないね。うん、まぁ二人っきりで地球を守る、って言うのがそもそも厳しい話なんだし』

「本当に申し訳ない。……で、束さん、アッチの準備は……」

『うん、予めテストの名目で装備してもらってるから、すぐにでも出撃してもらえるよ』

「それじゃ……」

『うん。ちーちゃん、ちーちゃん!!』

出来ればこうなる事は阻止したかったのだけれども。

俺が動けない場合に備えて、予め用意していた策。いや、策と呼べるほどの物ではない。

何せ俺が目論んだのは、単純に『俺がダメなら人を増やす』と言うだけの物。

現在、まともに稼動するISと、その搭乗者は、俺を含めて二組が存在している。

一つは俺の運用しているIS試製零号機『アーク・プリズム』。そしてもう一つが、IS試験一号機『白騎士』。搭乗者は、開発者の篠ノ之束の友人である……織斑千冬。

俺も束さんも、出来れば彼女を巻き込みたくは無かった。俺は一般人を巻き込むことを、束さんは友人を、其々巻き込みたくは無かったのだ。

けれども彼女の能力は凄まじい。何せISの登場時間100時間未満でありながら、その戦闘機動は場合によっては、オルタ無しの俺ならば十分に匹敵するほどの力を持っている。

というか、本気で何だろうかあれ。なんで生身でIS用兵装を振れるんだ? 本気で意味が解らない。

もしかしたら束さんがこっそりイノベイター因子を打ち込んだのかな? なんて考えたのだが、束さん曰くそういう肉体改造処置は行なっていないのだとか。

で、俺も肉眼で彼女の存在を確認した折、若干ではあるが彼女の脳量子波らしきものを感知してしまった。

……あの人、ISに乗っていたとはいえ、単独で脳量子波に目覚めたらしい。チートを多分に利用して、順調に人間離れして言っている俺に比べて、ある意味とんでもない存在だ。

『……よし、ちーちゃんに出撃してもらったよ!!』

「それじゃ束さんはソッチのオペレートを。俺は何とか此処から脱出し次第、其方の支援に……って、この感覚は!?」

『まーくん! コスモネットに重力偏重をキャッチ! 多分ダダにばれた!!』

「システムの異変を察知されたか。急いで逃げないと……。束さんは其方に集中してください。俺は何とかします」

『ゴメン、任せる!』

言いつつ、再び思考を加速させて、如何やってこの場から撤退するかを思考する。

 

現在の状況は、この電力室に閉じ込められたというモノだ。

先ず電力室の外側を覆う凄まじく分厚いバリア。転移での脱出も不可能で、力尽くで破ろうと思えば出来なくは無いが、その後暫く行動不能に成る可能性が高い。

次に内側。此処にはダダの発電装置と演算装置が設置されており、コレを破壊もしくは停止させる事ができれば、外側のバリアを停止させる事ができるかもしれない。

が、その演算装置と発電装置は、外側に比べれば低強度ながら、そこそこ硬いバリアに覆われている。

この内側のバリアは、ある程度空間に余裕がある状況であれば、まるごと吹き飛ばす事は十分に可能。但しこうしてバリアに囚われてしまっている場合、下手に吹き飛ばしてしまえばその爆発でやはり行動不能に成る可能性が高い。

外側に向けての攻撃も、内側に向けての攻撃もダメ。だからといって俺にとりうる手段は他に無い。

如何した物かと考えながら、周囲を見回しているうちにふと一つ思いついた。

このダダの発電装置、確か元々此処にあった電力装置に外付けして、回線はもともとの物を利用しているんだよ、な?

だとすれば、発電装置本体の破壊は不可能でも、回線を破壊することは出来るのではないか……?

――えっと確か電気回線は……。

思いついたら早速実行。即座に周囲を調べ、建物内の電気配線を調べ始める。

元々発電装置を納めているだけあって、確りとしたつくりの配電設備が備え付けられたその室内。

一応そうした設備にもシールドは施されているみたいだが、発電装置や演算装置のソレに比べるととてもではないが比較できるほどの強度は無い。

「よし、これを潰せば……」

即座に右手リフェーザー砲を展開し、エネルギー充填。砲身は……発電装置から伸びる配線に。ハイパーセンサーも用いて調べた結果、この配電盤と発電装置。その境界部分が最もバリアが薄くなっている事がわかったのだ。

そうして狙いをつけた上で、リフェーザー砲の出力を調整する。あまり高出力にしすぎるとこのシールド内が蒸し焼きになるし、低出力過ぎてもシールドを破る事はできない。

リフェーザー砲から静かに収束ビームの照射を開始する。最低限の出力で放たれたビームは、配線に設置されたシールドに弾かれ、空中でパチパチと電光を迸らせる。

ソレを確認して、少しずつ、ほんの少しずつ、けれども可能な限り急いで出力を調整していく。

じりじりとした緊張感を感じながら、視線の先で徐々にバリアに食い込んでいくビーム。それは次第にバリアを貫くと、続いて配電盤に繋がる太い配線に到達する。然しバリアで減衰しているビームでは、即座にその太い配線を焼ききるほどの出力は存在しておらず。

咄嗟に出力を更に上げようとする自らを意志の力で押さえつける。現時点で既にビームの出力は相当なものだ。どれくらい強力かというと、宇宙人のバリア付き円盤戦闘機を撃墜できる程度の出力は既に出している。

そしてそれほどの出力を出していれば当然、既に周囲はジワジワと高熱が溜まりだしている。室内気温既に45度。普通の人間なら立っている事すら辛い環境だ。

此処は電気関連の施設。これ以上の発熱は拙い。別に機械が壊れるのは問題ないが、ソレが原因で爆発でも起こってしまうと、そのダメージが後に響く可能性がある。

俺はこれから、最低限ダダの殲滅、ひいては日本を狙うミサイル群の迎撃を手伝いにいったりとしなければならないのだ。

「あせるなよ俺……」

呟きながらゆっくりと太い電線を焼ききっていく。と、不意に室内を照らす照明が不規則に明滅しだした。

それに気を取られないように集中しつつ、更に時間を掛けて配電を焼ききり……。

どれ程の時間が経ったか。ある瞬間、ブツリと音を立てて途切れる照明。次いで背後から常に奇妙な幾何学模様を発光させていた四角いオブジェがその輝きを停止させた。

「よしっ!」

ソレを確認して、即座に部屋の外へと足を運ぶ。バリアは……消えている!

最後に演算装置に低出力のリフェーザー砲を一発ぶち当てて、電力室から飛び出す。

……よし、コレでとりあえず、あのダダ1207号を孤立させる事には成功した。後は1207号本人を殲滅するだけだ。

そう考えながら、地球全土を覆うコスモネットにアクセスする。先程の映像ログから逆算した、宇宙生物ダダ固有の生物波形を計算。それをコスモネットを用いて位置情報を走査する。

……見つけたっ!

現在地から東の方向3000メートル。西、つまり此方へ向かって高速で飛行してきている。

ソレを確認して、ISを完全展開させる。ゆっくりと身体が浮かび上がり、あふれ出した金色の粒子光は、即座に全身を覆い隠すと、未展開であったアンロックユニットが展開され、この機体の最も特徴的なレッグブースターが脚部を確りと覆う。

即座にフル稼働を開始したレッグブースター。低い唸り声のような駆動音を響かせたソレは、金色の輝きを爆発させるようにして大空へと急加速する。

瞬時加速。後にそう呼称される技術。けれども俺のソレは桁が違う。

本来はISのエネルギーを用いて発生するその急加速現象は、けれども俺の場合は俺とコアの共振から生まれる無尽蔵のエネルギーをつぎ込むことで、本来の限界以上の出力での瞬時加速を可能とする。

欠点として、マニュアルでの確りとした制御を怠ってしまうと、瞬時加速時に使用されるエネルギーが暴発したりして、機体に甚大な被害を受ける可能性がある。が、その点に関しては、俺の人並みをちょっと上回る頭脳があればたいした問題にはならないだろう。

そうして急加速した俺の視界。コスモネットと照らし合わせ、解析された情報網。システムがナビゲートする視線の先に映し出されるたのは、殲滅対象である宇宙生物『ダダ』。

両腕で胸の中央にあの奇妙な銃器……人間採取装置を抱いて空を飛ぶダダ。地上は日本最先端技術研究所に向けて降下しつつあるダダ。そのダダにYマイナス方向からの強襲を仕掛ける。

『ダーダー!?』

ガツン、という衝撃が右腕に伝わる。残念ながら対怪獣戦を想定しているこのアークプリズムには、接近戦において運用可能な格闘装備というのは搭載されていない。

あえて格闘戦を行なおうというのであれば、前回のようにリフェーザー砲を至近距離でぶん回しながら撃つ、と言うのがあるが。あれは下手をすると山とか川とかをごっそり真っ二つにしかねないので、そうそう使用できるものでもない。

「ち、今度本格的にビームサーベルの研究もしなけりゃ……」

思わずそう愚痴を呟きながら、急反転。即座に降下し行くダダを追いかける。

ビームサーベルがあれば、あの電力室のバリアを破るのももう少し楽だったかな、なんて事を考えつつ、墜落し行くダダの後を追い、その途中ダダが取り落としたのであろう人間採取装置を空中で回収する。

万が一中に採取された人間がいると厄介だ、何て思いながら中身を確認するが、幸いダダが人間を採取する前に此方に引き返してきたのだろう、装置の中に人間の気配やそういったものの存在は感じられなかった。

「よし!」

右手を一閃。人間採取装置を思い切り殴りつけると、装置は途端にボスンと小さく爆発した。

そのまま破壊した採取装置をアークプリズムの格納領域に仕舞い込み、再びダダの追跡に入る。ダダは此方を敵と認識したのか、それまで採取装置を抱えていた両腕を広げ、まるで鳥の翼のように両手を広げた独特のポーズで此方へと飛んできた。

『ダー・ダー』

「墜ちろ人攫い!!」

左腕にビームガトリングを顕現させ、そのままダダに向かって連射を開始。ダダはソレを即座に回避しようと旋回するが、どうやらISの飛行性能に比べてダダの飛行能力は大分劣るように見える。

簡単に取れたダダの背後。ビームガトリングでダダの回避方向を制限しつつ、リフェーザー砲を広域拡散モードで撃ち放つ。

『ダ・ダーーーダーーーー!!!??』

オルタを含んだ金色のビーム砲。まるで壁のようにダダへと迫った金色の輝きは、宙を飛ぶダダを濁流の如く飲み込んでしまったのだった。

「やったか?」

『まーくんそれフラグ!!』

不純物の一切が消し飛ばされた澄んだ大気の中で、有視界範囲から姿を消したダダ。その姿が見えなくなって、思わず呟いてしまったそんな言葉。突っ込みは予想外にもコア・ネットワークから響いてきた。

「束さん?」

『おっと、突っ込み入れてる場合じゃ無かったよ! まーくん、急いでちーちゃんの援護に行って!』

束さんはそう言いながら此方にコアネットワークを使って地図データを送信してくる。

……なるほど、確かにこれは無理だ。幾ら白騎士が束さんお手製のワンオフ機……高級品の一品物で馬鹿げた性能を誇っていたとしても、例え織斑千冬程の人間離れした人間が扱っていたとしても、それでもISにだって限界はある。

幾らある程度ミサイルの来る方向が限定されるとは言っても、地球全土から日本に向かって放たれたミサイル、その全てを立った一機のISで防ぎきるのは如何考えても不可能だ。

むしろ、今の今まですべてのミサイルを迎撃できた事こそ驚くべき事実だろう。

「……白騎士の装備って何だっけ?」

『基礎汎用モデルの試作品だから、ブレードと、試作品の荷電粒子砲を積んでるだけだよ』

本当、なんでそんな極端な装備でミサイルを迎撃できてたんだろう。戦術的に考えるなら、弾幕を張るなりして防衛するのが常套手段じゃないんだろうか。

呆れた物だ、何て思いつつ、とりあえず地図に視線を向ける。

東側から来るアメリカの弾道ミサイル。次いで若干のラグを空けて飛来するのが、西側から飛んでくる東回りのヨーロッパの弾道ミサイル。

飛来する弾頭の数としては、アメリカの物よりもヨーロッパから飛んでくる弾頭のほうが若干数が多い。

「それじゃ束さん、俺が西のミサイルを落とすから、白騎士には東側を任せても良い?」

『うん、それでお願いするよ。ちーちゃんちーちゃん! ちーちゃんは東の太平洋側でミサイル迎撃に集中してねっ!』

『くっ、束か、でもそれじゃ、西側の守りが……っ!!』

『それは大丈夫だよ、そっちはm……アークプリズムがやってくれるって。漸く手が開いたらしいんだよっ!!』

『アークプリズム……? まさか私のほかにも束に手を貸している人間が……?』

なんだろう、回線が混線しているらしい。織斑千冬と思しき女性の声が、此方の耳にまで聞こえている。

まぁ、そもそも織斑千冬に大して交友関係を持たない俺には、余り関係のない話だ。今俺がやるべきことは、あくまで日本に降り注ぐミサイルの迎撃なのだから。

ガチャリ、と音を立てて左腕にビームガトリングを顕現させる。こういう防衛線なら、弾幕を張れるビームガトリングはとても有用性が高かった。

「さて、それじゃ仕上に、パパッと日本を護って見せますか」

空の彼方から迫る幾つもの煌く光。空を覆うミサイルの噴炎をハイパーセンサーに捉えながら、ブームガトリングを構え、ミサイルへ向かってイグニッション・ブーストを発動させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、そんな激戦が繰広げられている場所から少し所変わって。

つい先ほどまで宇宙人に占領されていた、山奥某所に存在する日本最先端技術研究所。そこを一つの人影がフラフラと歩いていた。

いや、それを人影と呼んで良いのかはわからない。なぜならそれは、白と黒の幾何学模様に身を彩られた、地球外生命体、『ダダ』と自らを称する人外であった。

「ダ……ダ……」

そのダダ、1207号は激しく傷ついていた。直前の戦闘、真幸によって放たれた拡散オルタ・リフェーザー砲の一撃。空間を消し飛ばすその超高出力砲撃は、確かにダダに甚大な被害を与えていた。

けれどもダダとて伊達に人類を超える技術力を持った種族ではない。真幸の砲撃が直撃したその瞬間、ダダ1207号は咄嗟に自らを短距離転移で砲撃の危険地帯から退避させることに成功したのだ。

しかし、だからといってダダ1207号が無傷と言うわけではない。辛うじて一命こそ取り留めたものの、ダダ1207号の姿は、文字通りのボロボロ、それ以外の言葉では表現のし様も無いほどに所々焦げ付き、欠損し、本来あるべき姿からは大きくかけ離れてしまっていた。

「《……う、ぐ……拙い、この惑星は拙い……!!》」

ダダ1207号は脅威を感じていた。ただ自分が大きなダメージを与えられたから、と言うだけではない。

ダダ1207号は知っているのだ。あの人間が纏っていた輝き。その輝きに見覚えがあったのだ。

――そう、あれは間違いない。ダダの任務を幾度も妨害してきた、光の国の連中と同じ輝き……!!

「《急ぎ、本国へ連絡し……そして、この惑星を危険敵対惑星として、全力を持って滅ぼす!!》」

「悪いけど、それはさせられないんだなぁ♪」

憎悪交じりに呟くダダ1207号。そんな彼の言葉に、不意に地球の言語で割り込まれる。

独り言に言葉を返されたダダ1207号は思わず身を強張らせ、慌ててそのボロボロの身体を動かし、視線を声の方向へと向けなおす。

そんな彼の視線の先にいたのは、この惑星の原住民、雌に分類される人間の姿であった。

「《なっ、ち、地球人》」

「キミが君の祖国に連絡することは無いよ。だってキミは此処で私に滅ぼされるんだもんっ♪」

彼、ダダ1207号の前に立った人間の雌は、そういうと手に持った武器、拳銃と呼ばれるそれをダダ1207号に向けた。

けれどもダダ1207号は焦らない。なぜなら彼の知識が正しければ、その人間が持つ武器は、火薬の燃焼ガスの圧力を持って、金属の弾体を当てることで対象に攻撃を与えるという武器だ。

あの地球人の光を受けてボロボロに成っているダダ1207号だが、それでもただの科学燃焼式の銃火器程度の攻撃を防ぐ事は容易い。

……そう、判断してしまったのだ。

――Bang!!

轟音と共に放たれた弾丸。それは深紅の炎を纏い、獣の唸り声のような轟音を響かせながらダダ1207号へと襲い掛かる。ダダ1207号は咄嗟にシールドを張り巡らせるが、その弾丸……いや、『無慈悲な灼熱』は、容易くダダ1207号の張ったシールドを焼き尽してしまった。

「ダ・ダーーーーーーダーーーーー!!!???《う、うわあああああああああああ!!!!???》」

人間……篠ノ之束の放った炎の弾丸は、ダダ1207号をまるごと飲み込んだ。飲み込まれたダダ1207号は、シールドごと炎にまるごと飲み込まれ、そんな断末魔を残して、跡形も無くこの世から焼滅したのだった。

「全く。まーくんが変なフラグ立てるから、もしかしてと思って着てみたら案の定なんだもんねー」

良いながらその女性、篠ノ之束は、その炎を撃ち放った拳銃を軽く振り払って銃身を冷す。

彼女が振り払った銃。銃身をくまなく奇妙な呪紋のような物で埋め尽くされたその赤い銃。それは暫く風に冷された後、光の粒になって何処へとも無く姿を消してしまった。

「さて、後はミサイルを迎撃し切るだけ何だけど……その前にダダの遺品も始末しとかないとねっ」

言いつつ、束は自らの移動ラボ「うたかたの」を起動。再び前線で活躍している二人をナビゲーションで援護し始める。

「でも、どうせだったらダダの遺産、全部貰って研究資料にしてもいいか。うん、束さんナイスアイディア!」

そんな事を呟きながら、それでも束は支援の手を一時も絶やす事は無く。

ニコニコと笑いながら凄まじい速度でタイピングを続ける篠ノ之束。そんな彼女の目の前のモニターでは、刻一刻と日本に降り注ごうとするミサイルの数が急速に数を減らしていく様が映し出されていて。

そんな光景に、束は人知れず小さく安堵の吐息を漏らしたのだった。

 




■宇宙生物ダダ
出展はウルトラマン。別名三面怪人。コンピュータ生命体じゃないほう。
本作に登場するのは人間標本回収員1207号。原作271号がウルトラマンに倒された後、色々あって多次元宇宙に進出した。
ウルトラマンが居ないはずの世界でまさかの敗北を晒し、更に持ち込んだる全ての技術を篠ノ之博士に回収された。
今作における白騎士事件の主犯。
■オルタ
真幸の力にしてコードネーム。光の巨人ディラクから受け継ぎ目覚めた力。
空を飛んだりテレポートしたり、割と無茶苦茶な力。
■通りすがりのウルトラマン
やっぱりライダーじゃないと駄目か……。
■白騎士
汎用量産型ISコア搭載の試作機。ディラクの遺骸『アーク』を加工することで汎用性を高めた『ISコア』を搭載した、量産のための研究機。
コア自体やワンオフアビリティーの研究の為に開発された機体で、織斑千冬によりデータ収集が行なわれていた。
篠ノ之束も友人を戦場に放り込む心算は無く、実戦投入されたのは想定外の事態であった。
■うたかたの
移動式ラボ『我輩は猫である~名前はまだない~』の前身に当るマルチサポートシステム。
名前の元ネタは森鴎外「うたかたの記」

※正解はダダ(ウルトラマン)でした。
ラウンダーグリップでギギって答えるかな? ギギの元ネタがダダだし、と思ってたのに、大半がストレートにダダって……。コスモスって人気ないのかな?
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